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第9章 フォレスト国
第138話 リースの決意
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「いよいよ、明日か……………」
僕は泊まっている宿屋のベッドの上で横になりながら、そう呟いた。現在、入国してから3日目の夜だった。これまでフォレスト国では情報収集や人々の観察だけではなく、買い物や食事などもちゃんと楽しみ、みんなでフォレスト国の雰囲気を味わってきた。そこから、シンヤ達はフォレスト国での人々の暮らしや彼等がどのようなことを考え、日々を生きているのかまでを把握していた。僕にとっても国民の暮らしを直に観察することができて非常に新鮮であり、城内で一生を過ごしていれば決して触れることのできなかったものと触れ合う機会を与えてもらえて、とても嬉しかった。しかし、そんなウキウキ気分でずっといる訳にもいかない。僕達には確固たる目的があるのだ。その為にもしっかりと入念にシミュレーションを行い、明日に備えてきた。シンヤからは上手くいくかどうかは僕次第だと言われた。それもそのはずだ。この国をなんとかして欲しいとは言ったものの、全てをシンヤ達にやってもらうのは違うだろう。彼等はこの国の人間でもましてや王族でもない。この国を本当の意味でなんとかできるのは僕……………リース・フォレストだけだろう。最後の最後は僕が請け負う。シンヤ達にはそれまでのサポートをしてもらう形だ。僕の出番は全体で見たら、1割もしくは2割程しかないかもしれない。でも、その部分が最も大事だとシンヤは言った。ちょうど彼等には多くのことを任せ、引け目を感じていた時に言ってもらえた言葉だ。忘れられるはずがなかった。
「ん?どうした、リース」
「カ、カグヤさん!?起きていたんですか!?」
「ああ……………何だ?そういうお前は眠れないのか?」
「はい……………やっぱり明日のことを考えてしまうと……………」
「ふ~ん。そうか」
「………………」
「…………アタシは無責任なことは言いたくないし、根拠のないことも普段は発言しない。だからこそ、言わせてもらうが」
「?」
「明日はリース……………お前に全てがかかってる。それに対してプレッシャーを感じて逃げ出したくなるかもしれないし、喚き散らしていっそのこと、視界を閉ざしたくなるかもしれない。だが、決して逃げるな。諦めるな。立ち止まるな。そして……………現実から目を背けるな。お前が失敗してしまえば、それまでの全てが水の泡だ」
「な、なんでそんなこと言うんですか……………僕が不安で一杯なの知っているでしょ?今にも押し潰されそうで痛くて痛くて、たまらないんです。この国をみんなをなんとかしたいって………………プレッシャーがかかって当たり前じゃないですか。そりゃ現実逃避だってしたくなりますよ。それに加えて何で仲間からもそんなことを言われなきゃならないんですか?まさか、カグヤさんがそんなことを言うとは思いませんでした。あなたなら………………」
「優しく声をかけてくれるとでも思ってたか?まぁ、普段はなんだかんだ言って楽観的だからな。でもな?………………甘ったれんなよ、小娘が」
「っ!!」
「国を、王を、国民達を動かすってのはそんな簡単なことじゃねぇんだ。そこには様々な思想や感情が渦巻いてる。並大抵のことではビクともしねぇ。それこそ、誰1人としてお前の発言なんか聞いちゃくれねぇかもな」
「そ、そんなっ!?じゃあ、一体どうすれば……………」
「お前、本当に明日の自分の行動で頭が一杯なんだな……………いいか?今、お前の周りにはどんな奴らがいる?」
「それはセバスとシンヤ達だけど…………」
「特徴は?」
「セバスは僕のことを信じてずっと着いてきてくれた。従者で側近ですごく尊敬してるし感謝もしてる。信頼できる人だ。シンヤ達は邪神の脅威から世界を救ってくれた凄い人達でみんな僕に優しく仲良くしてくれて……………まるで本当の家族みたいに」
「で、それだけお前が信頼している者達が明日はお前のことを全力でサポートする……………これ以上の安心材料はなくないか?」
「あ……………」
「だから、今はぐっすりと寝て明日に備えろ。安心しろよ。明日は何があってもお前を絶対に例の場所へと運ぶ。こっちのことも心配すんな」
「カ、カグヤさん……………」
「おいおい、どうした!?そんなに泣いて」
「だ、だっで…………ぼ、僕、カグヤさんの気持ちも知らずにあんなごど言っだのにそんなに優しくされたら……………」
「お~よしよし……………今のうちに泣けるだけ泣いとけ」
「ば、ばい~」
それから僕は少しの間、カグヤさんに抱きしめられながら、彼女の腕の中で泣いた。そして、この時、不安だった気持ちが完全に消え去り、信じてくれているこの人達の為にも頑張ろうというやる気がみなぎってくるのを感じていた。明日はいよいよ決戦の日。どう転ぶかは分からないが不思議と上手くいけそうな気がしていた。
僕は泊まっている宿屋のベッドの上で横になりながら、そう呟いた。現在、入国してから3日目の夜だった。これまでフォレスト国では情報収集や人々の観察だけではなく、買い物や食事などもちゃんと楽しみ、みんなでフォレスト国の雰囲気を味わってきた。そこから、シンヤ達はフォレスト国での人々の暮らしや彼等がどのようなことを考え、日々を生きているのかまでを把握していた。僕にとっても国民の暮らしを直に観察することができて非常に新鮮であり、城内で一生を過ごしていれば決して触れることのできなかったものと触れ合う機会を与えてもらえて、とても嬉しかった。しかし、そんなウキウキ気分でずっといる訳にもいかない。僕達には確固たる目的があるのだ。その為にもしっかりと入念にシミュレーションを行い、明日に備えてきた。シンヤからは上手くいくかどうかは僕次第だと言われた。それもそのはずだ。この国をなんとかして欲しいとは言ったものの、全てをシンヤ達にやってもらうのは違うだろう。彼等はこの国の人間でもましてや王族でもない。この国を本当の意味でなんとかできるのは僕……………リース・フォレストだけだろう。最後の最後は僕が請け負う。シンヤ達にはそれまでのサポートをしてもらう形だ。僕の出番は全体で見たら、1割もしくは2割程しかないかもしれない。でも、その部分が最も大事だとシンヤは言った。ちょうど彼等には多くのことを任せ、引け目を感じていた時に言ってもらえた言葉だ。忘れられるはずがなかった。
「ん?どうした、リース」
「カ、カグヤさん!?起きていたんですか!?」
「ああ……………何だ?そういうお前は眠れないのか?」
「はい……………やっぱり明日のことを考えてしまうと……………」
「ふ~ん。そうか」
「………………」
「…………アタシは無責任なことは言いたくないし、根拠のないことも普段は発言しない。だからこそ、言わせてもらうが」
「?」
「明日はリース……………お前に全てがかかってる。それに対してプレッシャーを感じて逃げ出したくなるかもしれないし、喚き散らしていっそのこと、視界を閉ざしたくなるかもしれない。だが、決して逃げるな。諦めるな。立ち止まるな。そして……………現実から目を背けるな。お前が失敗してしまえば、それまでの全てが水の泡だ」
「な、なんでそんなこと言うんですか……………僕が不安で一杯なの知っているでしょ?今にも押し潰されそうで痛くて痛くて、たまらないんです。この国をみんなをなんとかしたいって………………プレッシャーがかかって当たり前じゃないですか。そりゃ現実逃避だってしたくなりますよ。それに加えて何で仲間からもそんなことを言われなきゃならないんですか?まさか、カグヤさんがそんなことを言うとは思いませんでした。あなたなら………………」
「優しく声をかけてくれるとでも思ってたか?まぁ、普段はなんだかんだ言って楽観的だからな。でもな?………………甘ったれんなよ、小娘が」
「っ!!」
「国を、王を、国民達を動かすってのはそんな簡単なことじゃねぇんだ。そこには様々な思想や感情が渦巻いてる。並大抵のことではビクともしねぇ。それこそ、誰1人としてお前の発言なんか聞いちゃくれねぇかもな」
「そ、そんなっ!?じゃあ、一体どうすれば……………」
「お前、本当に明日の自分の行動で頭が一杯なんだな……………いいか?今、お前の周りにはどんな奴らがいる?」
「それはセバスとシンヤ達だけど…………」
「特徴は?」
「セバスは僕のことを信じてずっと着いてきてくれた。従者で側近ですごく尊敬してるし感謝もしてる。信頼できる人だ。シンヤ達は邪神の脅威から世界を救ってくれた凄い人達でみんな僕に優しく仲良くしてくれて……………まるで本当の家族みたいに」
「で、それだけお前が信頼している者達が明日はお前のことを全力でサポートする……………これ以上の安心材料はなくないか?」
「あ……………」
「だから、今はぐっすりと寝て明日に備えろ。安心しろよ。明日は何があってもお前を絶対に例の場所へと運ぶ。こっちのことも心配すんな」
「カ、カグヤさん……………」
「おいおい、どうした!?そんなに泣いて」
「だ、だっで…………ぼ、僕、カグヤさんの気持ちも知らずにあんなごど言っだのにそんなに優しくされたら……………」
「お~よしよし……………今のうちに泣けるだけ泣いとけ」
「ば、ばい~」
それから僕は少しの間、カグヤさんに抱きしめられながら、彼女の腕の中で泣いた。そして、この時、不安だった気持ちが完全に消え去り、信じてくれているこの人達の為にも頑張ろうというやる気がみなぎってくるのを感じていた。明日はいよいよ決戦の日。どう転ぶかは分からないが不思議と上手くいけそうな気がしていた。
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