俺は善人にはなれない

気衒い

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第1章 青年、異世界に降臨す

第1話 異世界

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――――――――――――――――――――
シンヤ・モリタニ
性別:男  種族:人族 年齢:18歳

Lv     1
HP    100/100
MP    100/100
ATK  100
DEF  100
AGI   100
INT    100
LUK   測定不能

固有スキル
生殺与奪・神眼・王の権威

武技スキル
刀剣術:Lv.MAX
体術 :Lv.MAX

魔法
なし

称号
異世界からの来訪者・運の女神の加護・逆境に抗いし者・ご都合主義
――――――――――――――――――――


「これって、やっぱりRPGとかでよく見るステータス画面だよな…」

陽の光も届かない鬱蒼と茂った森の中、そう呟いた一人の青年。かれこれ10分間、この場に立ち尽くし虚空を見上げていた。所々、破れた箇所のある上下灰色のスウェットに年季の入ったサンダル、ボサボサとした黒髪はあまり手入れされておらず、一見すると浮浪者のようにも思える。しかしながら、高身長に加えて無駄な筋肉のない体型、目つきは鋭いものの、その顔立ちは非常に整っていた。

「とりあえず、訳の分からない固有スキルとか称号とやらをチェックしますか」

青年は虚空に指を走らせて、固有スキルの欄をタップした。すると、以下のような説明書きがされていた。


生殺与奪

自身が殺めた生物のスキルや魔法を奪うことができる。また、他者が殺めた生物であっても死後から1日が経過していなければ同様に可能。奪ったスキルや魔法は適性等を無視して他者に分け与えることができる。そして、圧倒的実力差のある相手(この場合、相手の方が弱者)のHPを1だけ残して、生かしておくことも可能

神眼

自身や他者のステータスを閲覧でき、自身のステータスに至っては偽装が可能。その他、おまけとして、道中の自動MAP機能や敵意のある者の把握・才ある者の見極めといったことも可能

王の権威

配下が獲得しやすくなる。自身が仲間と認めた者からの忠誠心が増し、仲間のステータス及び成長速度に大幅補正。また、圧倒的実力差のある相手を気絶させることが可能。そして、自身と仲間に最も適した装備を作製することができる

「・・・色々と言いたいことはあるが後回しだ」

青年は顔を顰めながら、次に称号の欄をタップした。


異世界からの来訪者

異世界からの来訪者に与えられる称号。ステータス補正・才能の開花

運の女神の加護

運の女神フォルトゥーナの加護。LUKの値に補正

逆境に抗いし者

逆境に抗いし者に与えられる称号。ステータス補正

ご都合主義

言語理解。異世界の常識を把握。獲得したスキルを違和感なく、使いこなせるようになる。騒動に巻き込まれやすくなる。


「こっちの説明はやけにシンプルだな…それにしてもやっぱり、ここは異世界なのか」

台詞の後半は今、まさに頭上を通り過ぎていった地球ではまず見かけないであろう龍のような生物を意識してのものだった。そればかりか、神眼によって映し出された画面には敵意のある者を示す反応が所狭しと並んでいた。自分達が暮らしてきた世界、それも森の中でこれほど敵意を向けられることはまずあり得ないだろう。

「襲われる前にまず、装備だけでも作製しておこう。じゃあ、王の権威、発動っと」

直後、目の前が眩く光り、何もない空間から、装備一式が現れた。神眼で見てみるとそれらがとんでもない代物だと分かった


フナト (黒の外套 神級)

不壊・自動修復・気温調整

ワズライ(黒のシャツ 神級)

不壊・自動修復・気温調整

アキグイ(黒のズボン 神級)

不壊・自動修復・気温調整

チシキ (黒の靴 神級)

不壊・自動修復・気温調整

黒刀ムラクモ(下級)

不壊・自動修復・成長


「・・・よし、着替えよう」

考えることをやめた青年は装備のランクの説明を横目にしながら、着替え始めた。


――――――――――――――――――――
装備ランク

下級→中級→上級→特級→伝説級→覇王級→幻想級→神級
――――――――――――――――――――


「・・・ん?複数の敵が近付いてきてるな」

着替え終えてから、少し経った頃、装備の確認をしていると神眼の敵意センサーに反応があった。どうやら、痺れを切らして、こちらを襲うつもりのようだ。

「だったら、こっちから行ってやるか」

不敵な笑みを浮かべた青年は警戒を怠らず、反応した場所へと駆けていく。あまりのスピードに周りの景色が歪んで見えるほどである。

「ん?あれって、人か?」

少しすると前方に全身緑色の肌をした小柄な人らしきものが見えた。肌の色は置いておいて、剥いだ動物の皮のようなものを腰布として使い、手に棍棒を持つその姿自体は大昔、地球に実在したとされる原始人を彷彿とさせる。しかし、少し反り返った耳と血走る目、よだれを際限なく垂らす羞恥心の無さからはおよそ人であると断定する材料としては不十分であった。

「これは・・・ゴブリンか」

目の前に躍り出て、神眼を使ってみるとその正体が明らかになった。

――――――――――――――――――――

ゴブリンA
性別:雄 種族:魔物(ゴブリン種)

Lv 5
HP      50/50
MP      50/50
ATK     43
DEF    38
AGI     22
INT     18
LUK       5

固有スキル
魔眼

武技スキル
剣術:Lv.3

魔法
火魔法 :Lv.1
空間魔法:Lv.2


ゴブリンB
性別:雄 種族:魔物(ゴブリン種)

Lv 5
HP       50/50
MP       50/50
ATK     38
DEF     43
AGI      18
INT      22
LUK        5

固有スキル
状態異常無効

武技スキル
槍術:Lv.3

魔法
水魔法:Lv.1


ゴブリンC
性別:雄 種族:魔物(ゴブリン種)

Lv 5
HP       50/50
MP       50/50
ATK     40
DEF     40
AGI      40
INT      40
LUK        5

固有スキル
錬金術

武技スキル
斧術:Lv.3

魔法
土魔法:Lv.1


ゴブリンD
性別:雄 種族:魔物(ゴブリン種)

Lv 5
HP       50/50
MP       50/50
ATK      44
DEF     33
AGI      11
INT       27
LUK         5

固有スキル
不屈の闘志

武技スキル
杖術:Lv.3

魔法
風魔法:Lv.1
無魔法:Lv.2

――――――――――――――――――――

「いいスキル、持ってんじゃん。よし、殺ろう」

確かにゴブリンは数多ある作品において、噛ませ犬として冒頭部分に登場することが非常に多い魔物ではある。だからといって、決して忘れてはいけない。青年にとって、ここは作品の中などではなく、紛れも無い現実であるということを。そして、油断など以ての外。現実とは想定外なことが起きやすく、早々上手くいくなんてことは…

「セイッ!!」

青年の掛け声と共に振われた刀は見事、三体のゴブリンの首を飛ばし、残るはゴブリンDのみとなった。ゴブリンにとってはあまりに一瞬。瞬きをしている間に起きたことであり、理解できないことだらけではあったが、残されたゴブリンDに取れる手段は一つだけであった。

「ギギッ・・・」

まるで真綿で首を締められているような声を発しつつ、平伏のポーズ。そう、命乞いである。いくら魔物相手といえど、こうも淡々と命を奪っていく化け物に対して、歯向かう勇気など最初から持ち合わせてはいない。自身が確実に勝てる相手を討ち取ることのみで今日まで生き長らえてきたのだから。こんな化け物に遭遇するのは想定外。確実に厄日である。

「さて、こいつの固有スキルが気になってたんだよな。神眼っと」

――――――――――――――――――――
不屈の闘志
心が折れない限り、HPが1残る(何度でも使用可能)
――――――――――――――――――――

「へ~。便利な固有スキルじゃん。心が折れない限り…ね」

その瞬間、ゴブリンの体に悪寒が走った。何故かは分からないが、本能が危険だとしきりに告げていた。この場から急いで離れろと警告を発していたのだ。しかし、体は地面に張り付いてしまったと錯覚するほど微動だにしなかった。そこから先のことをこのゴブリンは覚えていない。ただ、言えることがあるとするならば、ゴブリンからスキルが失われ、青年のスキルがまた増えたということだけだった。


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