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第102話 親娘②

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「お……かあ、さん……お、とさ」


 私達の目の前に、いきなり現れた靄。

 人の形となり、二人の男女となったのだけれど……私は、その二人に見覚えがあった。

 特に女性が……私の事を『娘』と言ったのだから、まず間違いない。

 簡易体から人型となり、二人の前に立つと……二人とも涙を浮かべたのだ。

 私が二人のことを呼ぶと、さらに大粒の涙を。


『『ミラ……!!』』


 二人は、私に抱きついてきた。

 靄だが、人間ではなくなった私をすり抜けることはない。

 温かさなども感じないが、力強さだけは本物。

 私はびっくりしたが……もう二度とないと思っていたのに、感情が込み上げてきて。

 私も二人に腕を回したのだ。


「お……かあ、さ。おとう……さ!」


 会いたかった。

 でも、この出会いは……私には残酷だった。

 大精霊になって、足りないものを補填出来たからこそ理解が出来る。

 人間でない、靄……つまり、霊体となった二人が……年も取らず若いあの頃と同じ姿でいることは。

 この二人は……死んでいるということだ。

 犯人は、間違いなく……私を二人から取り上げた、あの王族だろう。

 嬉しいのと悔しい涙……両方が私から流れた。

 しかし……彼らには神からの処罰が下されているので、もう良いのだ。

 天に召される前に……おそらく、神が二人をここに連れて来てくださったのだろう。

 私達が泣き続けていると……龍羽リュウハさまの隣に降り立つのがわかった。


『最期の最期。その二人の願いを叶えにやってきた』


 私達は最敬礼をしようとしたが……珀瑛ハクエイ様達はともかく、私達親娘は大丈夫だと手で制されてしまった。


「……神よ。私の……この二人は」

『お主が、あの愚か者らに拐かされた後に……既に身体はない。天上に行く前に、今一度お主と会うことを望んだのだ』

「…………はい」


 やはり、殺されていた。

 怨嗟が浮かびかけたが、母に首を横に振られ……髪を撫でられた。


『……貴女の今が幸せなら、私達は嬉しいわ』

『そうだとも。君はきちんと今生きている』


 そう言うと、二人とももう一度私を強く抱きしめてくれて……すぐに私から離れた。

 と言うことは、もう行くのだろう。


「…………来世を願います」

『『……ええ』』


 転生がどのようになるかはわからない。

 けれど……心残りである私と再会出来たのだから。

 神のお導きもあり、きっと良いものとなると思う。

 神は頷き、二人を連れて……短い逢瀬は終わりを迎えた。

 神が二人を……天上の世界へと連れて行ったのだ。


「……大丈夫やで、ミラ」


 空を見つめていると、珀瑛様が隣にいらして……私の頭を軽く撫でて下さった。


「あの二人は、きっと来世がある。お前をめちゃくちゃにした馬鹿な連中とは違う」

「……はい」


 珀瑛様にそう言っていただけると……酷く安心が出来て。

 私はまた涙をあふれさせたのだった。
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