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終わりと旅立ち
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「準備はもういいのか?忘れ物は」
「大丈夫よ、お父様。皆一緒に行ってくれるもの。ただ、初めてする格好だから、ソワソワするけれど」
楽しげに微笑むオフィーリアは、宰相の前でクルッと回って、自身の格好を見せた。
「お前のそんな格好を見る日が来ようとは…」
「平民服、それもズボンですものっ!思った以上に動きやすくて素敵よ?」
平民服といえど、ジャケットや靴を着て、長く艶やかな髪を押し込めたキャスケットで、平民でも裕福な家の子供に見える。
初めての装いに少々はしゃぐ娘に、宰相は目を細めて見つめる。
「妻が空で泣いていないか、心配だよ」
「意外と賛同してくれていると思うわ」
「そうだといいが……外は暗い。気をつけて行くんだぞ?護衛から何があっても離れない事。いいね?」
「はぁい。ふふ、子供の頃みたいね、お父様」
「ああ、そうだな。私も終わらせ次第行く。大人しく待っているんだぞ」
「ええ。待っているわ、お父様。行ってきます」
オフィーリアは宰相の両頬に親愛のキスを落とし、長い旅に同行する護衛と侍女を連れて呼び寄せた辻馬車に乗り込んだ。
これからオフィーリアは隣国を挟んだ向こうの国へと向かう。
遠いが、宰相の弟が婿入りした家があるのだ。先にオフィーリアを向かわせ、宰相職を辞めて爵位を親戚筋に譲り次第、向かうつもりだ。
オフィーリアを見送り、一息ついた宰相は、残る仕事の算段を頭の中でつける。
執務室の窓から外を眺め、そして鋭い瞳で王城の方向を見る。
引き止められようとも、必ず辞めて国を出る。
この後殿下が再起不能になろうが、国がどうなろうが、知った事ではない。
「─── もう遅いのだよ……」
「大丈夫よ、お父様。皆一緒に行ってくれるもの。ただ、初めてする格好だから、ソワソワするけれど」
楽しげに微笑むオフィーリアは、宰相の前でクルッと回って、自身の格好を見せた。
「お前のそんな格好を見る日が来ようとは…」
「平民服、それもズボンですものっ!思った以上に動きやすくて素敵よ?」
平民服といえど、ジャケットや靴を着て、長く艶やかな髪を押し込めたキャスケットで、平民でも裕福な家の子供に見える。
初めての装いに少々はしゃぐ娘に、宰相は目を細めて見つめる。
「妻が空で泣いていないか、心配だよ」
「意外と賛同してくれていると思うわ」
「そうだといいが……外は暗い。気をつけて行くんだぞ?護衛から何があっても離れない事。いいね?」
「はぁい。ふふ、子供の頃みたいね、お父様」
「ああ、そうだな。私も終わらせ次第行く。大人しく待っているんだぞ」
「ええ。待っているわ、お父様。行ってきます」
オフィーリアは宰相の両頬に親愛のキスを落とし、長い旅に同行する護衛と侍女を連れて呼び寄せた辻馬車に乗り込んだ。
これからオフィーリアは隣国を挟んだ向こうの国へと向かう。
遠いが、宰相の弟が婿入りした家があるのだ。先にオフィーリアを向かわせ、宰相職を辞めて爵位を親戚筋に譲り次第、向かうつもりだ。
オフィーリアを見送り、一息ついた宰相は、残る仕事の算段を頭の中でつける。
執務室の窓から外を眺め、そして鋭い瞳で王城の方向を見る。
引き止められようとも、必ず辞めて国を出る。
この後殿下が再起不能になろうが、国がどうなろうが、知った事ではない。
「─── もう遅いのだよ……」
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