【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

文字の大きさ
36 / 70

第36話 王太子との接近(リヴィオ視点)

 カルロス様が侯爵家を訪ねてくれて良かった。

 エカテリーナ様と話をした後は侯爵様とも会っていたが、何について話たのかはわからない。
 彼女の今後が良くなる話ならばよいのだけれど。

 その後復学してからもローシュは全く持って反省した様子は見受けられなかった。
 戸惑うエカテリーナ様を支えようと気を回すが、俺以外の者は動こうとしなかった。

 ローシュが何もしないからか皆もどうしたらいいかわからないようで、遠巻きに見ているだけだ。
 ある意味仕方ないか。

 エカテリーナ様に日常の事や学業について説明をする。

 視線をそらさずに熱心に聞いてくれている。
 時折目尻を下げて柔らかく微笑まれる動作がとても可愛らしくて、以前とはまた違う魅力を感じ、胸が高鳴った……エカテリーナ様には婚約者がいるのだからと必死に言い聞かせ、表情に出さないように留意するが。

 その後はエカテリーナ様のお世話について、ローシュが皆の前で俺に一任した為に幸せな日を過ごすことが出来た。
 二人きりにではないけれど、側で話をする権利を得られたことは嬉しい。

 記憶がない為か、以前のように感情を内に秘めたような僅かな笑顔ではなく、とても楽しそうな表情を向けられる。
 心なしか何かから解放されたような顔だ。
 このようなエカテリーナ様を近くで見られるなど幸せ以外の何物でもない。

 俺が過ちを起こさぬようにポエットが冷ややかな目で見てくれているから、正気を保てている。
 そうでなければうっかりにやけ面を晒してしまっていたかもしれない。

 一を聞いて十を知る、エカテリーナ様はまさにそういうタイプで一回話したことは忘れなかった。

 授業は学園からの配慮で単独で受けていたが、卒業までには追いつきそうな程覚えが早い。さすがだ。

 だが、肝心の昔の記憶は戻らない。

(ここまで来たら、もう戻らない方がいいのでは?)
 王子妃教育も貴族としての教養も忘れ、魔法も忘れたならば、王家が望んだ完璧な令嬢からは外れている。
 ならば大変な王子の婚約者という立場からは離れ、このまま一人の令嬢として過ごすのもいいのではないだろうか?
 今のエカテリーナ様は以前よりも幸せそうだし、もうローシュのお守りからも解放してあげたい。

 ペイル様が再び友人として接してくれるようになって、さらに充実した学園生活となる。
 おれはこのようなエカテリーナ様が見たかったと心底思った。

 押さえつけられていたものがなくなり普通の令嬢として過ごす姿に、涙が出そうだ。





 それなのにまた余計な者が顔を出してくる。

 フロルという女だ。

 一体どういうつもりだろうか。無関係なものがエカテリーナ様に話しかけ、ましてや非難する言い方をするなんて……万死に値する。

 
 まだこうしてエカテリーナ様から平穏を奪う者がいたか。忌々しい。

 俺だけではなくペイル様もお怒りだ。

 今日の件については国王陛下やカルロス様にいち早く報告しなくては。
 これ以上エカテリーナ様が傷つくのは耐えがたい。

 それなのに……

「ローシュとエカテリーナ嬢の婚約は継続させる」
 国王の言葉に耳を疑った。

 彼女をまるで大事にしないローシュの婚約者なんて、デメリットしかないだろう。

 なのにその決断はどういった事だ。

「今の状態のエカテリーナ嬢を放り出せば増々王家は非難されるし、ブルックリン侯爵をも敵に回すことになる。それに傷のあるエカテリーナ嬢は次の婚約者もすぐには見つからないだろうし、ローシュも同じだ。今のままの方が全てが丸く収まる」
 怒りでどうにかなりそうだが、国王に意見できるはずもなく、黙って俯くしか出来ない。

 カルロス様も眉間に皺を寄せて聞いていたが、口を挟むことはなかった。

 彼女の為に何も出来ず、不甲斐ない自分が情けない。

 エカテリーナ様の為に動けなかった……力のない自分が嫌になり、また王家への不信を覚える。

 息子可愛さの国王に嫌悪が止まらない。この国にいて本当にいいのだろうかとさえ思ってしまった。

「リヴィオ、今から少し俺と話をしないか? 部屋に来てほしい」
 意気消沈した俺を見かねてか、カルロス様が声を掛けてくれた。

 ローシュと違い、まさに王子と言った威厳を持つ彼は、こうして俺なんかにも気遣いを寄こしてくれる。

「エカテリーナ嬢の今後についての話がしたいんだ。彼女は幸せになるべき人だ」
 そしてエカテリーナ様の事を考えてくれる、心根の優しい人だ。

(この人があの人の婚約者だったならば良かったのに)
 そうであれば諦めもついたのにと、胸の苦しみを感じながら、カルロス様の後をついていった。




感想 3

あなたにおすすめの小説

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜

氷雨そら
恋愛
 婚約相手のいない婚約式。  通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。  ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。  さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。  けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。 (まさかのやり直し……?)  先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。  ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。 小説家になろう様にも投稿しています。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」連載版

まほりろ
恋愛
 公爵令嬢のアデリナ・ブラウフォードの人生は実母の死後大きく変わった。  公爵は妻の葬儀が終わって間をあけず再婚。公爵と後妻の間には、再婚前に作った子供までいた。  アデリナは継母と異母妹に私物を奪われ、「離れ」と名ばかりの小屋に押し込められる。  腹違いの妹はアデリナを悪者に仕立て、周囲はそれを信じた。  本来ならアデリナの味方にならなくてはならない婚約者の王太子も、異母妹の魅力に骨抜きにされ全く頼りにならない。  学園の教師も、生徒も、生徒の保護者も王太子と異母妹の味方だ。    そんなアデリナにも唯一の味方がいる。それはトカゲのクヴェル。クヴェルは美少年に変身し、家事も炊事も裁縫も完璧にこなす不思議な存在だ。  実はクヴェルはこの国の建国に携わる水竜で、アデリナは三百年前に水竜を救った初代女王の生まれ変わりだったのだ。  アデリナを蔑ろにする国に嫌気がさしたクヴェルは、アデリナを連れて旅に出る。  神に去られた国は徐々に荒廃していき……。  一方その頃、祖国の荒廃を知らないアデリナはクヴェルとのグルメ旅を満喫していた。  「ん~~! このアップルパイは絶品! 紅茶も美味しい!!」 ・人外×人間、竜×人間。 ・短編版は小説家になろう、pixivにもアップしています。 ・長編版を小説家になろうにも投稿しています。小説家になろう先行投稿。 「Copyright(C)2025-まほりろ」 ※タイトル変更しました(2025/05/06) ✕「卒業パーティーで王太子から婚約破棄された公爵令嬢、親友のトカゲを連れて旅に出る〜私が国を出たあと井戸も湖も枯れたそうですが知りません」 ✕「嫌われ者の公爵令嬢は国外追放を言い渡される。私が神の祝福持ちだと王家が気付いた時には国の崩壊が始まっていました」 ◯新タイトル「嫌われ者の公爵令嬢は神の愛し子でした。愛し子を追放したら国が傾いた!? 今更助けてと言われても知りません」 ・2025年5月16日HOTランキング2位!  ありがとうございます! ※表紙イラストは猫様からお借りしています。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。

夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。 辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。 側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。 ※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。

拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの
恋愛
 ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。  その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?  婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!  最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)

悪役令嬢は自称親友の令嬢に婚約者を取られ、予定どおり無事に婚約破棄されることに成功しましたが、そのあとのことは考えてませんでした

みゅー
恋愛
婚約者のエーリクと共に招待された舞踏会、公の場に二人で参加するのは初めてだったオルヘルスは、緊張しながらその場へ臨んだ。 会場に入ると前方にいた幼馴染みのアリネアと目が合った。すると、彼女は突然泣き出しそんな彼女にあろうことか婚約者のエーリクが駆け寄る。 そんな二人に注目が集まるなか、エーリクは突然オルヘルスに婚約破棄を言い渡す……。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています