【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。

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第47話 捕らえられてみました

(当然だけど、真っすぐには向かわないわね)
 入り組んだ道を走り、それでもスピードは落とされず、あちこちを走る。
 恐らく追跡を巻くためと私達に道を覚えさせないためにだと思うわ。

 この分だと子爵家になんて向かわなさそう。

(囚われの姫というポジションも悪くないかもね)
 気は早いけれど、私の騎士が助けに来てくれる事を考えると心が躍ってしまう。

 巻き込んだポエットには悪いと思ったので、こっそり車内で「実は……」と、記憶を失っていない事を話したわ。

 目を白黒させて頬も一瞬にして赤に染まったのだけれど、どうしてそうしたのかという理由を聞かせると落ち着いてくれたわ。

「……ローシュ様の婚約者に戻りたくなかった事は理解出来ました。が、早めに教えてもらいたかったです」

「もっと早くに言おうかとも思ったけれど、そうするとリヴィオとの婚約も出来なかったでしょ?」

「そうですね……特殊な事情があったから二人の婚約が為されたのは、否めないです」
 少し眉間に皺を寄せながらも何とかポエットは納得してくれた。

「今更文句は言いません。ですからエカテリーナ様、これからは幸せになってください。そして、今後はこのような危険な事に首を突っ込まないでくださいね! それが私の願いです」

 何かを吹っ切った表情だ。

 とりあえず許してもらえて良かったわ。
 見捨てられてもおかしくないと思ったのだけれど。

(でもまだ怒ってるわよね)
 文句は言わないと言ったけれど、眉間の皺は取れていない。

 今は余計な事を言うのは止めておきましょ。

「ありがとう、ポエット」
 この時にはもうすっかりローシュ様の事なんて頭から抜けてしまっていたわ。





「それで、ここはどこでしょうね」
 思っていた通り連れてこられた先は子爵家ではない。

 こんな人里から離れたような所に屋敷があるとは知らなかった。

 外からは見えづらいように高い塀がある、脱走防止も兼ねているのだろうか。

「エカテリーナ様。私から離れないでくださいね」
 ひそひそとポエットにそう言われ、私は頷く。

 ポエットは傍目から見たらただの侍女だが、護衛も兼ねている特別な者だ。

 強請ったのは私だけど、よくローシュ様はこのような人材をすんなりと手放したものね、勿体ない。

 私だったら絶対に手放さないわよ。侍女としての仕事も出来て、護衛も兼任できる侍女なんていないもの。

(リルハもお茶を淹れるのが上手だったし、服選びのセンスもあって重宝したけれど、普通の侍女だったわ)

 今では思い出す事が少なくなってしまった。誰からも教えられなかったけれど、元気にしているといいわね。

 落ち着いたらポエットに話を聞きましょう。

(他の家にも強い味方侍女っているのかしら?)
 少なくとも私は知らない。

 従者もポエットの事を只の侍女だと思って油断しているようだし、やはり珍しいのかも。

 そうでなければとっくに武器は取られているわよね。

「こちらは子爵家で所有している別荘です。落ち着いて話すにはこちらの方がいいかと思いまして」
 にこにこと胡散臭い顔をしているこの男、いつまでそんな事を嘯くのかしら。

「へぇ、別荘ね。タリフィル子爵家は随分商売が上手なのね」

「えぇ。表向きは儲かっているようですよ」
 表向きは、なんて怪しい事をしているとばらすのが早いわね。

 もう少し秘密がある事を焦らして、勿体ぶって、こちらを楽しませてくれるとかしないのかしら。

(それにしても粗末な屋敷ね)
 こんな手入れもそこそこな所に本当にローシュ様はいるのだろうか。

(拷問や何かを受けたりはしていないかしらね……)
 想像すると少し胸が空く。

 まだいるとは決まってはいないけれど、のほほんとこんなところに付いてきてるとしたら、危機感のなさに流石に呆れちゃうわ。

 彼自身は力もないしこんな怪しい誘いに乗る事なんて、いくら護衛が付いていても推奨しない。

 寧ろとばっちりを受ける護衛が可哀想だと考えるが、彼の新しい護衛も慇懃無礼だと聞いたし、まぁいいか。

 リヴィオの引き継ぎすらもまともに聞かなかったし、ローシュ様を諫める事もしない。そんなローシュ様のいう事だけを聞くイエスマンに気遣いを出しても損だと思い直す。

 中に入り扉が閉まった途端、従者はがらりと雰囲気を変えた。

「抵抗しないでくださいね、怪我はさせたくありませんので」

(だから、ばらすのが早いわよ)
 屋敷内から現れた者達に囲まれ、私とポエットは叫ぶことも騒ぐこともせず、男の言葉に従う。

 多勢に無勢の為、ポエットが悔しそうな顔をしながらも後ろ手に縛られた。

 もちろん私もだ。

 今更騒いだって何も変わらないし、また下手な事をして傷がついたら、リヴィオをまた悲しませてしまうわ。

 今は大人しくこの男のいう事を聞いておいて、チャンスを伺いましょう。

(リヴィオ、助けに来てくれると良いのだけれど)

 信じている。
 信じているけれど、以前ローシュ様に裏切られた事はなかなか忘れられない。

 リヴィオとローシュ様は違うのだと、確かめたいが為に飛び込んだのもある。

「ねぇ。本当にローシュ様はここに居らっしゃるの?」
「いますよ。ご案内します」

 本当に居るの? 驚きだわ。

(ここに連れてくるための虚言かとも考えたけれど、そうではなかったのね)

 私達を誘拐した意図は分からないがまだ殺さない、という事は何のか利用価値があるのよね。

 殺すつもりならばいつでも出来たはずだし。

(理由は何かしら、お金……?)

 王家と侯爵家から身代金でも奪うつもり? でもそんな事上手くいくわけがない。下手したらただ殺されるだけなのに。

 そんな大それたことをしたら一族郎党消されて終わり、ではないかしら。

「こちらです」
 案内されるままに奥に進む。

 部屋の前には数人の見張りがいたが、いずれも見覚えなどない。

 ただ、生気のないその表情はとても不気味な印象を与えてくるわ。

 促されるまま入れば、見たくない顔が一番先に見えた。

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