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7.名前で呼んで
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レストランは、会社から車で十分ほどの場所にあった。
黒崎社長の運転する高級車の助手席に座りながら、俺は落ち着かないまま外の景色を眺めていた。
――二人きり、密室。
心臓の音が、さっきから自分でも鬱陶しい。
「そんなに緊張してるの?」
社長が横目で俺を見る。
「……ちょっとだけです……」
「可愛いな」
また可愛いって言われた。
どうしてこの人は、そんなこと平気で言えるんだ。
そのたびに反応する自分が悔しい。
頬が熱くなるのも止められない。
「着いたよ」
「あ、はい……」
レストランに着き、店員に案内されて個室へ通される。
「よく来るんですか? ここ」
柔らかな灯りが落ち着く空間で、俺はメニューを開きながら何気なく尋ねた。
「接待では時々ね。でも、プライベートで来るのは久しぶりかな」
「プライベート……」
「ああ。今日は、颯真とのデートだから」
「デ、デート……!?」
思わず裏返った声を出してしまう。
すると、社長は楽しそうに笑った。
「違う?」
「えっ、いや、俺たち仕事で……」
「仕事の時間は終わってる。今は昼休みだ」
こちらをまっすぐ見据えながら言う。
「だから、デート」
言い返せるわけがなかった。
俺が弱いのか、この人が強すぎるのか――多分、どっちもだ。
やがて料理が届き、テーブルにパスタとサラダ、そしてワインが並ぶ。
「これ……」
「ノンアルコールだよ。午後も仕事あるし。……それに、お前、昨日のこともあるだろ」
気遣いだと気づいて、思わず息が詰まった。
「……黒崎社長、ありがとうございます」
「それとさ」
社長は俺の正面で、真剣な表情になった。
「俺のこと、“社長”じゃなくてもいい」
「えっ……」
「翔でいい」
「で、でも……」
「颯真」
名前を呼ぶ声が、こんなにも近い。
「俺、お前に本気だって言ったよな」
「……はい」
「だから距離を縮めたい。ゆっくりでいい、お前のペースで」
そう言って、そっと俺の手を取る。
体がびくりと反応して固まったけど、拒む理由なんてどこにもなかった。
「……っ」
「ほら。名前、呼んでみて」
絡み合う視線。逃げる隙なんて、一ミリもない。
「……翔、さん」
「“さん”はいらない」
苦笑まじりの声に、胸がまたせわしなく動き出す。
俺は一呼吸置き、意を決して、ゆっくり口を開いた。
「……翔」
その瞬間、社長――いや、翔の表情がふっと柔らかくほころんだ。
「うん。いいね、それ」
その笑顔を見て、俺の心臓がまたドキン、と跳ねる。
もしかして俺、この人のこと――。
黒崎社長の運転する高級車の助手席に座りながら、俺は落ち着かないまま外の景色を眺めていた。
――二人きり、密室。
心臓の音が、さっきから自分でも鬱陶しい。
「そんなに緊張してるの?」
社長が横目で俺を見る。
「……ちょっとだけです……」
「可愛いな」
また可愛いって言われた。
どうしてこの人は、そんなこと平気で言えるんだ。
そのたびに反応する自分が悔しい。
頬が熱くなるのも止められない。
「着いたよ」
「あ、はい……」
レストランに着き、店員に案内されて個室へ通される。
「よく来るんですか? ここ」
柔らかな灯りが落ち着く空間で、俺はメニューを開きながら何気なく尋ねた。
「接待では時々ね。でも、プライベートで来るのは久しぶりかな」
「プライベート……」
「ああ。今日は、颯真とのデートだから」
「デ、デート……!?」
思わず裏返った声を出してしまう。
すると、社長は楽しそうに笑った。
「違う?」
「えっ、いや、俺たち仕事で……」
「仕事の時間は終わってる。今は昼休みだ」
こちらをまっすぐ見据えながら言う。
「だから、デート」
言い返せるわけがなかった。
俺が弱いのか、この人が強すぎるのか――多分、どっちもだ。
やがて料理が届き、テーブルにパスタとサラダ、そしてワインが並ぶ。
「これ……」
「ノンアルコールだよ。午後も仕事あるし。……それに、お前、昨日のこともあるだろ」
気遣いだと気づいて、思わず息が詰まった。
「……黒崎社長、ありがとうございます」
「それとさ」
社長は俺の正面で、真剣な表情になった。
「俺のこと、“社長”じゃなくてもいい」
「えっ……」
「翔でいい」
「で、でも……」
「颯真」
名前を呼ぶ声が、こんなにも近い。
「俺、お前に本気だって言ったよな」
「……はい」
「だから距離を縮めたい。ゆっくりでいい、お前のペースで」
そう言って、そっと俺の手を取る。
体がびくりと反応して固まったけど、拒む理由なんてどこにもなかった。
「……っ」
「ほら。名前、呼んでみて」
絡み合う視線。逃げる隙なんて、一ミリもない。
「……翔、さん」
「“さん”はいらない」
苦笑まじりの声に、胸がまたせわしなく動き出す。
俺は一呼吸置き、意を決して、ゆっくり口を開いた。
「……翔」
その瞬間、社長――いや、翔の表情がふっと柔らかくほころんだ。
「うん。いいね、それ」
その笑顔を見て、俺の心臓がまたドキン、と跳ねる。
もしかして俺、この人のこと――。
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