勇者に執着されて絶望した双剣の剣聖は、勇者の息子の黒髪王子に拘束されて絆される

緑虫

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16 アルバン※

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 アルバンの部屋で果実酒をカパカパ飲んでいると、それまでにこにことしていたアルバンが言いにくそうに声をかけてきた。

「あのさ、ファビアン……」
「ん?」

 俺が顔を向けると、アルバンは自身の手元をじっと見ている。様子がおかしい。

「……どうした? 何かあったか?」
「実は俺、配置換えが決まって……」
「え!? どこに!?」

 城の中なら会えるけど、城の外に行かれたら簡単には会えなくなってしまう。俺の唯一の憩いの場がなくなってしまうことに、俺は衝撃を隠せなかった。

 すると、帰ってきた答えは予想だにしないものだった。

「国境の前線に配置されることになった……」
「……ええっ!?」

 その時まで俺は知らなかったけど、オリヴィアを事実上ヒライム王国に奪われた聖国マイズが、『奪われた聖女を奪還する』名目でヒライム王国に戦争を仕掛けてしまったらしい。

 アルバンが、涙目になる。

「前線はかなり戦いが激しいらしくて……俺、生きて帰れないかもしれない」
「アルバン……」

 何と言ったらいいのか分からなくなって、俺は立ち上がるとアルバンの頭を腕の中に抱き寄せた。髪の毛に頬を当てると、……温かい。

 腕の中のアルバンが、俺の胸の中で泣き顔になる。

「ファビアンと離れたくない……っ! 俺、ファビアンのことが好きなんだ!」
「えっ」

 嘘。アルバンて俺のことが好きだったのか? ……俺もアルバンのことはちっとも嫌いじゃないけど、色恋的な目では見てなかったので驚いた。

 アルバンが、震えながら俺の腰に腕をゆっくりと回す。

「出発は来週だって……。だから、ファビアン、お願いだ……!」

 すり、とアルバンが俺の胸に頬擦りする。俺は目を見開くばかりで、何も言えない。

「……ファビアンの温度を覚えておきたい」
「アルバン……」

 熱の籠った目で見つめられて、ズクンと俺の下半身が反応し始める。それを腹筋で感じ取ったアルバンが、期待に満ちた顔を俺に向けた。

「ファビアン……いいのか?」

 俺は、懇願に弱いんだ。特に相手が大切だと思う人だと余計に。



「あ……っ! あっ、まっ、――んんんっ!」
「ファビアン、ファビアン……!」

 四つん這いになってアルバンにケツを突き出した俺を、アルバンが後ろから激しく突き上げる。これまでロイクの雄しか受け入れたことのなかった俺の穴は、久々に雄を受け入れて喜びに痙攣していた。――滅茶苦茶気持ちいい。

 アルバンのアルバンは大きさはロイクほどはないけど、ガチガチに固かった。アルバンのカリが俺のいいところを擦る度に、触れられてない俺の雄から白濁した液体がトロトロと流れ出る。

「信じられない……っファビアンが俺に抱かれてるなんてっ」
「あっんっんっ」

 パンパンと筋肉質な腰を激しく俺のケツに打ち付けながら、恍惚の表情で俺を見つめ続けるアルバン。俺のことが好きだってアルバンの全部が言ってて、ずっとずっと寂しかった俺はアルバンの温もりで心も身体も満たされていた。

 でも、もっと欲しい。理性が全部吹っ飛んじゃうくらい、滅茶苦茶に愛されて溶かされたい。

「アルバンッ! ま、前っ……触って……っ!」

 上半身を捻って、アルバンの右手を俺の股間に誘導する。アルバンは興奮した顔を嬉しそうに綻ばせながら、俺の背中に貼り付いて俺の雄を優しく扱き出した。

「あ……んっ」

 甘い吐息が漏れると、アルバンの剛直が重量を増す。

「ファビアン、顔が見たい……っ」
「ん……っ」

 振り返りながら、舌をれろ、と突き出した。アルバンはキュンとした顔になると、俺の舌に吸い寄せられるように顔を近付ける。互いの舌先をチロチロと絡めた後、俺の方からかぷりとアルバンの口を奪った。

 熱い口腔内に舌を突っ込み、存分に人肌を味わう。薄目を開けると、アルバンは熱いまなざしで俺を見つめていた。

 ちゅぱ、と口を離す。二人の舌から銀糸が伸びて、中ほどでぷつりと切れた。

 もっともっと熱が欲しい。荒い息を吐きながら、アルバンにねだる。

「……正面からヤッてよ。激しいやつがいいな」
「……ファビアン!」

 アルバンは雄をずぼりと抜くと、くるりと乱暴に俺をひっくり返した。俺がニヤけると、「煽りすぎ」と囁きながら、まだ広く開いたままの俺の穴に再びアルバンの雄を突っ込む。

「……んはあ……っ! アルバン、気持ちいい……っ」
「ファビアン、好きだ、大好きだ……!」
「うん、嬉しい、アルバン……!」

 アルバンの部屋は狭い。俺とアルバンから発する雄臭い匂いがあっという間に充満して、部屋はとんでもない匂いになっていた。

 アルバンの首を抱いて引き寄せ、噛み付くような口づけを交わす。アルバンは俺をぐちょぐちょと突き続けながら、中に射精した。でもそのまま動き続ける。股の間を、引き出された生温い粘っこい液体が垂れ落ちていった。

「あっんっ、アルバン、アルバン……ッ」
「やばい、止まらない……!」
「へへ、いいよ、俺の腰壊しちゃってよ……!」

 そうしたら、明日は騎士団に行かなくて済むかもしれない。ロイクはここのところ忙しいから、俺が一日サボったところで気付きはしないだろうし。

 は、は、と甘い息を俺に吹きかけているアルバンが、物欲しそうに囁く。

「……ねえ、痕つけていい?」
「え? 痕ってなに?」

 本当に何のことやら分からず尋ねると、アルバンが嬉しそうに目を細めた。

「ファビアンは知らない? 口で吸って痕を付ける鬱血痕っていうのがあるんだ」
「ふうん……?」

 やっぱり分からず小首を傾げると、アルバンは俺を揺さぶり続けながら、俺のふっくらとした胸の筋肉の上に唇を当てる。

 と、いきなり勢いよく吸い出した。

「イタッ」

 思わず仰け反っても、兵士のアルバンの力に押さえつけられたままだ。アルバンはジュッと音を立ててからおもむろに唇を離すと、俺の胸には赤紫色の小さな花びらみたいな痣ができていた。

 アルバンが上目遣いで俺を見る。

「こういうの。もしかして初めて?」

 ロイクは俺にこんな痕を付けたことはなかった。考えてみたら、怪我をしたら上半身裸になるし、水浴びがクロードと一緒になれば全身を見られていた。だとすると、もしかしたらロイクはあえて俺に痕を付けないようにしていたのかもしれない。

 バレない為にだ。勇者らしくある為? 王太子になる為? 分からないけど、――ふうん、というのが俺の今の正直な気持ちだった。

「ファビアン?」

 不安そうなアルバンの顔に、俺は思考を今この時に引き戻す。もうあんな男のことは思い出したくない。今俺を抱いてくれているのはアルバンなんだから。

 俺はにっこりと笑うと、アルバンに言った。

「うん。初めてだからびっくりしちゃったけど、見える所以外なら付けていいよ」
「本当か!?」

 アルバンが、子供みたいな無邪気な笑顔になる。なんて嬉しそうな顔をするんだろう。俺の心は幸せで一杯になった。アルバンが喜ぶなら、俺も嬉しい。

「でも、その代わり俺もアルバンに付けたいな」
「ファビアン……! ああ、もう山のように付けて!」

 満面の笑みのアルバンが、緩く動かしていた腰を再び激しく動かし始める。

「あっ! いきなり激し……あっ、あっ、あっ……!」
「ファビアン、ファビアン!」

 アルバンにぐちゃぐちゃに抱き潰されながら、俺はひとつの考えを思いついていた。大切なアルバンを、前線で失いたくはない。

 ――アルバンの出立前に説得しないとな。

 俺は快楽で真っ白に染まっていく頭で考えながら、甘いよがり声を出し続けたのだった。
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