32 / 62
ゼノアギアス戦記2
32 僕の運命
しおりを挟む
季節は移ろい雨が多い時期に差し掛かった。雨が降ると尻尾が濡れる。濡れるとふわふわしなくなる!とジュンヤは不機嫌気味にティアンの尻尾をタオルで拭いていた。
あまり人に尻尾を触らせたくないものなのだが、強引に撫で回して来るのに慣れてしまった。それに大切に扱ってくれるのも嬉しかった。
まだまだ学園でのティアンを含めた狐獣人へのいじめはあって、標的になり易い尻尾は毛をむしられたり、わざと踏まれたりすることが多かった。
窓の外にはしとしとと雨が降っていた。嫌な感じがする雨だな、とティアンは憂鬱になる。授業がない週末は教会に戻って雨漏りを直して、畑を整備して……。
「ジュンヤ、週末はどうするの?」
「うーん。アリの街の家が出来たから、家具を見立てたいなーって。ティアンもお隣の教会でしょ?」
「うん」
ティアンがお世話になっている教会の隣の土地を偶然にジュンヤは買っていた。どちらかと言うと教会のそばの土地を買ったら、そこにティアンがお世話になっていた。
買った土地にジュンヤは小さな家を建てた。少し前から職人が来て仕事をしていたのを教会の子供達と一緒にみていた。
「じゃあ教会で会えるね」
「この雨が上がったらね……この雨の中で立ってる人がいる。どうしたんだろ」
窓の外をティアンはみている。冷たい雨が降っている中で立っていれば、風邪を引くかもしれない。ティアンの視線の先をジュンヤは辿った。
背の高い、金髪の男が学園を見ている。細かい表情はわからないが、天気のせいで沈んでみえた。
「……来た」
「ジュンヤ?」
振り返ると、ふるふると震えながら、ジュンヤは窓の外を見ている。様子がおかしい。
嬉しそうな、辛そうな、期待に満ちているが、暗く冷たいような顔。ニコニコしているジュンヤとは思えない表情だ。
「……来たんだ、僕の運命が。……待ってたんだ、ずっと僕は」
薄く笑ったが、陰を持っている。ぞくり、と寒いものをティアンは感じた。
「さよならだ、ティアン。大事な僕の弟、君は君の幸せを。僕は僕の幸せを掴みに行くよ」
「しあわせ…を……?本当に……?」
なのに、なんでこんなに昏いの?
「本当だよ。僕の望む幸せなんだ……行ってきます」
ジュンヤは何もかも置いて外に駆け出していった。傘も差さずに立ち尽くす人に声をかけ、歩き出した。
声は聞こえない。雨音が邪魔をする。暗い顔の人は見えるが、背があまり高くないジュンヤは見えない。
なんだろう、嫌な予感がする。
「ティアン、ジュンヤは?」
「さっき……雨の中に飛び出していきました」
声をかけてきたアレンも不思議そうに首をひねった。
「鞄も本も全部置いて?」
「あっ……本当だ。どうしたんだろう、ジュンヤっぽくなかったし……」
「何があったか、詳しく教えてくれないか?」
こくりと頷いてティアンは話し始めた。雨に濡れながら金髪の人がこっちをみていたこと、ジュンヤが出ていったこと。
「僕の運命が来たって言っていました。僕の望む幸せって……」
「ティアン、その金髪って……まさかな。あいつは王都にいるはずだ」
アレンは考え込んだ。
「どっちにしろ、ジュンヤならなんとかするか。あいつは強い。ティアン、ジュンヤの荷物を持って行ってくれるか?一応確かめてみる」
「分かりました。街の方に行くと言っていたので、そっちに持っていってみます」
頼んだ。短くアレンは言って教室から出ていった。ティアンも自分の鞄とジュンヤの鞄を持ち、授業の終わった教室を後にした。
あまり人に尻尾を触らせたくないものなのだが、強引に撫で回して来るのに慣れてしまった。それに大切に扱ってくれるのも嬉しかった。
まだまだ学園でのティアンを含めた狐獣人へのいじめはあって、標的になり易い尻尾は毛をむしられたり、わざと踏まれたりすることが多かった。
窓の外にはしとしとと雨が降っていた。嫌な感じがする雨だな、とティアンは憂鬱になる。授業がない週末は教会に戻って雨漏りを直して、畑を整備して……。
「ジュンヤ、週末はどうするの?」
「うーん。アリの街の家が出来たから、家具を見立てたいなーって。ティアンもお隣の教会でしょ?」
「うん」
ティアンがお世話になっている教会の隣の土地を偶然にジュンヤは買っていた。どちらかと言うと教会のそばの土地を買ったら、そこにティアンがお世話になっていた。
買った土地にジュンヤは小さな家を建てた。少し前から職人が来て仕事をしていたのを教会の子供達と一緒にみていた。
「じゃあ教会で会えるね」
「この雨が上がったらね……この雨の中で立ってる人がいる。どうしたんだろ」
窓の外をティアンはみている。冷たい雨が降っている中で立っていれば、風邪を引くかもしれない。ティアンの視線の先をジュンヤは辿った。
背の高い、金髪の男が学園を見ている。細かい表情はわからないが、天気のせいで沈んでみえた。
「……来た」
「ジュンヤ?」
振り返ると、ふるふると震えながら、ジュンヤは窓の外を見ている。様子がおかしい。
嬉しそうな、辛そうな、期待に満ちているが、暗く冷たいような顔。ニコニコしているジュンヤとは思えない表情だ。
「……来たんだ、僕の運命が。……待ってたんだ、ずっと僕は」
薄く笑ったが、陰を持っている。ぞくり、と寒いものをティアンは感じた。
「さよならだ、ティアン。大事な僕の弟、君は君の幸せを。僕は僕の幸せを掴みに行くよ」
「しあわせ…を……?本当に……?」
なのに、なんでこんなに昏いの?
「本当だよ。僕の望む幸せなんだ……行ってきます」
ジュンヤは何もかも置いて外に駆け出していった。傘も差さずに立ち尽くす人に声をかけ、歩き出した。
声は聞こえない。雨音が邪魔をする。暗い顔の人は見えるが、背があまり高くないジュンヤは見えない。
なんだろう、嫌な予感がする。
「ティアン、ジュンヤは?」
「さっき……雨の中に飛び出していきました」
声をかけてきたアレンも不思議そうに首をひねった。
「鞄も本も全部置いて?」
「あっ……本当だ。どうしたんだろう、ジュンヤっぽくなかったし……」
「何があったか、詳しく教えてくれないか?」
こくりと頷いてティアンは話し始めた。雨に濡れながら金髪の人がこっちをみていたこと、ジュンヤが出ていったこと。
「僕の運命が来たって言っていました。僕の望む幸せって……」
「ティアン、その金髪って……まさかな。あいつは王都にいるはずだ」
アレンは考え込んだ。
「どっちにしろ、ジュンヤならなんとかするか。あいつは強い。ティアン、ジュンヤの荷物を持って行ってくれるか?一応確かめてみる」
「分かりました。街の方に行くと言っていたので、そっちに持っていってみます」
頼んだ。短くアレンは言って教室から出ていった。ティアンも自分の鞄とジュンヤの鞄を持ち、授業の終わった教室を後にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
340
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる