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第15章 親子喧嘩
第346話 神
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「"運の女神フォルトゥーナ"?」
「ええ」
「……………ん?ちょっと待て。"堀十奈"って名前はもしかして」
「察しの通り、そこから取ったのよ」
女…………フォルトゥーナの言葉に安直
だなと感じるシンヤ。一方のティア達は
"神"というだけでは説明がつかない彼
女の傑物さに未だ警戒心を保ったままで
いた。
「あれはどのくらい前だったか……………
人間界に興味のあった私は"地球"とい
う星に目をつけ、そこに降り立った。そ
の際、名前の1つでもないと不便だった
から、適当につけたのよ………………あな
たのお父さんと出会ったのもそんな時
ね」
「………………」
「人間界に降りたばかりの私は右も左も
分からないことばかり。そこで近くを通
りかかる人の中で気になる人がいれば、
その人に着いていこうと思った
の………………キョウヤもそんなうちの1
人だった。初めて見た時から、この人は
なんて綺麗な心の持ち主なんだと驚いた
し、感心もしたわ。でも、どうせ私の心
を動かす者なんている訳ない。そんなこ
とできっこないって……………思ってた」
フォルトゥーナはキョウヤが昔話をした
時と同じような表情をしていた。する
と、それを見たシンヤはやはり夫婦だな
と感じた。
「でも、キョウヤはすごく面白いし、何
より優しかった。一緒にいて、とても楽
しかった。そして、一緒に過ごしている
うちに気が付けば、お互いの存在がなく
てはならないものとなっていた……………
いつからか、私はキョウヤを愛してしま
った」
「………………」
一切茶々を入れることなく、話を聞くシ
ンヤ達。それだけフォルトゥーナの話に
興味がある証拠だった。
「神と人の恋愛は私達にとって
御法度だった。仮にそうでなかったとし
ても上手くいくはずがない。私と彼は文
字通り、住んでいる世界が違っていたの
だから。私はいずれ天界へと帰らなけれ
ばならない。しかし、私達の気持ちは止
められなかった。"愛する"ということ
はそういうことだった………………そし
て、気が付けば、私はシンヤを身籠り、
出産していた」
今のところ、キョウヤから聞いていた話
と差異がない為、フォルトゥーナを嘘つ
きだと決めつけるようなことはしなかっ
た。しかし、少しでも話に矛盾が生じた
場合は容赦しないとシンヤは鋭い眼光を
崩さなかった。
「私とキョウヤの愛の結晶、やっと手に入れた平穏……………私は
とても幸せだった。愛する夫と可愛い可
愛い息子に囲まれて生活するんだから、
当然ね………………でも、そんな日々も長
くは続かなかった」
「何故だ?」
「私に"帰還命令"が出たからよ」
「"帰還命令"?」
要領を得ない話になってきたと顔を顰め
るシンヤにフォルトゥーナは端的に説明
した。
「私よりももっと上の存在から天界へ
の帰還を命じられたの。それは絶対に逆
らうことのできない命令だったわ。逆ら
えば、私だけじゃなくてキョウヤと何よ
りシンヤに危害が及ぶ危険性があった」
「それで?」
「私は……………再び天界へと戻ったわ」
「だろうな。キョウヤの話を聞いてい
て、なんかおかしいと思ったんだ。あん
なに見つからないなんてことないから
な」
「……………」
「理由はどうあれ、お前はキョウヤと俺
を捨てて出ていった。俺のことはまだい
い。物心つく前だったからな……………だ
が、キョウヤは違う。これから幸せにや
っていこうって時に突然妻を失った男の
気持ちを考えたことはあるか?」
「……………ごめんなさい」
「言い訳しないのかよ。本当は俺達に危
険が及ばないように出ていったんだ
ろ?」
「いいえ。どんな理由があれど、私はあ
なた達を置いて出て行った。情状酌量の
余地はないわ………………だから、シン
ヤ。本当にごめんなさい」
「……………やっぱり、お前ら夫婦だな」
フォルトゥーナの台詞がキョウヤと全く
一緒だった為、思わず微笑むシンヤ。そ
して、その瞬間を見逃さなかったフォル
トゥーナは興奮して、途端に叫び出し
た。
「シ、シンヤちゃんが笑ったわ!!こ、
これは一大事よ!!もしかして、もう反
抗期は終わったのかしら?こうしちゃい
られない。カメラ、カメラ……………」
「うるさ…………うざ」
「ああっ!!2回も暴言吐いた!!」
「うざいから、大人しくしろ」
「はんっ!!もう元に戻っちゃった!!
あと少しだったのに!!」
「いいから、早く話の続きをしろよ。こ
のまま帰るぞ」
「わ、分かった!!分かったから、帰ら
ないで一生ここにいて!!」
「無理に決まってんだろ」
ギャアギャア騒ぐフォルトゥーナを冷め
た目で見るシンヤ。いくら美人とはい
え、先程からの一連の行動を見ていたテ
ィア達も流石に引いていた。
「さ、さぁ気を取り直して話に戻るわよ」
「………………」
フォルトゥーナはシンヤ達の視線を気に
しないようにしつつ、再び話し出した。
「私は地球を去ってから、常にシンヤち
ゃん……………シンヤ達のことが気掛かり
だったわ。まだ幼いあなたと生活力の怪
しいキョウヤじゃやっていけるのかどう
か不安だったわ。でも、そんな不安はす
ぐに消えたの。だって、キョウヤはあな
たをソウヤ・モリタニに預けたのだか
ら」
「っ!?あいつを知っているのか!?」
「当然。キョウヤから話は聞いていたか
ら。まぁ、そうでなくとも彼は稀に見る
逸材。地球で彼を超える者となるとそれ
こそシンヤぐらいよ」
「一体、あいつは何者なんだ?」
「知らないの?」
「自分のことは多くを語りたがらなかっ
たからな」
「ふ~ん……………まぁ、いいわ。それで
あなたを預けたキョウヤは私を探して旅
に出て……………そして、異世界の王国に
よって勇者召喚され……………そうなとこ
ろを私が横から邪魔したの」
「っ!?」
突然の告白に驚きを隠せないシンヤ。そ
れを見つめながら、フォルトゥーナは話
を続けた。
「確かにキョウヤは"地球"では強者
よ。でも、異世界では何の固有スキルも
称号もなければ、一瞬で命を落とす危険
性がある。だから、私はキョウヤを召喚
の直前、天界へと呼び寄せたわ」
「まさか……………」
「そうよ」
直後、フォルトゥーナはシンヤの予想通
りの言葉を言った。
「彼の固有スキルと称号は私が与えたの」
「ええ」
「……………ん?ちょっと待て。"堀十奈"って名前はもしかして」
「察しの通り、そこから取ったのよ」
女…………フォルトゥーナの言葉に安直
だなと感じるシンヤ。一方のティア達は
"神"というだけでは説明がつかない彼
女の傑物さに未だ警戒心を保ったままで
いた。
「あれはどのくらい前だったか……………
人間界に興味のあった私は"地球"とい
う星に目をつけ、そこに降り立った。そ
の際、名前の1つでもないと不便だった
から、適当につけたのよ………………あな
たのお父さんと出会ったのもそんな時
ね」
「………………」
「人間界に降りたばかりの私は右も左も
分からないことばかり。そこで近くを通
りかかる人の中で気になる人がいれば、
その人に着いていこうと思った
の………………キョウヤもそんなうちの1
人だった。初めて見た時から、この人は
なんて綺麗な心の持ち主なんだと驚いた
し、感心もしたわ。でも、どうせ私の心
を動かす者なんている訳ない。そんなこ
とできっこないって……………思ってた」
フォルトゥーナはキョウヤが昔話をした
時と同じような表情をしていた。する
と、それを見たシンヤはやはり夫婦だな
と感じた。
「でも、キョウヤはすごく面白いし、何
より優しかった。一緒にいて、とても楽
しかった。そして、一緒に過ごしている
うちに気が付けば、お互いの存在がなく
てはならないものとなっていた……………
いつからか、私はキョウヤを愛してしま
った」
「………………」
一切茶々を入れることなく、話を聞くシ
ンヤ達。それだけフォルトゥーナの話に
興味がある証拠だった。
「神と人の恋愛は私達にとって
御法度だった。仮にそうでなかったとし
ても上手くいくはずがない。私と彼は文
字通り、住んでいる世界が違っていたの
だから。私はいずれ天界へと帰らなけれ
ばならない。しかし、私達の気持ちは止
められなかった。"愛する"ということ
はそういうことだった………………そし
て、気が付けば、私はシンヤを身籠り、
出産していた」
今のところ、キョウヤから聞いていた話
と差異がない為、フォルトゥーナを嘘つ
きだと決めつけるようなことはしなかっ
た。しかし、少しでも話に矛盾が生じた
場合は容赦しないとシンヤは鋭い眼光を
崩さなかった。
「私とキョウヤの愛の結晶、やっと手に入れた平穏……………私は
とても幸せだった。愛する夫と可愛い可
愛い息子に囲まれて生活するんだから、
当然ね………………でも、そんな日々も長
くは続かなかった」
「何故だ?」
「私に"帰還命令"が出たからよ」
「"帰還命令"?」
要領を得ない話になってきたと顔を顰め
るシンヤにフォルトゥーナは端的に説明
した。
「私よりももっと上の存在から天界へ
の帰還を命じられたの。それは絶対に逆
らうことのできない命令だったわ。逆ら
えば、私だけじゃなくてキョウヤと何よ
りシンヤに危害が及ぶ危険性があった」
「それで?」
「私は……………再び天界へと戻ったわ」
「だろうな。キョウヤの話を聞いてい
て、なんかおかしいと思ったんだ。あん
なに見つからないなんてことないから
な」
「……………」
「理由はどうあれ、お前はキョウヤと俺
を捨てて出ていった。俺のことはまだい
い。物心つく前だったからな……………だ
が、キョウヤは違う。これから幸せにや
っていこうって時に突然妻を失った男の
気持ちを考えたことはあるか?」
「……………ごめんなさい」
「言い訳しないのかよ。本当は俺達に危
険が及ばないように出ていったんだ
ろ?」
「いいえ。どんな理由があれど、私はあ
なた達を置いて出て行った。情状酌量の
余地はないわ………………だから、シン
ヤ。本当にごめんなさい」
「……………やっぱり、お前ら夫婦だな」
フォルトゥーナの台詞がキョウヤと全く
一緒だった為、思わず微笑むシンヤ。そ
して、その瞬間を見逃さなかったフォル
トゥーナは興奮して、途端に叫び出し
た。
「シ、シンヤちゃんが笑ったわ!!こ、
これは一大事よ!!もしかして、もう反
抗期は終わったのかしら?こうしちゃい
られない。カメラ、カメラ……………」
「うるさ…………うざ」
「ああっ!!2回も暴言吐いた!!」
「うざいから、大人しくしろ」
「はんっ!!もう元に戻っちゃった!!
あと少しだったのに!!」
「いいから、早く話の続きをしろよ。こ
のまま帰るぞ」
「わ、分かった!!分かったから、帰ら
ないで一生ここにいて!!」
「無理に決まってんだろ」
ギャアギャア騒ぐフォルトゥーナを冷め
た目で見るシンヤ。いくら美人とはい
え、先程からの一連の行動を見ていたテ
ィア達も流石に引いていた。
「さ、さぁ気を取り直して話に戻るわよ」
「………………」
フォルトゥーナはシンヤ達の視線を気に
しないようにしつつ、再び話し出した。
「私は地球を去ってから、常にシンヤち
ゃん……………シンヤ達のことが気掛かり
だったわ。まだ幼いあなたと生活力の怪
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か不安だったわ。でも、そんな不安はす
ぐに消えたの。だって、キョウヤはあな
たをソウヤ・モリタニに預けたのだか
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「っ!?あいつを知っているのか!?」
「当然。キョウヤから話は聞いていたか
ら。まぁ、そうでなくとも彼は稀に見る
逸材。地球で彼を超える者となるとそれ
こそシンヤぐらいよ」
「一体、あいつは何者なんだ?」
「知らないの?」
「自分のことは多くを語りたがらなかっ
たからな」
「ふ~ん……………まぁ、いいわ。それで
あなたを預けたキョウヤは私を探して旅
に出て……………そして、異世界の王国に
よって勇者召喚され……………そうなとこ
ろを私が横から邪魔したの」
「っ!?」
突然の告白に驚きを隠せないシンヤ。そ
れを見つめながら、フォルトゥーナは話
を続けた。
「確かにキョウヤは"地球"では強者
よ。でも、異世界では何の固有スキルも
称号もなければ、一瞬で命を落とす危険
性がある。だから、私はキョウヤを召喚
の直前、天界へと呼び寄せたわ」
「まさか……………」
「そうよ」
直後、フォルトゥーナはシンヤの予想通
りの言葉を言った。
「彼の固有スキルと称号は私が与えたの」
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