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駆け出し転生者ウタ
マジかよ
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それからも、街を歩いていると、色んなところでアリアさんの話題が飛び出した。
……聞いたところ、悪い印象のものは一つもない。完璧な人間ではないようだが、それでも、この王都の人々を支える上では十分すぎるほどの人物だということだ。
「おれな! おっきくなったら、アリアさまみたいになるんだ!」
そんなことを言う子供も、少なくない。それだけ信頼されてるんだ。
……だからこそ、
「おい……あれ、なんだ?」
結界の外で弾けた強い光に、みんな、恐怖心を抱いた。それは僕だって同じ。……同じと言うより、
「なっななななな何あれ??!! す、スラちゃん! スラちゃぁぁぁぁん!」
「……ぷる」
スラちゃんに『ダメだこいつ』的な反応をされるくらいに、誰よりもびびっていた。光が収まり、次に目に映ったのは燃え盛る炎だった。
そして、その奥に見えるのは黒い影。
「どっ、ドラゴン?!」
マジか……マジかよ。なにこれ、一日一回ドラゴン会いましょうってか? なにその日課的なやつ。意味わかんないよ。
と、聞いたことのある声がした。
「国民よ、落ち着いて行動しろ。あのドラゴンは結界を壊せるほどに強くはない。屋敷の方へ避難しろ。全員の無事を確認次第、討伐に移行する」
「エヴァンさん!?」
声はすれど姿は見えず。これも何かしらのスキルなのだろうか? しかし、そんなことを気にしている暇はなく、僕は街の人と一緒に、お屋敷へと向かった。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
お屋敷に入った僕は、アリアさんに貸してもらった部屋に逃げ込み、毛布をかぶって、ベッドの上で震えていた。他の人は広間の方にいるだろう。
……ねぇ、いやだって、ドラゴンだよ!? ドラゴン! あいつのおかげで僕は家を焼かれたわけだし、この街はめちゃくちゃ被害でたんでしょ?! ねぇ!
…………。
頭によぎるのは、そんな恐ろしいものじゃない。
ドラゴンに焼かれた家、僕を見て唸り声をあげたドラゴン、逃げた先のキマイラ……どれも違う。
アリアさんだ。
どうしてるだろう。あれだけ大きなドラゴンだ。気づかないとは思えない。逃げてきてるだろうか? ……逃げているのだろうか? そもそも、逃げようと思ったのだろうか? アリアさんにもしものことがあったら……考えるのさえ、阻まれた。
それでも、僕は弱かった。レベルは1。へっぴり腰でまともに戦えず、スラちゃんを見たときなんか可愛さに負けて試合を放棄し……なにより、今こうして震えているのが、弱さの現れだ。
「助けに行けるならさぁ……助けてるよ」
そんな勇気はない。
そんな『勇気』は、ない。
「……ステータス」
僕は、ステータス画面を開く。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 村人(仮)
レベル 1
HP 1500
MP 800
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度1.2)・使役(初級)
ユニークスキル 女神の加護・勇気
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡
なにも変わっていない。やっぱりね。こんなレベル1のヘタレじゃ、ダメだ。
…………あれ?
ステータス画面を凝視する。そこには、確かに書かれていた。
『初級魔法(熟練度1.2)』と。
ほんのわずかな成長だった。ほんの少しの成長。それでも、元の世界でなんの成長も見せなかった僕にとって、大きな一歩だった。
……ステータス画面で、あるスキルを鑑定する。
勇気……自分の限界を越える。自らの心が恐怖や圧力に打ち勝った瞬間から3分間のみ発動する。このスキルが発動している間、ステータスの値、またスキルの威力が全て100倍になる。強靭なメンタルを持つ場合、連続で発動可能。自身の意思とは無関係。
……発動しないかもしれない。また、死ぬかもしれない。それでもなぜか思ったんだ。
行かなきゃって。
行かなきゃ、ダメだって。
部屋の隅に置いてある、一本の剣。アリアさんが剣術の練習用にとくれたものだ。上手くは扱えない。でもまぁ、ないよりはましだろう。
「ぷるる……?」
「スラちゃん……」
いくの? と首をかしげてるように見えるスラちゃんを、僕は手のひらの上に乗せて笑った。
「行こうと、思う。だって……ドラゴン倒すのとかぜっっったい無理だけどさ、アリアさんをここまで引っ張ることくらいは、出来るかもしれない。
もう……出来ることを、諦めたくない」
「ぷるるっ!」
スラちゃんが手のひらで飛び上がり、僕の肩の上に乗った。
「ついてきてくれるの?」
「ぷるんっ!」
「ありがとう。……よし、行こうっ!」
僕は剣を握りしめ走り出した。
……まぁ、ここまでは、かっこよく決められたかな、うん。ここから先はねぇ。
「グォォォォォォ!」
「ドラゴーーーーーン!!!」
いつも通りです、はい。
結界の外に出られただけでも褒めてほしい。木の幹に隠れつつ、スラちゃんに活を入れられつつ、僕は恐る恐る森の中を歩く。
「あ、アリアさん……どこだぁ……」
実はもう逃げてましたっ! みたいな落ちはいらないからね! い、ら、な、い、か、ら、ね!
その瞬間、視線の先で、白いなにかが横切るのが見えた。白く見えたのは、きっと鎧であろう。横切るというよりは、吹き飛ばされたというのが正しそうだ。
…………嘘だろ。嘘だろ!?
「アリアさんっ!」
僕は我を忘れてその人がいるだろう場所へ走った。
……聞いたところ、悪い印象のものは一つもない。完璧な人間ではないようだが、それでも、この王都の人々を支える上では十分すぎるほどの人物だということだ。
「おれな! おっきくなったら、アリアさまみたいになるんだ!」
そんなことを言う子供も、少なくない。それだけ信頼されてるんだ。
……だからこそ、
「おい……あれ、なんだ?」
結界の外で弾けた強い光に、みんな、恐怖心を抱いた。それは僕だって同じ。……同じと言うより、
「なっななななな何あれ??!! す、スラちゃん! スラちゃぁぁぁぁん!」
「……ぷる」
スラちゃんに『ダメだこいつ』的な反応をされるくらいに、誰よりもびびっていた。光が収まり、次に目に映ったのは燃え盛る炎だった。
そして、その奥に見えるのは黒い影。
「どっ、ドラゴン?!」
マジか……マジかよ。なにこれ、一日一回ドラゴン会いましょうってか? なにその日課的なやつ。意味わかんないよ。
と、聞いたことのある声がした。
「国民よ、落ち着いて行動しろ。あのドラゴンは結界を壊せるほどに強くはない。屋敷の方へ避難しろ。全員の無事を確認次第、討伐に移行する」
「エヴァンさん!?」
声はすれど姿は見えず。これも何かしらのスキルなのだろうか? しかし、そんなことを気にしている暇はなく、僕は街の人と一緒に、お屋敷へと向かった。
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お屋敷に入った僕は、アリアさんに貸してもらった部屋に逃げ込み、毛布をかぶって、ベッドの上で震えていた。他の人は広間の方にいるだろう。
……ねぇ、いやだって、ドラゴンだよ!? ドラゴン! あいつのおかげで僕は家を焼かれたわけだし、この街はめちゃくちゃ被害でたんでしょ?! ねぇ!
…………。
頭によぎるのは、そんな恐ろしいものじゃない。
ドラゴンに焼かれた家、僕を見て唸り声をあげたドラゴン、逃げた先のキマイラ……どれも違う。
アリアさんだ。
どうしてるだろう。あれだけ大きなドラゴンだ。気づかないとは思えない。逃げてきてるだろうか? ……逃げているのだろうか? そもそも、逃げようと思ったのだろうか? アリアさんにもしものことがあったら……考えるのさえ、阻まれた。
それでも、僕は弱かった。レベルは1。へっぴり腰でまともに戦えず、スラちゃんを見たときなんか可愛さに負けて試合を放棄し……なにより、今こうして震えているのが、弱さの現れだ。
「助けに行けるならさぁ……助けてるよ」
そんな勇気はない。
そんな『勇気』は、ない。
「……ステータス」
僕は、ステータス画面を開く。
名前 ウタ
種族 人間
年齢 17
職業 村人(仮)
レベル 1
HP 1500
MP 800
スキル 言語理解・アイテムボックス・鑑定・暗視・剣術(初級)・体術(初級)・初級魔法(熟練度1.2)・使役(初級)
ユニークスキル 女神の加護・勇気
称号 転生者・ヘタレ・敵前逃亡
なにも変わっていない。やっぱりね。こんなレベル1のヘタレじゃ、ダメだ。
…………あれ?
ステータス画面を凝視する。そこには、確かに書かれていた。
『初級魔法(熟練度1.2)』と。
ほんのわずかな成長だった。ほんの少しの成長。それでも、元の世界でなんの成長も見せなかった僕にとって、大きな一歩だった。
……ステータス画面で、あるスキルを鑑定する。
勇気……自分の限界を越える。自らの心が恐怖や圧力に打ち勝った瞬間から3分間のみ発動する。このスキルが発動している間、ステータスの値、またスキルの威力が全て100倍になる。強靭なメンタルを持つ場合、連続で発動可能。自身の意思とは無関係。
……発動しないかもしれない。また、死ぬかもしれない。それでもなぜか思ったんだ。
行かなきゃって。
行かなきゃ、ダメだって。
部屋の隅に置いてある、一本の剣。アリアさんが剣術の練習用にとくれたものだ。上手くは扱えない。でもまぁ、ないよりはましだろう。
「ぷるる……?」
「スラちゃん……」
いくの? と首をかしげてるように見えるスラちゃんを、僕は手のひらの上に乗せて笑った。
「行こうと、思う。だって……ドラゴン倒すのとかぜっっったい無理だけどさ、アリアさんをここまで引っ張ることくらいは、出来るかもしれない。
もう……出来ることを、諦めたくない」
「ぷるるっ!」
スラちゃんが手のひらで飛び上がり、僕の肩の上に乗った。
「ついてきてくれるの?」
「ぷるんっ!」
「ありがとう。……よし、行こうっ!」
僕は剣を握りしめ走り出した。
……まぁ、ここまでは、かっこよく決められたかな、うん。ここから先はねぇ。
「グォォォォォォ!」
「ドラゴーーーーーン!!!」
いつも通りです、はい。
結界の外に出られただけでも褒めてほしい。木の幹に隠れつつ、スラちゃんに活を入れられつつ、僕は恐る恐る森の中を歩く。
「あ、アリアさん……どこだぁ……」
実はもう逃げてましたっ! みたいな落ちはいらないからね! い、ら、な、い、か、ら、ね!
その瞬間、視線の先で、白いなにかが横切るのが見えた。白く見えたのは、きっと鎧であろう。横切るというよりは、吹き飛ばされたというのが正しそうだ。
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「アリアさんっ!」
僕は我を忘れてその人がいるだろう場所へ走った。
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