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2.覚えてない夜
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昨夜、確かに歓迎会はあった。
先輩たちに勧められて、ビールを数杯飲んだ。
でも、そんなに酔った覚えはないし、社長にキスをした記憶も、一切ない。
「覚えてない?」
黒崎社長は少し驚いたような表情を見せた。
「そうか。酔ってたもんな」
俺は必死に首を振った。
「いえ、あの、俺そんなに飲んでなくて……本当に記憶が……」
いくら尊敬しているとはいえ、キスなんてするわけない。
相手は社長だぞ。しかも男だ。
「じゃあ、これも覚えてないのかな」
社長は立ち上がり、俺の隣に座った。
距離が急に近くなる。息が詰まった。
「ちょ、ちょっと……!」
俺は反射的に立ち上がろうとしたが、黒崎社長の手が俺の腰を優しく押さえる。
「逃げなくていいよ。昨日、お前は自分から俺に言ったんだ」
社長の声が耳元で囁いてくる。
熱い吐息が、俺の首筋にかかった。
「『社長、俺のこと、抱いてください』って」
俺の顔が真っ赤に染まった。
「そ、そんなこと言うわけ……!」
ありえない。
絶対に、そんなこと言ってない。
「本当だよ」
黒崎社長は微笑みながら、俺の顎に指を添えた。
「でも、酔ってたから。今日改めて、お前の本心を聞きたくてね」
俺の心臓が爆発しそうだった。
社長の顔が近い。触れるか触れないかの距離に、その整った顔がある。
こんなに近くで見るのは初めてだ。
艶のある黒髪、長い睫毛、高い鼻筋、形の良い唇。
雑誌で見たことがある顔だけど、実物はもっと……。
って、何考えてるんだ俺。
「藤堂。お前は、俺のことどう思ってる?」
俺は息を呑んだ。
答えられない。
そもそも、昨日本当にそんなことを言ったのか。
キスをしたのか。
何もかもが信じられなくて、でも、社長の真剣な眼差しは嘘をついているようには見えなかった。
「お、俺……そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりだったの?」
社長は俺の手を取った。
温かい掌が俺の冷たい手を包む。
大きい手だ。俺の手なんて、すっぽり隠れてしまう。
「教えて、颯真」
名前で呼ばれた瞬間、俺の全身に電流が走った。
「っ……」
声が出ない。
なんだこれ。
なんで、こんなにドキドキしてるんだ。
黒崎社長はそんな俺を見つめたまま、ゆっくりと微笑んだ。
「お前、可愛いな」
親指が俺の唇をなぞった。
「昨日のキス、すごく甘かったよ」
俺の呼吸が乱れる。
やばい。これ、やばい。
「俺、今まで男に興味なかったんだけどね」
黒崎社長は俺の髪に指を滑り込ませた。
「お前だけは、特別みたいだ」
俺の頭が真っ白になった。
特別って、何が。どういう意味だ。
「昨日のお前、すごく積極的だった」
黒崎社長は俺の耳元で囁く。
「『社長のこと、ずっと好きでした』って」
俺の心臓が止まりそうになった。
「そ、そんな……」
言ってない。
絶対に言ってない。
でも、黒崎社長の声は確信に満ちていて。
もしかして、本当に俺……。
「まあ、今日は仕事もあるし」
社長は俺から離れ、デスクへ戻っていった。
「続きは、また今度ね」
俺はその場に立ち尽くしたまま、何が起きたのか理解できずにいた。
「あ、そうだ」
黒崎社長が振り返る。
「今日の夕方、また呼ぶから。お前の配属先、俺が直接決めたいんだ」
俺は震える声で答えた。
「は、はい……」
そして俺は、逃げるように社長室を後にした。
廊下に出た瞬間、俺は壁に背中を預けた。
心臓が、まだ止まらない。
「何だったんだ、今の……」
俺は自分の頬を両手で覆った。
熱い。
昨日、本当に俺はあんなことを言ったのか。
キスを、したのか。
そして――社長は、本気なのか。
俺の頭の中は、混乱でいっぱいだった。
先輩たちに勧められて、ビールを数杯飲んだ。
でも、そんなに酔った覚えはないし、社長にキスをした記憶も、一切ない。
「覚えてない?」
黒崎社長は少し驚いたような表情を見せた。
「そうか。酔ってたもんな」
俺は必死に首を振った。
「いえ、あの、俺そんなに飲んでなくて……本当に記憶が……」
いくら尊敬しているとはいえ、キスなんてするわけない。
相手は社長だぞ。しかも男だ。
「じゃあ、これも覚えてないのかな」
社長は立ち上がり、俺の隣に座った。
距離が急に近くなる。息が詰まった。
「ちょ、ちょっと……!」
俺は反射的に立ち上がろうとしたが、黒崎社長の手が俺の腰を優しく押さえる。
「逃げなくていいよ。昨日、お前は自分から俺に言ったんだ」
社長の声が耳元で囁いてくる。
熱い吐息が、俺の首筋にかかった。
「『社長、俺のこと、抱いてください』って」
俺の顔が真っ赤に染まった。
「そ、そんなこと言うわけ……!」
ありえない。
絶対に、そんなこと言ってない。
「本当だよ」
黒崎社長は微笑みながら、俺の顎に指を添えた。
「でも、酔ってたから。今日改めて、お前の本心を聞きたくてね」
俺の心臓が爆発しそうだった。
社長の顔が近い。触れるか触れないかの距離に、その整った顔がある。
こんなに近くで見るのは初めてだ。
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雑誌で見たことがある顔だけど、実物はもっと……。
って、何考えてるんだ俺。
「藤堂。お前は、俺のことどう思ってる?」
俺は息を呑んだ。
答えられない。
そもそも、昨日本当にそんなことを言ったのか。
キスをしたのか。
何もかもが信じられなくて、でも、社長の真剣な眼差しは嘘をついているようには見えなかった。
「お、俺……そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どんなつもりだったの?」
社長は俺の手を取った。
温かい掌が俺の冷たい手を包む。
大きい手だ。俺の手なんて、すっぽり隠れてしまう。
「教えて、颯真」
名前で呼ばれた瞬間、俺の全身に電流が走った。
「っ……」
声が出ない。
なんだこれ。
なんで、こんなにドキドキしてるんだ。
黒崎社長はそんな俺を見つめたまま、ゆっくりと微笑んだ。
「お前、可愛いな」
親指が俺の唇をなぞった。
「昨日のキス、すごく甘かったよ」
俺の呼吸が乱れる。
やばい。これ、やばい。
「俺、今まで男に興味なかったんだけどね」
黒崎社長は俺の髪に指を滑り込ませた。
「お前だけは、特別みたいだ」
俺の頭が真っ白になった。
特別って、何が。どういう意味だ。
「昨日のお前、すごく積極的だった」
黒崎社長は俺の耳元で囁く。
「『社長のこと、ずっと好きでした』って」
俺の心臓が止まりそうになった。
「そ、そんな……」
言ってない。
絶対に言ってない。
でも、黒崎社長の声は確信に満ちていて。
もしかして、本当に俺……。
「まあ、今日は仕事もあるし」
社長は俺から離れ、デスクへ戻っていった。
「続きは、また今度ね」
俺はその場に立ち尽くしたまま、何が起きたのか理解できずにいた。
「あ、そうだ」
黒崎社長が振り返る。
「今日の夕方、また呼ぶから。お前の配属先、俺が直接決めたいんだ」
俺は震える声で答えた。
「は、はい……」
そして俺は、逃げるように社長室を後にした。
廊下に出た瞬間、俺は壁に背中を預けた。
心臓が、まだ止まらない。
「何だったんだ、今の……」
俺は自分の頬を両手で覆った。
熱い。
昨日、本当に俺はあんなことを言ったのか。
キスを、したのか。
そして――社長は、本気なのか。
俺の頭の中は、混乱でいっぱいだった。
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