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第31話 解消へ向けて(ローシュ視点)
そうして父と母、更に兄のいるところに呼び出された。
「一体どうしたのですか?」
和気あいあいとした空気ではない。
ピリピリとした空気に僕は思わず縮こまる。
「これは本当か?」
そう言って差し出された書類は、僕がエカテリーナに対して不誠実であるというものだ。
「記憶のないエカテリーナ嬢を支えるようにと何度も言ったはずだが。そしてこのフロルという女、これは本当にお前の愛人なのか?」
「愛人?!」
さすがに首を横に振って否定する。
「彼女は友人の一人で、愛人なんてとんでもない! そんなつもりはかけらもありません」
そこは気をつけていたつもりだ。
婚約者以外の女性と二人きりになる事も、そのような距離に近づくこともしていない。
「では何故彼女がエカテリーナ嬢に生徒会の仕事を手伝えと言って来たのだ? フロルは生徒会に関係ないし、エカテリーナ嬢との接点はない。この女はローシュの為にとエカテリーナ嬢の元に怒鳴り込んだそうだぞ。そんな事をするなんて、ローシュと親しいものなのではないかと、ブルックリン侯爵からも真偽を問う手紙が来ている」
「誤解です。フロルには生徒会の仕事が大変だとは零しましたが、エカテリーナにそのような事を言えなどとはいってはおりません!」
僕は必死だった。
エカテリーナと婚約解消はしたいが、父たちの不興を買いたいわけではない。
「そうか。ではフロルという女がしたのは独断だという事だな」
「はい」
友人であるフロルには悪いが、ここで彼女を救おうとして一緒に断罪されても嫌だ。
彼女は確か男爵家……だったか。
高位貴族に対し、怒鳴り込むなんて、そのような事をただの男爵令嬢がしたとあれば、侯爵家は黙っていない。
無論エカテリーナの保護をする立場である王家もだ。
「ローシュ。エカテリーナさんはずっとあなたを支えてくれていたわ。このような不誠実な事がもし本当であれば、許されないことよ」
いつも優しい母が怒っているのを見て、大事な話だとはわかる。
しかし納得出来ない部分も多くあり、なかなか返事が出ない。
「お前は学園で何をしているのだ」
家族の責める視線に手足が冷えて、感覚がなくなってくる。
エカテリーナを守れていない僕にも少なからずお咎めが来そうだ。
「侯爵からの手紙にはそれ以外にも数々の事が書かれている。お前がエカテリーナを大事にしていないという旨の事がな」
「いえ、大事にしていないわけではありません。僕は忙しくて、だからリヴィオにしてもらっていて」
「他の者が王子の代わりになるか?」
そんな父の言葉に僕は何も言えない。
「お前がエカテリーナ嬢を大切にしているという姿勢が大事なのだ。それを一介の騎士にさせるとは、エカテリーナ嬢を軽んじているという事。それは王家がブルックリン侯爵を軽んじている事と同義となる。わかるか?」
貴族は何よりも侮られることを嫌う。
それはそのまま自分の命や生活に直結するからだ。
「王家がブルックリン侯爵を大事にしないとなれば、侯爵は王家を信用しなくなる。侯爵ほどの地位のものが王家から離れれば、それはそのまま国力に影響を与えるのだ。彼の派閥がごっそりと抜けることになり、王家は衰退する。そうならないためにエカテリーナ嬢をお前の婚約者にして、つなぎとめていたという意味もあるのに」
はぁっと父様はため息をついた。
「……これからは気をつけろ」
「はい」
退室を促され、僕は部屋へ帰る。
許された、そう思ったのだ。
(何だかんだ言って父様は僕に甘い)
胸を撫でおろし、僕は自室へと戻る。
お茶を飲み、しばし待ったりしていると、ノックの音が聞こえる。
来たのはカルロス兄様だ。
「今大丈夫か?」
「はい」
何だろう、まだ説教だろうか。
ソファに座ってもらい、侍女にお茶を淹れてもらう。
「彼女は、エカテリーナ嬢の侍女だったな」
「えぇ。ポエットがエカテリーナの為に向こうに言っているために代わりに来てもらっているのです。彼女もここが気に入ったようです」
ぺこりと頭を下げるリルハを兄様は笑顔もなく見つめている。
「……お前は本当に何もわかっていないな」
静かに息を吐いた後、兄様は驚くべきことを口にした。
「エカテリーナ嬢との婚約を解消しないか?」
まさか兄の口からそのような言葉が出るとは。
「それは願ってもない事ですが、父様がきっと反対しますよ」
兄様が出した話なのに、僕の返事を聞いて更に鎮痛な面持ちになっている。
何故だろう。
「……お前が解消したいというなら飲み込むさ。あの人はお前を大事に思っているからな」
苦々しい顔と口調で視線を床に落としている兄様は更に続ける。
「ローシュがエカテリーナ嬢との婚約継続を望まないならば、これを機に解消に持っていけるはずだ」
僕は少し悩んだが、兄様に心情を吐露した。
「そうですね。正直エカテリーナの婚約者でいるのは荷が重いというか大変というか……彼女を助けることが出来るのは僕ではない気がします」
そして僕を支えるのもきっと彼女ではない。以前の彼女はとても頼りになる存在だったが、僕の心には寄り添ってくれなかった。
ならば次は能力が劣ろうとも僕に優しく微笑みかけてくれて、側にいてくれる女性がいい。
「では俺が父上に掛け合う、しかし本当にそれでいいか? 未練はないのか?」
確認するように、そして懇願するような眼差しを感じる。
(兄様は僕とエカテリーナの婚約解消に賛成? 反対? どっちなんだろう)
兄の真意はわからないけれど、僕は僕の心を知っている。
「えぇ。エカテリーナとの婚約解消をお願いします」
「……わかった。俺に任せろ」
兄様はそう言うと僕の頭を撫でてくれる。
「きっといい人がみつかるさ」
やはり兄は優しい、その言葉に僕は勇気を貰った。
◇◇◇◇◇
お読み頂きありがとうございます。
日に日に読む方が増えており、ご意見・感想も増えて嬉しいです。
ですが話はまだ途中でして、疑問に思う部分が多々あるかと思うのですが、先の話で明かされることもありますので、気長にお待ち頂ければと思います。
また建設的な意見はともかく批判はご遠慮下さい。
結構凹みます。
お願いが多くて申し訳ありません。
執筆意欲継続の為に書かせて頂きました。
出来れば完結まで投稿を続けたいのでよろしくお願いします。
「一体どうしたのですか?」
和気あいあいとした空気ではない。
ピリピリとした空気に僕は思わず縮こまる。
「これは本当か?」
そう言って差し出された書類は、僕がエカテリーナに対して不誠実であるというものだ。
「記憶のないエカテリーナ嬢を支えるようにと何度も言ったはずだが。そしてこのフロルという女、これは本当にお前の愛人なのか?」
「愛人?!」
さすがに首を横に振って否定する。
「彼女は友人の一人で、愛人なんてとんでもない! そんなつもりはかけらもありません」
そこは気をつけていたつもりだ。
婚約者以外の女性と二人きりになる事も、そのような距離に近づくこともしていない。
「では何故彼女がエカテリーナ嬢に生徒会の仕事を手伝えと言って来たのだ? フロルは生徒会に関係ないし、エカテリーナ嬢との接点はない。この女はローシュの為にとエカテリーナ嬢の元に怒鳴り込んだそうだぞ。そんな事をするなんて、ローシュと親しいものなのではないかと、ブルックリン侯爵からも真偽を問う手紙が来ている」
「誤解です。フロルには生徒会の仕事が大変だとは零しましたが、エカテリーナにそのような事を言えなどとはいってはおりません!」
僕は必死だった。
エカテリーナと婚約解消はしたいが、父たちの不興を買いたいわけではない。
「そうか。ではフロルという女がしたのは独断だという事だな」
「はい」
友人であるフロルには悪いが、ここで彼女を救おうとして一緒に断罪されても嫌だ。
彼女は確か男爵家……だったか。
高位貴族に対し、怒鳴り込むなんて、そのような事をただの男爵令嬢がしたとあれば、侯爵家は黙っていない。
無論エカテリーナの保護をする立場である王家もだ。
「ローシュ。エカテリーナさんはずっとあなたを支えてくれていたわ。このような不誠実な事がもし本当であれば、許されないことよ」
いつも優しい母が怒っているのを見て、大事な話だとはわかる。
しかし納得出来ない部分も多くあり、なかなか返事が出ない。
「お前は学園で何をしているのだ」
家族の責める視線に手足が冷えて、感覚がなくなってくる。
エカテリーナを守れていない僕にも少なからずお咎めが来そうだ。
「侯爵からの手紙にはそれ以外にも数々の事が書かれている。お前がエカテリーナを大事にしていないという旨の事がな」
「いえ、大事にしていないわけではありません。僕は忙しくて、だからリヴィオにしてもらっていて」
「他の者が王子の代わりになるか?」
そんな父の言葉に僕は何も言えない。
「お前がエカテリーナ嬢を大切にしているという姿勢が大事なのだ。それを一介の騎士にさせるとは、エカテリーナ嬢を軽んじているという事。それは王家がブルックリン侯爵を軽んじている事と同義となる。わかるか?」
貴族は何よりも侮られることを嫌う。
それはそのまま自分の命や生活に直結するからだ。
「王家がブルックリン侯爵を大事にしないとなれば、侯爵は王家を信用しなくなる。侯爵ほどの地位のものが王家から離れれば、それはそのまま国力に影響を与えるのだ。彼の派閥がごっそりと抜けることになり、王家は衰退する。そうならないためにエカテリーナ嬢をお前の婚約者にして、つなぎとめていたという意味もあるのに」
はぁっと父様はため息をついた。
「……これからは気をつけろ」
「はい」
退室を促され、僕は部屋へ帰る。
許された、そう思ったのだ。
(何だかんだ言って父様は僕に甘い)
胸を撫でおろし、僕は自室へと戻る。
お茶を飲み、しばし待ったりしていると、ノックの音が聞こえる。
来たのはカルロス兄様だ。
「今大丈夫か?」
「はい」
何だろう、まだ説教だろうか。
ソファに座ってもらい、侍女にお茶を淹れてもらう。
「彼女は、エカテリーナ嬢の侍女だったな」
「えぇ。ポエットがエカテリーナの為に向こうに言っているために代わりに来てもらっているのです。彼女もここが気に入ったようです」
ぺこりと頭を下げるリルハを兄様は笑顔もなく見つめている。
「……お前は本当に何もわかっていないな」
静かに息を吐いた後、兄様は驚くべきことを口にした。
「エカテリーナ嬢との婚約を解消しないか?」
まさか兄の口からそのような言葉が出るとは。
「それは願ってもない事ですが、父様がきっと反対しますよ」
兄様が出した話なのに、僕の返事を聞いて更に鎮痛な面持ちになっている。
何故だろう。
「……お前が解消したいというなら飲み込むさ。あの人はお前を大事に思っているからな」
苦々しい顔と口調で視線を床に落としている兄様は更に続ける。
「ローシュがエカテリーナ嬢との婚約継続を望まないならば、これを機に解消に持っていけるはずだ」
僕は少し悩んだが、兄様に心情を吐露した。
「そうですね。正直エカテリーナの婚約者でいるのは荷が重いというか大変というか……彼女を助けることが出来るのは僕ではない気がします」
そして僕を支えるのもきっと彼女ではない。以前の彼女はとても頼りになる存在だったが、僕の心には寄り添ってくれなかった。
ならば次は能力が劣ろうとも僕に優しく微笑みかけてくれて、側にいてくれる女性がいい。
「では俺が父上に掛け合う、しかし本当にそれでいいか? 未練はないのか?」
確認するように、そして懇願するような眼差しを感じる。
(兄様は僕とエカテリーナの婚約解消に賛成? 反対? どっちなんだろう)
兄の真意はわからないけれど、僕は僕の心を知っている。
「えぇ。エカテリーナとの婚約解消をお願いします」
「……わかった。俺に任せろ」
兄様はそう言うと僕の頭を撫でてくれる。
「きっといい人がみつかるさ」
やはり兄は優しい、その言葉に僕は勇気を貰った。
◇◇◇◇◇
お読み頂きありがとうございます。
日に日に読む方が増えており、ご意見・感想も増えて嬉しいです。
ですが話はまだ途中でして、疑問に思う部分が多々あるかと思うのですが、先の話で明かされることもありますので、気長にお待ち頂ければと思います。
また建設的な意見はともかく批判はご遠慮下さい。
結構凹みます。
お願いが多くて申し訳ありません。
執筆意欲継続の為に書かせて頂きました。
出来れば完結まで投稿を続けたいのでよろしくお願いします。
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