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マリナデット・ウィフラート

14 物理的に遮断にゃん

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 マリウス?とアスタ?とルディ?がスライムを倒して、討伐の証拠となるスライムの核膜を10個手に入れて、今日はおしまいになりました。

「ではこれはマリウスさん、ギルドにお持ちになってください」

「いいえ!三人で倒したのですから三等分にしましょう」

「いえいえ!」

 確かにこれをいただいてしまえば依頼は達成できますが、それでは意味がありません。

「三人で倒したのですから、三等分。譲れません。冒険者たるものそこはしっかりしておかなければいけないです。何事も信頼の上になるのですから」

 スライムの核膜くらい。そう思うアイテムだ。秋の日のどんぐりくらい簡単に拾えちゃうものでも

「さすが白百合……これが清廉の極みッ」

「アスタさん?」

「なんでもないでっすっ!」

 それにマリナデットと一緒に倒したスライムの戦利品なら素敵な素敵な思い出になるに違いない。
 ああ、冷凍保存しなくちゃ!ルディは売れば一個10ギルにもならないようなスライムの落とし物を大事に抱え、氷の女王を召喚して永久青氷を出して貰わなきゃ!と夢想していた。



 あたりは夕刻に近づいてゆく。

「では、この辺で。ご機嫌よ…んんっ!今日はありがとうございました」


『おい へたれ 飯くらい誘え!』

 ルディにこっそり伝言が届いた。今がチャンス!間違いない!

「あの!マリナデ……マリウスさん!この後夕飯でも一緒に…ウワッ‼」

「きゃっ!?」

 マリウスとアスタ&ルディの間に赤々とした巨大な何かが落ちてきて、物理的に分け隔てられた。

「すまない、マリウス。手が滑った」

 そこには巨大な赤竜の頭部が我が物顔で横たわり、両眉毛がくっつきそうなほど寄ったヴィクトルが立っていた。

「あら?お兄様?お帰りでしたか。立派な赤竜の頭ですね」

「うむ、この程度私にかかれば造作もないぞ、マリウス」

 にっこり、マリナに笑いかけるヴィクトルと、赤竜の頭で分断されたアスタ&ルディが怒りで魔力を練り始めている。

「わたわたわたわしたちとまりにゃんを隔てるとは……っ!」

「君たち、何か用かね……!?」

 威嚇用の赤竜の頭を冒険者ご用達・収納袋にしまってヴィクトルはかなり上から睥睨した。

「くっ!くそっ!兄という存在だからって!上から目線かよ」

「ナンデモゴザイマセン オニイサマっ!」

「マリウスと夕食など1万年早いわッ‼マリウスは私と夕食をいただくのだ!」

「「横暴‼」」

 きょとん、と当の本人は「あら?夕食の時間でしたか」などとのんきなものだった。


「では私たちは帰りますね。エレン、エレナ帰りましょう」

「マリウス!?私と夕飯を…!」

「お兄様はソレをギルドに納めにゆくのでしょう?お早くどうぞ?いちいち往来で出されては皆の迷惑になります。少しはお考えになってください」

 常識の人がいた。

「あと、赤竜の爪は二つ山を超えた黒魔女ディータお姉様が4ヶ月前からお求めてございました。尻尾ステーキは海運商ヘリウスの所に卸して下さい。左手薬指は西の青魔女様に……あと……」

「まて!マリナデット!違うマリウス!……紙にメモするから少し待って……」

「あら、すみません!あ、黒魔女様の事は必ずお姉様と呼んで見目麗しい女性3人以上で行かせて下さいね?」

「……よく分からんが、よく分かったよマリ……ウス」

 兄の知らない世界があるのだな……。ヴィクトルはううーんと唸り、夕食の件はうやむやになってしまった。


 
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