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第三章 決意と変化
1:もう一度勇気を出して
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社交界デビューから一週間後。
リリカは、夜会会場での多くの人からの罵倒が、いまだに耳に残っていた。
そして、ウィリアムが恋しくて恋しくて仕方がなかった……
ウィリアムは、一度もリリカを否定したことがないのだ。
ウィリアムなら慰めてくれるかもしれない。
「そんな事はない」と言ってくれるかもしれない。
はたまた、「それならばやはり結婚をしよう」そう言ってくれるかもしれない。
そんな浅ましい思考を抱いてしまい、さすがのリリカも自分で自分が嫌になる。
それと同時に、キャサリンに言われた言葉も耳にこびりついて離れずにいた……
その後、城で会うキャサリンはいつも通りローズと一緒で、あれ以来二人きりになることはなく、話す機会もない。
あの日以来リリカは、キャサリンの見方が変わった。
ローズといる時のキャサリンが、澄ました笑顔でどこか人形のように見えるようになっていたのだ……
(あの時の別人のキャサリン……あれが本当のキャサリンだったように思うわ。そして、私を想って言ってくれたのだとも思う……)
リリカは、徐々にそう思うようになっていた。
こうしてリリカは、勇気を出すことにした。
ブルーム伯爵邸を訪れたリリカは、応接間でウィリアムと向かい合わせに座っている。
「……会って下さり、ありがとうございます」
「もう一度だけだと言うので……。この間は、突然勝手なことを言って申し訳なかった。しかし、俺の気持ちは今も変わってはいない」
約二か月ぶりに会うウィリアムは、リリカには少し痩せたように見えた。
笑顔でも前回の申し訳なさそうな表情でもない、真顔のウィリアムに出迎えられたのは初めてで、リリカは怯んでいた。
そこに”気持ちは変わっていない”と牽制され、リリカの心は折れそうになる。
(……今日ははっきりさせに来たのよ。頑張れ、私!!!)
ウィリアムは、緊張に膝の上でギュッと手を握っているリリカを見ながら、口を開いた。
「社交界デビューを果たしたと聞いた。おめでとう。良い人に出会えると良いね」
ウィリアムのその言葉は、リリカの心臓に”グサッ”っと突き刺さる。
「……私なんかに目を向けて下さる方はいらっしゃいません」
リリカはウィリアから〝良い人を〟と言われるのがとても辛かった。
一方ウィリアムは、リリカの言葉に眉を顰める。
(あ、私がうまくいかないと、ウィリアム様の罪悪感が増してしまうわよね……)
ウィリアムの渋い表情に、リリカはそう考えた。
「あっあの、ウィリアム様もやはり、痩せていてスタイルの良い女性の方がお好みですよね?」
焦ったリリカは、咄嗟に自分でも訳の分からない質問をしてしまった。
このような時は、”普段は考えないようにしているが実は気になっていること”が、ふと口を突いて出てしまったりするものである。
この時のリリカは、まさにそうだった……
「……その他大勢の令嬢に、劣等感を抱いたのか?」
一瞬の間の後で、ウィリアムは低い声で言った。
ウィリアムに見透かされたことで、リリカは一気に羞恥心がやって来る。
あまりの恥ずかしさに、下を向いた。
「……はい。私には良いところがありません」
「はあっ……」
前から盛大な溜め息が聞こえ、リリカは更に下を向いた。
「リリカ、今日の訪問の要件はなんだい?」
リリカは、”ドキッ”とした。
いつもの優しい声色ではないからだ。
ウィリアムの言動から、初めての恐怖を感じる。
(いつもの優しいウィリアム様ではない……)
リリカの心臓はウィリアムに聞こえるのではないかという程、激しく鼓動している。
ウィリアムへのトキメキではない、恐怖からの激しい動悸もまた、初めてのことだった……
リリカは、夜会会場での多くの人からの罵倒が、いまだに耳に残っていた。
そして、ウィリアムが恋しくて恋しくて仕方がなかった……
ウィリアムは、一度もリリカを否定したことがないのだ。
ウィリアムなら慰めてくれるかもしれない。
「そんな事はない」と言ってくれるかもしれない。
はたまた、「それならばやはり結婚をしよう」そう言ってくれるかもしれない。
そんな浅ましい思考を抱いてしまい、さすがのリリカも自分で自分が嫌になる。
それと同時に、キャサリンに言われた言葉も耳にこびりついて離れずにいた……
その後、城で会うキャサリンはいつも通りローズと一緒で、あれ以来二人きりになることはなく、話す機会もない。
あの日以来リリカは、キャサリンの見方が変わった。
ローズといる時のキャサリンが、澄ました笑顔でどこか人形のように見えるようになっていたのだ……
(あの時の別人のキャサリン……あれが本当のキャサリンだったように思うわ。そして、私を想って言ってくれたのだとも思う……)
リリカは、徐々にそう思うようになっていた。
こうしてリリカは、勇気を出すことにした。
ブルーム伯爵邸を訪れたリリカは、応接間でウィリアムと向かい合わせに座っている。
「……会って下さり、ありがとうございます」
「もう一度だけだと言うので……。この間は、突然勝手なことを言って申し訳なかった。しかし、俺の気持ちは今も変わってはいない」
約二か月ぶりに会うウィリアムは、リリカには少し痩せたように見えた。
笑顔でも前回の申し訳なさそうな表情でもない、真顔のウィリアムに出迎えられたのは初めてで、リリカは怯んでいた。
そこに”気持ちは変わっていない”と牽制され、リリカの心は折れそうになる。
(……今日ははっきりさせに来たのよ。頑張れ、私!!!)
ウィリアムは、緊張に膝の上でギュッと手を握っているリリカを見ながら、口を開いた。
「社交界デビューを果たしたと聞いた。おめでとう。良い人に出会えると良いね」
ウィリアムのその言葉は、リリカの心臓に”グサッ”っと突き刺さる。
「……私なんかに目を向けて下さる方はいらっしゃいません」
リリカはウィリアから〝良い人を〟と言われるのがとても辛かった。
一方ウィリアムは、リリカの言葉に眉を顰める。
(あ、私がうまくいかないと、ウィリアム様の罪悪感が増してしまうわよね……)
ウィリアムの渋い表情に、リリカはそう考えた。
「あっあの、ウィリアム様もやはり、痩せていてスタイルの良い女性の方がお好みですよね?」
焦ったリリカは、咄嗟に自分でも訳の分からない質問をしてしまった。
このような時は、”普段は考えないようにしているが実は気になっていること”が、ふと口を突いて出てしまったりするものである。
この時のリリカは、まさにそうだった……
「……その他大勢の令嬢に、劣等感を抱いたのか?」
一瞬の間の後で、ウィリアムは低い声で言った。
ウィリアムに見透かされたことで、リリカは一気に羞恥心がやって来る。
あまりの恥ずかしさに、下を向いた。
「……はい。私には良いところがありません」
「はあっ……」
前から盛大な溜め息が聞こえ、リリカは更に下を向いた。
「リリカ、今日の訪問の要件はなんだい?」
リリカは、”ドキッ”とした。
いつもの優しい声色ではないからだ。
ウィリアムの言動から、初めての恐怖を感じる。
(いつもの優しいウィリアム様ではない……)
リリカの心臓はウィリアムに聞こえるのではないかという程、激しく鼓動している。
ウィリアムへのトキメキではない、恐怖からの激しい動悸もまた、初めてのことだった……
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