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第二部壱 怜の場合①
第1話 結婚概念?
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それは、同僚の唐突なひと言から始まった。
「マトーさんは、コモリさんといつケッコンするんデスか?」
「ほへ?」
仕事の合間。
前の宴会場と次の宴会場の合間の時に。
正社員となって、まだ半年も経っていない新卒者……眞島怜は、正社員としては先輩の中国系ハーフ……王苺鈴に聞かれたのだ。お互いに暇な時間を利用して、グラス磨きをしながら。
「思うのデスヨ」
「う、うん?」
「マトーさんとコモリさんは、ホテルの中でも外でもラブラブなカップルデス! ドーセーもしてるんデスから、ケッコンも近いはずデス!!」
「お、落ち着いて……王ちゃん?」
「ワタシはジューブン落ち着いていマス!!」
まだ発音はカタコトが目立つが、話せる日本語がだいぶ増えてきた。常日頃、ビジネスでもホテルと言う特殊な環境でお客様をもてなす立場だからだ。お客様へは敬語、丁寧語でもバックヤードに回れば、苺鈴はいつもこんな感じだ。
ともあれ、裕司との結婚をそこまで主張されるとは思わなかったが。
「……昔は違うだろうけど。今はそこまで結婚は急がないと思うよ?」
「……なんでデスか?」
「まずは、お金だね」
ビジネスホテルでも、規模は会場によって違ってもウェディングの披露宴はきちんとある。
一度だけ、プランナーに確認したことがあるのだ。挙式もだが、披露宴にどれだけの費用がかかるか。
「……ニホンは単価、高いデスしね」
「そうなのだよ。同棲始めたからって、入籍してはい終わり! じゃ、味気ないしね?」
せっかくホテル勤務なのだから、それくらいは憧れている部分もある。裕司とはまだ詳しいことを話し合ってはいないが……二年近く前に、両家の挨拶は済ませたし、問題ないわけではないが。
やはり……金額が上から三桁以上の価格には、お互いの貯金を併せてもギリギリだ。無闇に今の生活をカツカツにしたくはない。
「…………見たいデス。マトーさんのドレス姿」
「ん?」
「きっと、綺麗デス」
「……ありがと」
大学時代からの友人である皐月とは違い、同じ職場で年の差はあれど友人でいてくれる苺鈴は嬉しい存在だ。
グラスを作業台に置いてから、髪型が崩れないように頭を撫でてやると、ふにゃんとした笑顔になった。
それからは、作業に集中して次の宴会に取り組み……一日の仕事を終えるのだった。
「……俺らの結婚ねぇ?」
一日も終わり、裕司の待ってる家に帰ってから伝えると……裕司はとっておきのフルーツワインのボトルを出してくれたので、仕事終わりの軽い晩酌をすることになった。
「……まあ、王ちゃんは私のドレス姿見たいって言ってくれたけど」
「それは絶対似合うぜよ」
「……まだ着てないよ?」
「コスプレじゃないけど、貸衣装で着てたのあるじゃないか?」
「あれはやめて!?」
たしかに、民族衣装をコスプレっぽく着たことはあるけれど……ドレスでも何でもない。裕司と民族関連のテーマパークに行った時だが……あれは少し後悔した。結構重かったのだ。
「綺麗だったのに?」
「……ありがと」
それをさらりと褒めてくれる裕司も、あの時同じ民族衣装の男性版を身につけてくれた。それを覚えていない怜ではない。
フルーツワインの度数は少し高めだからか、お風呂から上がっても顔がほてった気がした。
「マトーさんは、コモリさんといつケッコンするんデスか?」
「ほへ?」
仕事の合間。
前の宴会場と次の宴会場の合間の時に。
正社員となって、まだ半年も経っていない新卒者……眞島怜は、正社員としては先輩の中国系ハーフ……王苺鈴に聞かれたのだ。お互いに暇な時間を利用して、グラス磨きをしながら。
「思うのデスヨ」
「う、うん?」
「マトーさんとコモリさんは、ホテルの中でも外でもラブラブなカップルデス! ドーセーもしてるんデスから、ケッコンも近いはずデス!!」
「お、落ち着いて……王ちゃん?」
「ワタシはジューブン落ち着いていマス!!」
まだ発音はカタコトが目立つが、話せる日本語がだいぶ増えてきた。常日頃、ビジネスでもホテルと言う特殊な環境でお客様をもてなす立場だからだ。お客様へは敬語、丁寧語でもバックヤードに回れば、苺鈴はいつもこんな感じだ。
ともあれ、裕司との結婚をそこまで主張されるとは思わなかったが。
「……昔は違うだろうけど。今はそこまで結婚は急がないと思うよ?」
「……なんでデスか?」
「まずは、お金だね」
ビジネスホテルでも、規模は会場によって違ってもウェディングの披露宴はきちんとある。
一度だけ、プランナーに確認したことがあるのだ。挙式もだが、披露宴にどれだけの費用がかかるか。
「……ニホンは単価、高いデスしね」
「そうなのだよ。同棲始めたからって、入籍してはい終わり! じゃ、味気ないしね?」
せっかくホテル勤務なのだから、それくらいは憧れている部分もある。裕司とはまだ詳しいことを話し合ってはいないが……二年近く前に、両家の挨拶は済ませたし、問題ないわけではないが。
やはり……金額が上から三桁以上の価格には、お互いの貯金を併せてもギリギリだ。無闇に今の生活をカツカツにしたくはない。
「…………見たいデス。マトーさんのドレス姿」
「ん?」
「きっと、綺麗デス」
「……ありがと」
大学時代からの友人である皐月とは違い、同じ職場で年の差はあれど友人でいてくれる苺鈴は嬉しい存在だ。
グラスを作業台に置いてから、髪型が崩れないように頭を撫でてやると、ふにゃんとした笑顔になった。
それからは、作業に集中して次の宴会に取り組み……一日の仕事を終えるのだった。
「……俺らの結婚ねぇ?」
一日も終わり、裕司の待ってる家に帰ってから伝えると……裕司はとっておきのフルーツワインのボトルを出してくれたので、仕事終わりの軽い晩酌をすることになった。
「……まあ、王ちゃんは私のドレス姿見たいって言ってくれたけど」
「それは絶対似合うぜよ」
「……まだ着てないよ?」
「コスプレじゃないけど、貸衣装で着てたのあるじゃないか?」
「あれはやめて!?」
たしかに、民族衣装をコスプレっぽく着たことはあるけれど……ドレスでも何でもない。裕司と民族関連のテーマパークに行った時だが……あれは少し後悔した。結構重かったのだ。
「綺麗だったのに?」
「……ありがと」
それをさらりと褒めてくれる裕司も、あの時同じ民族衣装の男性版を身につけてくれた。それを覚えていない怜ではない。
フルーツワインの度数は少し高めだからか、お風呂から上がっても顔がほてった気がした。
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