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24話
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レンラ子爵家にいた下女ダリアは、ナミリアの工房に移って、レレランに教えを請い始めていた。
最初レレランの技術を見たダリアの項垂れた姿を、ナミリアは忘れられない。
強気な性格のダリアが、打ちのめされたように呆然としたあと俯いてしまった。泣いている様にも見えたダリアだが、顔を上げたときは闘志を浮かべた目をして。
「こんな凄い方がいらっしゃるなんて!先生になってくださるんですよね?もうっ今っすぐっ!あたしに教えてくれませんか?あたしもあなたのようになりたいですっ!」
負けず嫌いな性格が良い方向に現れたダリアに、ナミリアも笑みを浮かべていた。
休みの日、ナミリアの元をローズリー・ワンドが訪ねて来た。
「五日ぶりですね、お元気にしていらっしゃいましたか」
にこやかなローズリーが土産だと言って、淡桃色の薔薇と焼き菓子を詰めたかごを手渡すと、ナミリアもそっと微笑み返す。
そのあとレンラ子爵家の庭で、ふたりで茶を楽しみながらいろいろな話をするのだ。
「この五日、ご令嬢は何をされ、どう過ごしていたのですか」
「え、ええ私はレース編みの講座に」
「あれ?また?でも毎日ではありませんよね?」
「いえ、毎日ですわ」
ローズリーの眉が寄った。
そう、編み物や刺繍は週に一日か二日の手習い事が普通である。
「随分熱心に習われているのですね」
「婚約者を亡くしてから、自分がどれほど頼りない存在かを思い知りましたの。最初は気分転換に始めたのですが、どうせやるなら講師の資格を取りたいと思うようになったのですわ」
ローズリーの反応が気になり、上目遣いでその顔を見上げると、興奮したような表情に変わっていた。
「素晴らしい!あなたはなんと素晴らしい女性なんだ!私は辛い経験を乗り越え、なお向上心を失うことのないナミリア様を心より尊敬いたします!」
叫ぶように言ってナミリアの前に跪き、手の甲に口吻をした。
紅く染まるナミリアを蕩けるように見つめたあと、俯いて呟く。
「ああ自分が恨めしいです。何故私は仮婚約を一年などと言ったのだと。私の心はすでにナミリア様のことでいっぱいだ!眠ろうとしても貴女を想い出すと胸が高鳴ってなかなか寝つけず、あっと言う間に目覚めれば貴女の夢を訪れたかったと悔やんでばかり。
・・・あっ!も、申し訳ない!許しも得ずにお名前を呼んでしまいました」
テリーエがこの場にいたら、笑い転げたかもしれないような浮いた台詞だが、ディルーストにはない甘い要素満載のローズリーに、ナミリアは心を揺さぶられていた。
「いえ、かまいませんわ。どうぞナミリアとお呼びになって」
その言葉にはちきれんばかりの笑顔でローズリーが答える。
「ありがとうっ!では私のこともローズリーとお呼びください」
ふたりの交流はこうして順調に進み始めていた。
最初レレランの技術を見たダリアの項垂れた姿を、ナミリアは忘れられない。
強気な性格のダリアが、打ちのめされたように呆然としたあと俯いてしまった。泣いている様にも見えたダリアだが、顔を上げたときは闘志を浮かべた目をして。
「こんな凄い方がいらっしゃるなんて!先生になってくださるんですよね?もうっ今っすぐっ!あたしに教えてくれませんか?あたしもあなたのようになりたいですっ!」
負けず嫌いな性格が良い方向に現れたダリアに、ナミリアも笑みを浮かべていた。
休みの日、ナミリアの元をローズリー・ワンドが訪ねて来た。
「五日ぶりですね、お元気にしていらっしゃいましたか」
にこやかなローズリーが土産だと言って、淡桃色の薔薇と焼き菓子を詰めたかごを手渡すと、ナミリアもそっと微笑み返す。
そのあとレンラ子爵家の庭で、ふたりで茶を楽しみながらいろいろな話をするのだ。
「この五日、ご令嬢は何をされ、どう過ごしていたのですか」
「え、ええ私はレース編みの講座に」
「あれ?また?でも毎日ではありませんよね?」
「いえ、毎日ですわ」
ローズリーの眉が寄った。
そう、編み物や刺繍は週に一日か二日の手習い事が普通である。
「随分熱心に習われているのですね」
「婚約者を亡くしてから、自分がどれほど頼りない存在かを思い知りましたの。最初は気分転換に始めたのですが、どうせやるなら講師の資格を取りたいと思うようになったのですわ」
ローズリーの反応が気になり、上目遣いでその顔を見上げると、興奮したような表情に変わっていた。
「素晴らしい!あなたはなんと素晴らしい女性なんだ!私は辛い経験を乗り越え、なお向上心を失うことのないナミリア様を心より尊敬いたします!」
叫ぶように言ってナミリアの前に跪き、手の甲に口吻をした。
紅く染まるナミリアを蕩けるように見つめたあと、俯いて呟く。
「ああ自分が恨めしいです。何故私は仮婚約を一年などと言ったのだと。私の心はすでにナミリア様のことでいっぱいだ!眠ろうとしても貴女を想い出すと胸が高鳴ってなかなか寝つけず、あっと言う間に目覚めれば貴女の夢を訪れたかったと悔やんでばかり。
・・・あっ!も、申し訳ない!許しも得ずにお名前を呼んでしまいました」
テリーエがこの場にいたら、笑い転げたかもしれないような浮いた台詞だが、ディルーストにはない甘い要素満載のローズリーに、ナミリアは心を揺さぶられていた。
「いえ、かまいませんわ。どうぞナミリアとお呼びになって」
その言葉にはちきれんばかりの笑顔でローズリーが答える。
「ありがとうっ!では私のこともローズリーとお呼びください」
ふたりの交流はこうして順調に進み始めていた。
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