251 / 416
第12章 vs聖義の剣
第251話 炎剣
しおりを挟む
"炎剣"と呼ばれる男がいる。齢36に
して、現在はSSSランク冒険者として
活動しているその男は常に波乱の人生を
歩んできた。彼は名門貴族の出であり、
幼い頃から護身術として剣術を嗜んでい
た。しかし、お世辞にも才能があるとは
言えず、週に3回程、指導してくれる者
が訪ねてきていたのだが成長が微々たる
ものだった為、両親はほとほと困り果て
ていた。確かに剣の腕で食べていく訳で
ないのなら、それでもいいのかもしれな
い。それにこの時はまだ息子が将来、戦
闘を生業とする職業に就くとは考えてい
なかった。とはいえ、護身術として最低
限のレベルにすら到達しないのであれ
ば、話は別だ。貴族といえば多方面から
様々な恨みを買いやすい。その火の粉が
まだ幼い息子に向かわないとは限らない
のだ。そんな時、もしも近くに護衛の者
がいなければ後は自分で自分の身を守ら
なくてはならない。その為には"炎剣"
少年のステータス、彼の置かれている環
境を考慮しても剣術レベルが最低"5"
は必要だった。
それから3年の月日が流れ、少年が8歳
になった時、事件が起きた。なんと彼の
一族全てが没落してしまったのだ。原因
は一族ぐるみでひっそりと行っていた悪
徳な事業が明るみに出てしまったことだ
った。ことの始まりは一族全ての者が集
まるパーティーでのある者の発言からだ
った。そこでは一族繁栄を願って英気を
養おうということで大量の酒や食べ物が
振る舞われ、誰もが上機嫌で浮かれてい
た。そんな中、テーブルの端に腰掛けた
異様な男が1人いた。この場にそぐわな
い、やけにみすぼらしい格好をしている
その男は周りを冷めた目で見回しつつ、
ある機会を窺っていたのだ。そして、そ
の時は突然訪れることとなった。男は不
意に立ち上がるとズカズカと我が物顔で
目的の人物のところまで歩いていき、徐
に声をかけ出した。
「お前がこの一族のトップの者だな?」
「ん?お前だと?口を慎みたまえ。全
く、近頃の若い貴族というのは教育
が………………って若くないだと!?それ
にその格好は!?き、貴様何者だ!どこ
から入り込んだ!」
「何が教育だ。一番なってないのはお前
だろうがよ」
「何だと!」
「あ~面倒臭ぇやり取りはするつもりね
ぇから、手短に用件を言うわ。俺は頼ま
れて、ここにいるんだが………………お前
ら、これに身は覚えはねぇか?」
「っ!?な、何故それを貴様が!?」
「やっぱりな。これって、いわゆる"裏
帳簿"ってやつだよな?よくもまぁ、や
ったもんだな」
「い、一体何のことかね」
「しらばっくれても無駄だぜ。ほら、こ
こに書いてあんだろうがよ………………"
不法な人身売買の純利益"って」
「っ!?貴様っ!それを知って、おめお
めとここから出られると思っているの
か!」
「出られるに決まってるだろ。大体、お
かしいとは思わないのか?俺みたいな不
審者が何故、こんなところにのうのうと
いられるのか」
「…………一体、どんな手を使ったん
だ?」
「察しが悪いな。この中に内通者がいる
んだよ。そいつらにここまで案内しても
らったんだ。で、帰りもちゃんと用意さ
れてる」
「っ!?そ、そんな馬鹿な!?」
「なんだ?まさか、自分達は強固な絆で
結ばれた運命共同体だとでも思っていた
のか?はっ。とんだ平和ボケ集団だな」
「なんだと!」
「これだけの人数がいるんだ。中にはお
前らの薄汚い商売に嫌気が差す者もいる
だろ。そうするとこの状況を誰かにぶち
壊して欲しいなんてことを考える。大
方、スキャンダルってのは身近な奴から
漏れるもんだ。そうでなきゃ、超優秀な
奴が独自の手法で嗅ぎつけるしかない。
まぁ、いずれにせよ、あまり周りの者を
信用しない方がいいんじゃねぇか?」
「き、貴様!」
「おおっと!俺に八つ当たりにしても無
駄だぜ?なんせ、これまでのやり取りは
全て映像の魔道具によってお前らの住ん
でいる国で公開されているからな。それ
に後日、この件が記事となって各地に出
回る。ああ、心配するな。文字起こしは
実に簡単だ。この中にはギルドの記者も
紛れ込んでいて、聞き漏らしさえなけれ
ば、一言一句違わず載ることになる。裏
取りや証人も俺や内通者によって事足り
るからな。早ければ、2、3日後にはっ
てところだろう。それまでに夜逃げの用
意でもしといた方がいいんじゃねぇ
か?」
「いやっ、まだだ!まだ何か手はあるは
ず!……………そ、そうだ!その記者とや
らが聞き漏らしさえすれば!」
「金、もしくは武力でそいつをどうこう
するつもりか?」
「そうだ!ふんっ!所詮は一介の人間。
大抵の者は目の前に積まれた大金か圧倒
的な武力による脅しに屈することにな
る!残念だったな、この平民風情が!」
「お前………………本当にアホなんだな」
「負け惜しみはよせ、駄民が」
「俺はさっき親切から教えてやったんだ
が?映像の魔道具でここでのことは今も
なお、公開されているって」
「……………あ」
「え~っとなになに?金になりそうな者
を無理矢理捕らえての人身売買に個人営
業店の不当な乗っ取り、衛兵を買収して
貴族が住むエリアのみ巡回させる、冒険
者を雇って他の冒険者との揉め事に持っ
ていき、トラブルになったところで登
場。うちの者が怪我をしたとか、迷惑を
被ったとかで法外な治療費・迷惑料をせ
しめる。その冒険者が払い終わった後も
貴族に楯突いたということでお前らの為
にタダ働きをさせる。もちろん、全て口
外禁止で………………などなど。は~、よ
くもまぁ、これだけのことをしたな。叩
けば叩くほど出るわ出るわ」
「………………」
「おめでとう。これでお前らもずっと隠
して生きていくっていう十字架から解放
される訳だ。いや~めでたいな。ほら、
ちょうど食い物と酒もあるし、騒げばど
うだ?"没落記念パーティー"って名目
で」
「貴様!!」
「だから、俺に八つ当たりしてももうど
うにもならないって言ってんだろ。ほ
ら、ここで現実逃避する奴以外はとっと
と家に帰って今後の人生計画でも立てた
らどうだ?旅前の計画とかってワクワク
するって言うだろ?あれと同じ感じでき
っと楽しいぞ」
「おい!それ以上言えば、どうなるか分
かっ……………っ!?」
その瞬間、会場の誰1人として動くこと
ができなかった。何故なら、目の前にい
る男から凄まじい殺気が放たれたから
だ。男は会場中を冷めた目で見渡すと静
かな声でこう告げた。
「てめぇらのやってることは人として最
低最悪な行為だ。自分のやったことはい
つの日か、巡り巡って自分の元に返って
くる。故に自業自得。同情の余地なし。
あと最後に良いことを教えといてやる。
俺が生まれた国にあった言葉なんだ
が………………"おごれる人も久しから
ず、ただ春の夜の夢のごとし"。意味は
その身をもって知ることになるだろう。
じゃあな」
男はそれだけ告げると颯爽と出口へと向
かっていった。その後には内通者と思し
き者達とギルドの記者が続いていく。残
された者達はただただ呆然とし、力が抜
けたのか、しばらくの間は席に座ったま
ま立ち上がることもできないのだった。
「ん?」
会場の外に出た男は庭でひたすら素振り
をする少年を見かけた。そして、そのま
ま立ち止まって注視しだした。普段はあ
まり他人に関心のない男だったが、その
時ばかりは何かが引っかかったのだ。
「どうしたんだ?」
「早く行こうぜ」
両隣にいる少年達から急かすような声が
かかる………がしかし、男はそれを無視
して、一瞬だけ険しい表情すると素振り
少年の元へとズカズカ歩いていった。
「坊主、何でこんなところでそんなこと
をしてるんだ?」
「えっ!?あ、す、すみません!ご迷惑
でしたら、すぐに出ていきますので」
「謝って欲しい訳じゃねぇ。俺はただ理
由が知りたいだけだ」
「えっと……………ぼ、僕はローウェルと
言いまして、ここで行われているパーテ
ィーにお呼ばれしたんですが何やら子供
には分かりづらいお話をされるというこ
とで…………」
「追い出されたという訳か」
「端的に申し上げればそういうことにな
ります」
「ったく、つくづくアレな一族だ
な…………まぁ、いい。ちなみにお前も
一族の者なのか?」
「はい」
「……………そうか。じゃあ、結果的に悪
いことをしちまったかもな」
「え?」
「なぁ、坊主。裏で悪どいことをして成
り立っている恵まれた生活と貧困ではあ
るが真っ当な人生を送る生活……………ど
っちの方がいい?」
「えっ!?と、突然何を」
「悪いが正直に答えて欲しい。俺の素性
は一旦置いておいてくれ。後で必ず教え
てやるから」
「わ、分かりました。そうだ
な…………」
そこからたっぷりと5分程、熟考した少
年は澄んだ瞳でこう答えた。
「後者ですね。やっぱり人様に迷惑をか
けて得たお金で暮らしても全然気持ち良
くないですから。それなら汗水垂らし
て、自分で稼いだお金で暮らしていく方
が僕は好きです」
「………………そうか。どうやら、俺の目
に狂いはなかったようだな…………よ
し。坊主、今から言うことをしっかりと
聞け」
「は、はい」
「この先、お前の一族は確実に没落す
る。それが明日になるか、はたまた1週
間後になるかは分からない。だが、栄華
が終わりを迎えるのは確かだ。そして、
その原因の一端を担っているのは間違い
なく俺だ」
「えっ!?そ、それはどうい
う……………」
「だから今後、俺はお前のことを責任持
って面倒見ていきたいと思ってる。恨ん
でくれて構わないし、嫌ってくれて結構
だ。だが、お前が一端の大人と判断され
る頃まではどうか一緒にいて欲しい」
「ち、ちょっと!一体、何を仰っている
んですか!さっぱり状況が飲み込めない
んですが!?」
少年がただただ困り果てる中、男は真摯
な瞳で訴えかける。その背後には何故
か、不機嫌そうな表情をした2人の少年
がいた。ひとまず綺麗な形かどうかはこ
の際置いておくとして……………これがク
ラン"箱舟"のクランマスターと後にS
SSランク冒険者にまで登り詰める少年
との最初の出会いだった。
して、現在はSSSランク冒険者として
活動しているその男は常に波乱の人生を
歩んできた。彼は名門貴族の出であり、
幼い頃から護身術として剣術を嗜んでい
た。しかし、お世辞にも才能があるとは
言えず、週に3回程、指導してくれる者
が訪ねてきていたのだが成長が微々たる
ものだった為、両親はほとほと困り果て
ていた。確かに剣の腕で食べていく訳で
ないのなら、それでもいいのかもしれな
い。それにこの時はまだ息子が将来、戦
闘を生業とする職業に就くとは考えてい
なかった。とはいえ、護身術として最低
限のレベルにすら到達しないのであれ
ば、話は別だ。貴族といえば多方面から
様々な恨みを買いやすい。その火の粉が
まだ幼い息子に向かわないとは限らない
のだ。そんな時、もしも近くに護衛の者
がいなければ後は自分で自分の身を守ら
なくてはならない。その為には"炎剣"
少年のステータス、彼の置かれている環
境を考慮しても剣術レベルが最低"5"
は必要だった。
それから3年の月日が流れ、少年が8歳
になった時、事件が起きた。なんと彼の
一族全てが没落してしまったのだ。原因
は一族ぐるみでひっそりと行っていた悪
徳な事業が明るみに出てしまったことだ
った。ことの始まりは一族全ての者が集
まるパーティーでのある者の発言からだ
った。そこでは一族繁栄を願って英気を
養おうということで大量の酒や食べ物が
振る舞われ、誰もが上機嫌で浮かれてい
た。そんな中、テーブルの端に腰掛けた
異様な男が1人いた。この場にそぐわな
い、やけにみすぼらしい格好をしている
その男は周りを冷めた目で見回しつつ、
ある機会を窺っていたのだ。そして、そ
の時は突然訪れることとなった。男は不
意に立ち上がるとズカズカと我が物顔で
目的の人物のところまで歩いていき、徐
に声をかけ出した。
「お前がこの一族のトップの者だな?」
「ん?お前だと?口を慎みたまえ。全
く、近頃の若い貴族というのは教育
が………………って若くないだと!?それ
にその格好は!?き、貴様何者だ!どこ
から入り込んだ!」
「何が教育だ。一番なってないのはお前
だろうがよ」
「何だと!」
「あ~面倒臭ぇやり取りはするつもりね
ぇから、手短に用件を言うわ。俺は頼ま
れて、ここにいるんだが………………お前
ら、これに身は覚えはねぇか?」
「っ!?な、何故それを貴様が!?」
「やっぱりな。これって、いわゆる"裏
帳簿"ってやつだよな?よくもまぁ、や
ったもんだな」
「い、一体何のことかね」
「しらばっくれても無駄だぜ。ほら、こ
こに書いてあんだろうがよ………………"
不法な人身売買の純利益"って」
「っ!?貴様っ!それを知って、おめお
めとここから出られると思っているの
か!」
「出られるに決まってるだろ。大体、お
かしいとは思わないのか?俺みたいな不
審者が何故、こんなところにのうのうと
いられるのか」
「…………一体、どんな手を使ったん
だ?」
「察しが悪いな。この中に内通者がいる
んだよ。そいつらにここまで案内しても
らったんだ。で、帰りもちゃんと用意さ
れてる」
「っ!?そ、そんな馬鹿な!?」
「なんだ?まさか、自分達は強固な絆で
結ばれた運命共同体だとでも思っていた
のか?はっ。とんだ平和ボケ集団だな」
「なんだと!」
「これだけの人数がいるんだ。中にはお
前らの薄汚い商売に嫌気が差す者もいる
だろ。そうするとこの状況を誰かにぶち
壊して欲しいなんてことを考える。大
方、スキャンダルってのは身近な奴から
漏れるもんだ。そうでなきゃ、超優秀な
奴が独自の手法で嗅ぎつけるしかない。
まぁ、いずれにせよ、あまり周りの者を
信用しない方がいいんじゃねぇか?」
「き、貴様!」
「おおっと!俺に八つ当たりにしても無
駄だぜ?なんせ、これまでのやり取りは
全て映像の魔道具によってお前らの住ん
でいる国で公開されているからな。それ
に後日、この件が記事となって各地に出
回る。ああ、心配するな。文字起こしは
実に簡単だ。この中にはギルドの記者も
紛れ込んでいて、聞き漏らしさえなけれ
ば、一言一句違わず載ることになる。裏
取りや証人も俺や内通者によって事足り
るからな。早ければ、2、3日後にはっ
てところだろう。それまでに夜逃げの用
意でもしといた方がいいんじゃねぇ
か?」
「いやっ、まだだ!まだ何か手はあるは
ず!……………そ、そうだ!その記者とや
らが聞き漏らしさえすれば!」
「金、もしくは武力でそいつをどうこう
するつもりか?」
「そうだ!ふんっ!所詮は一介の人間。
大抵の者は目の前に積まれた大金か圧倒
的な武力による脅しに屈することにな
る!残念だったな、この平民風情が!」
「お前………………本当にアホなんだな」
「負け惜しみはよせ、駄民が」
「俺はさっき親切から教えてやったんだ
が?映像の魔道具でここでのことは今も
なお、公開されているって」
「……………あ」
「え~っとなになに?金になりそうな者
を無理矢理捕らえての人身売買に個人営
業店の不当な乗っ取り、衛兵を買収して
貴族が住むエリアのみ巡回させる、冒険
者を雇って他の冒険者との揉め事に持っ
ていき、トラブルになったところで登
場。うちの者が怪我をしたとか、迷惑を
被ったとかで法外な治療費・迷惑料をせ
しめる。その冒険者が払い終わった後も
貴族に楯突いたということでお前らの為
にタダ働きをさせる。もちろん、全て口
外禁止で………………などなど。は~、よ
くもまぁ、これだけのことをしたな。叩
けば叩くほど出るわ出るわ」
「………………」
「おめでとう。これでお前らもずっと隠
して生きていくっていう十字架から解放
される訳だ。いや~めでたいな。ほら、
ちょうど食い物と酒もあるし、騒げばど
うだ?"没落記念パーティー"って名目
で」
「貴様!!」
「だから、俺に八つ当たりしてももうど
うにもならないって言ってんだろ。ほ
ら、ここで現実逃避する奴以外はとっと
と家に帰って今後の人生計画でも立てた
らどうだ?旅前の計画とかってワクワク
するって言うだろ?あれと同じ感じでき
っと楽しいぞ」
「おい!それ以上言えば、どうなるか分
かっ……………っ!?」
その瞬間、会場の誰1人として動くこと
ができなかった。何故なら、目の前にい
る男から凄まじい殺気が放たれたから
だ。男は会場中を冷めた目で見渡すと静
かな声でこう告げた。
「てめぇらのやってることは人として最
低最悪な行為だ。自分のやったことはい
つの日か、巡り巡って自分の元に返って
くる。故に自業自得。同情の余地なし。
あと最後に良いことを教えといてやる。
俺が生まれた国にあった言葉なんだ
が………………"おごれる人も久しから
ず、ただ春の夜の夢のごとし"。意味は
その身をもって知ることになるだろう。
じゃあな」
男はそれだけ告げると颯爽と出口へと向
かっていった。その後には内通者と思し
き者達とギルドの記者が続いていく。残
された者達はただただ呆然とし、力が抜
けたのか、しばらくの間は席に座ったま
ま立ち上がることもできないのだった。
「ん?」
会場の外に出た男は庭でひたすら素振り
をする少年を見かけた。そして、そのま
ま立ち止まって注視しだした。普段はあ
まり他人に関心のない男だったが、その
時ばかりは何かが引っかかったのだ。
「どうしたんだ?」
「早く行こうぜ」
両隣にいる少年達から急かすような声が
かかる………がしかし、男はそれを無視
して、一瞬だけ険しい表情すると素振り
少年の元へとズカズカ歩いていった。
「坊主、何でこんなところでそんなこと
をしてるんだ?」
「えっ!?あ、す、すみません!ご迷惑
でしたら、すぐに出ていきますので」
「謝って欲しい訳じゃねぇ。俺はただ理
由が知りたいだけだ」
「えっと……………ぼ、僕はローウェルと
言いまして、ここで行われているパーテ
ィーにお呼ばれしたんですが何やら子供
には分かりづらいお話をされるというこ
とで…………」
「追い出されたという訳か」
「端的に申し上げればそういうことにな
ります」
「ったく、つくづくアレな一族だ
な…………まぁ、いい。ちなみにお前も
一族の者なのか?」
「はい」
「……………そうか。じゃあ、結果的に悪
いことをしちまったかもな」
「え?」
「なぁ、坊主。裏で悪どいことをして成
り立っている恵まれた生活と貧困ではあ
るが真っ当な人生を送る生活……………ど
っちの方がいい?」
「えっ!?と、突然何を」
「悪いが正直に答えて欲しい。俺の素性
は一旦置いておいてくれ。後で必ず教え
てやるから」
「わ、分かりました。そうだ
な…………」
そこからたっぷりと5分程、熟考した少
年は澄んだ瞳でこう答えた。
「後者ですね。やっぱり人様に迷惑をか
けて得たお金で暮らしても全然気持ち良
くないですから。それなら汗水垂らし
て、自分で稼いだお金で暮らしていく方
が僕は好きです」
「………………そうか。どうやら、俺の目
に狂いはなかったようだな…………よ
し。坊主、今から言うことをしっかりと
聞け」
「は、はい」
「この先、お前の一族は確実に没落す
る。それが明日になるか、はたまた1週
間後になるかは分からない。だが、栄華
が終わりを迎えるのは確かだ。そして、
その原因の一端を担っているのは間違い
なく俺だ」
「えっ!?そ、それはどうい
う……………」
「だから今後、俺はお前のことを責任持
って面倒見ていきたいと思ってる。恨ん
でくれて構わないし、嫌ってくれて結構
だ。だが、お前が一端の大人と判断され
る頃まではどうか一緒にいて欲しい」
「ち、ちょっと!一体、何を仰っている
んですか!さっぱり状況が飲み込めない
んですが!?」
少年がただただ困り果てる中、男は真摯
な瞳で訴えかける。その背後には何故
か、不機嫌そうな表情をした2人の少年
がいた。ひとまず綺麗な形かどうかはこ
の際置いておくとして……………これがク
ラン"箱舟"のクランマスターと後にS
SSランク冒険者にまで登り詰める少年
との最初の出会いだった。
0
あなたにおすすめの小説
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる