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第51話 私はあなた

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 体中が……痛い、重い。

 私は……どうなってしまうのだろうか?

 珀瑛ハクエイ様方と同じように……精霊の体になれるのだろうか?

 痛みが起きてから……ずっと同じことを繰り返し考えているだけ。

 痛くて、痛くて。

 でも、これが珀瑛様方と同じようになれるのなら……と、また同じ考えに戻っていく。

 どれだけそれを繰り返していただろうか?

 目の奥が熱くなり、開けてみれば……真っ暗な闇の中に私はひとりで立っていた。


『……珀瑛様? 龍羽リュウハ様?』


 言葉を口にしても……音にはならない。何も聞こえない。

 私はどうしてしまったのだろうか?

 まだ少し痛む体の変化があった以外……あの花畑で皆様とご一緒してただけのはず。

 何かあったのだろうか? 私だけでなく、精霊の里でも。

 けど……焦る気持ちは出て来なかった。この場所に来ても……何故か安心しか浮かんで来ない。

 ひとまず、落ち着こうと息を整えていれば……目の前に、白い光が出てきて……何故か、私と同じ姿の女性となった。


『……私はあなた。あなたは、私』


 表情を一切変えずに、その人はその言葉を口にした。

 そして、手を出すように言われたのに……何故か従ってしまう。

 ゆっくり、お互いの手を重ねると……ひゃっと言いたいくらい冷たかった。


『……受け入れて。私はあなた……あなたは、私だから』


 また同じような言葉を口にされると……だんだんと、重ねていた手が熱くなってきた。そして、それが心地よく感じてきたのだ。


『……私は何に、なるんですか?』

『望む者に。あの方と一緒にいたいのなら、今のままでは不十分』

『……珀瑛様と同じに?』

『そう。あなたが共にありたいと願ったあの方のそばに』

『……いたい、です』


 私が望んだ。

 あの王家に囲われていた、言われるがままに財宝を召喚していた『聖女』ではない。

 倒れる前に、ステータスで見た……聖女の称号がまだ残っているのなら、私は今必要とされている里での聖女となりたい!

 それを望んだのだから……と、強く、目の前の人の手を握れば、その人は柔らかく微笑んでくれた。


『その望みを忘れないで。私達は、もう傀儡でも何でもない。ただのミラジェーンだから』

『……はい』


 その人からも手を強く握られたけど……痛みは感じない。

 私も同じように微笑んだと思うと……気づいたら、花畑の上で横になっていて、珀瑛様に手を強く握られていたのだった。


「ミラ!?」

「はく……えい、さま?」

「大丈夫か? どっか痛いんか!?」

「……いえ」


 倒れる前も、起きてからも。

 あれだけ、感じていた痛みは……もうどこにもなかった。
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