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14.人気者の伯爵
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引っ越し先は、南西にある国内でも有数の保養地で観光地だった。
今までいた場所よりもずっと天気が良く人の行き来が多い街だったので、しょげていたオーロラもすっかり新しい街に目を奪われていた。
「早く街に遊びに行きたいわ」
「駄目ですよ、まだ旦那様がこちらにいらしてませんから」
オーロラとポピーのそんな会話を聞きながらエヴァはせっせとオーロラの部屋を整えていく。
以前の屋敷よりも小さくなってしまったが、太陽がさんさんと降り注ぐ室内は明るくて綺麗だった。
「ポピー、お兄様はいついらっしゃるの?」
「さぁ、2、3日か、もしかしたら一週間後かもしれませんね」
「そんなぁ」
屋敷を貸す人はアルバートの知人だったので、屋敷と領地の案内等をしてから来るのだ。
数日後、アルバートがやって来ると、オーロラは待ってましたとばかりに街歩きに兄を誘った。
珍しくウォートレット夫人も一緒に出掛けた。
ポピーが言っていたように、こちらの暖かい気候は奥様の精神にも良い影響を与えているのかもしれないと思った。
エヴァは密かに奥様と霊媒師の縁が切れたようで良かったとも思っている。
――ああいうのは、やめられなくなっちゃうのよね。
エヴァもカード占いをしていたからよくわかるのだ。
今は主人一家の留守ののんびりとした雰囲気の中、一休みをしている最中だった。
エヴァは一足お先に、使用人仲間とのお茶を切り上げると、本を持って屋敷の中を歩いていた。
アルバートが屋敷の本は好きに読んでいいよと言ってくれたのだ。
書斎から面白そうな本を選んで、裏庭で読もうかと思っている。
すると前に手紙の束を抱えた執事が歩いているのが見えた。
「すごい量のお手紙ですね」
「ええ、奥様宛もありますが、旦那様への招待状のようですね」
エヴァのびっくりした顔をみて頬を緩める。
「向こうのお屋敷ではほとんどありませんでしたが、こちらではお食事も頻繁にお誘いされるかもしれませんね。もちろん、こちらも主催することになりますから忙しくなりますよ」
そう言うと、執事は手紙を持って二階へと階段を登って行った。
帰って来たオーロラは朝のご機嫌はどこへ行ってしまったのやら、以前のようなぶすっとした顔になっていた。
「どうされたんですか?」
「聞いてよエヴァ、お兄様ったら知らない女に色目を使われてるのよ」
「まぁ、お嬢様……」
「女じゃなくて女性ね! わかっててわざとよ、わざと。腹が立っている時くらいいいじゃない」
エヴァは少し考えると頷いた。
「そうかもしれません。腹が立っている時ぐらい、言葉が汚くなってもしかたないですよね」
「エヴァさん、なんてことを言うんですか!」
パッと顔を明るくしたオーロラとは対照的に、ポピーは顔を青くしている。
「じゃあいらだった時はどう言えばいいんです? 心の中にためておくなんてできませんよ、いつか溢れ出てしまいます。その前に小さく空気を抜いておくべきでしょう?」
「それはそうですが……。でも聞こえたら大変ですから」
「じゃあ聞こえても問題なければいいの?」
オーロラが無邪気に尋ねる。
そこでエヴァも言葉を重ねる。
「外国語ならわからないんじゃないですか?」
「それいいわね! ねぇ、ポピーは外国語に詳しかったでしょ? 今度授業で教えて頂戴よ」
「う……、お嬢様の学習意欲が高まったのは嬉しいのですが、悪口を教えるというのはなんとも……」
ポピーが真面目な顔で悩んでいる。
エヴァとオーロラは顔を見合わせて笑いあったのだった。
今までいた場所よりもずっと天気が良く人の行き来が多い街だったので、しょげていたオーロラもすっかり新しい街に目を奪われていた。
「早く街に遊びに行きたいわ」
「駄目ですよ、まだ旦那様がこちらにいらしてませんから」
オーロラとポピーのそんな会話を聞きながらエヴァはせっせとオーロラの部屋を整えていく。
以前の屋敷よりも小さくなってしまったが、太陽がさんさんと降り注ぐ室内は明るくて綺麗だった。
「ポピー、お兄様はいついらっしゃるの?」
「さぁ、2、3日か、もしかしたら一週間後かもしれませんね」
「そんなぁ」
屋敷を貸す人はアルバートの知人だったので、屋敷と領地の案内等をしてから来るのだ。
数日後、アルバートがやって来ると、オーロラは待ってましたとばかりに街歩きに兄を誘った。
珍しくウォートレット夫人も一緒に出掛けた。
ポピーが言っていたように、こちらの暖かい気候は奥様の精神にも良い影響を与えているのかもしれないと思った。
エヴァは密かに奥様と霊媒師の縁が切れたようで良かったとも思っている。
――ああいうのは、やめられなくなっちゃうのよね。
エヴァもカード占いをしていたからよくわかるのだ。
今は主人一家の留守ののんびりとした雰囲気の中、一休みをしている最中だった。
エヴァは一足お先に、使用人仲間とのお茶を切り上げると、本を持って屋敷の中を歩いていた。
アルバートが屋敷の本は好きに読んでいいよと言ってくれたのだ。
書斎から面白そうな本を選んで、裏庭で読もうかと思っている。
すると前に手紙の束を抱えた執事が歩いているのが見えた。
「すごい量のお手紙ですね」
「ええ、奥様宛もありますが、旦那様への招待状のようですね」
エヴァのびっくりした顔をみて頬を緩める。
「向こうのお屋敷ではほとんどありませんでしたが、こちらではお食事も頻繁にお誘いされるかもしれませんね。もちろん、こちらも主催することになりますから忙しくなりますよ」
そう言うと、執事は手紙を持って二階へと階段を登って行った。
帰って来たオーロラは朝のご機嫌はどこへ行ってしまったのやら、以前のようなぶすっとした顔になっていた。
「どうされたんですか?」
「聞いてよエヴァ、お兄様ったら知らない女に色目を使われてるのよ」
「まぁ、お嬢様……」
「女じゃなくて女性ね! わかっててわざとよ、わざと。腹が立っている時くらいいいじゃない」
エヴァは少し考えると頷いた。
「そうかもしれません。腹が立っている時ぐらい、言葉が汚くなってもしかたないですよね」
「エヴァさん、なんてことを言うんですか!」
パッと顔を明るくしたオーロラとは対照的に、ポピーは顔を青くしている。
「じゃあいらだった時はどう言えばいいんです? 心の中にためておくなんてできませんよ、いつか溢れ出てしまいます。その前に小さく空気を抜いておくべきでしょう?」
「それはそうですが……。でも聞こえたら大変ですから」
「じゃあ聞こえても問題なければいいの?」
オーロラが無邪気に尋ねる。
そこでエヴァも言葉を重ねる。
「外国語ならわからないんじゃないですか?」
「それいいわね! ねぇ、ポピーは外国語に詳しかったでしょ? 今度授業で教えて頂戴よ」
「う……、お嬢様の学習意欲が高まったのは嬉しいのですが、悪口を教えるというのはなんとも……」
ポピーが真面目な顔で悩んでいる。
エヴァとオーロラは顔を見合わせて笑いあったのだった。
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