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番外編
海中デート
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穏やかな昼下がり。
今日はゆっくり出来る日だからと、レイナルドは昼食後にメリュディーナと一緒にデッキに置いてあるビーチチェアに寝転んでいた。
「……僕も久しぶりに泳いでみようかな」
レイナルドが海に視線をやってそう言うと、メリュディーナはぱちりと瞬いた。
きょとんとしているメリュディーナに、起き上がったレイナルドが「駄目かな?」と首を傾げてみせると、メリュディーナは慌てて手を振る。
「違うわ、駄目ってことじゃなくて……あの、それって、レイと一緒に海に行ける、てこと?」
「うん、久しぶり過ぎて上手く泳げるか分からないけど」
もう十年近くまともに泳いでないから、と苦笑したレイナルドに、けれどメリュディーナはぱっと顔を綻ばせた。
「それなら手を繋いで泳ぎましょう」
メリュディーナはレイナルドの両手を取って立ち上がると、嬉しそうにくるくると回り始める。
「魚たちにレイを紹介したいわ。それに見せたい場所もたくさんあるの。ねぇ、珊瑚は見たことある? 海藻の森も素敵でね」
まずはどこから行こうかしらと笑っているメリュディーナにされるがまま、一緒にくるくると回りながら、けれどレイナルドは申し訳なさそうに眉を下げる。
「どこも素敵そうだから見てみたいけど――でも、ごめん。僕はメルみたいに長い時間は潜れないんだ」
しゅん、と眉を下げてしまったレイナルドにメリュディーナは動きを止めるとまたぱちりと瞬いて――そうしてあ、と小さく呟いた。
「陸の人たちは水の中では息が出来ないんだったわね」
「うん。だから少しだけ一緒に泳いだら僕は砂浜で待っているから」
メルはいつも通り好きなだけ泳いでおいで、と続けようとしたレイナルドに、メリュディーナは少し考えてからぱちんっと両手を合わせた。
「時計と同じように、レイを空気で包んでしまえば良いんじゃないかしら」
。o○o。.:*:.。o○o。
「どう? 大丈夫そう?」
メリュディーナに手を引かれて、心の準備が出来切る前にあっという間に海の中へと誘われてしまったレイナルドは、自然と止めてしまっていた息をそっと吐き出す。
こぽりと空気の泡が水面へと上っていくのを目で追って、そうしてレイナルドはもう一度息を止めてから、ほんの僅か、息を吸い込んでみる。
「……すごい」
普通であれば入り込んで来るのは海水のはずだけれど、今入ってきたのは陸に居る時と同じように空気だった。
「すごいよ、メル。本当に息が出来る!」
息が出来るどころか、メリュディーナとの会話まで可能だ。
繋いでいるメリュディーナの手をぎゅっと握ってすごいすごいと繰り返すレイナルドに、メリュディーナも嬉しそうに笑みを零す。
「良かった! 陸の人に魔法をかけるのは初めてだから少し心配だったけど、これで海の中でもデート出来るわね」
行きましょう、とレイナルドの手を引いて泳ぎ始めたメリュディーナに、レイナルドも一つ頷くと海水を蹴った。
手を繋いだまま海中を進んで、珊瑚とそこに集う色とりどりの魚たちと戯れたり、ゆったりと泳ぐウミガメに倣ってみたり。
かと思ったら好奇心旺盛なイルカたちと追いかけっこをしてみたり。
どうやらレイナルドにあれこれと見せたいらしいメリュディーナに手を引かれる形で海中散歩を満喫していたレイナルドは、ふと思いついてメリュディーナに呼びかける。
「メルの家はどこにあるんだい?」
そう尋ねられて、メリュディーナは少し恥ずかしそうにレイナルドを見返す。
「もう少し深いところよ……。い、行って、みる……?」
「僕が入っても良いなら」
食い気味に頷いたレイナルドに、メリュディーナは少し迷う素振りの後にじゃあ、と身体の向きを変えた。
「へぇ……」
何度目かのレイナルドの「すごい」に、メリュディーナは照れたように微笑む。
かろうじて陽の光が届く深さの海中に広がる珊瑚の、その影に隠れるように一人がくぐれる程度の入口がぽかりと口を開けていた。
先に入ったメリュディーナを追ってレイナルドが入口を通り抜けると、ほんわりと優しい光に照らされる。
珊瑚の中にこんな空間が、と驚いたものの、珊瑚をくり抜いているわけでもなさそうな、家というよりも部屋といった風なこぢんまりとしたその空間に置かれているのは、空間のほとんどを埋めている透き通ったベッドと、珊瑚で出来ている飾り棚。
その飾り棚の横には何だか年代物の気配のする大きな姿見が置かれていて、天井部分には魔法で作り出しているらしい、明るすぎない優しい光を灯したランプが下がっている。
へぇ、と不思議そうにランプを眺めて、それから飾り棚に目を向けたレイナルドが、あ、と小さく声を上げた。
「これ」
飾り棚に小さな小箱を見つけたレイナルドに、メリュディーナはえぇと頷くと、胸元を飾っている懐中時計を外して小箱の中に懐中時計を収めてみせる。
「家にいる間はここに入れていたのだけど……これも、持って行こうかしら」
レイナルドと番うことを決めてから、結局メリュディーナの生活の中心は海辺のコテージで、毎日海に入ってはいるもののこの家でゆっくり過ごすという事はほぼなくなっている。
時計を入れるのにちょうど良いサイズだからと、最初の五日間のデート中にレイナルドが買ってくれたこの小箱は、帰ってきた時に時計をしまっておく為に海底で見つけた〝お宝〟と一緒にここに置いているけれど。
ほとんど帰って来ないとなると、やっぱりコテージに置いておく方が良いかしら、とメリュディーナはうぅんと悩む。
「これはこれで置いておいて、また別の入れ物を買っても良いよ」
そんな事を言うレイナルドに、メリュディーナはそんなに要らないったらと困ったように苦笑する。
「――うん。やっぱり持って行くわ」
レイナルドがプレゼントしてくれた他の物は全部コテージに置いてある。
これだけずっと海の中というのも可哀想な気がして、メリュディーナは小箱をそっと手に取った。
「レイ、そろそろ……」
部屋がいくつもあるコテージや、それよりももっとずっと大きなリナレス家の本邸とは違って、くるりと見渡すだけで終わってしまう家だからもう充分だろうと、海のお散歩に戻らない? と言おうとしたメリュディーナはくんっと腕を引かれて小さく声を上げた。
メリュディーナを受け止めて、そのままベッドに背中を預けたレイナルドは、ぽよんっと弾むような、それでいて柔らかく包まれる感覚にわぁ、と声を漏らす。
「面白いね、このベッド」
「くらげさんに似せているの」
メリュディーナを抱いたままぽわぽわとベッドの感触を確かめたレイナルドは「ちょっとしにくいかな」と呟くと、くるんと自分とメリュディーナの位置を入れ替えた。
ぽわりと優しくベッドに沈められたメリュディーナは、そろりとレイナルドを見上げる。
「あの、レイ……?」
「うん。しよっか」
にっこりと微笑んだレイナルドは、メリュディーナの手の中の小箱を取り上げるとベッドの端っこに置いてしまった。
その動きを目で追ってから、メリュディーナは念の為「ここで?」と確認をしてみる。
もちろんと頷かれたので、じゃあ……と人化しようとしたメリュディーナをレイナルドが止めた。
「ここは海の中の、メルの――人魚の家だろう?」
「え、えぇ……」
「それならやっぱり、このまました方が良いと思わない?」
「――え」
このまま、という事は、人魚の姿のままという事かしらと考えて、メリュディーナは戸惑いを隠すことなくレイナルドを見上げる。
「人魚同士の交尾の仕方は分かる?」
「ええ、一応……」
メリュディーナ自身は人魚同士での交尾経験はないけれど、泳いでいる時に真っ最中の恋人たちや番たちを見かけることはあるし、人化してるとはいえレイナルドと何度もしているから、どうするかは分かる。
「陸の人たちと一緒よ……ここ、に」
そろりと、人化した時よりも少し下。鱗が薄くなっている場所へと手を伸ばす。
メリュディーナが示す場所に視線を止めたレイナルドは、そっとそこに指先で触れた。
「――本当だ。こんなところに隠れてたんだね」
人魚姿のメリュディーナを目にするのは泳いでいる時がほとんどだし、岩場などに腰掛けている時もここにまでは意識がいかなかったなと、レイナルドはメリュディーナの膣口の周りを指先で撫でる。
ぴくりと小さく震えたメリュディーナに、レイナルドは指の動きを止めると「感じる?」と囁く。
「は、初めて触られるから……少し、くすぐったくて……」
メリュディーナの答えになるほどと頷いて、レイナルドはもう一度くるりと撫でると、膣口に指先をあてる。
「挿れてみても良い?」
メリュディーナがこくんと頷いたのを確認して、レイナルドは膣口にゆっくり指を沈ませた。
人化した時よりも入口は狭いかな、と思いながら進ませた指先が、すぐに突起のようなものに触れる。
「っん……!」
びくりと反応をしたメリュディーナに、レイナルドはもう一度確かめるように、けれど指先で引っ掻くようにこりっと撫でてみる。
「あぁっ!!」
今度は大きくびくんと跳ねたメリュディーナのその反応に、レイナルドは笑みを浮かべた。
「ここだね」
こりこりと突起への刺激を続ければ、メリュディーナはいや、だめと甘い声で啼きながらベッドの上で身悶える。
くらげを模したベッドがメリュディーナの反応に合わせてぽわぽわと揺れているのを感じながら、レイナルドは人化している時よりも好さそうだなと小さく笑む。
それなら、とレイナルドが突起を引っ掻くように少し強めに刺激すると、メリュディーナは高い声を上げて腰を跳ねさせた。
膣内がひくひくと痙攣して、レイナルドの指をきゅうきゅうと締め付けてくる。
「もしかして、いった?」
愛液のようなものはないけれど、腟内だけでなくその身も震わせているメリュディーナに、レイナルドはゆっくりと腟内から指を抜く。
「慣らさなくても平気なのかな」
「……たぶ、ん」
メリュディーナの吐息混じりの返答に、レイナルドが挿れて良い? と囁くように問いかけると、メリュディーナはこくこくと頷いた。
レイナルドはズボンをくつろげると、既に硬くなっている自身を取り出してメリュディーナの膣口に先端をあてがう。
そうしてゆっくりと、メリュディーナの中へと自身を埋めた。
「っせま……」
やはり入口は人化した時よりも狭い。
押し戻されてしまいそうな膣壁を押し開くようにレイナルドがぐっと腰を進めると、すぐに先端が先ほどの突起を擦った。
「あぁんっ!」
「ん。ここ、やっぱり良いんだ?」
小刻みに腰を揺すって先端でこりこりと突起を擦ると、メリュディーナは嫌々をするように首を振る。
「やっ、レイ! それだめっ、だめぇ……っ!」
固く目を瞑ってだめ、いや、と身を捩るメリュディーナに、レイナルドは一度動きを止めるとメリュディーナに口付ける。
「ごめん、痛かった?」
ちゅ、ちゅ、とあやす様に頬や眦にキスをするレイナルドに、メリュディーナはふるふると首を振る。
「ちがうの。気持ち、良くて……良すぎて、だめなの……」
そんな事を言いながらぽろりと涙を零したメリュディーナに、レイナルドはぐっと息を飲み込む。
「レイ……早く、おく、に……」
来て、と強請るのはまだ羞恥心が勝ってしまって言葉に出来ず、メリュディーナは潤んだ瞳でレイナルドを見上げる。
レイナルドはメリュディーナのおねだりに答えるように頬にキスを落として、そうして「行くよ」とゆっくりと腰を進めた。
「ぅっ……く……っ!」
「んっ、レイ?」
けれど小さく呻いてすぐに動きを止めてしまったレイナルドを、メリュディーナはやっぱり人魚とでは上手く出来ないのかしらと不安になって見上げる。
そんなメリュディーナの視線に、レイナルドは違うとすぐに首を振った。
「ごめん……っ飲み込まれ、そ……で……」
まずい、と呻いたレイナルドが、中でぐぐっと硬さを増す。
「メルに食べられてるみたいで……すごい……良すぎて、おかしくなりそうだ」
人化した時よりも狭い入口は、その狭さ故かレイナルドを喰らうかのように吸い付いてくる。
愛液とは違うようだけれど膣道はしっとりと濡れていて、奥へ奥へと誘うようにぬるぬると絡みついて来る。
その誘いに抗う事など出来ず、誘われるままに狭い膣道を進むと、少しだけ膣道が広がった。
その先はまた狭まっているのか、レイナルドの先端は小さな口のようなそこにぴったりと納まって、そうしてねっとりと包み込まれた。
小さく腰を揺すると、レイナルドの先端にくぷくぷとその小さな口が吸い付いてくる。
「あぁ、メル……っ気持ち良いよ、すごく」
「レイ……わたし、も……っ」
陶然としたように名を呼び合いながらしばらくゆるゆると身体を揺すっていたレイナルドは、一度動きを止めてはぁっと熱い吐息を零した。
そうして最奥を目指すために、一度腰を引く。
「っ!? あ……っ」
思わずと言った風に漏れたレイナルドの上擦ったようなその声に、メリュディーナも反応してきゅんっと膣内が疼いた。
メリュディーナ自身も収縮した事が分かる程に、膣壁がレイナルドをきゅうっと絞めつけている。
腰を引くレイナルドを、まるで逃がさないとでも言うようにずりずりずりっと膣襞が擦ってくるものだから、レイナルドは堪らずにメリュディーナを抱き締める。
「ごめん、メル……すぐイきそうだ……っ」
「ん、レイも、きもちいい……?」
レイナルドが動く度、ぴくん、ぴくん、と身体を震わせているメリュディーナも気持ち良いのだろうかとぼんやりと思いながら、レイナルドは言葉もなく頷き返す。
「すごく、良い……ごめん、メル」
そう囁いて、レイナルドは一気にメリュディーナの最奥へと自身を突き入れた。
その動きでベッドがぽわんっと沈んだものだから、レイナルドはメリュディーナの腰をしっかりと掴むと、もう一度ぐんっと腰を進める。
「っは……! メル……すご、い……っ」
「あぁっ、レイ……!」
メリュディーナの最奥――子宮口が、レイナルドの先端を迎え入れる。
途中にある小さな口のようだったそこと同じように――いや、それ以上だろうか。レイナルドの先端を逃すまいとちゅうちゅうと吸い付いてくる。
揺さぶる度に肉襞に絡みつかれ、子宮口に吸い付かれ、人化している時とのあまりの違いにレイナルドは夢中でメリュディーナの中を貪った。
メリュディーナもまたレイナルドが動く度に入口近くの突起を、膣襞を、ぞりぞりと擦られ子宮口を突かれて、その度に今まで感じた事がないくらいの快感がビリビリと全身を駆け抜けていって、堪らずにレイナルドにしがみつく。
人化している時のように足を絡められない事が寂しくてもどかしくて、メリュディーナは知らず自らレイナルドに腰を押し付ける。
「あぁ、メル……メル……っ」
「レイ……あっ、きもちい……あぁっ、あっ」
互いにきつく抱きしめ合いながら、夢中で腰を振り、もっともっとと受け入れる。
人化している時だってとても気持ちが良いのに、人魚のままのメリュディーナの膣内はその何倍もの快楽を二人に与えていた。
柔らかなベッドがぽわぽわと揺れているけれど、そんな事も気にならないくらいに快楽を貪り合って、そしていくらも経たない内にレイナルドは小さく呻くとメリュディーナの中に熱を放った。
びゅるびゅると勢いよく吐き出されるレイナルドの熱をお腹の奥に感じながら、メリュディーナもまたレイナルドにしがみついたままびくびくと身体を震わせた。
「――……っはぁ」
いつもよりも長い吐精を終えたレイナルドが、熱のこもったままの息を落としてメリュディーナの肩口に顔を埋める。
メリュディーナも普段以上の快楽にぼんやりとしたまま、のろのろとレイナルドの背から頭へと手を滑らせて、その柔らかな髪を撫でた。
しばらく無言で互いに抱き合って、そうしていつもより短い交わりだったというのにいつも以上に息を乱していたレイナルドは、息が落ち着いた頃にそっと身体を起こした。
そうしてゆっくりと、名残惜しそうにメリュディーナの中から出る。
「……っん」
メリュディーナの膣襞に擦られて思わず声が漏れた上に、その刺激で再び硬さを取り戻してしまった自身にレイナルドは僅かに苦笑を零す。
「メル、もう一度良い?」
まだぼんやりとしているメリュディーナの額にキスをして許しを得ようとしたけれど、メリュディーナは少しの間の後にゆるゆると首を振った。
「嫌?」
「いや……じゃないの……。でも、だめ……」
どうして、と不満が表情に出てしまったレイナルドに、メリュディーナは困ったように小さく笑ってレイナルドの頬を撫でる。
「これ以上しちゃったら、魔法が、維持出来なくなっちゃいそうで……そうしたら、レイが溺れちゃうでしょう?」
「あ……」
今思い出した、というように家の中に視線を移したレイナルドに、メリュディーナは慣れない魔法は意識していないと解けやすいのと説明をして、だからね、とレイナルドの首に腕を回してそっと頬に唇を寄せる。
「上に戻ってからで、良い?」
少し恥ずかしそうな、けれどメリュディーナからの明確な誘いに、レイナルドは嬉しそうに微笑むと片手でメリュディーナの身体を引き寄せて口付けた。
と、自身を支えるためについていたもう片方の手がベッドにふにゅっと沈み込んで、ぐらりとバランスを崩してしまう。
あっと揃って声を上げて、ぽわんと柔らかく受け止められたベッドの上で、今度は揃ってくすくすと笑う。
ぽわりぽわりと揺られながら何度か唇を重ねて、そうしてレイナルドは名残惜しそうにメリュディーナの髪を撫でる。
「じゃあ、帰ろうか」
「えぇ」
メリュディーナを抱き起こして、そしてレイナルドはふとメリュディーナの身体――膣口に視線を落とす。
「あぁ、そうか」
そうして何やら納得したように頷いたレイナルドを、メリュディーナは不思議そうに見上げる。
「いや、ほら。いつもなら零れて来ちゃうだろう?」
するりと膣口を撫でられて、メリュディーナはあ、と頬を染めた。
人化した時はレイナルドの熱がとろりと溢れ出てしまうそこは、けれど人魚のままの今はぴったりと閉じている。
「海の中でする人魚は、少しも零さないようにあんな風になってるのかなって」
「……あんな風……?」
やっぱり何かおかしかったのかしら、と青くなりかけたメリュディーナは、けれどにこりと艶やかな笑みを見せたレイナルドに、何だかとっても恥ずかしい事を言われそうな予感がして「やっぱり言わなくて良いわ!」と慌ててレイナルドの口を手で塞いだ。
メリュディーナの様子に可笑しそうに笑んだレイナルドは、メリュディーナの意を汲んでそれ以上は言葉にせずに腰を抱き寄せるとこめかみにキスをする。
そうしてベッドの端に置いてあった、メリュディーナが持って帰ると決めた小箱を手に取ると「行こうか」とメリュディーナの手を引いた。
交わりの余韻を引き摺ったまま、二人は手を繋いで、来た時よりもずっと早く泳いで真っすぐに陸を――コテージを目指した。
コテージの側の海上に顔を出した時には、辺りはすっかりと夕焼けに染まっていた。
「思ったより時間が経ってたんだね」
「ね? 海の中だと、時間が分かりにくいでしょう?」
最初の日にメリュディーナが「夕方の空の色が好きだから時々見に来るけどタイミングが合わない」とボヤいていた事を思い出して、レイナルドは「本当だ」と笑う。
「まぁ、今日はメルの家にいたのもあるしね」
レイナルドはメリュディーナを引き寄せると、砂浜にころりと横たえる。
「レイ? あの、おうちに……」
「ごめん。もう限界」
早く挿れたい、と囁かれて、レイナルドの昂りが押し付けられる。
すぐそこなのに、と言わせて貰えずに、レイナルドにしては珍しく乱暴に唇を塞がれた。
「レイ……待っ……人が、来たら……」
「来ないよ、日が暮れたら」
この砂浜は人で賑わう大通りからは少し離れているから観光客は滅多に来ないけれど、昼間には地元の子供たちが遊びに来る事はある。
街の人たちからリナレス家の――レイナルドとメリュディーナの新居と認識されているコテージのおかげか、確かに日が暮れてしまえば滅多に人は来ないけれど、絶対来ないとも言えない。
メリュディーナは必死でレイナルドの胸を叩くけれど、レイナルドはもう一度ごめんと言うと、メリュディーナの腰を引き寄せた。
結局メリュディーナはそのまま波の音に甘やかな声を重ねて――
そうしてすっかりと日が落ちて空に星が輝き始めた頃、砂まみれになってしまった二人はもう一度海に潜って、全身についた砂を落とす羽目になったのだった。
この日以降、レイナルドは度々人魚のままのメリュディーナを抱きたがって、メリュディーナもまたそれを拒むことはなかった。
そうしてレイナルドの休日の二人のデートコースに「海の中」という選択肢が加わったのだった。
○o。. Fin. .。o○
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
お読みくださいましてありがとうございました♡
そんなこんなでメリュディーナ(人魚族)は卵ではなく赤ちゃんを産みます。
人魚のナカにハマってしまったレイナルドですが、人魚のままじゃ出来ない体位とかもあるので、
人化と人魚のままとは半々くらいなんじゃないかな~と思っています()
今日はゆっくり出来る日だからと、レイナルドは昼食後にメリュディーナと一緒にデッキに置いてあるビーチチェアに寝転んでいた。
「……僕も久しぶりに泳いでみようかな」
レイナルドが海に視線をやってそう言うと、メリュディーナはぱちりと瞬いた。
きょとんとしているメリュディーナに、起き上がったレイナルドが「駄目かな?」と首を傾げてみせると、メリュディーナは慌てて手を振る。
「違うわ、駄目ってことじゃなくて……あの、それって、レイと一緒に海に行ける、てこと?」
「うん、久しぶり過ぎて上手く泳げるか分からないけど」
もう十年近くまともに泳いでないから、と苦笑したレイナルドに、けれどメリュディーナはぱっと顔を綻ばせた。
「それなら手を繋いで泳ぎましょう」
メリュディーナはレイナルドの両手を取って立ち上がると、嬉しそうにくるくると回り始める。
「魚たちにレイを紹介したいわ。それに見せたい場所もたくさんあるの。ねぇ、珊瑚は見たことある? 海藻の森も素敵でね」
まずはどこから行こうかしらと笑っているメリュディーナにされるがまま、一緒にくるくると回りながら、けれどレイナルドは申し訳なさそうに眉を下げる。
「どこも素敵そうだから見てみたいけど――でも、ごめん。僕はメルみたいに長い時間は潜れないんだ」
しゅん、と眉を下げてしまったレイナルドにメリュディーナは動きを止めるとまたぱちりと瞬いて――そうしてあ、と小さく呟いた。
「陸の人たちは水の中では息が出来ないんだったわね」
「うん。だから少しだけ一緒に泳いだら僕は砂浜で待っているから」
メルはいつも通り好きなだけ泳いでおいで、と続けようとしたレイナルドに、メリュディーナは少し考えてからぱちんっと両手を合わせた。
「時計と同じように、レイを空気で包んでしまえば良いんじゃないかしら」
。o○o。.:*:.。o○o。
「どう? 大丈夫そう?」
メリュディーナに手を引かれて、心の準備が出来切る前にあっという間に海の中へと誘われてしまったレイナルドは、自然と止めてしまっていた息をそっと吐き出す。
こぽりと空気の泡が水面へと上っていくのを目で追って、そうしてレイナルドはもう一度息を止めてから、ほんの僅か、息を吸い込んでみる。
「……すごい」
普通であれば入り込んで来るのは海水のはずだけれど、今入ってきたのは陸に居る時と同じように空気だった。
「すごいよ、メル。本当に息が出来る!」
息が出来るどころか、メリュディーナとの会話まで可能だ。
繋いでいるメリュディーナの手をぎゅっと握ってすごいすごいと繰り返すレイナルドに、メリュディーナも嬉しそうに笑みを零す。
「良かった! 陸の人に魔法をかけるのは初めてだから少し心配だったけど、これで海の中でもデート出来るわね」
行きましょう、とレイナルドの手を引いて泳ぎ始めたメリュディーナに、レイナルドも一つ頷くと海水を蹴った。
手を繋いだまま海中を進んで、珊瑚とそこに集う色とりどりの魚たちと戯れたり、ゆったりと泳ぐウミガメに倣ってみたり。
かと思ったら好奇心旺盛なイルカたちと追いかけっこをしてみたり。
どうやらレイナルドにあれこれと見せたいらしいメリュディーナに手を引かれる形で海中散歩を満喫していたレイナルドは、ふと思いついてメリュディーナに呼びかける。
「メルの家はどこにあるんだい?」
そう尋ねられて、メリュディーナは少し恥ずかしそうにレイナルドを見返す。
「もう少し深いところよ……。い、行って、みる……?」
「僕が入っても良いなら」
食い気味に頷いたレイナルドに、メリュディーナは少し迷う素振りの後にじゃあ、と身体の向きを変えた。
「へぇ……」
何度目かのレイナルドの「すごい」に、メリュディーナは照れたように微笑む。
かろうじて陽の光が届く深さの海中に広がる珊瑚の、その影に隠れるように一人がくぐれる程度の入口がぽかりと口を開けていた。
先に入ったメリュディーナを追ってレイナルドが入口を通り抜けると、ほんわりと優しい光に照らされる。
珊瑚の中にこんな空間が、と驚いたものの、珊瑚をくり抜いているわけでもなさそうな、家というよりも部屋といった風なこぢんまりとしたその空間に置かれているのは、空間のほとんどを埋めている透き通ったベッドと、珊瑚で出来ている飾り棚。
その飾り棚の横には何だか年代物の気配のする大きな姿見が置かれていて、天井部分には魔法で作り出しているらしい、明るすぎない優しい光を灯したランプが下がっている。
へぇ、と不思議そうにランプを眺めて、それから飾り棚に目を向けたレイナルドが、あ、と小さく声を上げた。
「これ」
飾り棚に小さな小箱を見つけたレイナルドに、メリュディーナはえぇと頷くと、胸元を飾っている懐中時計を外して小箱の中に懐中時計を収めてみせる。
「家にいる間はここに入れていたのだけど……これも、持って行こうかしら」
レイナルドと番うことを決めてから、結局メリュディーナの生活の中心は海辺のコテージで、毎日海に入ってはいるもののこの家でゆっくり過ごすという事はほぼなくなっている。
時計を入れるのにちょうど良いサイズだからと、最初の五日間のデート中にレイナルドが買ってくれたこの小箱は、帰ってきた時に時計をしまっておく為に海底で見つけた〝お宝〟と一緒にここに置いているけれど。
ほとんど帰って来ないとなると、やっぱりコテージに置いておく方が良いかしら、とメリュディーナはうぅんと悩む。
「これはこれで置いておいて、また別の入れ物を買っても良いよ」
そんな事を言うレイナルドに、メリュディーナはそんなに要らないったらと困ったように苦笑する。
「――うん。やっぱり持って行くわ」
レイナルドがプレゼントしてくれた他の物は全部コテージに置いてある。
これだけずっと海の中というのも可哀想な気がして、メリュディーナは小箱をそっと手に取った。
「レイ、そろそろ……」
部屋がいくつもあるコテージや、それよりももっとずっと大きなリナレス家の本邸とは違って、くるりと見渡すだけで終わってしまう家だからもう充分だろうと、海のお散歩に戻らない? と言おうとしたメリュディーナはくんっと腕を引かれて小さく声を上げた。
メリュディーナを受け止めて、そのままベッドに背中を預けたレイナルドは、ぽよんっと弾むような、それでいて柔らかく包まれる感覚にわぁ、と声を漏らす。
「面白いね、このベッド」
「くらげさんに似せているの」
メリュディーナを抱いたままぽわぽわとベッドの感触を確かめたレイナルドは「ちょっとしにくいかな」と呟くと、くるんと自分とメリュディーナの位置を入れ替えた。
ぽわりと優しくベッドに沈められたメリュディーナは、そろりとレイナルドを見上げる。
「あの、レイ……?」
「うん。しよっか」
にっこりと微笑んだレイナルドは、メリュディーナの手の中の小箱を取り上げるとベッドの端っこに置いてしまった。
その動きを目で追ってから、メリュディーナは念の為「ここで?」と確認をしてみる。
もちろんと頷かれたので、じゃあ……と人化しようとしたメリュディーナをレイナルドが止めた。
「ここは海の中の、メルの――人魚の家だろう?」
「え、えぇ……」
「それならやっぱり、このまました方が良いと思わない?」
「――え」
このまま、という事は、人魚の姿のままという事かしらと考えて、メリュディーナは戸惑いを隠すことなくレイナルドを見上げる。
「人魚同士の交尾の仕方は分かる?」
「ええ、一応……」
メリュディーナ自身は人魚同士での交尾経験はないけれど、泳いでいる時に真っ最中の恋人たちや番たちを見かけることはあるし、人化してるとはいえレイナルドと何度もしているから、どうするかは分かる。
「陸の人たちと一緒よ……ここ、に」
そろりと、人化した時よりも少し下。鱗が薄くなっている場所へと手を伸ばす。
メリュディーナが示す場所に視線を止めたレイナルドは、そっとそこに指先で触れた。
「――本当だ。こんなところに隠れてたんだね」
人魚姿のメリュディーナを目にするのは泳いでいる時がほとんどだし、岩場などに腰掛けている時もここにまでは意識がいかなかったなと、レイナルドはメリュディーナの膣口の周りを指先で撫でる。
ぴくりと小さく震えたメリュディーナに、レイナルドは指の動きを止めると「感じる?」と囁く。
「は、初めて触られるから……少し、くすぐったくて……」
メリュディーナの答えになるほどと頷いて、レイナルドはもう一度くるりと撫でると、膣口に指先をあてる。
「挿れてみても良い?」
メリュディーナがこくんと頷いたのを確認して、レイナルドは膣口にゆっくり指を沈ませた。
人化した時よりも入口は狭いかな、と思いながら進ませた指先が、すぐに突起のようなものに触れる。
「っん……!」
びくりと反応をしたメリュディーナに、レイナルドはもう一度確かめるように、けれど指先で引っ掻くようにこりっと撫でてみる。
「あぁっ!!」
今度は大きくびくんと跳ねたメリュディーナのその反応に、レイナルドは笑みを浮かべた。
「ここだね」
こりこりと突起への刺激を続ければ、メリュディーナはいや、だめと甘い声で啼きながらベッドの上で身悶える。
くらげを模したベッドがメリュディーナの反応に合わせてぽわぽわと揺れているのを感じながら、レイナルドは人化している時よりも好さそうだなと小さく笑む。
それなら、とレイナルドが突起を引っ掻くように少し強めに刺激すると、メリュディーナは高い声を上げて腰を跳ねさせた。
膣内がひくひくと痙攣して、レイナルドの指をきゅうきゅうと締め付けてくる。
「もしかして、いった?」
愛液のようなものはないけれど、腟内だけでなくその身も震わせているメリュディーナに、レイナルドはゆっくりと腟内から指を抜く。
「慣らさなくても平気なのかな」
「……たぶ、ん」
メリュディーナの吐息混じりの返答に、レイナルドが挿れて良い? と囁くように問いかけると、メリュディーナはこくこくと頷いた。
レイナルドはズボンをくつろげると、既に硬くなっている自身を取り出してメリュディーナの膣口に先端をあてがう。
そうしてゆっくりと、メリュディーナの中へと自身を埋めた。
「っせま……」
やはり入口は人化した時よりも狭い。
押し戻されてしまいそうな膣壁を押し開くようにレイナルドがぐっと腰を進めると、すぐに先端が先ほどの突起を擦った。
「あぁんっ!」
「ん。ここ、やっぱり良いんだ?」
小刻みに腰を揺すって先端でこりこりと突起を擦ると、メリュディーナは嫌々をするように首を振る。
「やっ、レイ! それだめっ、だめぇ……っ!」
固く目を瞑ってだめ、いや、と身を捩るメリュディーナに、レイナルドは一度動きを止めるとメリュディーナに口付ける。
「ごめん、痛かった?」
ちゅ、ちゅ、とあやす様に頬や眦にキスをするレイナルドに、メリュディーナはふるふると首を振る。
「ちがうの。気持ち、良くて……良すぎて、だめなの……」
そんな事を言いながらぽろりと涙を零したメリュディーナに、レイナルドはぐっと息を飲み込む。
「レイ……早く、おく、に……」
来て、と強請るのはまだ羞恥心が勝ってしまって言葉に出来ず、メリュディーナは潤んだ瞳でレイナルドを見上げる。
レイナルドはメリュディーナのおねだりに答えるように頬にキスを落として、そうして「行くよ」とゆっくりと腰を進めた。
「ぅっ……く……っ!」
「んっ、レイ?」
けれど小さく呻いてすぐに動きを止めてしまったレイナルドを、メリュディーナはやっぱり人魚とでは上手く出来ないのかしらと不安になって見上げる。
そんなメリュディーナの視線に、レイナルドは違うとすぐに首を振った。
「ごめん……っ飲み込まれ、そ……で……」
まずい、と呻いたレイナルドが、中でぐぐっと硬さを増す。
「メルに食べられてるみたいで……すごい……良すぎて、おかしくなりそうだ」
人化した時よりも狭い入口は、その狭さ故かレイナルドを喰らうかのように吸い付いてくる。
愛液とは違うようだけれど膣道はしっとりと濡れていて、奥へ奥へと誘うようにぬるぬると絡みついて来る。
その誘いに抗う事など出来ず、誘われるままに狭い膣道を進むと、少しだけ膣道が広がった。
その先はまた狭まっているのか、レイナルドの先端は小さな口のようなそこにぴったりと納まって、そうしてねっとりと包み込まれた。
小さく腰を揺すると、レイナルドの先端にくぷくぷとその小さな口が吸い付いてくる。
「あぁ、メル……っ気持ち良いよ、すごく」
「レイ……わたし、も……っ」
陶然としたように名を呼び合いながらしばらくゆるゆると身体を揺すっていたレイナルドは、一度動きを止めてはぁっと熱い吐息を零した。
そうして最奥を目指すために、一度腰を引く。
「っ!? あ……っ」
思わずと言った風に漏れたレイナルドの上擦ったようなその声に、メリュディーナも反応してきゅんっと膣内が疼いた。
メリュディーナ自身も収縮した事が分かる程に、膣壁がレイナルドをきゅうっと絞めつけている。
腰を引くレイナルドを、まるで逃がさないとでも言うようにずりずりずりっと膣襞が擦ってくるものだから、レイナルドは堪らずにメリュディーナを抱き締める。
「ごめん、メル……すぐイきそうだ……っ」
「ん、レイも、きもちいい……?」
レイナルドが動く度、ぴくん、ぴくん、と身体を震わせているメリュディーナも気持ち良いのだろうかとぼんやりと思いながら、レイナルドは言葉もなく頷き返す。
「すごく、良い……ごめん、メル」
そう囁いて、レイナルドは一気にメリュディーナの最奥へと自身を突き入れた。
その動きでベッドがぽわんっと沈んだものだから、レイナルドはメリュディーナの腰をしっかりと掴むと、もう一度ぐんっと腰を進める。
「っは……! メル……すご、い……っ」
「あぁっ、レイ……!」
メリュディーナの最奥――子宮口が、レイナルドの先端を迎え入れる。
途中にある小さな口のようだったそこと同じように――いや、それ以上だろうか。レイナルドの先端を逃すまいとちゅうちゅうと吸い付いてくる。
揺さぶる度に肉襞に絡みつかれ、子宮口に吸い付かれ、人化している時とのあまりの違いにレイナルドは夢中でメリュディーナの中を貪った。
メリュディーナもまたレイナルドが動く度に入口近くの突起を、膣襞を、ぞりぞりと擦られ子宮口を突かれて、その度に今まで感じた事がないくらいの快感がビリビリと全身を駆け抜けていって、堪らずにレイナルドにしがみつく。
人化している時のように足を絡められない事が寂しくてもどかしくて、メリュディーナは知らず自らレイナルドに腰を押し付ける。
「あぁ、メル……メル……っ」
「レイ……あっ、きもちい……あぁっ、あっ」
互いにきつく抱きしめ合いながら、夢中で腰を振り、もっともっとと受け入れる。
人化している時だってとても気持ちが良いのに、人魚のままのメリュディーナの膣内はその何倍もの快楽を二人に与えていた。
柔らかなベッドがぽわぽわと揺れているけれど、そんな事も気にならないくらいに快楽を貪り合って、そしていくらも経たない内にレイナルドは小さく呻くとメリュディーナの中に熱を放った。
びゅるびゅると勢いよく吐き出されるレイナルドの熱をお腹の奥に感じながら、メリュディーナもまたレイナルドにしがみついたままびくびくと身体を震わせた。
「――……っはぁ」
いつもよりも長い吐精を終えたレイナルドが、熱のこもったままの息を落としてメリュディーナの肩口に顔を埋める。
メリュディーナも普段以上の快楽にぼんやりとしたまま、のろのろとレイナルドの背から頭へと手を滑らせて、その柔らかな髪を撫でた。
しばらく無言で互いに抱き合って、そうしていつもより短い交わりだったというのにいつも以上に息を乱していたレイナルドは、息が落ち着いた頃にそっと身体を起こした。
そうしてゆっくりと、名残惜しそうにメリュディーナの中から出る。
「……っん」
メリュディーナの膣襞に擦られて思わず声が漏れた上に、その刺激で再び硬さを取り戻してしまった自身にレイナルドは僅かに苦笑を零す。
「メル、もう一度良い?」
まだぼんやりとしているメリュディーナの額にキスをして許しを得ようとしたけれど、メリュディーナは少しの間の後にゆるゆると首を振った。
「嫌?」
「いや……じゃないの……。でも、だめ……」
どうして、と不満が表情に出てしまったレイナルドに、メリュディーナは困ったように小さく笑ってレイナルドの頬を撫でる。
「これ以上しちゃったら、魔法が、維持出来なくなっちゃいそうで……そうしたら、レイが溺れちゃうでしょう?」
「あ……」
今思い出した、というように家の中に視線を移したレイナルドに、メリュディーナは慣れない魔法は意識していないと解けやすいのと説明をして、だからね、とレイナルドの首に腕を回してそっと頬に唇を寄せる。
「上に戻ってからで、良い?」
少し恥ずかしそうな、けれどメリュディーナからの明確な誘いに、レイナルドは嬉しそうに微笑むと片手でメリュディーナの身体を引き寄せて口付けた。
と、自身を支えるためについていたもう片方の手がベッドにふにゅっと沈み込んで、ぐらりとバランスを崩してしまう。
あっと揃って声を上げて、ぽわんと柔らかく受け止められたベッドの上で、今度は揃ってくすくすと笑う。
ぽわりぽわりと揺られながら何度か唇を重ねて、そうしてレイナルドは名残惜しそうにメリュディーナの髪を撫でる。
「じゃあ、帰ろうか」
「えぇ」
メリュディーナを抱き起こして、そしてレイナルドはふとメリュディーナの身体――膣口に視線を落とす。
「あぁ、そうか」
そうして何やら納得したように頷いたレイナルドを、メリュディーナは不思議そうに見上げる。
「いや、ほら。いつもなら零れて来ちゃうだろう?」
するりと膣口を撫でられて、メリュディーナはあ、と頬を染めた。
人化した時はレイナルドの熱がとろりと溢れ出てしまうそこは、けれど人魚のままの今はぴったりと閉じている。
「海の中でする人魚は、少しも零さないようにあんな風になってるのかなって」
「……あんな風……?」
やっぱり何かおかしかったのかしら、と青くなりかけたメリュディーナは、けれどにこりと艶やかな笑みを見せたレイナルドに、何だかとっても恥ずかしい事を言われそうな予感がして「やっぱり言わなくて良いわ!」と慌ててレイナルドの口を手で塞いだ。
メリュディーナの様子に可笑しそうに笑んだレイナルドは、メリュディーナの意を汲んでそれ以上は言葉にせずに腰を抱き寄せるとこめかみにキスをする。
そうしてベッドの端に置いてあった、メリュディーナが持って帰ると決めた小箱を手に取ると「行こうか」とメリュディーナの手を引いた。
交わりの余韻を引き摺ったまま、二人は手を繋いで、来た時よりもずっと早く泳いで真っすぐに陸を――コテージを目指した。
コテージの側の海上に顔を出した時には、辺りはすっかりと夕焼けに染まっていた。
「思ったより時間が経ってたんだね」
「ね? 海の中だと、時間が分かりにくいでしょう?」
最初の日にメリュディーナが「夕方の空の色が好きだから時々見に来るけどタイミングが合わない」とボヤいていた事を思い出して、レイナルドは「本当だ」と笑う。
「まぁ、今日はメルの家にいたのもあるしね」
レイナルドはメリュディーナを引き寄せると、砂浜にころりと横たえる。
「レイ? あの、おうちに……」
「ごめん。もう限界」
早く挿れたい、と囁かれて、レイナルドの昂りが押し付けられる。
すぐそこなのに、と言わせて貰えずに、レイナルドにしては珍しく乱暴に唇を塞がれた。
「レイ……待っ……人が、来たら……」
「来ないよ、日が暮れたら」
この砂浜は人で賑わう大通りからは少し離れているから観光客は滅多に来ないけれど、昼間には地元の子供たちが遊びに来る事はある。
街の人たちからリナレス家の――レイナルドとメリュディーナの新居と認識されているコテージのおかげか、確かに日が暮れてしまえば滅多に人は来ないけれど、絶対来ないとも言えない。
メリュディーナは必死でレイナルドの胸を叩くけれど、レイナルドはもう一度ごめんと言うと、メリュディーナの腰を引き寄せた。
結局メリュディーナはそのまま波の音に甘やかな声を重ねて――
そうしてすっかりと日が落ちて空に星が輝き始めた頃、砂まみれになってしまった二人はもう一度海に潜って、全身についた砂を落とす羽目になったのだった。
この日以降、レイナルドは度々人魚のままのメリュディーナを抱きたがって、メリュディーナもまたそれを拒むことはなかった。
そうしてレイナルドの休日の二人のデートコースに「海の中」という選択肢が加わったのだった。
○o。. Fin. .。o○
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お読みくださいましてありがとうございました♡
そんなこんなでメリュディーナ(人魚族)は卵ではなく赤ちゃんを産みます。
人魚のナカにハマってしまったレイナルドですが、人魚のままじゃ出来ない体位とかもあるので、
人化と人魚のままとは半々くらいなんじゃないかな~と思っています()
応援ありがとうございます!
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