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第13章 魔族領
第266話 署名
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「皆様、初めまして。ただいまご紹介に
預かりました。ハジメの父、ユーサー・
ラゴンと申します」
「同じくハジメの母、イグレイン・ラゴ
ンと申します」
聴衆に向けてお辞儀をする2人の男女。
本来であれば、すぐにでも反応が返って
くる筈なのだが、あまりに突然の事態に
頭での理解が追い付かず、全体的に上の
空な者が多かった為か、現場は静まり返
ってしまっていた。するとそのような反
応を予期していたのか、大して驚いた様
子もなく2人はそのまま話をし始めた。
「この度は世界中の皆様に多大なるご迷
惑をお掛けしてしまったこと、息子に代
わり深くお詫び申し上げます。大変申し
訳ございませんでした」
「大変申し訳ございませんでした」
その場に居合わせたほとんどの者達がた
だただ呆然のあまり、口を大きく開けて
その光景を見つめていた。自分達は2人
の話を聞く為にやってきたのか、本来の
目的を忘れてしまいそうになるほど現場
の空気は先程までとはガラッと変わって
いた。
「息子の犯してしまった罪を親である私
達が責任を持って償いたいと思っており
ます」
「贖罪方法は皆様によってお決め頂きた
いと思っております。お手数をおかけし
ますが、どうかよろしくお願い致しま
す」
「ち、ちょっと!これは一体どういうこ
と!?な、何故そのお2人が!?」
少しの間、驚きで動くことの出来なかっ
たハーメルンだが、このまま話が勝手に
進んでしまう恐怖を覚え、咄嗟に口を出
した。
「何故もなにも…………お前が言ったん
だろ。身内のやらかしたことは身内が責
任を取ると」
「いや、それは……………」
「まさか、この2人には当てはまらない
とか言い出すんじゃないだろうな?」
「……………」
「これで第三者の気持ちが分かったか?
お前が今、しようとしていることはこう
いうことだ」
「ぐっ…………でも、だって………………
それじゃあ僕は一体どうすれば」
「ユーサー、イグレイン、話を遮って悪
かった。続けてくれ」
「承知致しました……………皆様、今し方
私達が言った贖罪についてなのですが実
はもう既に各地を周り、他の方々に聞い
てきました」
「えっ……………」
俯いていたハーメルンは再び、驚きから
顔を上げた。そして、その先の言葉に耳
を傾けた。
「その結果がこちらの紙に記されていま
す……………っと、シンヤさん、これでよ
ろしいでしょうか?」
「ああ。ありがとな」
「いえいえ。私達の方こそ、色々とありがとうございました」
「気にするな」
2人と入れ替わる形で前へと出たシンヤ
は聴衆へ身体ごと向けて、口を開いた。
「シンヤ・モリタニ。冒険者をしている
者だ。まずはいきなりの乱入、そしてハ
ーメルンの話を止めてしまった非礼を詫
びよう。すまなかった」
シンヤの謝罪の言葉にどよめく聴衆。噂
では傍若無人で傲岸不遜。挨拶や謝罪な
どが碌にできない者だという風に聞いて
いたのがほとんどだった。その為、今の
謝罪1つでシンヤの好感度は少し上昇し
ていた。
「だが、彼の話を止めてでもしなければ
ならない話が俺達にはあった。まずはこ
れを見てもらおう」
そう言うとシンヤは1枚の紙を真横に掲
げた。するとそれはみるみる大きくなっ
ていき、やがて3m程の高さにまでなっ
た。そのおかげか紙に書いてある内容が
広場にいる者には分かるようになった。
「ここには彼らの贖罪方法……………の前
にそもそも贖罪などする必要があるのか
どうかを聞いた結果が記されている」
「……………なるほどな」
「おいおい……………」
「粋な奴だな、"黒締"」
聴衆が口々に感想を述べる中、紙に記載
されている内容を見たハーメルンはとい
うと……………
「シ、シンヤ………………いつの間にこん
なことを」
目を大きく見開きながら、口をわなわな
と震わせていた。
「見てもらえれば分かると思うが9割以
上の者達は必要がないと答えている。理
由としては"たまたま罪を犯した者と血
縁関係だからといって償わせるのはやり
すぎ"や"それぞれの人生があって、し
でかしたのが大人なのであれば、周りの
者が責任を負う必要はない。本人が何と
かするべき"というものだった。そし
て、各地の民衆はそれに加えてこうも言
ってくれた」
そこから少し間を空けてから、シンヤは
周囲を見渡してこう言った。
「冒険者の引退を宣言したハーメルンや
子が犯した罪に囚われるハジメの両親達
を許してやって欲しいと……………この紙
は言うなれば、署名だ」
紙の中央部分の最も目立つ場所。そこに
は3人分の名前がしっかりと刻まれてお
り、それが陽に照らされてか妙に輝いて
見えていた。
預かりました。ハジメの父、ユーサー・
ラゴンと申します」
「同じくハジメの母、イグレイン・ラゴ
ンと申します」
聴衆に向けてお辞儀をする2人の男女。
本来であれば、すぐにでも反応が返って
くる筈なのだが、あまりに突然の事態に
頭での理解が追い付かず、全体的に上の
空な者が多かった為か、現場は静まり返
ってしまっていた。するとそのような反
応を予期していたのか、大して驚いた様
子もなく2人はそのまま話をし始めた。
「この度は世界中の皆様に多大なるご迷
惑をお掛けしてしまったこと、息子に代
わり深くお詫び申し上げます。大変申し
訳ございませんでした」
「大変申し訳ございませんでした」
その場に居合わせたほとんどの者達がた
だただ呆然のあまり、口を大きく開けて
その光景を見つめていた。自分達は2人
の話を聞く為にやってきたのか、本来の
目的を忘れてしまいそうになるほど現場
の空気は先程までとはガラッと変わって
いた。
「息子の犯してしまった罪を親である私
達が責任を持って償いたいと思っており
ます」
「贖罪方法は皆様によってお決め頂きた
いと思っております。お手数をおかけし
ますが、どうかよろしくお願い致しま
す」
「ち、ちょっと!これは一体どういうこ
と!?な、何故そのお2人が!?」
少しの間、驚きで動くことの出来なかっ
たハーメルンだが、このまま話が勝手に
進んでしまう恐怖を覚え、咄嗟に口を出
した。
「何故もなにも…………お前が言ったん
だろ。身内のやらかしたことは身内が責
任を取ると」
「いや、それは……………」
「まさか、この2人には当てはまらない
とか言い出すんじゃないだろうな?」
「……………」
「これで第三者の気持ちが分かったか?
お前が今、しようとしていることはこう
いうことだ」
「ぐっ…………でも、だって………………
それじゃあ僕は一体どうすれば」
「ユーサー、イグレイン、話を遮って悪
かった。続けてくれ」
「承知致しました……………皆様、今し方
私達が言った贖罪についてなのですが実
はもう既に各地を周り、他の方々に聞い
てきました」
「えっ……………」
俯いていたハーメルンは再び、驚きから
顔を上げた。そして、その先の言葉に耳
を傾けた。
「その結果がこちらの紙に記されていま
す……………っと、シンヤさん、これでよ
ろしいでしょうか?」
「ああ。ありがとな」
「いえいえ。私達の方こそ、色々とありがとうございました」
「気にするな」
2人と入れ替わる形で前へと出たシンヤ
は聴衆へ身体ごと向けて、口を開いた。
「シンヤ・モリタニ。冒険者をしている
者だ。まずはいきなりの乱入、そしてハ
ーメルンの話を止めてしまった非礼を詫
びよう。すまなかった」
シンヤの謝罪の言葉にどよめく聴衆。噂
では傍若無人で傲岸不遜。挨拶や謝罪な
どが碌にできない者だという風に聞いて
いたのがほとんどだった。その為、今の
謝罪1つでシンヤの好感度は少し上昇し
ていた。
「だが、彼の話を止めてでもしなければ
ならない話が俺達にはあった。まずはこ
れを見てもらおう」
そう言うとシンヤは1枚の紙を真横に掲
げた。するとそれはみるみる大きくなっ
ていき、やがて3m程の高さにまでなっ
た。そのおかげか紙に書いてある内容が
広場にいる者には分かるようになった。
「ここには彼らの贖罪方法……………の前
にそもそも贖罪などする必要があるのか
どうかを聞いた結果が記されている」
「……………なるほどな」
「おいおい……………」
「粋な奴だな、"黒締"」
聴衆が口々に感想を述べる中、紙に記載
されている内容を見たハーメルンはとい
うと……………
「シ、シンヤ………………いつの間にこん
なことを」
目を大きく見開きながら、口をわなわな
と震わせていた。
「見てもらえれば分かると思うが9割以
上の者達は必要がないと答えている。理
由としては"たまたま罪を犯した者と血
縁関係だからといって償わせるのはやり
すぎ"や"それぞれの人生があって、し
でかしたのが大人なのであれば、周りの
者が責任を負う必要はない。本人が何と
かするべき"というものだった。そし
て、各地の民衆はそれに加えてこうも言
ってくれた」
そこから少し間を空けてから、シンヤは
周囲を見渡してこう言った。
「冒険者の引退を宣言したハーメルンや
子が犯した罪に囚われるハジメの両親達
を許してやって欲しいと……………この紙
は言うなれば、署名だ」
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見えていた。
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