俺は善人にはなれない

気衒い

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〜After story〜

第24話:ソルト

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「ここがソルトか」

ビオラの訪問から1日が経ち、俺達は海に面した街、"ソルト"にやってきていた。ここはビオラが俺達のことを冒険者から聞いた街であり、そもそも彼女が旅をしていて、最初に辿り着いた街でもある。

「そして、1人旅の最後の終着点だったと」

「うん。そろそろ旅もやめて、どこかに落ち着きたいと思って、それでせっかくだからとこの街に戻ってきたんだ」

「その結果、俺達のことを耳にして、また旅をするとは……………皮肉なもんだな」

「でも、あの時とは違う。なんせ、今は……………1人じゃない」

ビオラが俺達を見回しながら、そう言う。ちなみに金鎧探しのメンバーは俺・ティア・アスカ・ドルツ・バイラ・サクヤ・セーラ・シャウロフスキー・モロク、そしてビオラである。ティアとバイラはビオラとの出会いの時から一緒にいて話が分かっているから、連れてきた。アスカとサクヤはあんな夢を見たからか、同じ異世界人も連れてきた方がいいだろうということで、ドルツは情報を集める上で最適な人物だから、セーラ・シャウロフスキー・モロクは貴重な経験を積ませるいい機会だから……………などといった理由から、このメンバーになったのだった。

「だな。だが、勘違いするなよ?何か起きても自分の身は自分で守るんだからな?」

「分かってる。そこまでしてもらう訳にはいかないからね」

「逆に言えば、こっちのことも気を遣わなくていい。この中で最も冒険者ランクの低いシャウロフスキーですら、お前よりも強いからな」

「うん。改めて目の前にするとシンヤ達は本当に凄いな……………色んなところを旅して回ったけど、こんなに強い人達は初めて見たよ。そもそもぼくより強い人自体がそういなかったからね」

「何が起こるか分からないからな。だから、仲間達の強化は必須だ。シャウも最初こそ、ナヨナヨしてたが今じゃ、Sランク冒険者である程度の相手が来ても対処できるまでになった」

「ちょっと、師匠!余計なこと言わないで下さいよ!!」

「じゃあ、お前もその呼び方をやめろ。一体、いつまで弟子の気分でいるんだ」

「他の命令ならば、聞きますがそれだけは絶対に嫌です。僕にとって師匠はいつまでも師匠ですから!!」

「シャウ、言いたいことはそれだけか?」

「え~っと……………あっ!あと、師匠はもう少し女心を理解した方がいいんじゃないですかね?」

「よし、分かった。お前を今ここで叩きのめして海に放り投げよう」
   
「ち、ちょっと!ほんの冗談じゃないですか~!!」

「はははっ!シンヤ達は本当に面白いなっ!!」

逃げ惑うシャウロフスキーと笑い転げるビオラ。そのすぐ後ろではティア達がため息を吐きながらもこの光景を優しく見守っていた。だが、俺は見逃さないぞ。シャウの言葉にお前ら全員がうんうんと頷いていたことを。





―――――――――――――――――――――






「次の人、どうぞ!!」

私はここ、ソルトの冒険者ギルドの受付嬢である。この街は海に面したとても良い街なのだが、いかんせん田舎すぎて何か特別なことが起きるといったことがほとんどない。確かに平和なのはいいことなのだが、それだけだと退屈してしまう。まして、ここは冒険者ギルドなのだ。少しくらい何か起きても……………とちょっぴり不謹慎なことを思っちゃったりして。でも、そんなことが許されるぐらい、ここでは何も起きないのだ。だから、この街で育った冒険心のある若者はある程度の年齢になれば、街を出て都会を目指す。すなわち、この街の冒険者ギルドにいる冒険者は大抵が外からの人な訳で……………

「ギルドカードのご提示をお願い致します………………っ!?」

私がその時、お相手した方々も外からの冒険者だった。あ~早く本部に栄転したいなぁ~。誰かさせてくれないかなぁ~…………なんて、ぼんやりと考えていた私の頭は瞬く間に覚醒した。

「悪いな。人数が多くて」

その方々が掲げるギルドカードはいずれも高ランクのものばかりだった。一番低くてもSランク。それだけじゃない。1人を除き、全員が同じ装いをしており、多種族でなおかつ大人数。どこかの有名クランの方々だろうか?少なくともこんな街じゃ、見かけない……………って!!

「……………あの~つかぬことをお伺い致しますが」

「ん?」

「………………もしかして、"黒天の星"の方々ですか?」

「ああ。そうだ」

私はそれを聞いた瞬間、身体中に電流が走ったような感覚に陥り、気が付けば、こう叫んでいた。

「し、少々お待ちをぅぅぅっ~~~~~~!!!!!!」

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