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32、タケルとマキシム
しおりを挟むしばらく校庭のベンチで話していたタケルとレミーでしたが、暗くなる前に別れ、各々自分の寮の部屋へと帰って行きました。
「ただいま。マキシム、勉強は順調かい?」
「‥タケル、何だか機嫌が良いな。」
「アハハ、分かるかい?」
「‥レミーと何かあった?」
「うん、あった。」
そう言うと、タケルは学校の勉強道具を片付け、二人分のお茶を入れ始めました。その間、マキシムは黙ってタケルの動きを見守っていました。
「‥‥‥タケル‥。」
「はい、マキシム。熱いお茶が入ったよ。」
マキシムが何かを言いかけたのを遮って、タケルはマキシムに熱いお茶を差し出しました。
マキシムは一瞬顔をしかめました。
この熱いお茶は「緑茶」といって、渋みと甘みがあって美味しいのですが‥猫舌のマキシムは、一度舌を火傷して以来このお茶を苦手としていました。
「アハハハ、ごめん。前に熱いのを飲ませて火傷させちゃったから、苦手になっちゃったかな?」
タケルはそう言って、お茶に氷を数個入れました。
「‥濃いめにいれたお茶だから、氷を入れて冷やしても美味しいんだよ。」
相変わらずニヤニヤしているタケルを不審に思いながらも、マキシムは黙って氷の入ったお茶を手に取り、口に含みました。
「‥美味しい。」
「‥だろ?」
それにしても、タケルは何だかやたらと嬉しそうです。‥にも関わらず、何があったのかをちっとも話し始めない為、マキシムは段々と苛々してきました。
「タケル、何があったのかをさっさと教えてくれ。何だか苛々してきた。」
「アハハ、ごめん。‥‥レミーさんが僕に言ってくれた言葉が嬉しくて、何度も頭の中で反芻してたんだ。」
「‥レミーさんと何を話したのか、聞いても良いのかい?」
「ああ、勿論。‥‥実は今日レミーさんに僕の身の上を話したんだ。レミーさんは、僕が王族の血筋だと知っても、ちっとも僕を見る目を変えなかった。
それに‥レミーさん、僕のせいで他の女子生徒達に絡まれたりして、大変な思いをしたにも関わらず、これからもずっと僕と一緒にいてくれるって言ってくれたんだ。
こんなに嬉しい事ってないよね。‥もうさぁ、僕はレミーさんの事が凄く好きで、レミーさんの事を思い出すだけで、顔がにやけちゃうんだ。」
タケルはそう言って両手で顔を覆うと、一息ついてから、マキシムの方に向き合いました。
「‥マキシム、僕はレミーさんに振られると分かってても、もう一度告白をしたいし、もう少し頑張ってみたい。‥それにレミーさんとの思い出も欲しい。だから、君に遠慮をするのはもうやめる!」
「‥ああ、分かった。」
「何だよ。まさか‥応援するよ、とか言わないよな?」
「‥言わない。僕もレミーが好きだ。だから、いつかレミーに告白もするつもりだ。他の男にレミーをとられるのは嫌なんだって、やっと分かったんだ。」
マキシムの真剣な顔を見て、タケルは愉快そうに笑いました。
「‥良かった。君がまた怖気付いてしまうのかと思った。‥これでお互いに堂々とライバルを名乗れるな。」
「そうだな。お互い頑張ろうな!」
そう言ってタケルとマキシムは、固い握手を交わしました。
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