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その他の話
俺達結婚しましたり
しおりを挟む「凛莉、この箱の中身なんだが……」
「箱? そんな物……きゃああああーー!? か、鍵、鍵が掛かってたろ?!」
「……壊れた音は聞こえた気がする。で、中身なんだが」
「きゃーーーー!!」
「これはもしや尻に入れ……」
「それ以上何もいうなぁーー!」
なんでがっちりしまって封印していたあの黒い宝箱をフロウライトが見つけて、しかも中身まで確認してるんだ!鍵は普通壊れないだろ?!あのクソ馬鹿力ぁーっ!
「ちが!お、俺のじゃ、俺のじゃないっ!師匠の愛棒なんだ!お、俺はちょーっとだけ触ってみただけで、決して俺のじゃないんだー!」
「さ、触った……? もしかして、使ってみたことなど? 随分と太くて長い……」
「うわー! 返せ! ていうかお前の方が何倍も太くて長いわっ!こんなもんじゃねぇだろ!」
「そ、それも、そう……か?」
今だ!怯んだ隙に師匠の愛棒達を取り返した!しょ、処分だ!裏庭で火をつけて焼く!証拠隠滅だっ!
「私の方が、ふふ……そうか」
悦に行ってほくそ笑んでるフロウライトは素直に返してくれたけど、こういう物の処分を後回しにしない方が良いなぁ。
つい一番太くて長いのを手に取った瞬間だった。
「あ、ああーイイ……ん?」
「あーっ!? 師匠っ」
「あれぇ? ナルミぃ?!」
鏡が静かに波打って見覚えのある顔が見覚えのある部屋で……愛棒握りしめてお楽しみ中だった。
「師匠っ! 何やってんですか!」
「一人エッチですけど……徹ってば一週間の出張なんだもん。寂しくて」
「きゃーー?!」
元の俺の、谷口鳴海の顔の奴が可愛らしくこてん、と首を傾げて「何当然のこと聞いてるの?」っていってた、尻に愛棒をブッ刺しながら。師匠っ何エロいことさらっといってくれてんですか?!なんか全ての元凶は師匠の性欲な気がしてきた……頭が痛い。
「凛莉? 誰かいるのか……あれは」
「ナルミ、まずは絞めろ。聖騎士極でも呼吸を奪えば弱りはする。いう通りに動け、体が覚えているはすだ」
「誰だ?」
「そんなところまで入り込んでくるとは。証拠など一つもなかったはずなのに」
「あーあーあー……ちょっと待って……。師匠は尻から愛棒を抜いて。フロウ、あれは元の俺の体に入ったマラカイト・凛莉だ。あの鏡の向こうにいる体が元の俺だ」
多すぎる事象にとりあえずできることからやっていこうと思う。師匠はバイブ突っ込みながら暗殺の臨戦体制だし、フロウライトもその剣呑な気配を察知して神経を尖らせてるし、ああ……頭痛が加速する。
「こちらから攻撃はできない……ナルミ、そいつに気を許すな」
「アレが凛莉の元の顔。なんというかなんの特徴もない、普通だな。体付きも弱々しい、アレで私に攻撃?無理だろう」
「黙れ、聖騎士極。ナルミを傷つけるのは許さない」
「元のマラカイトだったな? 傷つけるわけがない。私の大切な伴侶だぞ」
鏡を挟んで師匠とフロウライトが激しく言い合いを始めた。とりあえず、鏡は物理を通さないようだから見守っても問題なさそう。というかこの状況、一体どうしたらいいんだ?!誰か助けて……。
「伴侶?! どうせぼやっとしているナルミを無理やり組み敷いていうことを聞かせたんだろう? 聖騎士の癖にやることが汚いな。正論ばかり振り翳していたのに、何だそれは? 聞いて呆れる」
「うっ……その辺りは反論の余地がない……だが私は凛莉と生涯を共にすると誓ったし、凛莉も受け入れてくれた。私達はずっと一緒だ」
「なんだそれは。まるで結婚したかのように……」
「したが?」
突然左手を引っ張られて鏡の前にかざされた。
「ほら、結婚した者同士がつける指輪だ。呪いで外れなくしているようなものでもない。凛莉は自分からつけてくれている。私達は愛し合っている」
「にゃにぃーー?!」
師匠が鏡の向こうでキレた。
「徹は私に指輪を買ってくれないのに?!?!?」
あっ……そこでしたか、師匠。
その後ずーん、と落ち込んでしまった師匠との会話は楽だった。
「うん……それでね。私とナルミ……いや、私はもうマラカイト・凛莉に戻りたくない。だから、その名前は全部ナルミにあげる。だからナルミのことは凛莉と呼ぶよ。私と凛莉がお互いにこのエッチな棒を握って鏡に映ると繋がるみたいなんだ」
「な、なんですか? その設定」
「私が決めた訳じゃないし……一回話をしたらしばらく無理かもしれない……ちょっと分からないね」
「なるほど……」
前に一度繋がった時に師匠はこの仕組みに見当がついたらしい。俺はまったく気が付かなかったのに……。流石師匠、冴えてます。安心して尻のバイブは抜いて下さい。
「それで凛莉は聖騎士極で良いんだね……」
「あ、うん……俺、フロウライトのこと好きだ。幸せだよ、師匠。師匠はどう?」
「私も順調だったんだけど、徹が結婚しようっていってくれないの」
「そっちの世界ではその辺制約が多いから……」
「私がクミチョーの介護してるから?」
「……なんか不穏なワードが聞こえてきましたが、組長って……いや、それは関係ないかな……多分間島のことだから給料3ヶ月分貯めてるんですよ……」
「その話、ネットで見たけど……くすん」
師匠は可愛いウサ耳がついたパーカーパジャマを着て体育座りをしている。なんつー乙女チックな服……師匠ってほんとはあんな可愛いのが好きだったのか……俺の顔でそりゃないでしょ、と思ったけれど意外と似合っている。
元俺の顔のはずなのに何だか違う人間に見えてくる。きっと師匠が入ってもうあそこにいる人間は谷口鳴海じゃなくてリンという人なんだろう。もしかしたらマラカイト・凛莉も前とはかなり変わっているのかもしれない。
「本当に昔の闇暗殺者極なのか? いや、確かに最初の殺気は酷く背筋が寒くなるあの当時の恐怖を感じだが……」
「本当なんだ。あの部屋に俺は住んでいた……すごく片付いているな、師匠が片付けたんだろう。もっと散らかって汚かった」
「今はこっちだって片付いている。凛莉は綺麗好きだ」
「モノが少ないから……」
変わったな、こうやってフロウライトとイチャイチャと寄り添っているもんな。鏡の向こうから師匠が冷たい目で思いっきり睨んでるし。
「ふん……結婚おめでと……私だっていつか徹と……すん」
「あ、ありがとうございます。師匠……」
「ふん、良いじゃん。聖騎士はちんちんおっきそうだし、毎晩エッチすればいいよね。どうせ私は徹と一週間会えてませんよぉーだ」
「師匠ぉ~~」
あーあ、師匠スネちゃった。本当に師匠は俺が知っていたマラカイト・凛莉とはかけ離れた性格だったんだなぁ。
師匠の目から涙が溢れる前にピンポーンと家の呼び鈴がなった。
「あれ? 徹って帰ってくるの明日じゃ? ……徹?徹なのー?」
さっと立ち上がって師匠は鏡から離れて行く。でもまだ愛棒を握ったままだったらしく声が聞こえてくる。
「どうしても早くリンの所に帰ってきたくて、速攻終わらせてきた」
「徹……私も会いたかった」
「リン、帰りにやっとできたんだ……受け取ってくれるかい?」
「何を?」
音しか聞こえてこない。つい俺とフロウライトは鏡に耳を近づけていた。
「結婚しよう、リン。この指輪を受け取って欲しい」
「徹……凄い……キラキラしてる……おっきい、宝石? これ……」
「金額じゃないけどさ。君に贈りたくて」
「徹……徹、嬉しい!私をお嫁さんにして!」
「もちろんだとも!」
ぷつん、そこで鏡は普通の鏡に戻った。きっと喜びのあまり愛棒を捨てて徹に抱きついたんだろう。
「……」
「……」
「私も大きな宝石がついた指輪を買ってくる」
「やめてくれ。この指輪、気に入ってるからこれが良いんだ」
そして少しだけ間が開く。
「わ、私は凛莉が好きだ」
「俺も」
フロウライトは何か言いたいことがあるんだろうけれど、うまく言葉にできていないんだろう。ナルミの顔は好みじゃなかったとか、あんな体じゃ抱けないとか。色々引っくるめて、俺が凛莉師匠の体に入った俺で良かったといいたかったらしい。一生懸命瞳が右往左往して、変な汗を掻きながら言葉を選んでいる、不器用でそんなところも可愛いなと思う訳だ。
俺も間島と結婚なんてしたくない、考えただけで吐き気がする。フロウライトだから良いんだ……。
「えーと、少し私を小馬鹿にしているようにみえて大切にしてくれているところとか」
「無理に言葉にしなくて良いぞ」
「いやしかし」
「お前のそういう律儀なところは嫌いじゃない」
「私は君の察しがいい所に助けられているな」
「伴侶だからな」
「ああ」
フロウライトに抱き寄せられてキスをする。向こうから切られて繋がってはいないけれど、俺も持っていた棒を放り投げた。こいつを本来の目的で使うことはもうないだろうし。
「凛莉、抱きたい」
「うん、俺もシたい」
きっと師匠も間島と盛り上がっているだろうし、俺達も愛し合おう。
「リン師匠も幸せそうだし、俺もお前と一緒にいれて結婚できて嬉しいよ」
同意の言葉か、抱き締めてくるかのどちらかかと思ったら、フロウライトは腕を開いたままプルプルと震えていた。
「フロウ?」
「こ、このまま凛莉を抱き締めたら、嬉しすぎて力の加減ができずまた気絶させるかもしれない……っ」
流石に思わず吹き出してしまった。
「気を失ったらできないもんな? はは、俺はまだ強くならなきゃいけないみたいだな? どれだけ強くなれば良いんだ?」
「わ、私に締め落とされなくなるまで……!」
「どんだけだよ。でもそうなれるように頑張るさ」
「凛莉っ!!」
「うぐっ?!」
感極まったフロウライトにまた絞め落とされたのはいうまでもない。本当に私の可愛い馬鹿野郎は可愛い伴侶だった。
俺達結婚しましたり 終
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