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2017年5月29日ーーザクザクザクザク、食感楽しい手作りシリアル
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「……うーん」
日本人としてあれじゃないけど、むしろあれって海外からの輸入食材ではあるけど……どうしようもなく食べたくなるのは仕方ないと言うかなんと言うか。
(原料の食材はあったし、作れなくはないんだよね)
なら、料理人の端くれとして作るっきゃないよね?
「ふゅ?」
「あ、ごめんね。だんまりしちゃって」
お勉強もほどほどに終えてからふと思い立って数分。クラウはいい子いい子にしながら机の端で僕の勉強しているの覗きながらずっと待っててくれてたもんね。
「ふゅぅ……」
すると、クラウがぽんぽんとお腹を軽く叩いた。その後に盛大ではないけど、可愛らしいお腹の音も聞こえてくる。
今日も空きっ腹な虫の音は健在だね。
「よーし、普通なら一日以上かかるけど。魔法があるからなんとかなるね!」
あとは人手がいるので僕は応援を呼ぶべく部屋を後にした。
◆◇◆
「まあ、シリアルを作るの?」
「なーにそれ?」
場所はいつもの食堂。
説明を兼ねた打ち合わせにフィーさんとファルミアさんを呼んだのです。
「どーしても突発的に食べたくなっちゃいまして」
シリアル。
つまり、穀物の総称。そして、コーンフレークやグラノーラとかの加工食品って意味もある。
僕は急にそれを食べたくなっちゃったんです!
「ねぇ、どう言う食べ物なの?」
「えーと……トウモロコシ、じゃなくてキビトをペーストにして薄い生地にさせてから焼き目がつきにくいように焼くんです。それを水分が抜けきるまで約1日天日干ししたら、小さな破片にして牛乳をかけて食べるものなんですよ」
「ふぅん? あんまり甘くなさそうだね?」
「市販のは蜂蜜とか甘味料をコーティングさせてあったりするから、それが牛乳に溶けて甘くなるけど。手作りでは少し難しいから後で甘みを足すことが多いわね」
ファルミアさんの補足説明でますます食べたくなってしまうよ。
それが想像しにくいフィーさんやクラウはこてんと首を傾げちゃってるけど。
「とりあえず、カティアはそのシリアルって言うのを作りたいんだね?」
「あのザクザク感に飢えてるんです!」
「私も久しぶりに食べたくなるわねー……あれにテンパリングしたチョコを絡めて冷やしたお菓子も捨てがたいわ」
「ああ! それ忘れてました!」
「とにかく作ろうよー?」
なので、手洗いしてから厨房にレッツゴーです!
厨房は少し休憩タイムと言うか打ち合わせをされてて、僕らが来ると皆さんフィーさんとファルミアさんに最敬礼しました。
「これは妃殿下」
「ああ、楽にしててちょうだいな。今回もお菓子作りさせてもらうわ」
「そうですか。どのようなものを?」
「キビトを使った加工品なの。ちょうど旬物があるはずだから、作り置きしてれば朝餉のまかないにもいいんじゃないかしら?」
「菓子なのにまかないに使える、ですか?」
なんだろうとマリウスさん達も想像しにくいからか首を捻ってしまう。
とりあえずは大量にトウモロコシが必要になるので貯蔵庫からいーっぱい出してきてもらいました。
「では、このキビトの実を芯から全部切り離してボウルに入れる作業と、その実を魔法でペーストにする作業に分かれます」
半数以上が実をもいでもらい、僕やフィーさんが主だってペーストにする作業をすることにした。
「ふゅ!」
クラウは初めて見るトウモロコシに水色オパールの目をキラキラさせるので、生のままでも大丈夫なのを一本皮を剥いでから台の上に置いてあげた。
「一本だけだよ? かじって口に入る部分だけ食べれるから」
「ふゅ」
説明をしてあげれば、クラウはかぷっとトウモロコシにかぶりついて、甘くて美味しいのかどんどん実を食べていった。
さてさて、その間にもボウルに溜まっていくのがいくつかあったので、適量なのを一つ僕はまずそれに膜を張る魔法を使います。
「遮ぎれ、包み込め、閉じ込めろ。【光風】!」
右手に風の球、左手に光の球を出し、それを詠唱中に混ぜ込むように近づけさせ、ボウルの上にかざせばカーテンみたいに広がって半円のドームとなるのだ。
これ、意外と難しくて出来るのに一週間かかったんだよねー。
その膜が出来れば、あとはいつものフードプロセッサーばりの撹拌の魔法を使って中のトウモロコシをペーストにさせるよ。
これをトウモロコシをもぐ作業が終わるまでぜーんぶやるの。
「次は、水を弾く紙にこのペーストをピッツアの生地よりも薄ーく伸ばして」
スパベラのような金属のヘラでやればやり易いんだよね。
「これって端は整える?」
「しなくていいですよー?」
フィーさんと一緒に作業している途中、そう聞かれた。
してもいいけど、時間かかるし、最終的に砕いちゃうから問題はない。
「ふんふんふーん」
鼻歌を口ずさみながら作業してるのはファルミアさん。
クランチショコラ用のチョコを大量にテンパリングされてるんだ。もう一人、ライガーさんも手伝ってくれてるよ。
コックさん達は実をもぐのが終われば、マリウスさんを筆頭に僕やフィーさんの作業を見つつ同じように手伝ってくれてます。
「よーし、第一陣出来た!」
オーブンに入れれる数を準備し、天板に乗せてから予熱済みのオーブンに入れた。
「大きめの砂時計一個でとりあえず様子見しましょう」
前に僕が作った時はレンジだったから焼き目気にしなくて良かったけど、これは火のオーブンだもんね。
とりあえず、中火くらいで20分弱を目安に焼いてみるしかない。
もちろん、半分くらいになったら一度様子は見るけど。
「これ、乾燥させちゃえばいいんじゃないの?」
「それだと普通に作るんじゃ長すぎるんで、ある程度焼いてくっつかせて水分を飛ばすんです」
僕やファルミアさん出身の蒼の世界じゃ、魔術なんてないもの。代わりに電子や火力を活かした動力が発展していたからこう言うのが昔よりお手軽に出来ちゃうけどさ。
少しすると、水気はあるけど焼いたトウモロコシのいい香りがしてきたよ。
「香ばしい匂いですねー」
「キビト自体を焼くのはあんまりないんだけど、これはいい匂いだねー?」
ということは、焼きもろこしとか硬いコーンを使ったポップコーンとかもないのかね?
だけど、これだけあるってことはサラダやポタージュとかに使うのにあるのかな? 旬物ってファルミアさん言ってたし。
「ん。半分経ったんで開けてみますか?」
ミトンを忘れずにつけて蓋を開ければ、もあって蒸気が出てきたけどまだまだ半生のトウモロコシ生地があった。
それを手前と奥を交代させて中に戻す。
また10分程待って取り出せば丁度良い焼き加減になっていた。
「これを水分を限界まで抜き切って」
焼いてるのを忘れないようにしながら、出来た生地の水分を魔法で抽出する。
出てきた水は球となって浮かぶけど、必要ないから消失させちゃいます。
「カラッカラだね?」
「これでいいんです」
それを大雑把に折ってからボウルに入れて、両手を使って大体2㎝サイズに砕いていくよ。魔法じゃ小さくなり過ぎることがあるだろうから手の方がいいんだよね。
とりあえずはこれで出来上がり!
「これがシリアル?」
「砕いたからフレークって言うんですけど、こっち風に言えばキビトフレークでしょうか?」
フィーさんが一つ摘み上げ、じーっと見つめてからぽいっと口に入れた。
ザクザクといい音が聞こえてきて、出来栄えとしてはいいんじゃないかなと思った。
「あんまり甘くないや」
「これに牛乳をかけて浸して食べるんです」
「それと、ミーアが言ってたココルルと混ぜて冷やすんだっけ?」
「じゃ、これはココルル側に渡しましょう」
それからどんどん魔法とオーブンを繰り返してコーンフレークを大量生産していった。
「カティ、こっちも出来たわ」
クランチショコラはホワイトチョコも作ったようで、下がミルクチョコ上がホワイトチョコの二層で作られていた。
色付け用の食紅みたいなものはないからこれしかないもんね。だけど、美味しそう!
準備がすべて整えば、皆さんはお呼びしてあるので食堂に戻るよ。
◆◇◆
「なんだこりゃ?」
「穀物の乾き物?」
エディオスさんとユティリウスさんはコーンフレークが盛られた深皿を見るなり首を傾いだ。
「これはキビトの加工品なの。もちろん完全無添加、カティとフィーが主導で作ったものよ」
「どうやって食うんだ?」
サイノスさんも全然わかんないから質問された。
「果物や牛乳などがありますが、これを使いますの?」
アナさんはベリー類の小鉢とミルクピッチャーを見て察しがついたみたい。
「それと、このココルルとパルルを使った菓子はなんだ?」
セヴィルさんの目の前にあるクランチショコラを見て、セヴィルさんはあんまり食べたくなさそうにしていた。
まあ、甘いからしょうがないもんね。
「そっちは器にあるのをココルルとかで絡めて冷やしたものなの。ナルツより香ばしいから食べやすいはずよ?」
「ほぅ?」
「んで、食い方はアナが言ってたもんを使うのか?」
「そうですね。これ自体には砂糖は一切使ってないんで牛乳と果物と蜂蜜で甘味をつけるんです」
と言って、僕が見本にベリー類、牛乳を投入していく。
最初は蜂蜜なしで食べようっと。
「こんな感じで、あとはスプーンですくうんです」
説明を終えれば、それぞれ同じようにお皿に入れていく。クラウは僕がやってあげたけどね。
「どれ……?」
ザク、ザクッ!
「ん! 面白い食感だな?」
「キビトのは香ばしいけど、牛乳と果物と一緒に食べるとまた違う味になるね!」
「こんなんがあるんだな?」
ザクザク、ザクザクと食堂内にフレークを噛む音が響いていくよ。
「これは、食べやすいな?」
セヴィルさんも気に入ってくださったみたい。
僕も手作りコーンフレークと季節のベリー類盛りだくさんのシリアルに舌鼓をうっちゃうよ。蜂蜜もちょびっと足せばちょうどいいくらい。
「まあ、素晴らしいですわ。これは朝餉にも良さそうですわね?」
「リュシア、いいとこに気づいたわね。シリアルは私とカティがいた世界の異国では主に朝餉で出ることがほとんどなの」
「そうなのですか?」
朝ご飯にグラノーラやコーンフレークは海外もだけど、日本でも定番だからね。マリウスさん達に試食してもらった時にそれを伝えれば、『手軽で食べやすい』と言うことから中層や下層にも広めることが決まりそうになったよ。
「ミーア、このココルルとパルルの菓子も美味しいよ!」
「良い歯応えだ」
「飽きぬな」
「「うむ」」
四凶さんやユティリウスさんはクランチショコラの方にも移っていて、ザクザク、ひょいぱくって勢いで食べていた。
僕はクラウに食べさせながらもお皿に二人分確保し、一個を口に入れてみた。
「美味しい!」
「ふゅ!」
甘さ控えめのチョコに香ばしいフレークの食感が合わさってなんとも言えんです!
「手間はかかるけど、これはいいねぇ?」
「うめっ! ただココルルを固めたより食べやすいな? ゼルも食ってみろよ」
「あ、あぁ……」
ファルミアさんの説明で興味は持ったらしいけど、すすんでは食べなさそうだったセヴィルさんはとりあえず一番小さめのを手にしてかじった。
途端、おやっと瑠璃の瞳が丸くなる。
「たしかに香ばしいせいか、甘さが目立たないな? それに食感も悪くない」
「クランチショコラって言うんですよ」
「クランチ?」
「えーっと……ナルツやこう言ったシリアルを入れて歯応えをよくしたココルルのお菓子を言うんですけど」
それであってたかなぁ?
「ふゅ、ふゅ!」
クラウはクランチショコラも気に入ってカジカジかぶりついている。
「んー……お代わりしようっと!」
「俺も!」
ユティリウスさん、エディオスさん大食いの2人はコーンフレークをお代わりされました。
「これはたしかに朝餉のパンにも差し替えれるな」
と言ってサイノスさんもお代わり。四凶さん達も続かれたよ。
僕は一杯でお腹が結構満たされたのにすごいや。
「けど、こんな手軽で出来るならパフェとか食べたくなるわ」
「「「「パフェ?」」」」
「パフェですか!」
デザート王道を忘れてたね!
「なんだそれ?」
「生クリームやアイスってジェラートよりもう少し固めの氷菓子とか果物にココルルソースなんかをガラスの器に層になるように入れて盛り付けたものです。このキビトフレークは香ばしいから口直しとして使えるんですよ」
「綺麗でいいわよー? リュシアはきっと好きになるわ」
「まあ、そうですの?」
と言うことで、明日はパフェにしようと決まりました。
皆さんグラスに盛り付けられたパフェの存在感に圧倒されて、少し食べるのを躊躇ったけど結局は美味しく食べてくれました。
セヴィルさんには果物とフレークたっぷりのパフェにしたら喜ばれたよ。
日本人としてあれじゃないけど、むしろあれって海外からの輸入食材ではあるけど……どうしようもなく食べたくなるのは仕方ないと言うかなんと言うか。
(原料の食材はあったし、作れなくはないんだよね)
なら、料理人の端くれとして作るっきゃないよね?
「ふゅ?」
「あ、ごめんね。だんまりしちゃって」
お勉強もほどほどに終えてからふと思い立って数分。クラウはいい子いい子にしながら机の端で僕の勉強しているの覗きながらずっと待っててくれてたもんね。
「ふゅぅ……」
すると、クラウがぽんぽんとお腹を軽く叩いた。その後に盛大ではないけど、可愛らしいお腹の音も聞こえてくる。
今日も空きっ腹な虫の音は健在だね。
「よーし、普通なら一日以上かかるけど。魔法があるからなんとかなるね!」
あとは人手がいるので僕は応援を呼ぶべく部屋を後にした。
◆◇◆
「まあ、シリアルを作るの?」
「なーにそれ?」
場所はいつもの食堂。
説明を兼ねた打ち合わせにフィーさんとファルミアさんを呼んだのです。
「どーしても突発的に食べたくなっちゃいまして」
シリアル。
つまり、穀物の総称。そして、コーンフレークやグラノーラとかの加工食品って意味もある。
僕は急にそれを食べたくなっちゃったんです!
「ねぇ、どう言う食べ物なの?」
「えーと……トウモロコシ、じゃなくてキビトをペーストにして薄い生地にさせてから焼き目がつきにくいように焼くんです。それを水分が抜けきるまで約1日天日干ししたら、小さな破片にして牛乳をかけて食べるものなんですよ」
「ふぅん? あんまり甘くなさそうだね?」
「市販のは蜂蜜とか甘味料をコーティングさせてあったりするから、それが牛乳に溶けて甘くなるけど。手作りでは少し難しいから後で甘みを足すことが多いわね」
ファルミアさんの補足説明でますます食べたくなってしまうよ。
それが想像しにくいフィーさんやクラウはこてんと首を傾げちゃってるけど。
「とりあえず、カティアはそのシリアルって言うのを作りたいんだね?」
「あのザクザク感に飢えてるんです!」
「私も久しぶりに食べたくなるわねー……あれにテンパリングしたチョコを絡めて冷やしたお菓子も捨てがたいわ」
「ああ! それ忘れてました!」
「とにかく作ろうよー?」
なので、手洗いしてから厨房にレッツゴーです!
厨房は少し休憩タイムと言うか打ち合わせをされてて、僕らが来ると皆さんフィーさんとファルミアさんに最敬礼しました。
「これは妃殿下」
「ああ、楽にしててちょうだいな。今回もお菓子作りさせてもらうわ」
「そうですか。どのようなものを?」
「キビトを使った加工品なの。ちょうど旬物があるはずだから、作り置きしてれば朝餉のまかないにもいいんじゃないかしら?」
「菓子なのにまかないに使える、ですか?」
なんだろうとマリウスさん達も想像しにくいからか首を捻ってしまう。
とりあえずは大量にトウモロコシが必要になるので貯蔵庫からいーっぱい出してきてもらいました。
「では、このキビトの実を芯から全部切り離してボウルに入れる作業と、その実を魔法でペーストにする作業に分かれます」
半数以上が実をもいでもらい、僕やフィーさんが主だってペーストにする作業をすることにした。
「ふゅ!」
クラウは初めて見るトウモロコシに水色オパールの目をキラキラさせるので、生のままでも大丈夫なのを一本皮を剥いでから台の上に置いてあげた。
「一本だけだよ? かじって口に入る部分だけ食べれるから」
「ふゅ」
説明をしてあげれば、クラウはかぷっとトウモロコシにかぶりついて、甘くて美味しいのかどんどん実を食べていった。
さてさて、その間にもボウルに溜まっていくのがいくつかあったので、適量なのを一つ僕はまずそれに膜を張る魔法を使います。
「遮ぎれ、包み込め、閉じ込めろ。【光風】!」
右手に風の球、左手に光の球を出し、それを詠唱中に混ぜ込むように近づけさせ、ボウルの上にかざせばカーテンみたいに広がって半円のドームとなるのだ。
これ、意外と難しくて出来るのに一週間かかったんだよねー。
その膜が出来れば、あとはいつものフードプロセッサーばりの撹拌の魔法を使って中のトウモロコシをペーストにさせるよ。
これをトウモロコシをもぐ作業が終わるまでぜーんぶやるの。
「次は、水を弾く紙にこのペーストをピッツアの生地よりも薄ーく伸ばして」
スパベラのような金属のヘラでやればやり易いんだよね。
「これって端は整える?」
「しなくていいですよー?」
フィーさんと一緒に作業している途中、そう聞かれた。
してもいいけど、時間かかるし、最終的に砕いちゃうから問題はない。
「ふんふんふーん」
鼻歌を口ずさみながら作業してるのはファルミアさん。
クランチショコラ用のチョコを大量にテンパリングされてるんだ。もう一人、ライガーさんも手伝ってくれてるよ。
コックさん達は実をもぐのが終われば、マリウスさんを筆頭に僕やフィーさんの作業を見つつ同じように手伝ってくれてます。
「よーし、第一陣出来た!」
オーブンに入れれる数を準備し、天板に乗せてから予熱済みのオーブンに入れた。
「大きめの砂時計一個でとりあえず様子見しましょう」
前に僕が作った時はレンジだったから焼き目気にしなくて良かったけど、これは火のオーブンだもんね。
とりあえず、中火くらいで20分弱を目安に焼いてみるしかない。
もちろん、半分くらいになったら一度様子は見るけど。
「これ、乾燥させちゃえばいいんじゃないの?」
「それだと普通に作るんじゃ長すぎるんで、ある程度焼いてくっつかせて水分を飛ばすんです」
僕やファルミアさん出身の蒼の世界じゃ、魔術なんてないもの。代わりに電子や火力を活かした動力が発展していたからこう言うのが昔よりお手軽に出来ちゃうけどさ。
少しすると、水気はあるけど焼いたトウモロコシのいい香りがしてきたよ。
「香ばしい匂いですねー」
「キビト自体を焼くのはあんまりないんだけど、これはいい匂いだねー?」
ということは、焼きもろこしとか硬いコーンを使ったポップコーンとかもないのかね?
だけど、これだけあるってことはサラダやポタージュとかに使うのにあるのかな? 旬物ってファルミアさん言ってたし。
「ん。半分経ったんで開けてみますか?」
ミトンを忘れずにつけて蓋を開ければ、もあって蒸気が出てきたけどまだまだ半生のトウモロコシ生地があった。
それを手前と奥を交代させて中に戻す。
また10分程待って取り出せば丁度良い焼き加減になっていた。
「これを水分を限界まで抜き切って」
焼いてるのを忘れないようにしながら、出来た生地の水分を魔法で抽出する。
出てきた水は球となって浮かぶけど、必要ないから消失させちゃいます。
「カラッカラだね?」
「これでいいんです」
それを大雑把に折ってからボウルに入れて、両手を使って大体2㎝サイズに砕いていくよ。魔法じゃ小さくなり過ぎることがあるだろうから手の方がいいんだよね。
とりあえずはこれで出来上がり!
「これがシリアル?」
「砕いたからフレークって言うんですけど、こっち風に言えばキビトフレークでしょうか?」
フィーさんが一つ摘み上げ、じーっと見つめてからぽいっと口に入れた。
ザクザクといい音が聞こえてきて、出来栄えとしてはいいんじゃないかなと思った。
「あんまり甘くないや」
「これに牛乳をかけて浸して食べるんです」
「それと、ミーアが言ってたココルルと混ぜて冷やすんだっけ?」
「じゃ、これはココルル側に渡しましょう」
それからどんどん魔法とオーブンを繰り返してコーンフレークを大量生産していった。
「カティ、こっちも出来たわ」
クランチショコラはホワイトチョコも作ったようで、下がミルクチョコ上がホワイトチョコの二層で作られていた。
色付け用の食紅みたいなものはないからこれしかないもんね。だけど、美味しそう!
準備がすべて整えば、皆さんはお呼びしてあるので食堂に戻るよ。
◆◇◆
「なんだこりゃ?」
「穀物の乾き物?」
エディオスさんとユティリウスさんはコーンフレークが盛られた深皿を見るなり首を傾いだ。
「これはキビトの加工品なの。もちろん完全無添加、カティとフィーが主導で作ったものよ」
「どうやって食うんだ?」
サイノスさんも全然わかんないから質問された。
「果物や牛乳などがありますが、これを使いますの?」
アナさんはベリー類の小鉢とミルクピッチャーを見て察しがついたみたい。
「それと、このココルルとパルルを使った菓子はなんだ?」
セヴィルさんの目の前にあるクランチショコラを見て、セヴィルさんはあんまり食べたくなさそうにしていた。
まあ、甘いからしょうがないもんね。
「そっちは器にあるのをココルルとかで絡めて冷やしたものなの。ナルツより香ばしいから食べやすいはずよ?」
「ほぅ?」
「んで、食い方はアナが言ってたもんを使うのか?」
「そうですね。これ自体には砂糖は一切使ってないんで牛乳と果物と蜂蜜で甘味をつけるんです」
と言って、僕が見本にベリー類、牛乳を投入していく。
最初は蜂蜜なしで食べようっと。
「こんな感じで、あとはスプーンですくうんです」
説明を終えれば、それぞれ同じようにお皿に入れていく。クラウは僕がやってあげたけどね。
「どれ……?」
ザク、ザクッ!
「ん! 面白い食感だな?」
「キビトのは香ばしいけど、牛乳と果物と一緒に食べるとまた違う味になるね!」
「こんなんがあるんだな?」
ザクザク、ザクザクと食堂内にフレークを噛む音が響いていくよ。
「これは、食べやすいな?」
セヴィルさんも気に入ってくださったみたい。
僕も手作りコーンフレークと季節のベリー類盛りだくさんのシリアルに舌鼓をうっちゃうよ。蜂蜜もちょびっと足せばちょうどいいくらい。
「まあ、素晴らしいですわ。これは朝餉にも良さそうですわね?」
「リュシア、いいとこに気づいたわね。シリアルは私とカティがいた世界の異国では主に朝餉で出ることがほとんどなの」
「そうなのですか?」
朝ご飯にグラノーラやコーンフレークは海外もだけど、日本でも定番だからね。マリウスさん達に試食してもらった時にそれを伝えれば、『手軽で食べやすい』と言うことから中層や下層にも広めることが決まりそうになったよ。
「ミーア、このココルルとパルルの菓子も美味しいよ!」
「良い歯応えだ」
「飽きぬな」
「「うむ」」
四凶さんやユティリウスさんはクランチショコラの方にも移っていて、ザクザク、ひょいぱくって勢いで食べていた。
僕はクラウに食べさせながらもお皿に二人分確保し、一個を口に入れてみた。
「美味しい!」
「ふゅ!」
甘さ控えめのチョコに香ばしいフレークの食感が合わさってなんとも言えんです!
「手間はかかるけど、これはいいねぇ?」
「うめっ! ただココルルを固めたより食べやすいな? ゼルも食ってみろよ」
「あ、あぁ……」
ファルミアさんの説明で興味は持ったらしいけど、すすんでは食べなさそうだったセヴィルさんはとりあえず一番小さめのを手にしてかじった。
途端、おやっと瑠璃の瞳が丸くなる。
「たしかに香ばしいせいか、甘さが目立たないな? それに食感も悪くない」
「クランチショコラって言うんですよ」
「クランチ?」
「えーっと……ナルツやこう言ったシリアルを入れて歯応えをよくしたココルルのお菓子を言うんですけど」
それであってたかなぁ?
「ふゅ、ふゅ!」
クラウはクランチショコラも気に入ってカジカジかぶりついている。
「んー……お代わりしようっと!」
「俺も!」
ユティリウスさん、エディオスさん大食いの2人はコーンフレークをお代わりされました。
「これはたしかに朝餉のパンにも差し替えれるな」
と言ってサイノスさんもお代わり。四凶さん達も続かれたよ。
僕は一杯でお腹が結構満たされたのにすごいや。
「けど、こんな手軽で出来るならパフェとか食べたくなるわ」
「「「「パフェ?」」」」
「パフェですか!」
デザート王道を忘れてたね!
「なんだそれ?」
「生クリームやアイスってジェラートよりもう少し固めの氷菓子とか果物にココルルソースなんかをガラスの器に層になるように入れて盛り付けたものです。このキビトフレークは香ばしいから口直しとして使えるんですよ」
「綺麗でいいわよー? リュシアはきっと好きになるわ」
「まあ、そうですの?」
と言うことで、明日はパフェにしようと決まりました。
皆さんグラスに盛り付けられたパフェの存在感に圧倒されて、少し食べるのを躊躇ったけど結局は美味しく食べてくれました。
セヴィルさんには果物とフレークたっぷりのパフェにしたら喜ばれたよ。
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