94 / 416
第7章 vsアスターロ教
第94話 暴走
しおりを挟む
「クキドノさん!魂の供給率、遂に90%にまで達しました!」
「おお、そうか!ようやくだな!」
ズボラが研究所を用事の為に出てから、まもなく1時間が経とうとしていた。臨時の責任者として、ここを任されている男は自分達の研究が遂に集大成を迎えることに深く頷いた。男はズボラの右腕として長い間、共に研究を続けてきた。彼らは幼馴染である。魔法王国で生まれ育ち、幼い頃より魔法や魔道具に関する知識で優秀さを発揮し、それらの研究に明け暮れる日々を過ごしてきた。毎日、同じことの繰り返しであったが好きなことをしている為か、飽きることは一切なかった。そんな彼らに転機が訪れたのは20歳の時である。アスターロ教の教主と名乗る男から活動を手助けして欲しいと打診があったのだ。その頃は既に彼らの研究に賛同し集った仲間達と一緒に作り上げたズボラを中心とする研究チームがあり、おそらくその教主はそこに早くから目を付け、スカウトしてきたのだろう。教主は見返りとして様々なものを提供してきた。例えば、設備の良い研究所や研究に使用する資金、安全で健康的な生活の保障、それと多額の報酬…………つまり、金銭である。これらの条件に対し、リーダーであるズボラは二つ返事で了解の旨を伝えた。そこから、彼らの組織での研究は今日に至るまでの約20年間も続くこととなったのだ。男は……………クキドノは甚く感動していた。自分達が続けてきたものがここに来て、ようやく実を結んだのだ。その気持ちは当然といえるだろう。しかし、それも少しすると段々と半信半疑のような状態になってくる。それは嬉しさを通り越して、まるで夢の中にいるようで実感があまり湧いていないのに近しい感情。気持ちがフワフワとしていて、現実感がなく、何かの間違いではないかと心のどこかで疑っている自分がいる程だ。だが……………
「何度確認しても供給率は90%……………数字は嘘をつかない」
装置の示す数字は先程から減っておらず、少し待ってみても全く変動がない為、現状はこれで間違いないだろうという結論を導き出した。男が少しホッとした顔をすると一気に研究所内に弛緩した空気が流れ出す。皆、この時を緊張した面持ちで見守っていたのだ。研究にかけた年月とコストを考えれば、それも致し方ない。なんせ、ここまで来て失敗は許されないのだから。
「さて……………じゃあ、あと残りの10%だが………………っ!?」
その時だった。魔法陣が一際強い光を放ち、辺りに濃密な魔力が充満し出したのは…………
「な、何だ!?」
「か、身体が……………急に……………」
「クキドノさん!緊急事態発生です!……………研究員達に次々と…………ぐっ……………異変が」
「報告!魂の供給率が上がってます!91………92…………93」
「ま、まさか研究員達から魂を集めているというのか!?お、おい!急いでズボラに連絡を!」
「先程からしていますが一向に繋がりません!」
「こんな時にあいつは一体何をしているんだ!?よし!とりあえず皆、一旦、研究所の外に出よう!」
「そ、それなんですが……………」
「どうした!?」
「先程から何度も試しているのですが…………開かないんです」
「何がだ?」
「扉が」
「な、何だと!?」
直後、魂の供給率を示す装置がけたたましい音を鳴り響かせ、それに気が付いた研究員達が一斉に目を向けた。すると、そこに表示されていた数字は………………100%だった。
「おお、そうか!ようやくだな!」
ズボラが研究所を用事の為に出てから、まもなく1時間が経とうとしていた。臨時の責任者として、ここを任されている男は自分達の研究が遂に集大成を迎えることに深く頷いた。男はズボラの右腕として長い間、共に研究を続けてきた。彼らは幼馴染である。魔法王国で生まれ育ち、幼い頃より魔法や魔道具に関する知識で優秀さを発揮し、それらの研究に明け暮れる日々を過ごしてきた。毎日、同じことの繰り返しであったが好きなことをしている為か、飽きることは一切なかった。そんな彼らに転機が訪れたのは20歳の時である。アスターロ教の教主と名乗る男から活動を手助けして欲しいと打診があったのだ。その頃は既に彼らの研究に賛同し集った仲間達と一緒に作り上げたズボラを中心とする研究チームがあり、おそらくその教主はそこに早くから目を付け、スカウトしてきたのだろう。教主は見返りとして様々なものを提供してきた。例えば、設備の良い研究所や研究に使用する資金、安全で健康的な生活の保障、それと多額の報酬…………つまり、金銭である。これらの条件に対し、リーダーであるズボラは二つ返事で了解の旨を伝えた。そこから、彼らの組織での研究は今日に至るまでの約20年間も続くこととなったのだ。男は……………クキドノは甚く感動していた。自分達が続けてきたものがここに来て、ようやく実を結んだのだ。その気持ちは当然といえるだろう。しかし、それも少しすると段々と半信半疑のような状態になってくる。それは嬉しさを通り越して、まるで夢の中にいるようで実感があまり湧いていないのに近しい感情。気持ちがフワフワとしていて、現実感がなく、何かの間違いではないかと心のどこかで疑っている自分がいる程だ。だが……………
「何度確認しても供給率は90%……………数字は嘘をつかない」
装置の示す数字は先程から減っておらず、少し待ってみても全く変動がない為、現状はこれで間違いないだろうという結論を導き出した。男が少しホッとした顔をすると一気に研究所内に弛緩した空気が流れ出す。皆、この時を緊張した面持ちで見守っていたのだ。研究にかけた年月とコストを考えれば、それも致し方ない。なんせ、ここまで来て失敗は許されないのだから。
「さて……………じゃあ、あと残りの10%だが………………っ!?」
その時だった。魔法陣が一際強い光を放ち、辺りに濃密な魔力が充満し出したのは…………
「な、何だ!?」
「か、身体が……………急に……………」
「クキドノさん!緊急事態発生です!……………研究員達に次々と…………ぐっ……………異変が」
「報告!魂の供給率が上がってます!91………92…………93」
「ま、まさか研究員達から魂を集めているというのか!?お、おい!急いでズボラに連絡を!」
「先程からしていますが一向に繋がりません!」
「こんな時にあいつは一体何をしているんだ!?よし!とりあえず皆、一旦、研究所の外に出よう!」
「そ、それなんですが……………」
「どうした!?」
「先程から何度も試しているのですが…………開かないんです」
「何がだ?」
「扉が」
「な、何だと!?」
直後、魂の供給率を示す装置がけたたましい音を鳴り響かせ、それに気が付いた研究員達が一斉に目を向けた。すると、そこに表示されていた数字は………………100%だった。
10
あなたにおすすめの小説
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。
ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる