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追記 王家とブルックリン侯爵家(リヴィオ視点)
「エカテリーナ様と共に辺境伯領へ行きます」
エカテリーナ様を救い出したその日、俺はブルックリン侯爵にそう宣言した。
ブルックリン侯爵は思案するように唸り、義兄であるアーヴィン様は安堵した表情になる。
対照的な反応をした二人に、俺は馬車の中でカルロス様から教えてもらった情報を思い出していた。
エカテリーナ様の救出の為にカルロス様に誓いを立てた後、重大な話があると前置きされ、教えられる。
「ブルックリン侯爵はエカテリーナ嬢を利用し、王家への謀反を企んでいる」
そんな事はあるわけがない。
だって侯爵様は優しいし、エカテリーナ様をあんなにも大事に思っているのだから。
「すぐには信じられないよな。では、ローシュの婚約者にエカテリーナ嬢が選ばれた理由は知っているか?」
「それは家柄が釣り合う為と、エカテリーナ様が貴重な魔法使いだから、ではないのですか?」
王家が選んだ理由はそうと聞いている。
「そう、それも本当話だ。確かに家柄も合うし、魔法の使い手は貴重だ……魔法が使えるという事は選ばれるのに確かに有利な条件だが、他にも釣り合う者はいたし、隣国の王女との縁談の話も来ていたよ。経済的なものや血脈的なものでは当時他の者の方が王家の為には良かった。なのにエカテリーナ嬢が選ばれた。実はブルックリン侯爵が強く推したからが理由なんだ」
「そうなのですか?」
「あぁ。そしてエカテリーナ嬢の婚約者の地位を確実なものにした事件――婚約して日もないのにローシュとエカテリーナ嬢が共に襲われ、エカテリーナ嬢が撃退したあの事件は、ブルックリン侯爵が仕組んだものだそうだ」
胸の中が怒りで激しく煮えたぎる。
0から1の大きな境、あの事件のせいでエカテリーナ様は血に塗れることを厭わなくなった。
あの事件がなければ、その先も手を汚すことはなかったかもしれないし、ローシュの無能さでもっと早めに婚約解消が出来ていたかもしれない。
事件のせいで、エカテリーナ様はローシュを守らなくてはと気負うようになる。婚約者として、護衛として頑張り、次第に色々な仕事を任されるようになって、やがて疲れ果ててしまった。
その重荷を背負わせたのは、父である侯爵様だったのか。
「エカテリーナ嬢がローシュの婚約者になるメリットは大いにあるから、一度掴んだ婚約者の座を離させたくはなかったのだろう。一概に悪いとは言えないが、娘に人殺しをさせてまで王家との繋がりを欲するなんて、普通あり得ない」
「何故その様な情報をお持ちなのですか?」
「情報源については後に話す。他にもあるのだが、実は昔、ブルックリン侯爵に殺されかけた事がある。それであの男は普通の男だではないと気が付いたんだ」
衝撃的な言葉である。
「最初は誰が仕組んだかわからなかったが、調べていくうちに侯爵の差し金だと知ったよ。俺を狙ったのはローシュを王に仕立て上げたかったからだ。自分の都合の良いように操れる王が欲しい、それがブルックリン侯爵家がローシュとの婚約を結んだ大きな理由だ」
あれを王に? そのような器なんて欠片もないのに。
「俺が、ブルックリン侯爵に伝えるとは思わないんですか?」
カルロス様が知っていると言えば侯爵はすぐさま行動を起こすだろう。カルロス様の口を塞ぐ策を。
「思わない。リヴィオはエカテリーナ嬢のためとはいえ俺に誓いを立ててくれた。それはつまりブルックリン侯爵には誓いを立てていない事になる。二重で誓いを立てる、そんな事を真面目なお前ならしないはずだ」
「買いかぶり過ぎです」
こんな口約束、嘘を吐いたり反古する可能性も高いのに、カルロス様は本当に信じてくれているのだろうか。
「エカテリーナ嬢が信じている者だから、俺もリヴィオを信じているよ。それにローシュの側にいる内から見ていたが、お前はとても良い奴だ」
信用してくれているのか、それともからかわれているのか。
「それに話を聞いたからには俺の味方になってくれるとも思う。お前はエカテリーナ嬢に力を振るってもらいたくない、そうだな?」
「えぇ」
「ならば尚更ブルックリン侯爵から離れるべきだ。侯爵はエカテリーナ嬢の記憶が無ても本当はローシュとの婚約解消をしたくなかったそうだから」
「そんな馬鹿な。エカテリーナ様の訴えを聞いて、一緒に憤ってくれたではないですか」
「あそこまで本人も嫌がってしまった事、ローシュに近しい俺とお前が止めることもせずに後押ししたから引くに引けなくなったのだ。婚約解消の運びを作った俺達を侯爵は恨んでいる。近いうちにお前を殺し、自分の派閥の有力者と婚姻させるという話も出ているくらいだ」
俄かには信じられない話だし、どうして今になってここまでの話をするのか。情報の整理が追い付かない。
「どういう事なんですか。そのように言われたって、カルロス様の話が本当なのかどうか、この場では判断がつきません」
話のペースが速くて混乱してしまう。
「信じるか信じないかは、後で判断してくれ。そうだな、エカテリーナ嬢を助け出し、ローシュの断罪が決まった後にでも、ブルックリン侯爵の反応を見ているといい。ローシュとの復縁がなくなった今、当初の計画が崩れているから、もう既に動いている。俺を失脚させ。侯爵家が王位を獲ろうとしているよ」
そうまで知っているのならば、カルロス様はもう何か手を打っているのだろう。
「リヴィオの身分が高く、ブルックリン侯爵の考えに反発するものでなかったら、そのまま婚姻させたかもしれないな。現実はリヴィオはエカテリーナ嬢が戦うのを嫌がっている、でもそれは侯爵の意に添わない。侯爵にとって娘は駒で戦力だ、より良い家に嫁がせれば資金を稼げるし、エカテリーナ嬢の記憶が戻れば物理的な戦力にもなる。」
そんな野心が渦巻いていたとはつゆ知らなかった。
「リヴィオは剣の腕は立つが、真面目過ぎるし、後ろ盾も弱い。今のままではいつ要らないと切り捨てられ、殺されるかもわからない。落ち着く前にエカテリーナ嬢を連れてあの家を離れる計画をした方がいい、ごたごたの内なら離れるのはまだ容易だ」
「ここまでの話に、明確な根拠はあるのですよね」
信じがたい話ばかりだが、ここまでの話がカルロス様の妄想とは思い難い。
「実は、アーヴィンが教えてくれた。証拠の品も持って来てくれている」
まさかのブルックリン侯爵家の嫡男が情報源とは。という事は義兄様は侯爵様を裏切ったという事になる。
「ミリティアにも話はし、警戒するように促している。俺とローシュに何かあればミリティアが次の王位に近くなる、そうなるとブルックリン侯爵がミリティアに何かするかもしれない。無理矢理婚姻させられるか、下手したら殺されるか……簒奪者が懸念を残すわけがない」
ミリティア様の尊厳を踏みにじるか、王家の血筋を根絶やしにするか。
どちらも碌な未来ではない。だが侯爵がそのような考えをしていると以前から知っていたのならば、もっと早くに止めるべきでは?
カルロス様が無理でも、もっと力のあるものに協力を仰ぐとか。
「国王陛下にその話はしているのですか?」
この国のトップであるカルロス様の父親、彼ならばブルックリン侯爵の思想を知ってら止めたのではないかと思う。
ローシュを王になんて、さすがに親馬鹿な王でも止めるだろう、そう思ったのに。
「言えるわけがない。父上はローシュを王にしたくてブルックリン侯爵と共に俺の命を狙ったのだから。そんな者に協力を仰ぐなんて出来ないよ」
今度こそ言葉が出なかった。
エカテリーナ様を救い出したその日、俺はブルックリン侯爵にそう宣言した。
ブルックリン侯爵は思案するように唸り、義兄であるアーヴィン様は安堵した表情になる。
対照的な反応をした二人に、俺は馬車の中でカルロス様から教えてもらった情報を思い出していた。
エカテリーナ様の救出の為にカルロス様に誓いを立てた後、重大な話があると前置きされ、教えられる。
「ブルックリン侯爵はエカテリーナ嬢を利用し、王家への謀反を企んでいる」
そんな事はあるわけがない。
だって侯爵様は優しいし、エカテリーナ様をあんなにも大事に思っているのだから。
「すぐには信じられないよな。では、ローシュの婚約者にエカテリーナ嬢が選ばれた理由は知っているか?」
「それは家柄が釣り合う為と、エカテリーナ様が貴重な魔法使いだから、ではないのですか?」
王家が選んだ理由はそうと聞いている。
「そう、それも本当話だ。確かに家柄も合うし、魔法の使い手は貴重だ……魔法が使えるという事は選ばれるのに確かに有利な条件だが、他にも釣り合う者はいたし、隣国の王女との縁談の話も来ていたよ。経済的なものや血脈的なものでは当時他の者の方が王家の為には良かった。なのにエカテリーナ嬢が選ばれた。実はブルックリン侯爵が強く推したからが理由なんだ」
「そうなのですか?」
「あぁ。そしてエカテリーナ嬢の婚約者の地位を確実なものにした事件――婚約して日もないのにローシュとエカテリーナ嬢が共に襲われ、エカテリーナ嬢が撃退したあの事件は、ブルックリン侯爵が仕組んだものだそうだ」
胸の中が怒りで激しく煮えたぎる。
0から1の大きな境、あの事件のせいでエカテリーナ様は血に塗れることを厭わなくなった。
あの事件がなければ、その先も手を汚すことはなかったかもしれないし、ローシュの無能さでもっと早めに婚約解消が出来ていたかもしれない。
事件のせいで、エカテリーナ様はローシュを守らなくてはと気負うようになる。婚約者として、護衛として頑張り、次第に色々な仕事を任されるようになって、やがて疲れ果ててしまった。
その重荷を背負わせたのは、父である侯爵様だったのか。
「エカテリーナ嬢がローシュの婚約者になるメリットは大いにあるから、一度掴んだ婚約者の座を離させたくはなかったのだろう。一概に悪いとは言えないが、娘に人殺しをさせてまで王家との繋がりを欲するなんて、普通あり得ない」
「何故その様な情報をお持ちなのですか?」
「情報源については後に話す。他にもあるのだが、実は昔、ブルックリン侯爵に殺されかけた事がある。それであの男は普通の男だではないと気が付いたんだ」
衝撃的な言葉である。
「最初は誰が仕組んだかわからなかったが、調べていくうちに侯爵の差し金だと知ったよ。俺を狙ったのはローシュを王に仕立て上げたかったからだ。自分の都合の良いように操れる王が欲しい、それがブルックリン侯爵家がローシュとの婚約を結んだ大きな理由だ」
あれを王に? そのような器なんて欠片もないのに。
「俺が、ブルックリン侯爵に伝えるとは思わないんですか?」
カルロス様が知っていると言えば侯爵はすぐさま行動を起こすだろう。カルロス様の口を塞ぐ策を。
「思わない。リヴィオはエカテリーナ嬢のためとはいえ俺に誓いを立ててくれた。それはつまりブルックリン侯爵には誓いを立てていない事になる。二重で誓いを立てる、そんな事を真面目なお前ならしないはずだ」
「買いかぶり過ぎです」
こんな口約束、嘘を吐いたり反古する可能性も高いのに、カルロス様は本当に信じてくれているのだろうか。
「エカテリーナ嬢が信じている者だから、俺もリヴィオを信じているよ。それにローシュの側にいる内から見ていたが、お前はとても良い奴だ」
信用してくれているのか、それともからかわれているのか。
「それに話を聞いたからには俺の味方になってくれるとも思う。お前はエカテリーナ嬢に力を振るってもらいたくない、そうだな?」
「えぇ」
「ならば尚更ブルックリン侯爵から離れるべきだ。侯爵はエカテリーナ嬢の記憶が無ても本当はローシュとの婚約解消をしたくなかったそうだから」
「そんな馬鹿な。エカテリーナ様の訴えを聞いて、一緒に憤ってくれたではないですか」
「あそこまで本人も嫌がってしまった事、ローシュに近しい俺とお前が止めることもせずに後押ししたから引くに引けなくなったのだ。婚約解消の運びを作った俺達を侯爵は恨んでいる。近いうちにお前を殺し、自分の派閥の有力者と婚姻させるという話も出ているくらいだ」
俄かには信じられない話だし、どうして今になってここまでの話をするのか。情報の整理が追い付かない。
「どういう事なんですか。そのように言われたって、カルロス様の話が本当なのかどうか、この場では判断がつきません」
話のペースが速くて混乱してしまう。
「信じるか信じないかは、後で判断してくれ。そうだな、エカテリーナ嬢を助け出し、ローシュの断罪が決まった後にでも、ブルックリン侯爵の反応を見ているといい。ローシュとの復縁がなくなった今、当初の計画が崩れているから、もう既に動いている。俺を失脚させ。侯爵家が王位を獲ろうとしているよ」
そうまで知っているのならば、カルロス様はもう何か手を打っているのだろう。
「リヴィオの身分が高く、ブルックリン侯爵の考えに反発するものでなかったら、そのまま婚姻させたかもしれないな。現実はリヴィオはエカテリーナ嬢が戦うのを嫌がっている、でもそれは侯爵の意に添わない。侯爵にとって娘は駒で戦力だ、より良い家に嫁がせれば資金を稼げるし、エカテリーナ嬢の記憶が戻れば物理的な戦力にもなる。」
そんな野心が渦巻いていたとはつゆ知らなかった。
「リヴィオは剣の腕は立つが、真面目過ぎるし、後ろ盾も弱い。今のままではいつ要らないと切り捨てられ、殺されるかもわからない。落ち着く前にエカテリーナ嬢を連れてあの家を離れる計画をした方がいい、ごたごたの内なら離れるのはまだ容易だ」
「ここまでの話に、明確な根拠はあるのですよね」
信じがたい話ばかりだが、ここまでの話がカルロス様の妄想とは思い難い。
「実は、アーヴィンが教えてくれた。証拠の品も持って来てくれている」
まさかのブルックリン侯爵家の嫡男が情報源とは。という事は義兄様は侯爵様を裏切ったという事になる。
「ミリティアにも話はし、警戒するように促している。俺とローシュに何かあればミリティアが次の王位に近くなる、そうなるとブルックリン侯爵がミリティアに何かするかもしれない。無理矢理婚姻させられるか、下手したら殺されるか……簒奪者が懸念を残すわけがない」
ミリティア様の尊厳を踏みにじるか、王家の血筋を根絶やしにするか。
どちらも碌な未来ではない。だが侯爵がそのような考えをしていると以前から知っていたのならば、もっと早くに止めるべきでは?
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「国王陛下にその話はしているのですか?」
この国のトップであるカルロス様の父親、彼ならばブルックリン侯爵の思想を知ってら止めたのではないかと思う。
ローシュを王になんて、さすがに親馬鹿な王でも止めるだろう、そう思ったのに。
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