俺は善人にはなれない

気衒い

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第10章 セントラル魔法学院

第167話 帰郷

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サラの生まれ育った里は自然豊かなところだった。草木が生い茂り、樹齢何百年もいった大樹が無数に生えている。主に自給自足で生活しており、作物を畑で育て、肉は里の外に出て狩りを行って入手している。また月に一度訪れる行商人から生活用品や武器、里で手に入らない食べ物などをまとめて買い、里で暮らす者達の生活が止まってしまわないよう気を付けているようだ。ちなみに住居は大樹をくり抜いて作ったものがほとんどでこれもまた自然と共に生きていきたいと願う者達が多い為だ。門番に身分証を提示して里に入ることを許された俺達は里長に里を案内してもらいながら、ここでの暮らしについて聞いていた。

「それにしてもサラがご迷惑をおかけてして申し訳ございませんねぇ。この娘は少々、無鉄砲でして、思い立ったらすぐ行動する癖があるんです。だから、ある日、地図も持たずにいきなり里を飛び出していってしまったんですよ」

「ああ、それはサラから聞いた」

「ち、ちょっと!ガナンさん!余計なことは言わないで下さいまし!」

「ほっほっほ……………色々と大変だったでしょう?」

「最初のうちはな。なんせ、勢いで里を飛び出し、フリーダムを素通りして絶望の森の入り口でぶっ倒れてるぐらいだからな。そんなお転婆少女をどう扱っていいものかとな……………だが、今ではそれがうちの三番手だ。サラの成長には目を見張るものがある」

「……………サラはお役に立てていますかの?」

「それどころじゃない。彼女がいなければ、ここまでクランを大きくすることはできなかったし、軍団レギオンなんて以ての外だ。サラは俺達にとってなくてはならない仲間であり、家族だ。そして、俺はそんなサラを1人の女性として愛している」

「ほっほっほ………これは良いことを聞かせて頂きましたな。それもこんな里のど真ん中で。ほれ、気が付けば里の者も外に出てガッツリと聞いていますよ。特に後半部分」

「「「「「よく言った!ヒューッ!男の中の男!!!!!」」」」」

周りが大いに囃し立てる中、突然2人の男女エルフが俺の前へと出てきて、こう言った。

「シンヤ・モリタニだったな?初めまして。俺はトサバ。サラの父だ」

「私はクララ。サラの母です」

「俺はシンヤ・モリタニ。冒険者をしている」

「ああ、知ってるよ。世界を救ったそうだな。まぁ、その前にサラを救ってもらってるか。その件に関しては本当にありがとう」

「すみませんでした。そして、ありがとうございます」

「いや、俺の方が救われっぱなしだ。サラがそばにいてくれるだけで俺は今よりももっと頑張れる。だから、サラを産み育ててくれて、ありがとう」

「…………どうやら君は1本筋の通った男のようだな。なるほど。組織のトップを務めるだけはある。それだけの器と柔軟性を兼ね備えた者はそうそういない。サラを受け止めても問題はないようだな」

「本当ね」

「買い被りすぎだ。2人の方こそ凄いぞ。この状況で名乗り出るなんてな」

「俺の目でしっかりと見極めたかったんだ」

「で、結果は?」

「合格以上の点数だ!参った!シンヤ、これからも娘をよろしく頼むよ」

「お願いしますね」

「そっちの挨拶はまたの機会にさせてくれ。とりあえず、仲間としてのだけを受け取っておく。今度、ちゃんとした形で挨拶に来させてもらう」

「あぁ、待ってるぞ。だが、今日は歓迎の宴をやらなくてはな」

「ええ。こんなにお仲間がいらして嬉しいもの」

みんなが笑顔でわいわいとする中、ただ1人サラだけは先程から顔を真っ赤にさせ、ついに耐えきれなくなり、こう叫んだ。



「な、な、な、なんなんですの~~!!」
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