俺は善人にはなれない

気衒い

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第7章 vsアスターロ教

第95話 とある男の野望

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僕は昔から人を驚かすことが大好きだった。人は思ってもみないことを言われたり、されたりするとその時々で面白いように顔色が変わり、その種類は様々だ。僕にとってはその瞬間を眺めるのが至福のひとときであり、徐々にそれの期待値が高くなっていくのも時間の問題だった。ある時、僕は知り合いと一緒に共同で研究を行うこととなった。その頃には既により多くの人の驚いた顔が見たいと思うようになっていた僕は一番の近道が研究であるという結論に辿りついていた。別に肉体が強い訳でも魔法が得意な訳でもない僕。そんな僕にも一応、取り柄はあったのだ。それは興味あることに関して研究する力…………研究力とでも言うべき能力が優れていたことだ。そして、それを活かすことができれば知識も深めることができるし、人々を驚かすことにも繋がるのではないかと考えたのである。そこからは四六時中、研究に明け暮れた。主に魔法や魔道具に関しての研究。やっていることは側から見れば、地味であることに変わりはないが日を追うごとに身につく知識や実験を行うことで得られる経験、それらが次第に僕を研究者として、また人間として大きくしていくような気がしていた。そんなある日、ふと顔を上げて周りを見渡してみれば、狭かった研究所の一室もいつの間にか大きくなっており、当初は2人で細々と静かに続けていたことも所々から話し声がちらほらと聞こえる程にまでなっていた。そう、気が付けば僕と知り合いの研究は他の賛同者が徐々に集う形で大きくなっていき、やがて一つの研究チームへと成っていたのである。僕はそのチームのリーダーを任されており、研究にもより一層、やる気と磨きがかかっていたのだ。そんな時であった。とある組織の男から自身の活動を手助けして欲しいと打診があったのは……………。男は僕らがする仕事や手を貸すメリットを事細かく提示した。最初に聞いた時はひどく驚いた。人を驚かせることが生き甲斐の僕にとって逆に驚かされるのはあまりにも屈辱的であったが、その後に聞いた男の展望や組織の目的によって、そんな感情はすぐに吹き飛んだ。僕は一通り全てのことを聞いた上で男に了解の旨を伝えた。それから約20年間、組織での研究および、そこに所属する者達のサポートを行なってきた。

「だが、それももう終いだ…………… あばよ、何も知らぬ愚か者共」

僕は徐々に遠く霞んでいく組織の本部を一瞥しながら、歩を前へと進める。目指す先は魔法王国だ。ちなみに各地に散らばっている組織の者達の居場所は既に把握済み。しかし、今、考えてみれば、わざわざそんなことをする必要はなかったかもしれない。組織の中にいる裏・切・り・者・は何も僕一人だけではなく、多数いるのだ。その者達の協力を得れれば、もっとスムーズにこうして動き出すことができていた可能性はある。だが、今それを思ったところで結果は変わらない。時は決して戻すことが出来ないのだ。それにしても組織が一枚岩でなくて助かった。おかげで特に怪しまれることもなく、僕は自分の目的を果たすことが出来そうだ。

「ふぅ…………もう少しのんびり行こ」

これから通る道は組織の目を掻い潜った人気のない森の中である。よって道中に僕の邪魔をする者は誰一人としていない。実に気ままな一人旅となりそうだ。そうなると自然と気も大きくなってくる。この辺り一帯をまるで自分が支配しているかのような感覚に陥り、突然奇声のようなものを上げたくなってくる。

「ぐははっ…………これから僕の人生をかけた大逆転劇が始まるのだ。その道は一切の曇りもない明るいものだ!」

僕の高笑いが静かな森の中に木霊する。この光景を誰かが見ていたら、きっと頭のおかしい奴がいるとドン引きするだろう。だが、仮にそうなったとしても最早、どうでもいい。赤の他人からどう見られていようと気にはしない。だって、これから僕ら・・が行うことはそんな低い次元の話ではないのだから
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