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71 命令だと言っても良いのだけれど
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「今日は無理を言ってすまないね」
「いえ……」
「何用ですかな?側妃殿。我々騎士団は暇では無いのですが?」
お茶会、といっても簡易的な物だ。先にセイリオスとクロードを呼び出し、並べて座らせて置いた。
「机の下で指を絡めておいでです!!」
「靴先をぶつけ合って遊んでおられます!!」
「いや、そう言う報告要らないから……」
密偵メイドは今日も元気で絶好調だった。俺がノックと共に二人の令嬢を従えて部屋に入ると、二人はすぐに憎まれ口を叩き始める。ふん、良いもんねー。怖く無いもんね。
「こちら、シルビオ侯爵家サファイア嬢、向こうがリスター侯爵家プリネラ嬢。名前と顔くらいはわかると思うが」
「ええ、存じ上げております」
「……」
クロードは知らなかったようだが、まあ良い。
「二人は知っているね?宰相のセイリオス・リンツ公爵と騎士団長のクロード・ラグデール伯爵だ」
「はい、存じ上げております」
「ご高名はかねがね伺っております」
さて、面倒だしさっさとぶっ込んじゃいましょうか。
「セイリオスとクロードはこの御令嬢達と結婚して欲しい」
「「は?!」」
予想通り。陛下のご命令である!といえば終わるんだけれど、それじゃあ禍根が残るからね。二人の令嬢に目配せする。二人はこくんと頷いてから口を開く。何せ必死なのは彼女達はなんだから。
「私達の要望は妻の地位にいる者としてそれ相応の扱いをしていただくこと。それ相応に尊重して頂くこと。ご無理で無ければ子種を2.3回頂けること。そして私達以外の女性を愛さないことのみでございます」
「な、何を……おっしゃる……?!」
セイリオスが先にサファイアの言っている意味に気がついて動揺する。
「愛して頂かなくて結構です。地位と生活が守れるのであれば、子供のための第二夫人を娶ったと思って頂いて構いません!」
はっきりと言い切った。何せこの好物件を逃せば変態男爵が手招きしているから。
「え?」
やっとクロードにも染み込んで来たようだ。
「私達はかなり仲が良いですから、結婚式なども合同で構いませんし、夜会などのお招きも一緒の馬車でも構いません!エスコートさえキチンとしていただければ会場内でお二人でどこへ雲隠れしても文句も言いません!」
「なんなら新婚の家も一緒でも構いませんわ!初夜もそちらのお二人で過ごしても何ら問題もありませんわよ?!変態男爵に嫁がされるより何倍も素敵ですもの!」
「「お願い致します!私達、後がないのです!!」」
テーブルに額がつく勢いで頭を下げるサファイアとプリネラ。
「俺はさ、文官と武官仲良くして欲しいんだ。セイリオスとクロードがわざと距離を置こうとしてさ、失敗してるだろ。部下達、気を遣ってるからなんか変な空気流れてるし。気づいてない奴は二人が本当に不仲だって思ってるし。困るんだよ」
「それは……」
「そんなことは……」
歯切れ悪っ。事実だからねえ……。
「はっきり言えば皇帝命令で良いんだけど、この二人の気持ちも聞いて欲しかったんだ」
涙目の令嬢二人。
「変態男爵の所なんて行きたく無いですーー」
「一度くらいはウェディングドレスを着てみたかったんです……元を正せば自分達が悪いのは分かっているんですが……」
「俺としてはこの二人もちょっと可哀想だし、君達も何とかしたいしでちょうど良いんだよね。勿論ラムも了承済みだし」
セイリオスとクロードは顔を見合わせている。そして
「……いつから、ご存じで……」
そこかい?!
「いや、ほぼ最初から……あとメイド達も探ってくれたし、この国って男を側妃にする歴史あるでしょ?だったら男同士っつーのもなしじゃない」
実際、同性同士で結婚する奴はかなりいるんだって。神殿も認めていることだから、問題ないんだって。あ、何代か前に女性皇帝になった時があってその時の側妃は女性だったらしいよ~。
「御令嬢、本当にそれで良いのか?」
クロードが恐々質問する。そうだろう、不誠実と言えばその通りなのだから。
「わ、私達、レジム公爵令嬢と共に陛下の妃を目指しておりました。しかし陛下はディエス様をお召しになり、他にめもくれません。そんな私達はもう後がないんです!」
「確かに愛して欲しいと思います。でも、このままでは自分の命ですら危ない。ならばお二方のどちらかと婚姻出来れば命を脅かされる事はありません。なんなら誓約書を書いても構いません!」
俺は一応悪くないんだけれど、なんだか悪い事した気持ちになっちゃう……。
「なんならお昼にお弁当を毎日届けても構いません!4人で一緒に食べましょう!?」
「お願いします!どうかお慈悲を!」
サファイアとプリネラの必死さに二人は顔を見合わせてからため息をついた。
「断るという選択肢はないのですか?」
「断って良いことあるの?このままじゃダメだ、もう限界だってことくらい二人だって気がついてるだろう?」
「……」
だからこうやって俺がしゃしゃり出ている訳なんだし。
たっぷりと沈黙の時間が流れてから
「……書面で残して宜しいでしょうか」
「……セイ……!」
「クロード、君だってこのままじゃ駄目なことくらい分かっていただろう。こんな好条件を用意していただけるなんてこの先、一生無い」
何せサファイアとプリネラは侯爵家のご令嬢だ。貴族の婚姻相手としてどこへ出してもおかしくない高位で教育も行き届いている素晴らしい女性だ……ちょっとつるむ相手を間違えちゃっただけで。
「うわああああん……良かったぁ」
「ディエス様に相談して良かったぁ……一生ついて行きますぅ……!」
「一生は要らないし」
重いわ!
「いえ……」
「何用ですかな?側妃殿。我々騎士団は暇では無いのですが?」
お茶会、といっても簡易的な物だ。先にセイリオスとクロードを呼び出し、並べて座らせて置いた。
「机の下で指を絡めておいでです!!」
「靴先をぶつけ合って遊んでおられます!!」
「いや、そう言う報告要らないから……」
密偵メイドは今日も元気で絶好調だった。俺がノックと共に二人の令嬢を従えて部屋に入ると、二人はすぐに憎まれ口を叩き始める。ふん、良いもんねー。怖く無いもんね。
「こちら、シルビオ侯爵家サファイア嬢、向こうがリスター侯爵家プリネラ嬢。名前と顔くらいはわかると思うが」
「ええ、存じ上げております」
「……」
クロードは知らなかったようだが、まあ良い。
「二人は知っているね?宰相のセイリオス・リンツ公爵と騎士団長のクロード・ラグデール伯爵だ」
「はい、存じ上げております」
「ご高名はかねがね伺っております」
さて、面倒だしさっさとぶっ込んじゃいましょうか。
「セイリオスとクロードはこの御令嬢達と結婚して欲しい」
「「は?!」」
予想通り。陛下のご命令である!といえば終わるんだけれど、それじゃあ禍根が残るからね。二人の令嬢に目配せする。二人はこくんと頷いてから口を開く。何せ必死なのは彼女達はなんだから。
「私達の要望は妻の地位にいる者としてそれ相応の扱いをしていただくこと。それ相応に尊重して頂くこと。ご無理で無ければ子種を2.3回頂けること。そして私達以外の女性を愛さないことのみでございます」
「な、何を……おっしゃる……?!」
セイリオスが先にサファイアの言っている意味に気がついて動揺する。
「愛して頂かなくて結構です。地位と生活が守れるのであれば、子供のための第二夫人を娶ったと思って頂いて構いません!」
はっきりと言い切った。何せこの好物件を逃せば変態男爵が手招きしているから。
「え?」
やっとクロードにも染み込んで来たようだ。
「私達はかなり仲が良いですから、結婚式なども合同で構いませんし、夜会などのお招きも一緒の馬車でも構いません!エスコートさえキチンとしていただければ会場内でお二人でどこへ雲隠れしても文句も言いません!」
「なんなら新婚の家も一緒でも構いませんわ!初夜もそちらのお二人で過ごしても何ら問題もありませんわよ?!変態男爵に嫁がされるより何倍も素敵ですもの!」
「「お願い致します!私達、後がないのです!!」」
テーブルに額がつく勢いで頭を下げるサファイアとプリネラ。
「俺はさ、文官と武官仲良くして欲しいんだ。セイリオスとクロードがわざと距離を置こうとしてさ、失敗してるだろ。部下達、気を遣ってるからなんか変な空気流れてるし。気づいてない奴は二人が本当に不仲だって思ってるし。困るんだよ」
「それは……」
「そんなことは……」
歯切れ悪っ。事実だからねえ……。
「はっきり言えば皇帝命令で良いんだけど、この二人の気持ちも聞いて欲しかったんだ」
涙目の令嬢二人。
「変態男爵の所なんて行きたく無いですーー」
「一度くらいはウェディングドレスを着てみたかったんです……元を正せば自分達が悪いのは分かっているんですが……」
「俺としてはこの二人もちょっと可哀想だし、君達も何とかしたいしでちょうど良いんだよね。勿論ラムも了承済みだし」
セイリオスとクロードは顔を見合わせている。そして
「……いつから、ご存じで……」
そこかい?!
「いや、ほぼ最初から……あとメイド達も探ってくれたし、この国って男を側妃にする歴史あるでしょ?だったら男同士っつーのもなしじゃない」
実際、同性同士で結婚する奴はかなりいるんだって。神殿も認めていることだから、問題ないんだって。あ、何代か前に女性皇帝になった時があってその時の側妃は女性だったらしいよ~。
「御令嬢、本当にそれで良いのか?」
クロードが恐々質問する。そうだろう、不誠実と言えばその通りなのだから。
「わ、私達、レジム公爵令嬢と共に陛下の妃を目指しておりました。しかし陛下はディエス様をお召しになり、他にめもくれません。そんな私達はもう後がないんです!」
「確かに愛して欲しいと思います。でも、このままでは自分の命ですら危ない。ならばお二方のどちらかと婚姻出来れば命を脅かされる事はありません。なんなら誓約書を書いても構いません!」
俺は一応悪くないんだけれど、なんだか悪い事した気持ちになっちゃう……。
「なんならお昼にお弁当を毎日届けても構いません!4人で一緒に食べましょう!?」
「お願いします!どうかお慈悲を!」
サファイアとプリネラの必死さに二人は顔を見合わせてからため息をついた。
「断るという選択肢はないのですか?」
「断って良いことあるの?このままじゃダメだ、もう限界だってことくらい二人だって気がついてるだろう?」
「……」
だからこうやって俺がしゃしゃり出ている訳なんだし。
たっぷりと沈黙の時間が流れてから
「……書面で残して宜しいでしょうか」
「……セイ……!」
「クロード、君だってこのままじゃ駄目なことくらい分かっていただろう。こんな好条件を用意していただけるなんてこの先、一生無い」
何せサファイアとプリネラは侯爵家のご令嬢だ。貴族の婚姻相手としてどこへ出してもおかしくない高位で教育も行き届いている素晴らしい女性だ……ちょっとつるむ相手を間違えちゃっただけで。
「うわああああん……良かったぁ」
「ディエス様に相談して良かったぁ……一生ついて行きますぅ……!」
「一生は要らないし」
重いわ!
応援ありがとうございます!
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