上 下
42 / 99

第42話 天神様と旅路の思い

しおりを挟む
 ほんの少しだったが……旅の友が出来たと思っていたのに、いくらか寂しさを感じた。

 だが……我々への試練のようなものだったのだ。

 意識体とは言え、聖樹石に認められたのなら……それは自信に繋げていこう。

 この場所での旅は……まだまだ始まったばかりだ。

 リーンだった意識体を見送った後……私達は、手分けして魔物らの後始末をして、意識体が教えてくれたように……まだ形があった『快癒草』を出来るだけ採取することにした。

 使い方は……教えてはもらわなかったが、そのまま食べれば良いのだろうか?

 薬師だったら、乾燥させてすりつぶすなどをするだろうが……今の私達は人間のフリをした精霊だからね? その時になれば……もしかしたら、世界樹辺りが教えてくれるのだろうか? あまり、それは良くない状況かもしれないけれど。


「ん。これだけあれば……何かあった時大丈夫かな」


 私達が持っている鞄はただの鞄ではない。

 財布と同じように、ギルドで購入した『魔法鞄マジックバック』と言う特殊なものだ。固有の命あるものでなければ……様々なものが収納可能だと言う優れもの。

 食糧なども、トビトと手分けしてこの中に入れてあるのだ。


『マスター、ま……だ、先。みたい』


 それぞれ、魔物に警戒しながら快癒草を摘んでいたが……フータは、聖樹石の気配を探っていたようだ。最初の時もだが、この子はその気配を探るのがとても上手のようだ。

 中級……と言う格のお陰かもしれないが、精霊としては私やトビトよりも先輩だからね?


「そっか。頼りにしているよ、フータ?」

『う……ん!』

「ミザネ殿。始末は終えましたぞ」

「トビトもありがとう」

「……いえ」


 もちろん、トビトのことも頼りにしているよ。従者と言うよりは……こう言うのは『仲間』と言うかもしれないね?

 彼に言えば、『滅相もない!』とか言いそうだけれど……ひとまず、本来の目的である聖樹石本体を見つけなくては。

 森の中でも、ここはまだまだ手前だろう。

 その手前で……私を試す行為をしてきたのなら。この森は……想像以上に魔物の棲家と化しているだろうね。

 でなければ、意識体が試練をよこす訳がない。


(……やれやれ。神としては下位でも、この世界の神にとってはヒヨッコ同然だろう)


 人間であって、死して怨霊にもなった……小さな神でしかなかったが。

 こちらの世界では……『梅』に縁があったとは言えど、そこそこ頼りにされているのだろう。

 長旅だが……あとどれほどの石を回収せねばならないか?

 二個目を捜索するばかりなのに……私は、少しばかり気持ちを奮い立たせた。

 頼りにされているのなら……その思いに応えなくてはと。


「行こう! 二人とも!!」

「御意!」

『う……ん!』


 私達の旅は……まだ始まったばかりなのだから!

 とにかく……前に進もう!!
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

システムの違う世界に転移した俺、どうやら世界最強みたいです。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:111

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,622

よくある転生だった!だが俺は勇者じゃなかった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:1,615

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:198,062pt お気に入り:12,461

転生したら下流貴族になっていた?〜魔法で世界最強になってみた〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:23

処理中です...