ずれてる転移者

朝山みどり

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階段落ち

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本宮修一は階段を降りていた。寝不足の体は足元が危うかった。いきなりあたりが明るくなり目が眩んだ修一は階段を踏み外した。残り四段だったがズダダと落ちてしまった。修一の後ろにいた拓也はあわてて修一の元に駆けつけた。

拓也が呼んだ救急車に乗せられた修一は病院でたまたま空いていた集中治療室に入れられた。

意識がなかった為、頭の検査をいくつかしたが異常はなかった。ただ、疲労が激しいことがわかった。

意識がないというより寝ている状態だったが、集中治療室に残り点滴の管と自動的に血圧測定をする器具と心電図計をつけられた。

不思議なことに三時間おきに血圧と心拍数が乱れた。だがすぐに正常値に戻るため誰もそれに注目しなかった。意識が戻らないことは原因不明としか言えなかった。

なんの異状もなくおとなしく寝ている修一は楽な、扱いやすい患者だった。


三日目に目を覚ました修一は足のギブスに驚いたが、しっかり寝て健康を取り戻していた。動けない為入院が続くと聞いて驚いていたが、読書がはかどると喜んでいた。ただ三時間おきの血圧と心拍数の異常について誰かが自分に触ろうとしているようだと、看護師に話した。その話は他の病棟の看護師も含めてよくある病院ホラーとしてうわさわれた。

六日目に次の患者が来て修一は一般病棟に移動した。

血圧計は外されたが心電図はずっと付けられたままで異常値は不規則に計上されるようになり、頻度があがっていった。

本人はたまにドキドキするとしか思っていないが、カルテには不整脈として記録されていた。

入院して一ヶ月すぎてギブスが外された。これからゆっくりリハビリしながら回復すれば元に戻ると医師に説明された修一は入院の時に来ていたスーツを着たが、なぜか靴がなかったため、病院の売店でサンダルを買うとそれを履いて退院した。


いきなり長く入院したというので修一は、売店で買った菓子を持って会社に挨拶に行った。部屋にはいり部長の席に向かう途中、あのときの光が部屋に満ちた。光が消えたとき修一の姿はなくなっていた。

売店で買ったお菓子が床に残っていた。部長はそれを拾い上げると、すこし首を傾げたがお菓子をもらったから食べようといいながらまず自分がひとつ取った。

他の者もなにかひっかかるものがあったが、お菓子を取った。すこし残っていたので箱ごと空いている机に乗せておいた。

しばらくすると人員が補充されてその机に座った。新人は机に残った筆記具はありがたく使い、残っていた名刺はそのまま捨てた。修一っていう人か、確かにやめた会社の名刺なんていらないよな・・・・


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