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第41話 天神様と偽りの子供

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【……慌てることは、ありません】


 リーンから放たれた光から……声が聞こえてきたのだ。

 その声は女性で……しかも、聞き覚えのあるもの。

 私もだが、トビトもすぐに気づき……トビトは茶店の時のこともあってか、その場にひざまずいた。フータはフータの方で……まあ、まだ自分の上で何が起きているのかわからないのでオロオロしていたけど。


「……世界樹?」


 私が声をかけると……光が落ち着いていく。消えた頃には、リーンと同じ大きさの……茶店で異空間を作った女性体の世界樹よりは、幼い姿の彼女が立っていたのだ。それと……髪色が聖樹石のように、濃い赤紫の色合いだったね。


【正確には……聖樹石の意識体のようなものです。この森に近づくことは……世界樹より情報を得たので、試させていただきました】

「試す?」

【はい。命を奪う行為に……ためらいがあると聞き及んでいた、ミザネ……貴方のことです】


 世界樹……ではなく、聖樹石の意識体。

 彼女は……フータから離れ、私の前に降りてきた。小さな体は……本当に、リーンとほぼ同じだったよ。


「……ためらい。たしかに……それは今でもあるよ」

【その気持ちは忘れずに。しかしながら……我ら聖樹石の居るところは、困難な場所が多いのです。それは……あなた達の障害となってしまう。だからこそ……私は貴方の勇気を試させていただきました】

「……そうか」


 たしかに……今回のように少し強敵となる魔物がいれば、躊躇いなど邪魔なだけだ。だが、命を尊ぶ気持ちを忘れてはならない……とこの彼女も言ってくれたのだから。

 ひとまずは……及第点と言えるのかな?


【それともうひとつ】

「もうひとつ?」

【トビトに先程摘んでいただいた『快癒草』ですが……あなた達には必要なものです】

「うん?」


 どう言うことかよくわからないでいると、意識体は小さく微笑んだ。


【我ら精霊は……傷を負った場合。治癒の魔法が使えないものには……その快癒草が手助けの代わりとなります】

「……万が一の時に使えと?」

【はい。群生地は魔力が豊富な場所でしかないので……この森を含め、世界でも限られた場所しかありません。是非、たくさん摘んでおいてください。鮮度などは、我々精霊が触れた時点で問題はありません】

「……それはありがたいね」


 魔法は、フータや私はともかく……トビトは基本的に扱えない。

 ただ、私は元が神だったこともあり……何かしらの術のようなものは、いくつか扱えるのだ。『言霊』『治癒』『火将かしょう』でしかまだ試していないが。


【……では。私はこれで。……『私』を探し当ててください】


 意識体は最後にそれだけを言い残し……消えてしまった。

 リーンの姿に戻ることもなく……我々しか残らなかったよ。
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