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10 早く家に帰りたい

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「おお!フレデリック殿、良くいらした……あの服はお気に召しませんでしたかな?」

「はは、申し訳なかったのですが最近かなり太りまして……」

「おや?最近のサイズに合わせたはずなのですが?」

 まだこの冗談に付き合わねばならんのか……あの礼服は執事のアーヴァインに見せたら

「……ちょっと売ってきますね。フレデリック様に必要ないです」

 と、さっさと処分してしまった。

「素材は良い物を使っていましたから高値で売れましたよ」

 我が家の執事は強い、私も見習わなければ。しかし最近のサイズに合わせたってなんだよ、計ったのか!?怖すぎる。

「はは……」
 
 あんなもの着たら勘違いの若作り野郎じゃないか!この人は私にどんな恥をかかせたいんだ、恐ろしい!

「とても似合うと思ったのに」

 心底ガッカリと言う表情をされて更に引く。そしてロバート殿の服を見て更に引いて……参加者の中にファール伯爵を見つけたので急いで彼の側に避難した、助けて~!

 あのロバート殿の服、贈られた服と揃いの仕立てじゃなかったか?ついでに言えば差し色に水色……私の目の色を使ってなかったか??

「は、はは。た、たまたまかな?気のせいだよな、気のせい」

「どうなされた?フレデリック殿。顔色が優れませんな」

「や、流石に夜会はまだまだ慣れませんね……」

 よくわからない寒気が走って早く家に帰りたかった。

 ロバート殿は招待した側のホストとして精力的に色々な人と話をしている。ロバート殿の妻であるカルセニア伯爵夫人も忙しそうだが……どうもあの二人、あまり夫婦仲はよろしくないようだ。他家の事だ、それ以上は考えないでおこう。カルセニア家にはカルセニア家のルールがあるのだろうし。
 ファール伯爵に数人の貴族を紹介してもらい、握手を交わす。

「おお、貴殿がフレデリック殿!ジェス領の回復手腕は今でも伝説ですぞ」

「え?何のことでしょう」

「はは!噂通りの謙遜っぷり。芋を育てよは有名な話ですよ」

「え……?」

 確かに私は10年前いや、アージェが来てすぐなので12年前か、その頃にジェス領の荒れ地に小麦ではなく芋を植えるように指示をした。だってジェスの土地は痩せて、小麦を作っても収穫量がスズメの涙以下だった。こんなん作ってる場合じゃねー!と芋に切り替えさせたんだ。
 芋ならまず腹が膨れるし、長持ちするし……ポテトフライが恋しくてしょうがない時期だった。私だって23歳だぞ?ポテト食わずに何を食うんだ??茹でてマッシュして……菜種も育てて……。

「まあフレイ!お芋さんが金色ね、サクサクして美味しいわ」

「美味いなー!これだよこれ!」

 アージェと山盛りポテトを食べて笑いあったっけ。それからポテトは兄上と義姉上の好物にもなって二人のぷくぷくは加速したんだった、ごめんよ!でも可愛かったぞ、ぷくぷく。

 どうやら私がアージェに少しでも楽しく暮らして欲しくてジェス領で行った数々の仕事は「伝説」とか言われて貴族社会に素晴らしい功績として伝わっているらしい……知らなかった。

 
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