【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって

鏑木 うりこ

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1 憑依なのか何も覚えていない侯爵令嬢、婚約破棄される

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お慕いしておりました……

 強烈に強い悲しみの感情だけが残っていた。

「エリーゼ・シュトラウス! この後に及んでまだそのような演技を!」
「いてて!な、何よ、痛いじゃない!……ん?」
「エリーゼ……?」

 私は誰かに腕を引っ張られて、立たされた。痛いっつーの!

「ここ、どこ?」

 私はキョロキョロと辺りを見回す。凄い高そうなドレスの女性たち。負けず劣らず高そうな正装の男性。ダンス会場?いや、周りもめちゃくちゃ豪華だし、え?何?? 城?? どっかの豪邸??

「しらばっくれるな! エリーゼ・シュトラウス!」

 私の目の前には、一段と豪華な金髪の若い男。歳は18かな? 私より断然若い学生さん? それになんとも下品によりそう女が一人。胸元がガバッと空いてスカスカしてる。胸がないのに無理矢理セクシーな服を着た感じの痛い奴。

「ここ、どこ? ところで腕が痛いから離してくれる? えーと、誰?」

 私の腕を掴んでいる同じ位の学生さんに言ってみる。

「ふざけるのも大概にしろ! エリーゼ・シュトラウス侯爵令嬢! いや、令嬢などと呼ぶのもおこがましいわ!」
「誰? 私は門倉絵里ですけど?」

 私は門倉絵里、28歳独身。彼氏いない歴5年辛い。

「ふざけるな!!」
「??」


 私はどうやらエリーゼ・シュトラウス侯爵令嬢の中に入ってしまったようだ。

 しかも婚約破棄の断罪の真っ最中に!!


「信じていただけないかもしれませんが何もさっぱり分からないので……」
「ぐっ!」

 目の前で唸る金髪はヨハン・ゼルトニア第三王子。エリーゼの婚約者だった男だ。

「ともかく! 婚約破棄はさせて貰う! そしてこのルシール・アライン子爵令嬢と新たに婚約をする物とする!」

 ざわっと会場が揺れる中、私は思わず口を開いてしまった。

「へえ、随分結婚相手の爵位落ちるけど良いんだ? 侯爵家ってだいぶ上で、子爵って下だよね?」
 ざわ、ざわ……会場が揺れた! あ、やばっ言っちゃ駄目なことだった?!?!

「ぐっ! うるさい! わたしたちは愛し合っているんだ!」
「愛し合っているねぇ……今、婚約破棄されたってことはさ。ついさっきまで婚約者だったんでしょ? 婚約者がいたのに愛し合ってたの? 不味くない?? 浮気?! 結婚前から浮気なの!?!? サイテー!」

 会場がまた揺れた。やばっ!

「うるさい! 黙れ黙れ!」
「うるさいばっかり。まあ浮気男と結婚なんてしたくないから良いけどさー。それにしても出来るの? 婚約破棄って。こう言うのって本で読んだけど家同士の何とかあるんじゃないの??」

 ヨハン王子はまた詰まった。え? 何にも考えてないの? えーー!


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