207 / 416
第11章 軍団戦争
第207話 同盟
しおりを挟む
「同盟?何だ、それ」
「同盟とはクラン同士で結ばれる停戦の
証でございます。お互いの了承の下、友
好の契りを結ぶことで成立するこの同盟
は相互扶助・領土不可侵が主なメリット
となっており、傘下や|軍団《レギオ
ン》とは違った形での繋がりといえま
す」
「なるほど」
「本来であれば、同盟の説明は冒険者ギ
ルドで行われることがありません。何故
なら、傘下や軍団はギル
ドから公認された組織として扱われてい
ますが同盟は非公認、つまり黙認されて
いるからです」
「グレーな存在か」
「はい。なのであまりギルド内で同盟と
いう言葉は使わない方がいいとされてい
ます。わざわざ自分から悪目立ちする必
要もありませんからね」
「そうか……………で?その同盟がどうし
た?」
「ここからは大変厚かましいお願いとな
るのですがよろしいでしょうか?」
「とりあえず、聞くだけなら」
「ありがとうございます。僕のお願いと
いうのは他でもありません。"黒締"シ
ンヤ・モリタニさん………………どうか僕
達と同盟を結んではもらえないでしょう
か?」
「却下」
「……………やはり、そうですか」
「まず、俺がお前自体をまだ信用してい
ない。したがって、お前の言っているこ
とも半信半疑な状態だ。上手く丸め込ま
れて、後で裏切られたんじゃどうしよう
もないからな。あと同盟のメリットは聞
いたが、デメリットが聞かされていな
い。本当に俺から信用されたいのなら、
そこまで話す筈だ。物の押し売りじゃあ
るまいし」
「……………傘下をつける際はそこまで警
戒なさらなかったそうですが?僕と彼ら
の違いは一体何でしょうか?」
「付き合いの濃さだな。確かに状況だけ
を見れば、あの日俺は突然9人もの同業
者達に押しかけられ、いきなり頼み事を
された。今と数こそ違えど似たような状
況でそこだけを見れば、懐疑的であり警
戒心を抱く案件だ。しかし、あの中には
俺が以前出会い、直接言葉を交わし共闘
した者達がいた。またプライドを賭け、
俺達へと戦いを挑んできた者もいた。ど
ちらも戦闘の中でお互いのことを推し量
り、結果そいつらが自分達の利益だけで
動くような奴らではないと判断できた」
「………………」
「もちろん、中にはまだ出会ったことも
言葉すら交わしたことのない者達もい
た。しかし、そいつらの話を聞いていく
うちに他の者達に便乗して寝首を掻こう
などとは1ミリも考えていないと分かっ
た。現にそこからは感謝と敬意の念を感
じ、より純粋に高みを目指そうとする気
概があった」
「……………僕はSSランク冒険者です
よ?」
「だから何だ?まさか高ランク冒険者は
嘘を言ったり裏切ったりしないと?ギル
ドから認められ、人々から尊敬の眼差し
で見られるほどの人物がそんなつまらな
いことはしないと?そんな保証が一体ど
こにある?その先入観を逆手に取り、行
動を起こす者はいるかもしれない。まし
てや、どこまでいってもお前らは人
間……………人は間違える生き物だ」
「………………」
そこから、しばらく静寂が訪れた。何を
考えているのか、ハーメルンは帽子を目
深に被り背もたれに背を預ける。目の前
に置かれた湯呑みからは既に湯気が消
え、お茶はとうに冷め切っていた。それ
がまるで今のこの状況を表しているかの
ようでおかしくなったのか、彼の顔に軽
く笑みが零れた。そして、たっぷりと間
を空けてから、こう言った。
「……………お見事。全く期待以上の方で
すね、あなたは」
「やはり、何か企んでいたか」
「おや、それもバレていましたか」
「ああ。挑発に見せかけていたが、あの
質問は俺を試しているように感じられ
た。なんせ悪意がまるでなかったから
な」
「こりゃ参った。いよいよもってお恥ず
かしい」
「ここまできたら、まわりくどいのはな
しにして、本題を言え」
「いや、本題は先程も申し上げたこちら
からのお願いで間違いはありません。し
かし、それが全てという訳でないのもま
た事実。実は我々、今回このような場で
の話し合いにおいて、1つシンヤさんを
試させて頂いておりました。あなたは
我々が同盟を組むに値する人物なのかど
うか」
「で?結果は?」
「文句なしに合格…………という言葉を
上から目線で言うこと自体、今は羞恥に
悶えるほどの心境です。このたった数分
のやり取りで感じ取った器・才覚・力量
は我々の想像の遥か上をいっていまし
た。噂以上の傑物。この勝負は我々の完
敗です」
「ちなみに不合格となる基準は?」
「僕のお願いにすぐ首を縦に振った場合
ですね。自分で言うのもなんですが、こ
んなあからさまに怪しい人間はたとえ高
ランク冒険者であろうと信用してはいけ
ません。まさしく、あなたの仰った通
り、"そんな保証が一体どこにある?"
です」
「で?ここから先はどうするんだ?」
「そうですね…………できれば先程のお
話をご一考頂きたいのですが、それは流
石に失礼というもの。第一、あなたには
何のメリットもありません。一度帰っ
て、仲間と話し合ってから出直
し……………」
「いいぞ」
「はい?」
「別にいいって言ったんだ……………同盟
を結ぶのが」
「は、は、はいいいぃぃぃ~~~!?」
「同盟とはクラン同士で結ばれる停戦の
証でございます。お互いの了承の下、友
好の契りを結ぶことで成立するこの同盟
は相互扶助・領土不可侵が主なメリット
となっており、傘下や|軍団《レギオ
ン》とは違った形での繋がりといえま
す」
「なるほど」
「本来であれば、同盟の説明は冒険者ギ
ルドで行われることがありません。何故
なら、傘下や軍団はギル
ドから公認された組織として扱われてい
ますが同盟は非公認、つまり黙認されて
いるからです」
「グレーな存在か」
「はい。なのであまりギルド内で同盟と
いう言葉は使わない方がいいとされてい
ます。わざわざ自分から悪目立ちする必
要もありませんからね」
「そうか……………で?その同盟がどうし
た?」
「ここからは大変厚かましいお願いとな
るのですがよろしいでしょうか?」
「とりあえず、聞くだけなら」
「ありがとうございます。僕のお願いと
いうのは他でもありません。"黒締"シ
ンヤ・モリタニさん………………どうか僕
達と同盟を結んではもらえないでしょう
か?」
「却下」
「……………やはり、そうですか」
「まず、俺がお前自体をまだ信用してい
ない。したがって、お前の言っているこ
とも半信半疑な状態だ。上手く丸め込ま
れて、後で裏切られたんじゃどうしよう
もないからな。あと同盟のメリットは聞
いたが、デメリットが聞かされていな
い。本当に俺から信用されたいのなら、
そこまで話す筈だ。物の押し売りじゃあ
るまいし」
「……………傘下をつける際はそこまで警
戒なさらなかったそうですが?僕と彼ら
の違いは一体何でしょうか?」
「付き合いの濃さだな。確かに状況だけ
を見れば、あの日俺は突然9人もの同業
者達に押しかけられ、いきなり頼み事を
された。今と数こそ違えど似たような状
況でそこだけを見れば、懐疑的であり警
戒心を抱く案件だ。しかし、あの中には
俺が以前出会い、直接言葉を交わし共闘
した者達がいた。またプライドを賭け、
俺達へと戦いを挑んできた者もいた。ど
ちらも戦闘の中でお互いのことを推し量
り、結果そいつらが自分達の利益だけで
動くような奴らではないと判断できた」
「………………」
「もちろん、中にはまだ出会ったことも
言葉すら交わしたことのない者達もい
た。しかし、そいつらの話を聞いていく
うちに他の者達に便乗して寝首を掻こう
などとは1ミリも考えていないと分かっ
た。現にそこからは感謝と敬意の念を感
じ、より純粋に高みを目指そうとする気
概があった」
「……………僕はSSランク冒険者です
よ?」
「だから何だ?まさか高ランク冒険者は
嘘を言ったり裏切ったりしないと?ギル
ドから認められ、人々から尊敬の眼差し
で見られるほどの人物がそんなつまらな
いことはしないと?そんな保証が一体ど
こにある?その先入観を逆手に取り、行
動を起こす者はいるかもしれない。まし
てや、どこまでいってもお前らは人
間……………人は間違える生き物だ」
「………………」
そこから、しばらく静寂が訪れた。何を
考えているのか、ハーメルンは帽子を目
深に被り背もたれに背を預ける。目の前
に置かれた湯呑みからは既に湯気が消
え、お茶はとうに冷め切っていた。それ
がまるで今のこの状況を表しているかの
ようでおかしくなったのか、彼の顔に軽
く笑みが零れた。そして、たっぷりと間
を空けてから、こう言った。
「……………お見事。全く期待以上の方で
すね、あなたは」
「やはり、何か企んでいたか」
「おや、それもバレていましたか」
「ああ。挑発に見せかけていたが、あの
質問は俺を試しているように感じられ
た。なんせ悪意がまるでなかったから
な」
「こりゃ参った。いよいよもってお恥ず
かしい」
「ここまできたら、まわりくどいのはな
しにして、本題を言え」
「いや、本題は先程も申し上げたこちら
からのお願いで間違いはありません。し
かし、それが全てという訳でないのもま
た事実。実は我々、今回このような場で
の話し合いにおいて、1つシンヤさんを
試させて頂いておりました。あなたは
我々が同盟を組むに値する人物なのかど
うか」
「で?結果は?」
「文句なしに合格…………という言葉を
上から目線で言うこと自体、今は羞恥に
悶えるほどの心境です。このたった数分
のやり取りで感じ取った器・才覚・力量
は我々の想像の遥か上をいっていまし
た。噂以上の傑物。この勝負は我々の完
敗です」
「ちなみに不合格となる基準は?」
「僕のお願いにすぐ首を縦に振った場合
ですね。自分で言うのもなんですが、こ
んなあからさまに怪しい人間はたとえ高
ランク冒険者であろうと信用してはいけ
ません。まさしく、あなたの仰った通
り、"そんな保証が一体どこにある?"
です」
「で?ここから先はどうするんだ?」
「そうですね…………できれば先程のお
話をご一考頂きたいのですが、それは流
石に失礼というもの。第一、あなたには
何のメリットもありません。一度帰っ
て、仲間と話し合ってから出直
し……………」
「いいぞ」
「はい?」
「別にいいって言ったんだ……………同盟
を結ぶのが」
「は、は、はいいいぃぃぃ~~~!?」
0
あなたにおすすめの小説
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。
ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる