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第10章 セントラル魔法学院
第190話 依頼達成
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「お疲れ様でした。そして、ありがとうございました」
「気にするな。それよりも悪いな。結果的に生徒達を奪ってしまう形となって」
「いえいえ、お気になさらず。なにもあの子達は無理矢理、学院を辞めさせられる訳ではありません。自分達の意志で本当にやりたいことを見つけたのです」
「そうか」
「あの子達の時間は止まっていました。邪神の一件があり、自分達が自衛の為の術を身に付けることに果たして、どんな意味があるのか…………今後、襲い来る未知の恐怖に打ち勝つことなどできないのではないかと。貴族・平民などという個人の勝手な価値観による差別、積極性のない閉塞された学院、将来への不安……………それら大人でも持ってしまう目に見えない恐怖に怯える毎日を送っていました。そんな時です。あなた方がこの学院にいらっしゃったのは!あなた方は彼らの心の底に響く叫びを決して聞き逃さず、1人1人と真摯に向き合ってくれました」
「買い被りすぎだ。毎回、授業はおよそ生徒にさせる内容を逸脱していたぞ。側から見れば、酷い罰を与えているようにしか見えん」
「確かにあの強さを身に付けるのに相当過酷な鍛錬を積んだのは想像に難くありません。しかし、それは全て生徒達の為を思ってしたこと。おそらく今後、どれだけ危険なことが待ち受けていてもちゃんと対処できるだけの力をつけて欲しいという親心のようなものからでしょう。それと自分達が特別講師という依頼を終え、いなくなった後も離れた土地でしっかりと頑張れるようにという理由もあった」
「俺は依頼をこなしただけでそれ以上でもそれ以下でもない」
「先程、1人1人と真摯に向き合ったと言いましたよね?本来、一時的な特別講師がそこまでやる必要はないんです。戦い方の指導だけではなく、家庭の不安や友人関係、学業、その他諸々……………随分と相談に乗っていらしたみたいですが」
「あいつら…………」
「彼らを責めないで下さいね。私が無理矢理、聞き出したのですから」
「……………たまたまだ。何か不安があると授業に支障が出るからな。他意はない」
「打算だけで教えていたら、冒険者となって傘下にまで入りたいなどと頼みこんでくる教え子も現れないはずですが………………まぁ、そういうことにしておきましょうか」
「…………そんなことより、学院の評判は大丈夫なのか?イメージ回復の為、早急に保護者と話す必要があるんじゃないのか?」
「白々しいですね。問題ないことは知っているはずですが」
「何のことだかな」
「はぁ、まぁいいです。シンヤ様も把握している通り、何の問題もありませんでした。むしろ我が学院への入学希望者が日に日に増えている状態です」
「良かったじゃないか」
「本当にね。あなた方にして、やられました。この恩はどう返すべきか、頭を抱える毎日ですよ。竜闘祭優勝直後のクリス君の発言は参加していた5ヶ国全てに映像の魔道具によって、伝わってしまいました。その結果、それぞれの国に存在する学院に通う多くの生徒・保護者の間で自分達の通っている学院に対しての不信感が募りました。もう一度ちゃんと自分達の状態を鑑みようと。邪神によって停滞していた彼らの日常が再び、大きく動き出したのです。それに加えて、クリス君のような人材がいたセントラル魔法学院とはどういうところなのか、また彼の言っていたことの真偽を確かめようとここへ入学を決める生徒達が続出している状態です。まぁ、何よりあんな衆人環視の中、学院事情を暴露するだけの大物感に魅せられた面があるのも否めませんが」
「なるほど」
「そして、最も大きな変化が学院内の差別の減少です。クリス君の発言はもちろん、セントラル魔法学院に通う貴族出身生徒の家族も拝見しておりました。反応は各ご家庭で様々でしたがその多くが"今まで知らなかった"や"そんなことをしているのか"など好意的ではない意見でした。その為、"絶対にそんなくだらないことはするな"というお叱りを受けた生徒達に以前と同じようなことをする度胸があるはずもなく、次第にその数を減らしていきました。今では貴族出身の生徒が平民出身の生徒へ今までのことを謝罪し、和気藹々と過ごす日常へと変化しています」
「へ~」
「この学院は間違いなく、良い方向へと変わってきています。やはり、シンヤ様達をお呼びして良かった。私は心底、そう思います」
「そうか?お前1人でなんとかできそうな気もするが」
「それこそ、買い被りすぎですよ。私なんて、ただ歳を取っているだけです。学院の外に一歩出れば、私なんて、ただのその辺の……………」
「あの"魔拳"がか?」
「…………今、なんと?」
「何だ?もう一度、言って欲しいのか?」
「……………いえ、やめておきましょう。私にだって探られたくない腹はあります」
「賢明な判断だな」
「これは一枚不利になってしまいましたね」
「安心しろ。お前が余計なことをしなければ、話すつもりはない」
「ご配慮感謝致します」
「で、話を戻すが、結果的に学院の件はこれで大丈夫と。ってことは俺達の依頼ってのも」
「はい」
「もちろん大成功でございます」
「気にするな。それよりも悪いな。結果的に生徒達を奪ってしまう形となって」
「いえいえ、お気になさらず。なにもあの子達は無理矢理、学院を辞めさせられる訳ではありません。自分達の意志で本当にやりたいことを見つけたのです」
「そうか」
「あの子達の時間は止まっていました。邪神の一件があり、自分達が自衛の為の術を身に付けることに果たして、どんな意味があるのか…………今後、襲い来る未知の恐怖に打ち勝つことなどできないのではないかと。貴族・平民などという個人の勝手な価値観による差別、積極性のない閉塞された学院、将来への不安……………それら大人でも持ってしまう目に見えない恐怖に怯える毎日を送っていました。そんな時です。あなた方がこの学院にいらっしゃったのは!あなた方は彼らの心の底に響く叫びを決して聞き逃さず、1人1人と真摯に向き合ってくれました」
「買い被りすぎだ。毎回、授業はおよそ生徒にさせる内容を逸脱していたぞ。側から見れば、酷い罰を与えているようにしか見えん」
「確かにあの強さを身に付けるのに相当過酷な鍛錬を積んだのは想像に難くありません。しかし、それは全て生徒達の為を思ってしたこと。おそらく今後、どれだけ危険なことが待ち受けていてもちゃんと対処できるだけの力をつけて欲しいという親心のようなものからでしょう。それと自分達が特別講師という依頼を終え、いなくなった後も離れた土地でしっかりと頑張れるようにという理由もあった」
「俺は依頼をこなしただけでそれ以上でもそれ以下でもない」
「先程、1人1人と真摯に向き合ったと言いましたよね?本来、一時的な特別講師がそこまでやる必要はないんです。戦い方の指導だけではなく、家庭の不安や友人関係、学業、その他諸々……………随分と相談に乗っていらしたみたいですが」
「あいつら…………」
「彼らを責めないで下さいね。私が無理矢理、聞き出したのですから」
「……………たまたまだ。何か不安があると授業に支障が出るからな。他意はない」
「打算だけで教えていたら、冒険者となって傘下にまで入りたいなどと頼みこんでくる教え子も現れないはずですが………………まぁ、そういうことにしておきましょうか」
「…………そんなことより、学院の評判は大丈夫なのか?イメージ回復の為、早急に保護者と話す必要があるんじゃないのか?」
「白々しいですね。問題ないことは知っているはずですが」
「何のことだかな」
「はぁ、まぁいいです。シンヤ様も把握している通り、何の問題もありませんでした。むしろ我が学院への入学希望者が日に日に増えている状態です」
「良かったじゃないか」
「本当にね。あなた方にして、やられました。この恩はどう返すべきか、頭を抱える毎日ですよ。竜闘祭優勝直後のクリス君の発言は参加していた5ヶ国全てに映像の魔道具によって、伝わってしまいました。その結果、それぞれの国に存在する学院に通う多くの生徒・保護者の間で自分達の通っている学院に対しての不信感が募りました。もう一度ちゃんと自分達の状態を鑑みようと。邪神によって停滞していた彼らの日常が再び、大きく動き出したのです。それに加えて、クリス君のような人材がいたセントラル魔法学院とはどういうところなのか、また彼の言っていたことの真偽を確かめようとここへ入学を決める生徒達が続出している状態です。まぁ、何よりあんな衆人環視の中、学院事情を暴露するだけの大物感に魅せられた面があるのも否めませんが」
「なるほど」
「そして、最も大きな変化が学院内の差別の減少です。クリス君の発言はもちろん、セントラル魔法学院に通う貴族出身生徒の家族も拝見しておりました。反応は各ご家庭で様々でしたがその多くが"今まで知らなかった"や"そんなことをしているのか"など好意的ではない意見でした。その為、"絶対にそんなくだらないことはするな"というお叱りを受けた生徒達に以前と同じようなことをする度胸があるはずもなく、次第にその数を減らしていきました。今では貴族出身の生徒が平民出身の生徒へ今までのことを謝罪し、和気藹々と過ごす日常へと変化しています」
「へ~」
「この学院は間違いなく、良い方向へと変わってきています。やはり、シンヤ様達をお呼びして良かった。私は心底、そう思います」
「そうか?お前1人でなんとかできそうな気もするが」
「それこそ、買い被りすぎですよ。私なんて、ただ歳を取っているだけです。学院の外に一歩出れば、私なんて、ただのその辺の……………」
「あの"魔拳"がか?」
「…………今、なんと?」
「何だ?もう一度、言って欲しいのか?」
「……………いえ、やめておきましょう。私にだって探られたくない腹はあります」
「賢明な判断だな」
「これは一枚不利になってしまいましたね」
「安心しろ。お前が余計なことをしなければ、話すつもりはない」
「ご配慮感謝致します」
「で、話を戻すが、結果的に学院の件はこれで大丈夫と。ってことは俺達の依頼ってのも」
「はい」
「もちろん大成功でございます」
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