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第4話
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「あの、早速で申し訳ないのですが人払いをお願いしたい」
眉尻をさげてマイクスが頼むと、護衛も兼ねているユルガの眉が上がる。
「ユルガ、大丈夫だからそんな顔をするなよ」
「しかしボルトン様」
「控えの間にいてくれ」
ムスッとしたユルガがマイクスをひと睨みし、部屋から出るとくすりと含んで笑ったボルトンは、真面目な顔に戻してマイクスに謝罪した。
「すみません、不躾なやつで」
「いえ、うちの者も似たようなものです」
「あ、ああ」
平民の商会長と、少し前まで平民だった商会長である。内情がそう大きく変わるものでもなかった。
「ところで」
「本題に」
「ええ、どうぞ」
マイクスの口から語られたのは、ボルトンの度肝を抜くような依頼だった。
「はあっ?私がレインスル男爵の財産を預かると?」
「はい、是非お願いしたい」
「な、何を言ってるんですっ!正気ですかっ?私の名義にして私が逃げたらどうするんです?」
「貴方は逃げません!
ハア、こんなことを頼むなんてどうかしてるとは勿論よくわかっていますが、娘の婚約者が婿入りしてきたら、我が家の財産はあの男とやつの実家に食い潰されてしまう!それくらいならノルズ殿に持ち逃げされるほうが諦めがつきますよ」
ズーミーへの、ソネイル子爵への怒りが湧き上がり、マイクスは思わず吐き捨てた。
「落ち着いて」
「いや、とても落ち着けませんよ!あのバカ野郎が爵位を笠にきて、シューラにいくら金を使わせたか知ったらノルズ殿だって!・・婚約も共同事業も断るのだった・・・」
「やはり金遣いは相当に荒い?」
「っ!・・・ええ。恐ろしいほどですよ」
カッとなって思わずいらぬことまで口走ったあとで、マイクスは急に冷静になった。
「申し訳ない、つまらぬことを言いました」
「いえ、それほどに婚約者の素行・・・はっきりタカリと言いましょうか、深刻だということですね」
今度はマイクスは頷き返すに止める。
「しかしレインスル男爵も思い切ったことをお考えになりますな」
「いえ、信用のおける人に託す方が結果的には安心なのだと娘が申しまして」
「なるほど」
ボルトンはまだ突拍子もないマイクスからの依頼に決断しかねていたが、事情はもちろん理解していたし、想像以上に事態が悪いこともわかった。
マイクスの望みに応えられる者がそうはいないということも、長く商売をしてきたボルトンには痛いほどわかる。
「・・・・・こういうのはどうでしょう」
ふっと思いついたことを、マイクスに提案してみると思いの外反応がいい。
「これなら私も、仕事として割り切れますし」
「いいですね!私もただお願いするより心持ちもよろしいです」
「では契約内容を相談しましょう!」
眉尻をさげてマイクスが頼むと、護衛も兼ねているユルガの眉が上がる。
「ユルガ、大丈夫だからそんな顔をするなよ」
「しかしボルトン様」
「控えの間にいてくれ」
ムスッとしたユルガがマイクスをひと睨みし、部屋から出るとくすりと含んで笑ったボルトンは、真面目な顔に戻してマイクスに謝罪した。
「すみません、不躾なやつで」
「いえ、うちの者も似たようなものです」
「あ、ああ」
平民の商会長と、少し前まで平民だった商会長である。内情がそう大きく変わるものでもなかった。
「ところで」
「本題に」
「ええ、どうぞ」
マイクスの口から語られたのは、ボルトンの度肝を抜くような依頼だった。
「はあっ?私がレインスル男爵の財産を預かると?」
「はい、是非お願いしたい」
「な、何を言ってるんですっ!正気ですかっ?私の名義にして私が逃げたらどうするんです?」
「貴方は逃げません!
ハア、こんなことを頼むなんてどうかしてるとは勿論よくわかっていますが、娘の婚約者が婿入りしてきたら、我が家の財産はあの男とやつの実家に食い潰されてしまう!それくらいならノルズ殿に持ち逃げされるほうが諦めがつきますよ」
ズーミーへの、ソネイル子爵への怒りが湧き上がり、マイクスは思わず吐き捨てた。
「落ち着いて」
「いや、とても落ち着けませんよ!あのバカ野郎が爵位を笠にきて、シューラにいくら金を使わせたか知ったらノルズ殿だって!・・婚約も共同事業も断るのだった・・・」
「やはり金遣いは相当に荒い?」
「っ!・・・ええ。恐ろしいほどですよ」
カッとなって思わずいらぬことまで口走ったあとで、マイクスは急に冷静になった。
「申し訳ない、つまらぬことを言いました」
「いえ、それほどに婚約者の素行・・・はっきりタカリと言いましょうか、深刻だということですね」
今度はマイクスは頷き返すに止める。
「しかしレインスル男爵も思い切ったことをお考えになりますな」
「いえ、信用のおける人に託す方が結果的には安心なのだと娘が申しまして」
「なるほど」
ボルトンはまだ突拍子もないマイクスからの依頼に決断しかねていたが、事情はもちろん理解していたし、想像以上に事態が悪いこともわかった。
マイクスの望みに応えられる者がそうはいないということも、長く商売をしてきたボルトンには痛いほどわかる。
「・・・・・こういうのはどうでしょう」
ふっと思いついたことを、マイクスに提案してみると思いの外反応がいい。
「これなら私も、仕事として割り切れますし」
「いいですね!私もただお願いするより心持ちもよろしいです」
「では契約内容を相談しましょう!」
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