14 / 24
14.社内恋愛の試練
しおりを挟む
――翌週の月曜日。
会社に、ある噂が流れ始めた。
「社長と藤堂って、できてるらしいよ」
休憩室でその声を耳にして、心臓が凍りつく。
「え、マジで?」
「よく二人で食事行ってるしさぁ」
「でも、男同士でしょ?」
「だからこそ怪しいんじゃない?」
「しかも藤堂って、社長の直属じゃん。贔屓とかあったりして」
俺は足早にその場を離した。
オフィスに戻ると、翔が資料に目を通していた。
「翔……」
小さく呼びかけると、翔が顔を上げる。
「颯真?」
翔の目が、俺の顔を見て少し細められた。
「どうした、顔色悪いぞ」
「あの……噂、聞きました?」
翔の表情が、少し険しくなる。
「……ああ。俺の耳にも入ってる」
「どうしよう……俺のせいで、翔の立場が……」
「颯真。座って」
俺は言われた通りに椅子に座る。
翔は俺の前にしゃがみ込んで、目線を合わせた。
「お前のせいじゃない」
「でも……」
「大丈夫。俺が何とかする」
翔の微笑みに、少しだけ心が落ち着く。
その日の午後。
翔は人事部長と長時間話し込んでいた。
俺は一人、不安を抱えながらパソコンの画面を見つめる。
集中できない。胸が、ずっと苦しかった。
夕方、翔が戻ってきた。
少し疲れた表情で、俺の隣に座る。
「翔……」
「颯真」
落ち着いた声でそう返す翔に、少しだけ安心する。
「人事部長と、コンプライアンス委員会と話をしてきた」
「……何て?」
翔は深く息をつき、ゆっくりと言葉を続ける。
「お前との関係を、正式に報告した」
その言葉に、俺は思わず息を飲んだ。
「隠し続けるのは無理だし、堂々としていたいから」
翔の目が、真剣に俺を見つめている。
「……それで、どうなったんですか?」
「正直に言うと、反対された」
翔の表情が少し曇る。
「利益相反、社内秩序の乱れ……色々言われた。『別れるか、どちらか辞めるか』とも」
「やっぱり……」
それを聞いて、胸がぎゅっと痛む。
「でも、俺は食い下がったんだ」
翔は俺の手を取った。
「お前との関係を隠して続けるのは、お前にも会社にも失礼だろ」
「翔……」
「だから、透明性を保つために異動措置と定期報告を提案した」
「異動……」
「ああ。お前を別のプロジェクトに移す」
翔はさらに説明を続ける。
「俺の評価権限が及ばない部署にして、第三者のチェックも入れる」
「……」
「それでようやく、条件付きで認められた。簡単な道じゃなかったけど……お前とちゃんと向き合いたかったから」
「俺たち、離れるんですか……」
「仕事上では、な」
翔は、俯いた俺の顎を持ち上げた。
「プライベートは変わらないよ」
「でも……毎日、翔の隣で仕事するのが……好きだった……」
小さく呟くと、翔の目が少し揺れた。
「……颯真」
翔は俺をそっと抱き寄せた。
「俺も、お前が隣にいるのが好きだった」
「翔……」
「でも、これが一番いい方法なんだ。お前との関係を守るために、必要なことだ」
「……はい」
「会社に認められて、堂々と付き合える。それだけでも、意味がある」
翔は俺を見た。その目は、真剣だった。
「……分かりました。翔が決めたなら、俺もそれでいいです」
「ありがとう」
翔は俺の額に、キスを落とした。
会社に、ある噂が流れ始めた。
「社長と藤堂って、できてるらしいよ」
休憩室でその声を耳にして、心臓が凍りつく。
「え、マジで?」
「よく二人で食事行ってるしさぁ」
「でも、男同士でしょ?」
「だからこそ怪しいんじゃない?」
「しかも藤堂って、社長の直属じゃん。贔屓とかあったりして」
俺は足早にその場を離した。
オフィスに戻ると、翔が資料に目を通していた。
「翔……」
小さく呼びかけると、翔が顔を上げる。
「颯真?」
翔の目が、俺の顔を見て少し細められた。
「どうした、顔色悪いぞ」
「あの……噂、聞きました?」
翔の表情が、少し険しくなる。
「……ああ。俺の耳にも入ってる」
「どうしよう……俺のせいで、翔の立場が……」
「颯真。座って」
俺は言われた通りに椅子に座る。
翔は俺の前にしゃがみ込んで、目線を合わせた。
「お前のせいじゃない」
「でも……」
「大丈夫。俺が何とかする」
翔の微笑みに、少しだけ心が落ち着く。
その日の午後。
翔は人事部長と長時間話し込んでいた。
俺は一人、不安を抱えながらパソコンの画面を見つめる。
集中できない。胸が、ずっと苦しかった。
夕方、翔が戻ってきた。
少し疲れた表情で、俺の隣に座る。
「翔……」
「颯真」
落ち着いた声でそう返す翔に、少しだけ安心する。
「人事部長と、コンプライアンス委員会と話をしてきた」
「……何て?」
翔は深く息をつき、ゆっくりと言葉を続ける。
「お前との関係を、正式に報告した」
その言葉に、俺は思わず息を飲んだ。
「隠し続けるのは無理だし、堂々としていたいから」
翔の目が、真剣に俺を見つめている。
「……それで、どうなったんですか?」
「正直に言うと、反対された」
翔の表情が少し曇る。
「利益相反、社内秩序の乱れ……色々言われた。『別れるか、どちらか辞めるか』とも」
「やっぱり……」
それを聞いて、胸がぎゅっと痛む。
「でも、俺は食い下がったんだ」
翔は俺の手を取った。
「お前との関係を隠して続けるのは、お前にも会社にも失礼だろ」
「翔……」
「だから、透明性を保つために異動措置と定期報告を提案した」
「異動……」
「ああ。お前を別のプロジェクトに移す」
翔はさらに説明を続ける。
「俺の評価権限が及ばない部署にして、第三者のチェックも入れる」
「……」
「それでようやく、条件付きで認められた。簡単な道じゃなかったけど……お前とちゃんと向き合いたかったから」
「俺たち、離れるんですか……」
「仕事上では、な」
翔は、俯いた俺の顎を持ち上げた。
「プライベートは変わらないよ」
「でも……毎日、翔の隣で仕事するのが……好きだった……」
小さく呟くと、翔の目が少し揺れた。
「……颯真」
翔は俺をそっと抱き寄せた。
「俺も、お前が隣にいるのが好きだった」
「翔……」
「でも、これが一番いい方法なんだ。お前との関係を守るために、必要なことだ」
「……はい」
「会社に認められて、堂々と付き合える。それだけでも、意味がある」
翔は俺を見た。その目は、真剣だった。
「……分かりました。翔が決めたなら、俺もそれでいいです」
「ありがとう」
翔は俺の額に、キスを落とした。
12
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
溺愛じゃおさまらない
すずかけあおい
BL
上司の陽介と付き合っている誠也。
どろどろに愛されているけれど―――。
〔攻め〕市川 陽介(いちかわ ようすけ)34歳
〔受け〕大野 誠也(おおの せいや)26歳
オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました
こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。
付き合っているのに喧嘩ばかり。俺から別れを言わなければならないとさよならを告げたが実は想い合ってた話。
雨宮里玖
BL
サラリーマン×サラリーマン
《あらすじ》
恋人になってもうすぐ三年。でも二人の関係は既に破綻している。最近は喧嘩ばかりで恋人らしいこともしていない。お互いのためにもこの関係を終わらせなければならないと陸斗は大河に別れを告げる——。
如月大河(26)営業部。陸斗の恋人。
小林陸斗(26)総務部。大河の恋人。
春希(26)大河の大学友人。
新井(27)大河と陸斗の同僚。イケメン。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる