俺は善人にはなれない

気衒い

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第7章 vsアスターロ教

第94話 暴走

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「クキドノさん!魂の供給率、遂に90%にまで達しました!」

「おお、そうか!ようやくだな!」

ズボラが研究所を用事の為に出てから、まもなく1時間が経とうとしていた。臨時の責任者として、ここを任されている男は自分達の研究が遂に集大成を迎えることに深く頷いた。男はズボラの右腕として長い間、共に研究を続けてきた。彼らは幼馴染である。魔法王国で生まれ育ち、幼い頃より魔法や魔道具に関する知識で優秀さを発揮し、それらの研究に明け暮れる日々を過ごしてきた。毎日、同じことの繰り返しであったが好きなことをしている為か、飽きることは一切なかった。そんな彼らに転機が訪れたのは20歳の時である。アスターロ教の教主と名乗る男から活動を手助けして欲しいと打診があったのだ。その頃は既に彼らの研究に賛同し集った仲間達と一緒に作り上げたズボラを中心とする研究チームがあり、おそらくその教主はそこに早くから目を付け、スカウトしてきたのだろう。教主は見返りとして様々なものを提供してきた。例えば、設備の良い研究所や研究に使用する資金、安全で健康的な生活の保障、それと多額の報酬…………つまり、金銭である。これらの条件に対し、リーダーであるズボラは二つ返事で了解の旨を伝えた。そこから、彼らの組織での研究は今日に至るまでの約20年間も続くこととなったのだ。男は……………クキドノは甚く感動していた。自分達が続けてきたものがここに来て、ようやく実を結んだのだ。その気持ちは当然といえるだろう。しかし、それも少しすると段々と半信半疑のような状態になってくる。それは嬉しさを通り越して、まるで夢の中にいるようで実感があまり湧いていないのに近しい感情。気持ちがフワフワとしていて、現実感がなく、何かの間違いではないかと心のどこかで疑っている自分がいる程だ。だが……………

「何度確認しても供給率は90%……………数字は嘘をつかない」

装置の示す数字は先程から減っておらず、少し待ってみても全く変動がない為、現状はこれで間違いないだろうという結論を導き出した。男が少しホッとした顔をすると一気に研究所内に弛緩した空気が流れ出す。皆、この時を緊張した面持ちで見守っていたのだ。研究にかけた年月とコストを考えれば、それも致し方ない。なんせ、ここまで来て失敗は許されないのだから。

「さて……………じゃあ、あと残りの10%だが………………っ!?」

その時だった。魔法陣が一際強い光を放ち、辺りに濃密な魔力が充満し出したのは…………

「な、何だ!?」

「か、身体が……………急に……………」

「クキドノさん!緊急事態発生です!……………研究員達に次々と…………ぐっ……………異変が」

「報告!魂の供給率が上がってます!91………92…………93」

「ま、まさか研究員達から魂を集めているというのか!?お、おい!急いでズボラに連絡を!」

「先程からしていますが一向に繋がりません!」

「こんな時にあいつは一体何をしているんだ!?よし!とりあえず皆、一旦、研究所の外に出よう!」

「そ、それなんですが……………」

「どうした!?」

「先程から何度も試しているのですが…………開かないんです」

「何がだ?」

「扉が」

「な、何だと!?」

直後、魂の供給率を示す装置がけたたましい音を鳴り響かせ、それに気が付いた研究員達が一斉に目を向けた。すると、そこに表示されていた数字は………………100%だった。
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