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第61話 会えて良かった
「エカテリーナ様」
私を呼ぶリヴィオの声に、思わず呼吸を忘れてしまった。
「……リヴィオ」
どこまで見られてしまったかしら。もしかして、嫌われてしまう?
地面に転がるローシュになんて、もう目はいかないわ。
でもリヴィオを見ることも出来ない。
(どうする? 何て言おう?)
ぐるぐると頭の中を巡るは、言い訳にならない言い訳ばかり。
私が何か言うよりも早く、リヴィオが駆け寄ってきて、抱きしめてくれた。
「無事で良かった」
その言葉にじわりと涙がこみ上げる。
勝手な事をして責められたり怒られたりするかとも思ったが、どこまでも優しく、そして心配してくれているという温かな声音に安堵し、涙が零れた。
「ありがとう……こうして会えて良かったわ」
周囲に非ともいるし、このような状況だけれど、リヴィオを抱き締め返す。
「不安だったけど……こうしてまた会えて、本当に嬉しい」
「そんな怖い思いをされたのですね……」
怒気の孕んだ声に何やら誤解が生じた事を察する。
私はリヴィオがゲルドの仲間に何かされていないか心配だったのだが、リヴィオは私が何かされたのではないかと思っているようだ。
「すぐに戻りたいところですが、このままでは無理ですね」
血を流して倒れているローシュを見て、リヴィオは沈痛な表情だ。
「あの、リヴィオ、私……」
何と言ったらいいのだろう。
「ローシュ様に成りすまして逃げようとしたのですか、卑劣な男ですね」
「あら?」
良く見れば倒れていたのはローシュではなく、違う男だ。
体を貫かれて絶命していた男はゲルドと共にいた者である。
(何で? どうして?)
「本当に卑劣な奴らだね。変化してここから逃げようとしたのを侯爵令嬢が教えてくれて、止めを刺したんだ。本物のローシュ様は無事だよ」
ルアンの言葉にそちらを向くと、彼の後ろには生きているローシュがいる。
「あなた……」
私の言葉よりも早くルアンが人差し指を口にあてて言わないようにという仕草をする。
リヴィオにローシュ殺しを見られたくなかった私は、大人しくそれに従う。
ローシュの口には猿轡もされているのを見るに、先程した声ももしかしたら彼ではなかったのかもしれない。
(打ち合わせ、していたのかしらね)
視界を遮られた間にルアンが男に変装をさせて、ドアから逃げるように促したのだろう。その間本物のローシュは上手く隠し、私にこちらが本物だと錯覚させて。
全てはカラムとルアンの仕組んだ事か。見事時間を稼がれたようだ。
リヴィオは私から体を離すと、本物のローシュに近づいた。
足に怪我をし、動けないローシュを見下ろしている。
無事で良かった、という目ではないわね。
「ローシュ様……あなたは本当に屑ですね、ますます見損ないました」
リヴィオもローシュのしたことを知っているのかしら。カルロス様に聞いたかもしれないわね。
「後の話は然るべき場で正直にしてくださいね。あなたの罪は法で裁いて貰いましょう、もう逃げられませんよ」
やはりリヴィオは私が手を下すことなど望んではいないのね。
「エカテリーナ様の婚約者の座を奪った事、昔は罪悪感に駆られていましたが今は心底喜んでいます。こんな男と一緒になっていれば、エカテリーナ様が尚更不幸になっていた。破談になって、本当に良かった」
握りられた手の力強さと温かさに私も頷く。
そうね。もう彼の元に戻ることはないけれど、そのような未来もあったわけで……鳥肌どころか吐気まで催しそうだわ、これ以上考えるのは止めましょう。
「リヴィオ、皆は無事か?!」
やっと駆けつけたカルロス様を見て、私はニコリと微笑む。
「カルロス様、リヴィオを助けて頂きありがとうございます。この通り私は無事ですわ。ローシュ様はそうではないですけれど」
「エカテリーナ嬢、良かった」
安堵した表情を私に見せた後、鋭い視線をローシュとラウドに向ける。
「カラム、これはそういう事か?」
怪我をしたローシュを見てカルロス様は怒っている。庇わなかったカラムや巻き込んだラウドに対してのものかしら。
「はい。黒でした」
カルロス様はローシュの猿轡を外さず、体を起こしてあげている。
(やはりローシュの事が大事なんじゃない)
睨むようにカラムを見るが、苦笑しているのが見えた。
「急ぎ治癒師に診せよう。連れてってくれ」
カルロス様がそう命じるとカラムは荷物でも担ぐようにローシュを抱えている。
雑な扱いに見えるけれど、どうなのかしら。
「そこの子爵令息も一緒に連れて行け」
「はい」
ルアンが頷き、ラウドに付いてくるようにと指示を出している。
そう言えばこの二人、縄を解かれたのにまた縛られているわね。
「もうどこにも行けないよ」
ぼそりとラウドに呟くルアンの声が聞こえた。
その表情は笑顔であるが目は笑っていない。
「エカテリーナ嬢。ブルックリン侯爵家まで送るから、あとはゆっくり休んでくれ。説明は俺からするが、話を合わせてくれると助かる。君が魔法を使える事や……ローシュに対してしようとした事は、内密にするから」
やや疲れた顔でそう言われ、私はどうしたものかとリヴィオを見上げる。
どちらも世間に内緒にしてもらえると有難い事だ。
魔女としての利用がなければ、王家との繋がりは希薄になるだろうし、穏やかな生活を送る事も出来る。
ローシュにしようとした事。それは彼を殺そうとしたことを差すならば、私は命で償わなければならないけれど、そこまできちんとわかっているのかしら。
「それでいいのですか? 私がしようとしたことはかなりの罪ですが」
本当にいいのだろうか。身内を、弟を殺されそうになったのに。
リヴィオの手前、はっきりとはいう事が出来ない。
訝しむカルロス様にルアンがそっと耳打ちをしているが、首を横に振っていた。
「何の事だ。君は巻き込まれてローシュといただけだと聞くが」
それでいいのかしら。
でも今は疲れているし、これ以上ここで問答をする気力はない。
心も体も疲弊している。今後の為に今は休まないと。
私を呼ぶリヴィオの声に、思わず呼吸を忘れてしまった。
「……リヴィオ」
どこまで見られてしまったかしら。もしかして、嫌われてしまう?
地面に転がるローシュになんて、もう目はいかないわ。
でもリヴィオを見ることも出来ない。
(どうする? 何て言おう?)
ぐるぐると頭の中を巡るは、言い訳にならない言い訳ばかり。
私が何か言うよりも早く、リヴィオが駆け寄ってきて、抱きしめてくれた。
「無事で良かった」
その言葉にじわりと涙がこみ上げる。
勝手な事をして責められたり怒られたりするかとも思ったが、どこまでも優しく、そして心配してくれているという温かな声音に安堵し、涙が零れた。
「ありがとう……こうして会えて良かったわ」
周囲に非ともいるし、このような状況だけれど、リヴィオを抱き締め返す。
「不安だったけど……こうしてまた会えて、本当に嬉しい」
「そんな怖い思いをされたのですね……」
怒気の孕んだ声に何やら誤解が生じた事を察する。
私はリヴィオがゲルドの仲間に何かされていないか心配だったのだが、リヴィオは私が何かされたのではないかと思っているようだ。
「すぐに戻りたいところですが、このままでは無理ですね」
血を流して倒れているローシュを見て、リヴィオは沈痛な表情だ。
「あの、リヴィオ、私……」
何と言ったらいいのだろう。
「ローシュ様に成りすまして逃げようとしたのですか、卑劣な男ですね」
「あら?」
良く見れば倒れていたのはローシュではなく、違う男だ。
体を貫かれて絶命していた男はゲルドと共にいた者である。
(何で? どうして?)
「本当に卑劣な奴らだね。変化してここから逃げようとしたのを侯爵令嬢が教えてくれて、止めを刺したんだ。本物のローシュ様は無事だよ」
ルアンの言葉にそちらを向くと、彼の後ろには生きているローシュがいる。
「あなた……」
私の言葉よりも早くルアンが人差し指を口にあてて言わないようにという仕草をする。
リヴィオにローシュ殺しを見られたくなかった私は、大人しくそれに従う。
ローシュの口には猿轡もされているのを見るに、先程した声ももしかしたら彼ではなかったのかもしれない。
(打ち合わせ、していたのかしらね)
視界を遮られた間にルアンが男に変装をさせて、ドアから逃げるように促したのだろう。その間本物のローシュは上手く隠し、私にこちらが本物だと錯覚させて。
全てはカラムとルアンの仕組んだ事か。見事時間を稼がれたようだ。
リヴィオは私から体を離すと、本物のローシュに近づいた。
足に怪我をし、動けないローシュを見下ろしている。
無事で良かった、という目ではないわね。
「ローシュ様……あなたは本当に屑ですね、ますます見損ないました」
リヴィオもローシュのしたことを知っているのかしら。カルロス様に聞いたかもしれないわね。
「後の話は然るべき場で正直にしてくださいね。あなたの罪は法で裁いて貰いましょう、もう逃げられませんよ」
やはりリヴィオは私が手を下すことなど望んではいないのね。
「エカテリーナ様の婚約者の座を奪った事、昔は罪悪感に駆られていましたが今は心底喜んでいます。こんな男と一緒になっていれば、エカテリーナ様が尚更不幸になっていた。破談になって、本当に良かった」
握りられた手の力強さと温かさに私も頷く。
そうね。もう彼の元に戻ることはないけれど、そのような未来もあったわけで……鳥肌どころか吐気まで催しそうだわ、これ以上考えるのは止めましょう。
「リヴィオ、皆は無事か?!」
やっと駆けつけたカルロス様を見て、私はニコリと微笑む。
「カルロス様、リヴィオを助けて頂きありがとうございます。この通り私は無事ですわ。ローシュ様はそうではないですけれど」
「エカテリーナ嬢、良かった」
安堵した表情を私に見せた後、鋭い視線をローシュとラウドに向ける。
「カラム、これはそういう事か?」
怪我をしたローシュを見てカルロス様は怒っている。庇わなかったカラムや巻き込んだラウドに対してのものかしら。
「はい。黒でした」
カルロス様はローシュの猿轡を外さず、体を起こしてあげている。
(やはりローシュの事が大事なんじゃない)
睨むようにカラムを見るが、苦笑しているのが見えた。
「急ぎ治癒師に診せよう。連れてってくれ」
カルロス様がそう命じるとカラムは荷物でも担ぐようにローシュを抱えている。
雑な扱いに見えるけれど、どうなのかしら。
「そこの子爵令息も一緒に連れて行け」
「はい」
ルアンが頷き、ラウドに付いてくるようにと指示を出している。
そう言えばこの二人、縄を解かれたのにまた縛られているわね。
「もうどこにも行けないよ」
ぼそりとラウドに呟くルアンの声が聞こえた。
その表情は笑顔であるが目は笑っていない。
「エカテリーナ嬢。ブルックリン侯爵家まで送るから、あとはゆっくり休んでくれ。説明は俺からするが、話を合わせてくれると助かる。君が魔法を使える事や……ローシュに対してしようとした事は、内密にするから」
やや疲れた顔でそう言われ、私はどうしたものかとリヴィオを見上げる。
どちらも世間に内緒にしてもらえると有難い事だ。
魔女としての利用がなければ、王家との繋がりは希薄になるだろうし、穏やかな生活を送る事も出来る。
ローシュにしようとした事。それは彼を殺そうとしたことを差すならば、私は命で償わなければならないけれど、そこまできちんとわかっているのかしら。
「それでいいのですか? 私がしようとしたことはかなりの罪ですが」
本当にいいのだろうか。身内を、弟を殺されそうになったのに。
リヴィオの手前、はっきりとはいう事が出来ない。
訝しむカルロス様にルアンがそっと耳打ちをしているが、首を横に振っていた。
「何の事だ。君は巻き込まれてローシュといただけだと聞くが」
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心も体も疲弊している。今後の為に今は休まないと。
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