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闇夜に舞う者は
怖くはないんだ
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ドラゴンとニエルの、激しい攻防が続いていた。
ニエルは相変わらずナイフ一本でその攻撃を防ぎ続け、ドラゴンは負けじと闇魔法と炎魔法を繰り出す。
(……どうして魔法を使わない?)
魔法を使えばもっと楽に防げる。もっと安全に攻撃できる。それを、彼はあえてなのか、していなかった。そして、ナイフのみを片手に握りながら、ドラゴンに問いかける。
「ところで……なぁ? 気づいてるか? 気づいてて戦ってるのか?」
「……なにがだ」
「お前のスキルだよ。俺にかけられたままの『龍王の加護』だ。分かってるんだろ?今、この状況で俺に攻撃をしたら……痛いのは自分だ」
「……分かっている。全部」
ドラゴンは強い意思をもってそういった。龍王の加護。自らのそのスキルが一体どういうものなのかを分かっているからこその、意思だった。
「……意外とな、怖くはないんだ。自分が……死ぬというのは」
「……ほぉ?」
「痛みや苦しみは味わうだろうが……それを見る方がよっぽど苦しい。それならば自分が苦しむ方がましだ。我は死んでも構わない」
「……そうか。なら、望み通り心中でもしてやろうかね。もし――俺に攻撃を与えられるのなら、ね」
そしてニエルはナイフを構えた。その口から、聞き慣れてしまった言葉が紡がれる。
「一に右足、二に左足、三四が腕で、五に頭。
……もらってくぜ、お前のその、ドラゴンらしからぬ人の体と、心」
その瞬間、ドラゴンの足に鋭い痛みが走る。気が付いたときには、すでにその太ももからは血が流れ、筋が切れ、立つことも難しくなった。
(速い……?!)
次に左足を……と迫ったナイフを、ドラゴンはなんとか避ける。
「ガーディア!」
攻撃を少しでも押し止めようとガーディアを使うが、それに向かってニエルはスッと手を伸ばす。
「……Unfinishedは成長するといったな? それは未完成だからだと。
いいか? ……俺の欲求は、永遠に満たされない。この欲が完全に満たされるまで、俺は『未完成』だ。Unfinishedと同じだよ。つまりだなぁ」
そして、魔法でつくった闇の弓矢を飛ばす。
「俺も、成長してるって訳なんだよ、な? ダークドラゴンくんよぉ」
弓矢は一発でそのガーディアを打ち砕いた。そしてドラゴンが気づいたときには、それは自分の左足に突き刺さっていた。
「っ……!」
「ほらほら……逃げてみろよぉ、ダークドラゴン。――ダークネスチェイン」
真っ黒い鎖鎌がドラゴンに襲いかかる。彼はうまく動かない足をなんとか動かしてそれを避け、姿をドラゴンに戻した。
ドラゴンであればまだ腕である翼が傷つけられていないので、ある程度動くことができる。これならば、まだ戦える。
「……そこまでして抗う理由はなんだ?」
「……お主がイエスと答えるまで、我は本当の意味で彼らと仲間になることができない。ならば力づくでも言わせて見せる。
我との契約を『全て白紙に戻し』我を解放すると」
「契約……ねぇ。契約ってのは両者の了承を得てするものだろう?」
ニエルが影でドラゴンを捕らえようとするが、それをドラゴンは炎魔法で消し去る。
「お前の了承がなくなって、それでも続いていく契約……それはつまり、呪いだ。お前が苦しむ呪い」
そしてニエルは、黒く微笑んだ。
「――手放してやるわけがないだろう? こんな最高のおもちゃをさ。
……支離滅裂」
「なっ……?!」
ドラゴンの周りに、数えきれないほどの刃が生まれる。それはカッターの刃ほどしかない、ごく小さなものだ。しかしそれが、何十何百とドラゴンを囲み、
「三と四は、同時にもらおうかな」
その翼を、一気に貫いた。小さいゆえに避けるのも難しく、ドラゴンはその攻撃をほぼもろに受けた。その体は、小さな小さな刃たちによって、ズタズタにされていく。
「……っく…………」
「飛んでいるのも難しいか? ん? そうだなぁ……また、死に怯えるあの表情を見せてくれるのなら、助けてやってもいい」
「誰が……」
「……ダークネスエレキテル」
黒い雷がドラゴンの体を貫く。その刺激に耐えきれず、ドラゴンは地面に足をつけ、そして、人の姿に戻る。小さい体の方が休むのには適していたが、目の前の彼は、確実にその命を摘み取ろうとしていた。
「あとは、五、だけだなぁ」
「…………」
「お前が俺から逃げたのは、俺かレベル88の時だったか。……今の俺は、レベル100。カンストだ」
「…………」
「お前には勝てないさ。だって、お前が俺を倒したのは……レベル100になってから、だったもんなぁ?」
ドラゴンの頭を廻るのは、目の前にいる男の顔ではない。ただひたすらに……仲間のことを危惧していた。
(……ウタ殿、すまない。お主が戦いが嫌いなのは知っている。だから一人で来た節もあるが……ダメだったな。我では、お主を助けられん)
「さーて、長い付き合いだからね。死に方は選ばせてあげるよ。ナイフか、魔法か、剣か、それとも、それ以外? 何でもいいさ、お好きにどうぞ」
(ただ、お主らを傷つけるだけの結果になってしまったかもしれない。……すまないな)
「……まるで聞いてない、か。じゃあいいや。普通にナイフで息の根止めてあげるよ」
そうしてニエルの刃が自らに迫るのを、ドラゴンはじっと見ていた。
なぜか、怖くはなかったのだ。
ニエルは相変わらずナイフ一本でその攻撃を防ぎ続け、ドラゴンは負けじと闇魔法と炎魔法を繰り出す。
(……どうして魔法を使わない?)
魔法を使えばもっと楽に防げる。もっと安全に攻撃できる。それを、彼はあえてなのか、していなかった。そして、ナイフのみを片手に握りながら、ドラゴンに問いかける。
「ところで……なぁ? 気づいてるか? 気づいてて戦ってるのか?」
「……なにがだ」
「お前のスキルだよ。俺にかけられたままの『龍王の加護』だ。分かってるんだろ?今、この状況で俺に攻撃をしたら……痛いのは自分だ」
「……分かっている。全部」
ドラゴンは強い意思をもってそういった。龍王の加護。自らのそのスキルが一体どういうものなのかを分かっているからこその、意思だった。
「……意外とな、怖くはないんだ。自分が……死ぬというのは」
「……ほぉ?」
「痛みや苦しみは味わうだろうが……それを見る方がよっぽど苦しい。それならば自分が苦しむ方がましだ。我は死んでも構わない」
「……そうか。なら、望み通り心中でもしてやろうかね。もし――俺に攻撃を与えられるのなら、ね」
そしてニエルはナイフを構えた。その口から、聞き慣れてしまった言葉が紡がれる。
「一に右足、二に左足、三四が腕で、五に頭。
……もらってくぜ、お前のその、ドラゴンらしからぬ人の体と、心」
その瞬間、ドラゴンの足に鋭い痛みが走る。気が付いたときには、すでにその太ももからは血が流れ、筋が切れ、立つことも難しくなった。
(速い……?!)
次に左足を……と迫ったナイフを、ドラゴンはなんとか避ける。
「ガーディア!」
攻撃を少しでも押し止めようとガーディアを使うが、それに向かってニエルはスッと手を伸ばす。
「……Unfinishedは成長するといったな? それは未完成だからだと。
いいか? ……俺の欲求は、永遠に満たされない。この欲が完全に満たされるまで、俺は『未完成』だ。Unfinishedと同じだよ。つまりだなぁ」
そして、魔法でつくった闇の弓矢を飛ばす。
「俺も、成長してるって訳なんだよ、な? ダークドラゴンくんよぉ」
弓矢は一発でそのガーディアを打ち砕いた。そしてドラゴンが気づいたときには、それは自分の左足に突き刺さっていた。
「っ……!」
「ほらほら……逃げてみろよぉ、ダークドラゴン。――ダークネスチェイン」
真っ黒い鎖鎌がドラゴンに襲いかかる。彼はうまく動かない足をなんとか動かしてそれを避け、姿をドラゴンに戻した。
ドラゴンであればまだ腕である翼が傷つけられていないので、ある程度動くことができる。これならば、まだ戦える。
「……そこまでして抗う理由はなんだ?」
「……お主がイエスと答えるまで、我は本当の意味で彼らと仲間になることができない。ならば力づくでも言わせて見せる。
我との契約を『全て白紙に戻し』我を解放すると」
「契約……ねぇ。契約ってのは両者の了承を得てするものだろう?」
ニエルが影でドラゴンを捕らえようとするが、それをドラゴンは炎魔法で消し去る。
「お前の了承がなくなって、それでも続いていく契約……それはつまり、呪いだ。お前が苦しむ呪い」
そしてニエルは、黒く微笑んだ。
「――手放してやるわけがないだろう? こんな最高のおもちゃをさ。
……支離滅裂」
「なっ……?!」
ドラゴンの周りに、数えきれないほどの刃が生まれる。それはカッターの刃ほどしかない、ごく小さなものだ。しかしそれが、何十何百とドラゴンを囲み、
「三と四は、同時にもらおうかな」
その翼を、一気に貫いた。小さいゆえに避けるのも難しく、ドラゴンはその攻撃をほぼもろに受けた。その体は、小さな小さな刃たちによって、ズタズタにされていく。
「……っく…………」
「飛んでいるのも難しいか? ん? そうだなぁ……また、死に怯えるあの表情を見せてくれるのなら、助けてやってもいい」
「誰が……」
「……ダークネスエレキテル」
黒い雷がドラゴンの体を貫く。その刺激に耐えきれず、ドラゴンは地面に足をつけ、そして、人の姿に戻る。小さい体の方が休むのには適していたが、目の前の彼は、確実にその命を摘み取ろうとしていた。
「あとは、五、だけだなぁ」
「…………」
「お前が俺から逃げたのは、俺かレベル88の時だったか。……今の俺は、レベル100。カンストだ」
「…………」
「お前には勝てないさ。だって、お前が俺を倒したのは……レベル100になってから、だったもんなぁ?」
ドラゴンの頭を廻るのは、目の前にいる男の顔ではない。ただひたすらに……仲間のことを危惧していた。
(……ウタ殿、すまない。お主が戦いが嫌いなのは知っている。だから一人で来た節もあるが……ダメだったな。我では、お主を助けられん)
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(ただ、お主らを傷つけるだけの結果になってしまったかもしれない。……すまないな)
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なぜか、怖くはなかったのだ。
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