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第68話 幸せと(最終話)
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「カルロス様とクーラ様の式がもうすぐね」
辺境伯領に移ってからは穏やかな日々を送っていた。
王都の方は忙しそうではあるけれど、その喧騒がここまで届く事はないし、必要ない情報は私の耳には入れないようにとされている。
でもこの式はとても重要なものだから、もちろん行く予定だわ。
クーラ様のお祝いをしたいのもあるけれど、ペイルやミリティア様に会いたい気持ちが強い。
連日式に出席する為のドレスや贈り物の準備、そして色々なお土産品の容易で忙しいながらも、うきうきとしている私を見て、リヴィオも笑顔になっている。
「エカテリーナ様、嬉しそうですね」
「そうね、久々に皆に会えるもの。それよりも、呼び方が戻っているわ」
「失礼しました……エカテリーナ」
私の指摘にリヴィオは顔を赤らめつつも言い直してくれる。
でもまだ足りないわ。
「敬語も要らないわ、私達は夫婦でしょ?」
そう言って甘えるようにすり寄れば体を強張らせつつも、許してくれる。
「すまない、エカテリーナ」
素直に訂正してくれたリヴィオは、恐る恐るといった様子で手を回してくれる。その温かさが嬉しいのと安心感で目を閉じた。
辺境伯領に移ってからリヴィオと私の距離はだいぶ縮まったと思う。
以前の話の通りリヴィオは辺境伯の養子となり、彼の身分は飛躍的に上がったわ。
元々騎士であった事で腕前も認めてもらえ、謙虚で話を聞くのに長けたリヴィオはすぐに受け入れられる。
王族付きであった為に物腰も柔らかで、人当たりもいいので、女性からも好かれているのだけれど、それを見た私が拗ねたのを見て、女性との距離感は気をつけてくれているらしい。
私が不安がるからか、リヴィオは私だけを愛していると公言してくれ、触れ合う事も少しずつ増えてきていた。
だが、ここ最近はそれも少し控えめになってきている。
式はまだだけど籍は入れたからもういいと思うのに。
「ねぇリヴィオ。私の事は好き?」
「もちろん、愛してるよ」
そう言って優しい笑顔と温かい気持ちをくれるのに、その先はねだっても渡してくれそうにない。
思わず口を尖らせてしまう。
「まだ、駄目なの?」
上目づかいで下から見上げればリヴィオは困ったようで、目線を逸らされる。
「まだ、早いかと」
式を挙げるまではという事らしいけれど、キスくらいはくれてもいいと思わない?
大事にしてくれるのはわかるけれど、咎める人なんて誰もいないのに。何より私がいいと望んでるのに、奥手過ぎるわ。
「私の事が嫌い、なの?」
「そんな事はありません!」
悲し気に言えば彼は視線を戻して真面目に返してくれる。本当に融通の利かない性格よね、まぁ仕方ないけれど。
でももう逃げられないのだから、観念して。
リヴィオの腕に回していた手を今度は彼の首に回した。
「嫌いでなければ、受け入れて」
我ながら狡い言葉だ。
下がる事も出来ないようにと腕を絡めたのだが、そもそもリヴィオが私から逃げるなんてないとわかっている。
重ねた唇は存外柔らかくて、意外であった。
そんなに長い時間ではなかったけれど、心地いいものね。
ゆっくりと離れるとリヴィオが困ったように眉根を下げている。
「本当は、嫌だった?」
余りにも無理矢理だったろうか。
嫌われないと高を括っていたのだが、行動を間違えたかもと急いで離れようとしたら、逆に引き寄せられて抱きしめられる。
息も出来なくなるほど強い締め付けだが、彼とこんなに密着するなんて数えるほどしか経験がない。
貴重な体験に色々な意味で胸が詰まる思いだ。
「嫌なわけがない、凄く嬉しい」
その言葉に私は安堵し、嬉しくなる。
「でも折角なら記念日にという思いもあった。それに一つ進むと段々と歯止めが利かなくなりそうで」
一線を引いていた理由に、納得しつつも背中をタップする。さすがに呼吸が苦しい。慌てて力を緩めてくれたわ。
「記念日といえば、記念日よ」
私はリヴィオの顔を見て、微笑む。
「今日はあなたに初めて会った日なの」
ある意味忘れられない。最低で最悪な婚約者と会った日と同じだから。
リヴィオと会ったのは、ローシュとの婚約が決まり、彼と顔合わせをした時だ。
乳兄弟であるリヴィオは彼の側近になるべく、幼い頃から付き従っていた。その時は好きとか嫌いとかの感情はないけれど、初めての出会いは間違いなく今日である。
「あの人と初めて会った日でもあるから、それをいい日に塗り替えたかったの。だから、強引でごめんね」
そう言えばまた強い力で抱きしめられる。先程よりは優しく、でも離れまいと。
「ありがとう、俺を選んでくれて」
「私の方こそ、あなたに出会えて、こうして夫婦になれて嬉しいわ」
今度はリヴィオから口づけされる。
もしもあの時に婚約解消を決意しなければ、こんな幸せは来なかっただろう。
記憶を失ったと言わなければ、ローシュと結婚をしていたかもしれない。
殺意を向けられながらも彼を守り、私の魔女の力しか見ないバークレイ国の為に魔法を使い、そしてブルックリン侯爵家の為に生きる者となり下がっただろう。
そもそもお父様は何故私をローシュの婚約者としたのか。
最近になって知ったのだが、王家に望まれて、というよりもお父様が強く望んだ事が決め手だったらしい。
そして先日、お父様からお兄様へと爵位が移された。
諸々の事情があったらしいのだけれど、お兄様から詳しい話は私が幸せになってからするよと誤魔化されてしまう。
実は私を王都や侯爵領から離す計画は、だいぶ前からされていたらしいが……どうにも私の周囲にいる殿方達は、私を渦中に巻き込みたくないと思う人が多すぎる。
大事にし過ぎて話をしてくれないのは不満だが、守られることも板についてきたのか最近は文句を言う事も少ない。
記憶喪失を偽った事もあるし、ちょっとだけ申し訳なさもあるのよね。
でもそのままでいる気はないわ。今ポエットに裏を探ってもらっているし、もうすぐその件もまとめ終わるはず。
いざという時には戦うつもりよ。
それに、今はこんなにも大事な人が穏やかな生活を送らせたいと望んでくれているのだから、甘えるのも愛でしょ?
今の私は、もう自由に生きられるのだから。
辺境伯領に移ってからは穏やかな日々を送っていた。
王都の方は忙しそうではあるけれど、その喧騒がここまで届く事はないし、必要ない情報は私の耳には入れないようにとされている。
でもこの式はとても重要なものだから、もちろん行く予定だわ。
クーラ様のお祝いをしたいのもあるけれど、ペイルやミリティア様に会いたい気持ちが強い。
連日式に出席する為のドレスや贈り物の準備、そして色々なお土産品の容易で忙しいながらも、うきうきとしている私を見て、リヴィオも笑顔になっている。
「エカテリーナ様、嬉しそうですね」
「そうね、久々に皆に会えるもの。それよりも、呼び方が戻っているわ」
「失礼しました……エカテリーナ」
私の指摘にリヴィオは顔を赤らめつつも言い直してくれる。
でもまだ足りないわ。
「敬語も要らないわ、私達は夫婦でしょ?」
そう言って甘えるようにすり寄れば体を強張らせつつも、許してくれる。
「すまない、エカテリーナ」
素直に訂正してくれたリヴィオは、恐る恐るといった様子で手を回してくれる。その温かさが嬉しいのと安心感で目を閉じた。
辺境伯領に移ってからリヴィオと私の距離はだいぶ縮まったと思う。
以前の話の通りリヴィオは辺境伯の養子となり、彼の身分は飛躍的に上がったわ。
元々騎士であった事で腕前も認めてもらえ、謙虚で話を聞くのに長けたリヴィオはすぐに受け入れられる。
王族付きであった為に物腰も柔らかで、人当たりもいいので、女性からも好かれているのだけれど、それを見た私が拗ねたのを見て、女性との距離感は気をつけてくれているらしい。
私が不安がるからか、リヴィオは私だけを愛していると公言してくれ、触れ合う事も少しずつ増えてきていた。
だが、ここ最近はそれも少し控えめになってきている。
式はまだだけど籍は入れたからもういいと思うのに。
「ねぇリヴィオ。私の事は好き?」
「もちろん、愛してるよ」
そう言って優しい笑顔と温かい気持ちをくれるのに、その先はねだっても渡してくれそうにない。
思わず口を尖らせてしまう。
「まだ、駄目なの?」
上目づかいで下から見上げればリヴィオは困ったようで、目線を逸らされる。
「まだ、早いかと」
式を挙げるまではという事らしいけれど、キスくらいはくれてもいいと思わない?
大事にしてくれるのはわかるけれど、咎める人なんて誰もいないのに。何より私がいいと望んでるのに、奥手過ぎるわ。
「私の事が嫌い、なの?」
「そんな事はありません!」
悲し気に言えば彼は視線を戻して真面目に返してくれる。本当に融通の利かない性格よね、まぁ仕方ないけれど。
でももう逃げられないのだから、観念して。
リヴィオの腕に回していた手を今度は彼の首に回した。
「嫌いでなければ、受け入れて」
我ながら狡い言葉だ。
下がる事も出来ないようにと腕を絡めたのだが、そもそもリヴィオが私から逃げるなんてないとわかっている。
重ねた唇は存外柔らかくて、意外であった。
そんなに長い時間ではなかったけれど、心地いいものね。
ゆっくりと離れるとリヴィオが困ったように眉根を下げている。
「本当は、嫌だった?」
余りにも無理矢理だったろうか。
嫌われないと高を括っていたのだが、行動を間違えたかもと急いで離れようとしたら、逆に引き寄せられて抱きしめられる。
息も出来なくなるほど強い締め付けだが、彼とこんなに密着するなんて数えるほどしか経験がない。
貴重な体験に色々な意味で胸が詰まる思いだ。
「嫌なわけがない、凄く嬉しい」
その言葉に私は安堵し、嬉しくなる。
「でも折角なら記念日にという思いもあった。それに一つ進むと段々と歯止めが利かなくなりそうで」
一線を引いていた理由に、納得しつつも背中をタップする。さすがに呼吸が苦しい。慌てて力を緩めてくれたわ。
「記念日といえば、記念日よ」
私はリヴィオの顔を見て、微笑む。
「今日はあなたに初めて会った日なの」
ある意味忘れられない。最低で最悪な婚約者と会った日と同じだから。
リヴィオと会ったのは、ローシュとの婚約が決まり、彼と顔合わせをした時だ。
乳兄弟であるリヴィオは彼の側近になるべく、幼い頃から付き従っていた。その時は好きとか嫌いとかの感情はないけれど、初めての出会いは間違いなく今日である。
「あの人と初めて会った日でもあるから、それをいい日に塗り替えたかったの。だから、強引でごめんね」
そう言えばまた強い力で抱きしめられる。先程よりは優しく、でも離れまいと。
「ありがとう、俺を選んでくれて」
「私の方こそ、あなたに出会えて、こうして夫婦になれて嬉しいわ」
今度はリヴィオから口づけされる。
もしもあの時に婚約解消を決意しなければ、こんな幸せは来なかっただろう。
記憶を失ったと言わなければ、ローシュと結婚をしていたかもしれない。
殺意を向けられながらも彼を守り、私の魔女の力しか見ないバークレイ国の為に魔法を使い、そしてブルックリン侯爵家の為に生きる者となり下がっただろう。
そもそもお父様は何故私をローシュの婚約者としたのか。
最近になって知ったのだが、王家に望まれて、というよりもお父様が強く望んだ事が決め手だったらしい。
そして先日、お父様からお兄様へと爵位が移された。
諸々の事情があったらしいのだけれど、お兄様から詳しい話は私が幸せになってからするよと誤魔化されてしまう。
実は私を王都や侯爵領から離す計画は、だいぶ前からされていたらしいが……どうにも私の周囲にいる殿方達は、私を渦中に巻き込みたくないと思う人が多すぎる。
大事にし過ぎて話をしてくれないのは不満だが、守られることも板についてきたのか最近は文句を言う事も少ない。
記憶喪失を偽った事もあるし、ちょっとだけ申し訳なさもあるのよね。
でもそのままでいる気はないわ。今ポエットに裏を探ってもらっているし、もうすぐその件もまとめ終わるはず。
いざという時には戦うつもりよ。
それに、今はこんなにも大事な人が穏やかな生活を送らせたいと望んでくれているのだから、甘えるのも愛でしょ?
今の私は、もう自由に生きられるのだから。
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