俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第23話:夢

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「……………あれ?ぼく」

セキレイが裏へと引っ込んだ直後、ビオラが目を覚ました。セキレイによるとビオラは"覚醒"を使った瞬間から、記憶がない訳だが果たして、それは……………どうやら、本当のようだった。

「気分は悪くないか?」

「うん。特には……………あれ?もしかして、ぼく」

「察しの通りだ。お前は対戦の途中で"覚醒"を使用し、その結果、ニナ達が危険に晒された為、対戦が中止となった」

「やっぱり………………ごめんね、みんな」

「いや、それはもういい。なんせ、もう1人の奴に散々謝ってもらったからな」

「もう1人?………………っ!?あっ、そっか!ぼくが眠ってたってことはその間、セキレイが…………ねぇ。あの子、何か変なこと言ってなかった?」

「いや~色々と聞かせてもらったわ。お前の恥ずかしい秘密とかな」

「ちょっと!一体、何を聞いたの!?」

「いや、冗談だが………………もしかして、他人に聞かれたら、恥ずかしい秘密が本当にあるのか?」

「う、うるさいな!べ、別にそんなのないよ!!」

「あっそ。俺にとってはそんなのどうでもいいが」

「ううっ~」

「あっ、そうそう……………お前の依頼、受けるから」

「………………へ?」

「だから…………金鎧の兜だっけ?それ、探してやるって言ってんの」

「へ?いいの?……………本当に?」

「ああ」

「でも、何で?」

「確かに対戦は中止となったが、十分お前の力は証明してもらったからな」

「いや、でも………………」

「グダグダ言うな。とりあえず、今からメンバーを選出して、早速明日から動き出すからな」

「そ、そんな急に!?」

「善は急げだ。それと今日はこれから、お前の力の訓練に付き合ってやる。今後もあんなことが続いたんじゃ、面倒臭いからな」

「えっ、そんな……………いいの?」

「当たり前だ。道中でいちいちフォローになんて回ってられん。あとはそうだな……………お前、今日はここに泊まれ」

「えっ!?……………う、うん。分かった。でも、その……………できれば優しくして欲しいなぁ…………なんて……………やっぱり、わがままだよね?」

「は?お前、何言ってんだ?」

「えっ!?お金が足りないから、その分は………………ってことじゃないの!?」

「んな訳あるか。こっから、家に帰ってたら効率が悪いから、そう言っただけだ。第一、もしお前の言うことが事実だったとして、俺には大切な妻達がいる。そんなことはどう転んでもあり得ん」

「ガーーーーン!!!!」

「ふふふ」

「えへへ」

「「「「「……………」」」」」

俺の言葉に嬉しそうにするティアとバイラ、一方のビオラは何故かガッカリしており、ニナ達はどこか意味ありげに俺とティア達をチラチラと交互に見ていた。

「そ、そんな…………ぼくって、魅力的じゃないのかな?」

「一体、何を落ち込んでんのか知らんが、あと少し休憩したら、訓練場へ向かうからな?分かってんのか?」

「うん。よく分かったよ。シンヤがぼくのことを何とも思ってないってことが」

「は?そんな訳ないだろ」

「えっ」

「ビオラのことは大切に思ってる」

「シンヤ……………」

義姉あねとしてな」

「もうっ!そういうことじゃないんだってば!!ちょっとは異性として、意識してよ!!」

「いや、それは無理」

「な、何でだよ!!」

「俺にとって、ビオラみたいなタイプは……………いいところ、友達止まりだから」

「………………」

「ん?おい。いきなり固まって、どうしたんだ?」

俺は突然、口を開けたまま石化したように動かなくなったビオラを不思議に思い、目の前で手をヒラヒラと何度も振った。それでも反応を返さない彼女をどうしたもんかと思い、ふとティア達へ視線をやるとその場の全員が冷たい目で俺のことを見ていることに気が付いた。そして、そこからは"流石に今のはない"という意思が感じ取れた。

「はぁ……………一体、何なんだ?」

ティアに毎日のように言われている"シンヤさんはもう少し女心を理解しましょう"という言葉がこの時程、刺さったことはなかった。





―――――――――――――――――――――




夢を見ていた。その中で俺は何者かにこう言われた気がした。

「シンヤ・モリタニ……………これから、お前は今日出会ったその少女と行動を共にしろ。彼女と一緒に"金鎧"を追い求める過程で……………お前が異世界へと渡った背景、そして、お前自身に掛けられた呪いについても分かる時がこよう」

は?異世界へと渡った背景?呪い?こいつは一体、何を言っているんだ?

「ゆめゆめ忘れるでないぞ。あの少女と行動を共にするのだ。さすれば、道は開かれん」

おい!一方的に言って、消えてくな!お前は一体、何者……………

「っ!?」

俺はそこで目を覚ました。外を見ると明るい。どうやら、朝を迎えたようだ。しかし、寝覚めの方はあまり良くなかった。


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