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〖第17話〗
しおりを挟むどうしてこうなった。何処で間違った?声をあげて泣きたかったけれど、どうしてだろう涙がでない。
母にも父にも、もうずっと会っていない。母の世話をしてくれる叔母に定期的にお金を振り込んでいるが具合がどうかも解らない。
あの家とは縁を切った。写真を貰ってきた時を最後に、あの家に彰は行っていない。
彰は何かあると自分に向かって強く言う。
『落ち着け』
そうワンクッション置くと、大概のことは何とかなる。けれど彼女と別れる時、色々言われてきた。
──『彰くん、冷たいよ。私は必要ないの?彰くんのためなら何でもするよ?彰くんは私を信用してない!』
──『あきくん、何で焼きもちやいてくれないの?私のこと好きじゃないの?あきくんは皆、どうでもいいんだ!』
──『アキ、私のこと好きじゃないんだね。ううん、誰も好きになれないんでしょ!』
彼女たちに言われた言葉は、痛かった。飲みかけの珈琲に鉄の味が混ざったように感じた。『人として欠けている』『人として何か足りない』とも言われた。
彰も何となく、解っている。変わりたいと思った。でも、変われずにいる。
最近越したばかりの首都圏の郊外。彰はやっと安住の地を手に入れた。
小さくお洒落なアパートメント。他人行儀な二時間ドラマの撮影場所。要は事故物件だ。
タカラは夜中も全部の部屋の電気をつけていた。
彰は全く怖くない。そんなことより、生きている人間が、一番怖いと、漠然とそう思ってしまうのだ。
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