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25 どうしても出来なかった
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ジェス家の未来は明るいんだが、カイラスの未来はどうなんだ……おい!
「叔父上……フレデリック、さま」
「カ、カイラス、何を……」
どうして夜中に私の部屋に来てベッドによじのぼり、私を押さえつけているのかな??
「ずっと前から、好きです。お慕い申し上げております」
「カ、カイ、ラス……私は男、です」
「知っています」
じゃあ何で?!
「叔父上が正気を失ってから、貴方の事が好きだったと気がついたんです。だから、クリスが王都で私が領地でジェス家を守り……フレデリック様も私の手元でずっと守っていくつもりでした」
お、おう……そ、それはありがとうございます……?
「しかしあなたは正気を取り戻した。そして貴方の輝きに魅せられて五月蝿い虫が集まるようになってしまった!」
わ、私は誘蛾灯じゃないよ、カイラス……。
「しかも帝国の皇弟なんて……許せない……今すぐ殺してやりたいのに、流石に手が出せません」
「カイラス、馬鹿な事を考えるんじゃない……」
「悔しいんです、叔父上の初めてを貰うのは私のはずだったのに」
いや待て、どういう事かな?そんなの上げるつもりは全くなかったんだけど?カイラス、カイラス?おじさんはとても心配だよ……!
「お願いです、叔父上…‥フレデリック様……私を、受け入れて……」
喉がひゅっと鳴った気がする。カイラスが何を言っているか言葉で伝わらない気がした。でも、あの真剣な目をみたら、茶化す事が出来なくなってしまった。
カイラスは本気だ。本気で私を欲しがっている。何故、とかどうして、とか聞く前にとにかく私を抱きたいと思っている。それが怖いくらい伝わってくるんだ。どうしたらいいんだ、私は恋愛の意味でカイラスを想ってはいない。それどころか誰ももう愛せないだろう。でもそんなのは私の都合で、カイラスは違うんだ。
「カ、カイ、ラス」
夜着に手がかかる。上等ではないけれど、肌触りのいいシャツはボタンを外せばすぐにはだけてしまう。どうしよう、とにかくやめさせるべきだ。私はどうでもいい、カイラスのこれからの輝かしい未来におかしな傷を残してはいけない。カイラスは素敵な女性と結婚して可愛い子供達に囲まれる人生を送るべきだ。
「ああ、こんな所に跡が残って……上書きします」
「や、やめ……」
首筋に荒い吐息がかかる。確かにその辺りに顔をしかめたくなるような赤い痕があったのを鏡でみた。やめろと、引き離さなければならないのに、掴まれた肩にこもる力とその腕が少し震えているのが……カイラスをここで拒否して良いのか分からなくなる。
嫌だ、駄目だと拒否する事は出来る。しかしそれは正解なのか?震えるほど、緊張し覚悟を決めて来たカイラスを突き放す、それで良いのか。
「カ……っ」
じゅっ、と音が鳴るほど吸い上げられ身が竦む。あの帝国の皇弟とやらほどの嫌悪感はないが、それを受け入れる気持ちにもなれなかった。駄目だ、恋愛と言う意味でカイラスを受け入れる事は出来ない。
私の愛は誰に対してももう枯れている。
受け入れられない物を受け入れてはいけない。拒否しようと若い体を押し返す。
「っつ……」
震えながら掴まれた肩にカイラスの指が一層食い込む。拒否しないで、否定しないでと全身が訴えている。
出来る事ならこの可愛い甥の好きにさせてやりたい気はする。しかし、気持ちが伴わないのに許してどうすると言うのだ。それはよっぽど酷い裏切りじゃないか。
今、突き放せば一番軽傷で済むと分かりきっている。
「フレデリック、さま」
首筋を吸い上げるのに満足したのか、視界にカイラスの顔が合った。きれいな紫の目が不安に揺れている。
「お願い、許して……」
ああ、なんて残酷なおねだりをするんだろうか。きっとカイラス自身も気がついている。この思いに幸せな未来はないと。
それでも縋ってくるその目を無視することがどうしてもできなかったのだ。
「叔父上……フレデリック、さま」
「カ、カイラス、何を……」
どうして夜中に私の部屋に来てベッドによじのぼり、私を押さえつけているのかな??
「ずっと前から、好きです。お慕い申し上げております」
「カ、カイ、ラス……私は男、です」
「知っています」
じゃあ何で?!
「叔父上が正気を失ってから、貴方の事が好きだったと気がついたんです。だから、クリスが王都で私が領地でジェス家を守り……フレデリック様も私の手元でずっと守っていくつもりでした」
お、おう……そ、それはありがとうございます……?
「しかしあなたは正気を取り戻した。そして貴方の輝きに魅せられて五月蝿い虫が集まるようになってしまった!」
わ、私は誘蛾灯じゃないよ、カイラス……。
「しかも帝国の皇弟なんて……許せない……今すぐ殺してやりたいのに、流石に手が出せません」
「カイラス、馬鹿な事を考えるんじゃない……」
「悔しいんです、叔父上の初めてを貰うのは私のはずだったのに」
いや待て、どういう事かな?そんなの上げるつもりは全くなかったんだけど?カイラス、カイラス?おじさんはとても心配だよ……!
「お願いです、叔父上…‥フレデリック様……私を、受け入れて……」
喉がひゅっと鳴った気がする。カイラスが何を言っているか言葉で伝わらない気がした。でも、あの真剣な目をみたら、茶化す事が出来なくなってしまった。
カイラスは本気だ。本気で私を欲しがっている。何故、とかどうして、とか聞く前にとにかく私を抱きたいと思っている。それが怖いくらい伝わってくるんだ。どうしたらいいんだ、私は恋愛の意味でカイラスを想ってはいない。それどころか誰ももう愛せないだろう。でもそんなのは私の都合で、カイラスは違うんだ。
「カ、カイ、ラス」
夜着に手がかかる。上等ではないけれど、肌触りのいいシャツはボタンを外せばすぐにはだけてしまう。どうしよう、とにかくやめさせるべきだ。私はどうでもいい、カイラスのこれからの輝かしい未来におかしな傷を残してはいけない。カイラスは素敵な女性と結婚して可愛い子供達に囲まれる人生を送るべきだ。
「ああ、こんな所に跡が残って……上書きします」
「や、やめ……」
首筋に荒い吐息がかかる。確かにその辺りに顔をしかめたくなるような赤い痕があったのを鏡でみた。やめろと、引き離さなければならないのに、掴まれた肩にこもる力とその腕が少し震えているのが……カイラスをここで拒否して良いのか分からなくなる。
嫌だ、駄目だと拒否する事は出来る。しかしそれは正解なのか?震えるほど、緊張し覚悟を決めて来たカイラスを突き放す、それで良いのか。
「カ……っ」
じゅっ、と音が鳴るほど吸い上げられ身が竦む。あの帝国の皇弟とやらほどの嫌悪感はないが、それを受け入れる気持ちにもなれなかった。駄目だ、恋愛と言う意味でカイラスを受け入れる事は出来ない。
私の愛は誰に対してももう枯れている。
受け入れられない物を受け入れてはいけない。拒否しようと若い体を押し返す。
「っつ……」
震えながら掴まれた肩にカイラスの指が一層食い込む。拒否しないで、否定しないでと全身が訴えている。
出来る事ならこの可愛い甥の好きにさせてやりたい気はする。しかし、気持ちが伴わないのに許してどうすると言うのだ。それはよっぽど酷い裏切りじゃないか。
今、突き放せば一番軽傷で済むと分かりきっている。
「フレデリック、さま」
首筋を吸い上げるのに満足したのか、視界にカイラスの顔が合った。きれいな紫の目が不安に揺れている。
「お願い、許して……」
ああ、なんて残酷なおねだりをするんだろうか。きっとカイラス自身も気がついている。この思いに幸せな未来はないと。
それでも縋ってくるその目を無視することがどうしてもできなかったのだ。
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