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第91話 新たな名前

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「……む」


 簡易体の私を抱えていらした翠雨スイウ様が、ふいに声を上げられたのだ。


『どうかなさいましたか?』

「……来られる」

『え?』


 何が……と言葉を続けようとすると、肌に何かピリピリしたものが伝わってきた。

 それは他の皆様も同じだったのか、騒ぎを止めて……何故か、上の方に顔を向けられた。

 私もそれを真似すると……『何かが』、上から降りてきたのだ。

 とても、神々しい……金の光が。


【皆、揃っておったか】


 なんと、素晴らしい声なのだろう。

 背中が、ゾワゾワするような……変に痺れる感じを得たが、嫌ではない。

 とても耳どおりがよく、心地も良い声だった。

 光は、だんだんと形を変えて……人のような形となった。

 珀瑛ハクエイ様よりも背が高く、美しい……私以上に輝かんばかりの、金の髪と瞳をお持ちの男性となったのだ。

 ただ、同じくらい……『畏れ』も感じたが。

 私がぽかんとしていると、他の皆様は地面にひざまずいたのでした。


「……神よ。お越しでしたか」


 龍羽リュウハ様がそのようにおっしゃるので、私は自分もひざまずきたかった。

 神自身が御降臨なさったのに、翠雨様が離してくださらないから……まだ抱っこのままだったから。

 しかし、神は気になされていないのか……ゆるく微笑まれた。

 その笑みだけで、少しときめいてしまうのは無理もないと思う。


【何、愛し子の【名】を決めたゆえに、参ったまでよ】

「……なるほど」


 私の……【名】は決まった?

 神自ら……お考えくださっていた?

 とんでもないことに、やはり自分で言葉を伝えたいと思ったが……御二方の間に割って入る勇気はないので、じっとしていることにした。


【……愛し子よ】


 と思っていたら、神が私と翠雨様の前に立たれた!?

 そして……翠雨様は私を地面に下ろしたのだった。

 少し、立っている足がおぼつかないが……簡易体でも出来るだけ、最敬礼をしようと体を動かした。


『……はい』

【この者ら……ひいては、精霊の里を救った者として、我が【名】を与えよう】

『……もったいない、お言葉です』


 直接お顔を見るなど、畏れ多くて無理なので……目は下の花々を見ることにしたが。

 神は気にせずに……私の頭を軽く手で叩かれたようだ。


【見通す者。全てを慈しむ者……そらと地の大精霊として、与えよう。…………鏡羅ミラと】


 その名前は、皆様にも呼ばれていた同じ呼び方なのに。

 手から伝わってくる……【字】が頭に刻まれていくと。

 私の体から……力があふれてきて。

 金の光に包まれるのだった。
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