【完結】社長、俺のこと好きすぎじゃないですか?―キスから始まる溺愛オフィス―

砂原紗藍

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12.想いが重なった瞬間

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「颯真……」

翔の声は、わずかに震えていた。

「ありがとう。俺も……お前のことが好きだ。初めて会った時から、ずっと気になってた」

その言葉に、俺の目が熱くなった。
翔はそっと俺の髪に顔を寄せた。

「……翔」

堪えきれず、俺は自分から翔の背中に手を回した。
その瞬間、翔の腕がさらに強く俺を抱き寄せる。

「颯真」

翔は顔を上げて、俺を見た。
その目は、優しさと愛情に満ちていた。

「……キスしていい?」

翔が小さく尋ねる。俺は、コクリと頷いた。
翔の顔がゆっくりと近づいてきて――。

唇が触れた。素面での、初めてのキス。
柔らかく温かく、そっと包み込むみたいに、俺の唇を何度も優しく啄む。

「ん……」

自然と声が漏れる。
翔は一度だけ唇を離し、俺の顔を見つめた。

「……可愛い」

その一言のあと、また唇が重なる。
今度は深く、ゆっくりと。翔の舌が俺の唇をなぞる。

「あ……」

口が開いた瞬間、翔の舌がするりと入り込んできた。

「ん……、っ……」

身体がびくっと震える。
翔は俺の腰を抱き寄せ、舌を絡めながら深く味わうようにキスをする。
息が苦しいのに、離れたくない。

どれくらいそうしていたんだろう。
翔がゆっくりと唇を離した。

俺は荒い息をしていた。
翔も、少し息が乱れている。

「颯真」

翔は俺の額に自分の額を合わせた。

「好きだよ」
「……俺も、翔が……好きです」

その言葉に、翔は嬉しそうに微笑む。
そして、俺の首筋に軽く唇を触れさせた。

「もっと触れたい……」

低い声が、ぞくりと響く。

「……けど、今日はここまでにする」

翔はゆっくりと離れ、いつもの穏やかな表情に戻った。

「そろそろ帰ろうか」
「はい」
「送るよ」

荷物をまとめながらも、心臓の鼓動は落ち着かない。
唇の熱も、まだ引かない。

帰りの車の中で、翔がそっと俺の手を取った。

「明日もよろしくな」
「はい」
「それと――」

翔は横顔のまま、少し照れたように言う。

「今度……デートしよう。ちゃんと、恋人として」
「恋人……」

胸がドキンと跳ねる。俺はゆっくり頷いた。

「……したいです」

翔は安心したように笑った。

駅に着いて車を降りる時、翔が窓越しに手を振る。

「おやすみ、颯真」
「おやすみなさい、翔」

スマホが鳴った。翔からだ。

『今日、ありがとう。告白してくれて』
『こちらこそ……』
『颯真の言葉、すごく嬉しかった』
『俺も……です』
『明日、また会えるね』
『はい』
『楽しみにしてる。おやすみ、颯真』
『おやすみなさい』

メッセージを終えて、俺はスマホを握りしめた。


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