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「さぁて、そろそろパーティー会場へ向かおうか。ミュラ、パパが抱っこしてあげるからおいで。」

パパに抱き上げて貰い、ママも一緒に庭へ向かう。急遽招待客が増えた為、立食式のガーデンパーティーにしたんだって。
カイ兄様の幼なじみである第一王子様や、公爵家の方々、騎士団、魔術団の方面からも招待したそうで準備がいろいろ大変だったみたい。
最終準備の追い込みで、昨日はハリーがちょっとおかしかった。
「ミュラお嬢様、少し充電させてください」と言って私を膝に抱っこしながら、つかの間のティータイムを過ごしていた。
私の誕生日の為になんだか申し訳なくなって「はりぃ、しゅき」と感謝の言葉を伝えたら、「『好き』とは…カイン様も考えましたねぇ。ふふふ。わたくしにとっても嬉しいですから、このままにいたしましょうか。」と呟いていたけどよく意味が解らなかったので、とりあえずニコニコ笑い返しておいた。


庭に近付くと既にお客様がいらしているようで、賑やかな声が聞こえてくる。
遠目からもお兄様達の姿は直ぐに見つけられた。3人とも私と同じシルクを使用した白いスーツに、胸元には青いポケットチーフがアクセントで彩りを添えている。妹の私から見てもお兄様達はとても素敵だ。ファンクラブがあるとサーラが話していたのも頷ける。

お兄様達は私達が来たことに直ぐに気付き、パーティー会場の中央に設置された壇上にやってきてくれた。

少し遅れて招待客の方々が私達の登場に気付き、会場は一斉に静まりかえる。

「皆様、本日は我がロレイル家の愛娘であるミュラの誕生パーティーにお集まりいただき、誠にありがとうございます。こちらが娘のミュラです。これからも我が家共々宜しくお願いいたします。」
パパの挨拶を受け、一斉にお客様の視線が私に集中し、わぁっと歓声と拍手がおこる。「おめでとう」という声や沢山の笑顔を向けられて、私は感動で胸がキュッとなった。
‘’ロレイル公爵家の娘だから‘’向けられる好意なのかもしれない…けれど、ここには確かに‘’私の為に来てくれてた事実や、お祝いしてくれた事実がある‘’それならば、私は喜んで受け取ろう。

ありがとうをちゃんと伝えたい。
言葉ではまだちゃんと伝えられないけど、今できる限りの態度で示したい。
パパの手をクイッと引っ張り、壇上に降ろしてもらう。多少ぐらつきながらも、しっかり自分の足で立ちたい。そんな私を見て、更に歓声が飛び交い鳴り止まない拍手に包まれる。

私は込み上げる感情を押さえきれず、ぎゅっと手を胸の前で合わせた。みんなが幸せになって欲しい。勿論、私ごときがそんな大層な事は言えないんだけど…せめて『ここにいる皆様が今日のパーティーを気持ち良く過ごせますように』そう強く願った。

瞬間、フワッと暖かい風が吹き庭の花々が一斉に咲き乱れ、風に乗って様々な色の花びらがフラワーシャワーの様に宙を舞う。

あまりの美しさに私は感謝の気持ちを込めて、
壇上から皆様に向かって笑顔で伝える。
「だいしゅき」
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