34 / 89
34 未来を夢みる※
しおりを挟む
前線へやってきて、八ヶ月が経った。
ようやくヒロイム王国全土から集められた兵が砦に集結した為、いよいよ明日は砦を出、聖国マイズへと進軍していくことになる。
実は少し前まで、軍の総司令官であるロイクが前線に来て号令をかけるのではという噂もあった。
俺はロイクに会いたくなくて、あいつが来ませんようにと毎日祈り続けた。アルバンを殺すように命じたかもしれないロイクの顔を見た瞬間、殴りかかってしまう自信しかなかったからだ。そしてそれは、自殺行為に等しい。
俺とロイクの間にあった事実を知るのは、俺たち以外にはセルジュのみ。周りは皆、ご立派な勇者で王太子のロイクの味方をするに決まっている。
俺がロイクに逆らってもセルジュは当然俺の味方をするだろうから、俺とセルジュが引き離されている間にセルジュに手を下されてしまう危険は避けなければならなかった。
幸い、俺の祈りが通じたのか、ロイクは前線まで来ることはなかった。どうやらオリヴィアの体調がよくないらしい。
オリヴィアは、妊娠し安定期に入ったにも関わらず、悪阻が酷くて寝込んでいるんだとか。彼女の元を離れるのは忍びないと、ロイクは俺に全軍出撃の号令をかけるように伝書で依頼してきやがった。
「本当あいつ、俺を都合よく使うよな」
「会わずに済んでよかったと思いましょう」
苦笑するセルジュの渋い顔は、俺の腕の中にある。俺はセルジュの顔を見て、汗だくの頬を緩ませた。そうだ、今はあいつのことは忘れたい。眼の前にいるのはセルジュなんだから。
俺は今、胡座を掻いて座っているセルジュに向き合って腰を上下に動かしている真っ最中だった。
敵国に入ったら、次はいつゆっくりと休めるか分かったもんじゃない。絶対今夜は抱かれるんだと主張する俺の我儘に応えて、セルジュは晩飯後すぐから俺を抱いてくれていた。
「まあなー。セルジュを見て『もしやこいつ』とか思われるのも嫌だもんな……んっ」
と、俺の胸に腕を回したセルジュが、俺の胸の突起をちゅぷりと口に含む。
しばらく吸った後、舌先で転がしながら、セルジュは俺を上目遣いの熱が込められた目で見た。セルジュが俺を見る目は、いつだって火傷しそうなくらいに熱い。
「……ファビアン様を前にして、何も想っていない顔など今更できません。ファビアン様に執着しているあの方なら、私をひと目見て私の想いを見抜く可能性は高いですしね」
「セルジュ……」
セルジュの両腕が俺の膝裏に通されたかと思うと、両手で俺のケツを鷲掴みにして、いきなり持ち上げた。宙吊り状態になった俺を、膝立ちしたセルジュが下からガンガン突き始める。
あまりの快感に、俺はしがみつくだけで精一杯だった。
「んはっ! あっ、やば、ひんっ、セルジュ、セルジュ……!」
「私はっ、ファビアン様のお側をっ、何があろうと離れませんっ!」
ハッハッと荒い息は繰り返しているものの、俺を持つ腕は震えもしない。さすがは騎士団長だ。
「あっ、激し、んんっ、――はあっ!」
「ファビアン様、愛しております……!」
ぐちょぐちょと卑猥な音が天幕内に鳴り響く中、俺はセルジュの唇に自分のそれを重ねた。すぐにセルジュの口が開いて、俺から伸ばされた舌を食む。
「んふ……っんん……っ」
気持ちよくて脳みそが蕩けていって、俺は思ったままの言葉をうわ言のように呟いていった。
「セルジュ、好き、俺も好き、愛してる……っ」
すると、セルジュがハッと息を呑む。グズ、と鼻を鳴らすと、これまでよりも早く俺を突き始めた。
「ああ、このセルジュ、もういつ死んでも悔いはございません……っ」
「死ぬなってば」
「はは……そうでしたね」
セルジュの溢れ出した涙を唇で掬うと、塩っぱい。
愛されてるなあ。多幸感が俺の中に満ちていった。
勿論、アルバンを二度も失ったすぐには、俺の心にセルジュを愛すだけの余裕は残されていなかった。だけどセルジュはあの日の誓いの通り、少しずつ俺の心の空虚を献身的な愛で埋めていってくれたのだ。
アルバンを愛していた俺を丸ごとそのまま愛してくれたセルジュを、いつしか俺は大切な恋人として愛するようになっていた。
セルジュに揺さぶられながら、俺は二人の未来を語る。
「なあ、この戦いが終わったらさ、王都のアルバンの墓参りに行きたい」
「お供します」
セルジュの即答に、俺は喜びの笑い声と共に嬌声を漏らした。
「ん……っ、そうしたらさ、騎士団の特別顧問は辞職するんだ」
「では私も辞職します」
しちゃうんだ。
「そうしたら、今度こそ故郷に戻って、両親と昔の仲間の墓を立てるんだ」
「勿論お供します。まさか置いていこうなんて考えてないですよね?」
「へへ……嬉しいな。……あっ、あっ、あっ!」
その頃には、ロイクにも可愛い子供が生まれているだろう。だから今度こそ、きっと俺への執着は終わりを迎える筈だ。
下からの熱杭の突き上げに、俺はどんどん高みへと登っていく。
「俺、自由になってセルジュと笑顔で暮らすんだ……っ」
「ファビアン様、お供します……!」
セルジュは俺の龍の痣が巻き付く二の腕を力強く掴むと、俺がイクと同時に俺の中に熱を放ったのだった。
――そして翌日、俺たちは聖国マイズへと進軍した。
ようやくヒロイム王国全土から集められた兵が砦に集結した為、いよいよ明日は砦を出、聖国マイズへと進軍していくことになる。
実は少し前まで、軍の総司令官であるロイクが前線に来て号令をかけるのではという噂もあった。
俺はロイクに会いたくなくて、あいつが来ませんようにと毎日祈り続けた。アルバンを殺すように命じたかもしれないロイクの顔を見た瞬間、殴りかかってしまう自信しかなかったからだ。そしてそれは、自殺行為に等しい。
俺とロイクの間にあった事実を知るのは、俺たち以外にはセルジュのみ。周りは皆、ご立派な勇者で王太子のロイクの味方をするに決まっている。
俺がロイクに逆らってもセルジュは当然俺の味方をするだろうから、俺とセルジュが引き離されている間にセルジュに手を下されてしまう危険は避けなければならなかった。
幸い、俺の祈りが通じたのか、ロイクは前線まで来ることはなかった。どうやらオリヴィアの体調がよくないらしい。
オリヴィアは、妊娠し安定期に入ったにも関わらず、悪阻が酷くて寝込んでいるんだとか。彼女の元を離れるのは忍びないと、ロイクは俺に全軍出撃の号令をかけるように伝書で依頼してきやがった。
「本当あいつ、俺を都合よく使うよな」
「会わずに済んでよかったと思いましょう」
苦笑するセルジュの渋い顔は、俺の腕の中にある。俺はセルジュの顔を見て、汗だくの頬を緩ませた。そうだ、今はあいつのことは忘れたい。眼の前にいるのはセルジュなんだから。
俺は今、胡座を掻いて座っているセルジュに向き合って腰を上下に動かしている真っ最中だった。
敵国に入ったら、次はいつゆっくりと休めるか分かったもんじゃない。絶対今夜は抱かれるんだと主張する俺の我儘に応えて、セルジュは晩飯後すぐから俺を抱いてくれていた。
「まあなー。セルジュを見て『もしやこいつ』とか思われるのも嫌だもんな……んっ」
と、俺の胸に腕を回したセルジュが、俺の胸の突起をちゅぷりと口に含む。
しばらく吸った後、舌先で転がしながら、セルジュは俺を上目遣いの熱が込められた目で見た。セルジュが俺を見る目は、いつだって火傷しそうなくらいに熱い。
「……ファビアン様を前にして、何も想っていない顔など今更できません。ファビアン様に執着しているあの方なら、私をひと目見て私の想いを見抜く可能性は高いですしね」
「セルジュ……」
セルジュの両腕が俺の膝裏に通されたかと思うと、両手で俺のケツを鷲掴みにして、いきなり持ち上げた。宙吊り状態になった俺を、膝立ちしたセルジュが下からガンガン突き始める。
あまりの快感に、俺はしがみつくだけで精一杯だった。
「んはっ! あっ、やば、ひんっ、セルジュ、セルジュ……!」
「私はっ、ファビアン様のお側をっ、何があろうと離れませんっ!」
ハッハッと荒い息は繰り返しているものの、俺を持つ腕は震えもしない。さすがは騎士団長だ。
「あっ、激し、んんっ、――はあっ!」
「ファビアン様、愛しております……!」
ぐちょぐちょと卑猥な音が天幕内に鳴り響く中、俺はセルジュの唇に自分のそれを重ねた。すぐにセルジュの口が開いて、俺から伸ばされた舌を食む。
「んふ……っんん……っ」
気持ちよくて脳みそが蕩けていって、俺は思ったままの言葉をうわ言のように呟いていった。
「セルジュ、好き、俺も好き、愛してる……っ」
すると、セルジュがハッと息を呑む。グズ、と鼻を鳴らすと、これまでよりも早く俺を突き始めた。
「ああ、このセルジュ、もういつ死んでも悔いはございません……っ」
「死ぬなってば」
「はは……そうでしたね」
セルジュの溢れ出した涙を唇で掬うと、塩っぱい。
愛されてるなあ。多幸感が俺の中に満ちていった。
勿論、アルバンを二度も失ったすぐには、俺の心にセルジュを愛すだけの余裕は残されていなかった。だけどセルジュはあの日の誓いの通り、少しずつ俺の心の空虚を献身的な愛で埋めていってくれたのだ。
アルバンを愛していた俺を丸ごとそのまま愛してくれたセルジュを、いつしか俺は大切な恋人として愛するようになっていた。
セルジュに揺さぶられながら、俺は二人の未来を語る。
「なあ、この戦いが終わったらさ、王都のアルバンの墓参りに行きたい」
「お供します」
セルジュの即答に、俺は喜びの笑い声と共に嬌声を漏らした。
「ん……っ、そうしたらさ、騎士団の特別顧問は辞職するんだ」
「では私も辞職します」
しちゃうんだ。
「そうしたら、今度こそ故郷に戻って、両親と昔の仲間の墓を立てるんだ」
「勿論お供します。まさか置いていこうなんて考えてないですよね?」
「へへ……嬉しいな。……あっ、あっ、あっ!」
その頃には、ロイクにも可愛い子供が生まれているだろう。だから今度こそ、きっと俺への執着は終わりを迎える筈だ。
下からの熱杭の突き上げに、俺はどんどん高みへと登っていく。
「俺、自由になってセルジュと笑顔で暮らすんだ……っ」
「ファビアン様、お供します……!」
セルジュは俺の龍の痣が巻き付く二の腕を力強く掴むと、俺がイクと同時に俺の中に熱を放ったのだった。
――そして翌日、俺たちは聖国マイズへと進軍した。
21
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
冷淡彼氏に別れを告げたら溺愛モードに突入しました
ミヅハ
BL
1年前、困っていたところを助けてくれた人に一目惚れした陽依(ひより)は、アタックの甲斐あって恩人―斗希(とき)と付き合える事に。
だけど変わらず片思いであり、ただ〝恋人〟という肩書きがあるだけの関係を最初は受け入れていた陽依だったが、1年経っても変わらない事にそろそろ先を考えるべきかと思い悩む。
その矢先にとある光景を目撃した陽依は、このまま付き合っていくべきではないと覚悟を決めて別れとも取れるメッセージを送ったのだが、斗希が訪れ⋯。
イケメンクールな年下溺愛攻×健気な年上受
※印は性的描写あり
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる